金と義と家族と……
第3章 〜理解〜 1週間が経ち、皆は再びティナの元へ集結した。この後一行は、封魔壁の洞窟において幻獣の強大さを知り、帝国との和解に向かうこととなる。
「拙者も同行させてもらうでござる。」
ドマの一件が有ったので、カイエンはどうしてもこの和睦交渉には参加したかった。結局交渉に参加するのは、エドガー、マッシュ、ティナ、そしてカイエンの4人に。彼らが帝国首都に到着すると、変わり果てた姿になっていた。あちこちが炎上し、見る影も無い。そこにはリターナーのジュンやバナンも既に到着しており、この事態に呆然としていた。
4人は帝国兵の案内で城内に入り、ガストラ皇帝との会食に臨むこととなった。ここでカイエンは運命的な出会いを果たす。
最後までドマ毒殺計画に反対し続けた男、将軍レオである。
「あなたは・・・・。」
「ドマ戦士、カイエンでござる。」
「やはり・・・・。本当に済まないことをしてしまいました。私の力及ばず、ケフカの計画を阻止できなかった。申し訳ない。」
レオは深々と頭を下げた。カイエンはその肩を優しく叩き、
「もう良い。何もお主のせいではござらん。頭を上げて下され。」
レオは1度頭を上げたが、なおも振り返って頭を下げつつ、その場を去った。
和睦交渉は滞りなく進み、幻獣と和解したいという帝国側の提案で、ティナとロックが帝国の者と共に大三角島に向かうこととなった。帝国側はレオ将軍にセリス、そしてあのシャドウである。どうやら新たに帝国側に雇われたらしい。そのシャドウを、カイエンがたまたま見かけた。
「!?」
「どうした、カイエン?」
「いや・・・・、今そこにシャドウ殿が・・・・。」
カイエンは後を追ってベクタを出ようとしたが、入り口で帝国兵に止められた。
「現在人の出入りを禁止しております。」
仕方なく、諦めた。
大三角島では、シャドウはロック・ティナと共に行動した。しかし、帝国側からの指令で、彼は途中から単独行動を取った。
指令によると、
「ロック及びティナとサマサ村の者が接触を持ち次第、秘密裏にベクタへ帰れ」
とのことであった。シャドウは最初意味が分からなかった。しかし、今なら分かる。そう彼はまさに殺されかけたからである。
彼はロックやティナと違い直接帝国に雇われているため、自然、帝国の機密情報に触れることも多くなる。帝国としては、どうあっても生かしておく訳にはいかなかった。そういう意味では、セリスも同様なのだが、彼女は殺されなかった。
シャドウは、殺される直前でベクタを脱出した。そこまでは良かったのだが、逃げる際に受けた傷のせいで、昏倒して道端に倒れた。
(いかん・・・・。起きねば・・・・。)
そうは思っても体は全く言う事を聞かない。そのうちに、気を失った。
「・・・・ドウ!シャドウ!!」
何時間経ったろうか、シャドウは目を覚ました。見慣れた顔が並んでいる。マッシュにエドガー、そしてカイエン。シャドウがそれ以上に驚いたのは、周りの景色がおかしい。島が、空に浮いている。
「ここは・・・・?」
「魔大陸だ。」
「魔大陸・・・・?そうか。帝国め、用が済んだらあっさり殺そうとしやがって。」
シャドウは自ら同行を申し出た。今度は、報酬の要求はしない。カイエンは驚いた。
4人は、激しい死闘の末、アルテマウェポンを始末した。するとシャドウは、
「1度は帝国に寝返った身だ。これ以上同行はできん。」
何処かへ去った。この行動にもカイエンは驚いた。金だけの男かと思っていたが、そんなことは無い。人と人との繋がりみたいなものもわきまえている。カイエンは何か嬉しくなった。
その奥では、ケフカが三闘神を暴走させてガストラを殺していた。三闘神の力はケフカに集まり、やがて手におえない程の暴走へと変わる。それを食い止めようと1人の男がどこからともなく飛んできた。シャドウである。
「行け!世界を守れ!!」
彼は1人でケフカの足止めを買って出た。
「シャドウ殿!」
「早く行け!」
「しかし・・・・。」
その時、マッシュが思い切りカイエンの腕を掴んで駆け出した。シャドウは何か微笑んでいるようにも見えた。
4人は魔大陸の端まで辿り着いた。今来た道は、既に崩れて無い。4人はシャドウの到着を待った。しかし、来ない。
「限界だ、私は行くぞ。行こう、セリス。」
エドガーはセリスを連れて飛空艇へ飛び降りた。マッシュとカイエンは、動かない。しかし、そのマッシュも焦っていた。自分達の進んできた道があった方角を何度も見返すが、まだ見えない。既に魔大陸は完全崩壊を始めている。彼らのいる所の足場すらも、崩れ始めていた。
「駄目だ、カイエン!限界だ!!行くぞ。」
「待つでござる。・・・・来た!来たでござる!!」
シャドウは颯爽といった感じで跳んできた。
「報酬を貰わないうちは、死んでも死にきれんからな。」
以前のカイエンであれば、冗談でもこんな台詞を聞かされれば烈火の如く怒り出していただろう。が、今は違う。この魔大陸で、彼のシャドウに対する評価は大きく変わっていた。
「よし、行くぞ!カイエン、シャドウ!!」
3人が飛空艇に飛び降りたわずか2秒後、魔大陸は完全に崩壊した。