ビシャゴ岩@(295m) 赤穂市 25000図=「日生」 播磨灘の展望広がる山上の岩 JR赤穂線の備前福河駅近くから北西を望むと、岩壁が山腹を取り囲むように並んだ低い山が見える。これは、県境に位置する標高311mの山である。
黒いゴムシートを張った小さなため池の前で、愛宕神社からの道と合流した。
標高160mに、ピンク色の文字で描かれた「ビシャゴ岩→」の道標が立っていた。ここで、地形図の道から離れた。 雑木の中を登っていくと、道の周りに高い木がなくなり、あたりが開けた。前方に、小高い山が緩く稜線を引いている。 頂のすぐ下に、ビシャゴ岩が飛び出している。その左上、青空の中に、ビシャゴ岩と向き合うように月が白く浮かんでいた。 下弦を過ぎた有明月。月は、足早に広がってきたうす雲にあっという間に隠されてしまった。写真に撮っていなかったら、幻だったかと思ってしまうほどの淡い昼の月であった。
道は、ウバメガシの林の中に入っていった。ここで切ったウバメガシの細い幹を使って、階段がつくられていた。道をつくった人たちの思いが伝わる、山の風景に溶け込んだ階段であった。 ヒサカキの赤紫色の小さな実がふくらんでいた。葉をすっかり落としたサルトリイバラは、朱色の実をつけていた。
道の両側のウバメガシやヒサカキが背より高くなってきた。トンネルのようになった道を登っていった。山の頂の手前を折れ、南にゆるく下った。
ビシャゴ岩は、南東に向かってテーブル状に飛び出していた。岩の上は、山肌に屹立する岩塔の頂部で、5m四方ほどの広さがある。 この岩を中心に、左にも右にも同じように頂部が水平に近い岩が数個並んでいた。
目の前に絶景が広がっていた。 赤穂の湾の向こうに、播磨灘が初冬の逆光に鈍く光っている。鹿久居島の島かげに牡蠣いかだが並んでいる。数隻の船が、ほとんど止まっているかのように浮かんでいた。 青空をぐるりと縁取る雲の白と、海の灰色がかった青の間に、家島の島々が点々と並んでいた。右から左へ、小松島、金子島、三ッ頭島……。双眼鏡でずっと島を横へ追っていった。左端の上島まで、全部で20の島を数えることができた。
赤穂の工業地帯や市街地もよく見えた。赤穂発電所の巨大な煙突、赤穂海浜公園の観覧車、千種河の河口には小さな唐船山……。 さっきから岩のうしろで鳴いていたウグイスが、ウバメガシの中から姿を見せた。岩の下の木々を、数羽のメジロが跳び渡っていった。 オカリナを吹いていると、JR赤穂線を黄色い電車がゆっくりと走り、備前福河駅に停まった。
「ビシャゴ」とは、タカの仲間、ミサゴの地方での呼び名。岩の名は、かつてこの岩の上でミサゴが捕らえた魚を食べていたことに由来するという。 山上に屹立するこの岩に立ってみると、この岩の姿がまた、獲物を捕らえるために水面に向かって急降下するミサゴの姿を彷彿させるのかとも思った。もしかしたら、ここから割れ落ちて真っ逆さまに落ちていく岩も、ミサゴを連想させたのかもしれない。
山行日:2020年12月9日
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行き:国道250号線登山口〜ため池合流点〜ビシャゴ岩 帰り:ビシャゴ岩〜ため池合流点〜愛宕神社〜寺西登山口 |
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国道250号線、福浦峠の東500mの地点に登山口がある。ここには、車1台分の駐車スペースがある。 ビシャゴ岩までの道は、地元の人たちによって整備され、要所には道標が設置されている。 |
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山頂の岩石 白亜紀後期 赤穂層 溶結凝灰岩 |
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強く溶結した暗灰色の硬い岩石で、軽石が薄く引き伸ばされた本質レンズが並んでいる。 本質レンズは、鮮やかな緑色をしていて、厚さは1mm程度、長さは長いもので20mmに及ぶ。 結晶片として、石英と長石を含んでいる。基質は、ガラス質である。 この溶結凝灰岩の地層は、今からおよそ8200万年前(白亜紀)の大規模な噴火で起こった火砕流が堆積してできたものである。 この噴火によって、空洞になった地下に、その上の大地が陥没し、そこにカルデラができた。 カルデラの地形は、その後の地殻変動や侵食によって消えたが、その地下の構造(赤穂コールドロン)が大地に残されている。カルデラの大きさは、長径約21kmで現在の阿蘇カルデラに匹敵するという。 ビシャゴ岩には、垂直に2方向、水平に1方向、割れ目が発達している。これは、溶結凝灰岩の冷却節理と考えられる。垂直方向の節理によって先端から岩石が割れ落ち、水平方向の節理によってテーブル状に広がる頂部がつくられている。 この山の下部は、花崗岩(花崗閃緑岩)でできている。花崗岩自体は硬い岩石であるが、この地域の花崗岩には不規則な割れ目が発達している。そのため、、崩れ落ちた花崗岩の岩塊が山裾に傾斜の緩い地形をつくっている。 |
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