DESIRE 13



がれきの塔では、どうやっても三手に別れなければ、奥に進めないようだった。
「全く・・・こんなめんどくさいモン、ケフカもよく作るよな。」
ロックがぼやく。
「仕方ないな。三手に別れよう。」
皆が頷く。
戦力を考えて検討した結果、第一パーティは、マッシュ・ティナ・リルム・ストラゴス。
第二パーティカイエン・ガウ・セッツァー・シャドウ。
第三パーティ・・・当然のように、セリスと私・・・そしてロックとなった。
「じゃあ、また後で。」
そう言って、皆と別れる。
私は、マッシュと抱き合った。
リルムが後ろから”ホモ!!”とうるさいが、構わない。
「行こう。時間がないわ。」
ティナが言った。
皆が頷き、決めたとおりのパーティに別れて、それぞれの道を目指した。


私達は、割と簡単にダンジョンを抜けていった。
道が複雑ではあるが・・・、その辺は泥棒ロックが、『宝の匂いがする』と言って、
勝手に進んでくれたので、順調に奥を目指していた。
「エドガー、みんな大丈夫かしら?」
セリスが、不安そうに言う。
「大丈夫だ。」
そう言うしかなかった。
「セリス、みんなを信じようぜ。これくらいでくたばるような連中じゃないよ。」
ロックがそう言うと、セリスは安心したように頷いた。
「さて・・・道が4つに分かれているが・・・。どうするかね、泥棒さん。」
「泥棒じゃない。トレジャーハンターだ。」
私の言葉に、ロックは少し腹を立てたように言ったが、ちゃんと道のことは考えているようだった。
「ロックって・・・どうしてどっちに進んだらいいかとか・・・わかるの?」
セリスが問う。
「どうしてって・・・勘だけど。」
「セリス、ロックはな。私達より野性的だから、鼻が利くんだ。マッシュもガウもそうだぞ。だから、あえてその三人を別パーティに入れたんだ。」
「いい加減にしてくれよ、エドガー・・・。」
ロックが情けない声を出す。セリスは、クスクス笑っている。
ケフカと戦う前に、これだけの余裕があれば大丈夫だろうと、胸をなで下ろした。
「こっちだ。」
ロックは、私達を置いて先に駆け出す。私達もそれに続いた。
「ここを行けば、ケフカが居るハズなんだけど・・・。」
ロックが、壁を触って言った。
私達がたどり着いたところは、行き止まりだった。
左右を見ると、離れたところに二つ、今居るところと同じようなモノがある。
「あ、もしかして。あそこにみんなが集まらないとダメなんじゃないかしら?」
セリスが左右を指さす。
「そうかもしれないな・・・。」
私は溜息をつくと、その場に座り込んだ。
「とりあえず、みんなが来るまでここで待とう。」
セリスもロックも頷き、その場に座った。
「オレ達が一番早かったのかな?」
ロックが言った。
「そうみたいねぇ・・・。」
ロックが自信満々に言う。
「ロックは、バカだな。単にマッシュとガウより野性的だったってコトだろう?」
私がそう言うと、ロックは頬を膨らませた。
「ロックって・・・子供みたい。」
セリスが言うと、ますますロックは、頬を膨らませる。
和やかな時を過ごせた。
そう思ったとき、マッシュの声が聞こえた。
「兄貴―!!聞こえるかぁ??」
「マッシュ!!!」
私は立ち上がり、マッシュの声がする方向・・・左を向いた。
「カイエン達、来てるか??」
マッシュが問う。
私は、右を確認した。ちょうど、カイエンの姿が見えた。
「今来たよ。」
マッシュは頷くと、そのまま突っ立っていた。
右を見ると、カイエン達が最後のモンスターを倒しているところだった。
セリスもロックも立ち上がった。
「いよいよね・・・。」
セリスが呟く。
ロックがそれに頷いた。
間もなく、私達はケフカの居る場所に瞬間移動させられた。



目を開けると、そこには三闘神が居た。ケフカは・・・その上に浮いている。
「ケフカ・・・。」
セリスが呟いた。
「これを倒せば・・・終わりなのね。」
ティナが呟く。
「ティナ・・・。」
マッシュが心配そうにティナを見つめる。
「大丈夫よ。」
ティナは、気丈にもそう言った。
「いくわよ!!」
セリスは、アルテマウェポンを握ると、三闘神に斬りかかった。
続いて、ティナがトランスする。
皆、力の限り戦った。
力のない者は、後ろで回復役。
セッツァーが、似合わない回復呪文を唱えるのが可笑しかった。
―最後・・・ティナの魔法で、三闘神は、三神とも倒れた。
ティナは、トランスをといていた。
今、三闘神と戦っていたところに、ケフカが降りてくる。
厭な笑みと共に・・・。
「次は、お前だ!!ケフカ!!!」
「待って!!!」
セリスがロックを制した。
「ケフカは・・・私が・・・。」
皆が、静まり返る。
ティナがトランスをといたのは、このためだと理解した。
「誰でもいいから、かかってきなさい。決めるまで待ってやろう。」
ケフカが言った。
「セリス・・・負けないで。」
ティナが言う。
続けてマッシュがセリスの肩を叩いた。
「絶対負けちゃダメだよ!!!」
リルムが言った。
「何もできないが・・・回復くらいはしてやろう。」
シャドウが珍しく笑っているようだった。
「気を付けるんじゃゾイ。」
ストラゴスは、セリスの手を握る。
「気を抜かぬように・・・。」
カイエンがセリスの父親のように頭を撫でる。
「ガウ、ここで応援する!」
深刻な表情のガウは初めて見た。
「終わったら、また一緒に一杯やろうぜ。」
セッツァーが酒を飲む仕草をする。
「セリス・・・頑張れよ。」
ロックは、セリスを抱き締め、すぐ離した。
「みんな、有り難う。」
セリスは、にっこり笑って、私の方を見る。
「エドガー。」
「何?」
「約束通り、一緒に還ろうね。」
私は笑顔で応えた。
セリスは頷くと、ケフカの方へゆっくり歩み寄った。
「アレアレ?セリスだけで僕の相手をするのかい?負けちゃうよ。ボロ負けだよ。それとも・・・僕のもとに来る気になったの?」
ケフカがおどけた調子で言う。
「ふざけんな、化粧オバケ!!!あんたごとき、私一人で充分。みんなの手を煩わせる必要なんてない!!」
セリスは、そう言うとケフカに斬りかかった。
「仕方ない・・・。不本意だが相手になってあげましょう。」
ケフカは、余裕の笑みを見せた。



どのくらいセリスとケフカが戦っているのを見ているのだろう。
シャドウは言葉通り、セリスの回復に専念している。他の皆も、それを手伝っている。
ただ、私だけは、何もせずに二人を見つめていた。
「セリス・・・危ないんじゃないか?回復してやっても、まるで追いついてない。」
ロックが言った。
私は何も言えなかった。
本当なら、すぐにでもセリスを助けてやりたいが。
ここで手を出すのは、場違いというもの・・・。黙って見つめているしかない。
それに・・・セリスはまだ全力で戦っていない。
「生意気な娘だね!!」
ケフカが、斬りかかったセリスを力いっぱい吹っ飛ばした。
セリスが私の方へ飛んでくる。私は、きちんと受け止めた。
「セリス、大丈夫だな?まだやれるな?」
私がそう言うと、セリスは、弱々しく頷いた。
その隣から回復呪文が飛んでくる。
「セリス、何故全力を出さない?」
私の問いにセリスは固まった。
「そんなこと・・・。」
「セリス。辛いだろうけどさ。辛いだろうけど、やらなくちゃいけないんだ。わかってるだろう?ケフカを倒さないといけないんだ。世界のためじゃない。
セリスのために。わかるだろ?さっき、君はケフカにタンカ切ったくせに、ここで諦めるのか?」
セリスの両眼から涙が滝のように流れる。
「負けちゃダメだよ、セリス。見てるから。ここで、ずっと見守ってるから。僕だけじゃない。ここにいるみんなが見守っているから。みんなが見届けてくれるから。だから・・・。」
私も、辛くて泣けてきた。
こんなに辛そうなセリス・・・見たくないのに。
「でも・・・ケフカが・・・。」
セリスが涙声で呟く。
「アレは、君の好きなケフカじゃない。君もそう言ってただろ?頑張れ。」
セリスが頷く。
「セリス、もう一度言っておくね。私も、負けない。だから・・・貴女も負けちゃダメ。」
ティナが言った。
「ティナ・・・。」
セリスが呟く。
セリスは私に強く抱きつくと、「見てて。私、勝つから!!!」と言ってさっと立ち上がった。
「エドガー、セリスは大丈夫だよな?」
ロックが言った。
「信じよう。」
私はそう言ってロックに笑いかけた。



全力を出したセリスは、強くて、ケフカとも互角に戦っていた。
「まさか・・・貴女がここまでやるとは思わなかったよ。」
ケフカの顔から余裕の笑みは消えていた。
ケフカが喋った瞬間、セリスはケフカとの間合いを詰め、ケフカの首にアルテマウェポンをあてる。
「これで、最後よ。ケフカ。」
セリスはそう呟いた。
「セリス・・・。私を殺すのか?」
ケフカが急にまじめな声を出す。
「ケ・・フカ。」
セリスの表情がゆるむ。その手はまだケフカの首筋にあるが・・・。
「セリス!!!」
ロックが叫ぶ。
「負けるなって、エドガーが言っただろう??一緒に還るって、エドガーと約束しただろう?」
ロックの声に、ハッとしたようにセリスがケフカの首筋を斬る。
その顔は涙で濡れていた。
ケフカは、その場に倒れた。
皆、セリスに駆け寄るが、誰もセリスに声をかけない。
私は、遅れてセリスの所に歩み寄った。
セリスは、座ってケフカの頭を膝に乗せ、泣いていた。
「ケフカ・・・。」
セリスがケフカの頬を叩いて呼ぶ。
「ケフカぁ・・・。」
セリスが、ケフカの肩を揺らす。
ケフカがゆっくり瞼を開く。
「セリス・・・。」
ケフカは、微笑んだ。いつもの厭な笑みではなく、綺麗な笑みだった。
「有り難う、セリス。」
ケフカはしっかりそう言った。
「ケフカ・・・。」
「助けてくれて、有り難う。」
ケフカはそう言った。
「ケフカ!今、回復を!!」
セリスが、呪文を唱えようとした手を、ケフカが止める。
「良いんだ。これで・・・。これで良かった。少なくとも・・・今の私は、元の私で居られる。それも残り少ないが。回復されたら、また、狂ってしまうかもしれないだろう?」
ケフカは、笑んで見せた。
「ケフカ・・・。」
誰も何も言えずに、二人から少し離れる。
「セリス・・・。誰か、お前を愛してくれる男はいるか?」
「ケフカ!こんな時に何を!!」
ケフカの顔は、真面目だった。
「こんな時だからだよ。」
ケフカの息は、荒くなってきている。
「セリス、愛してくれている男はいるのか?」
セリスは、曖昧に頷いた。
「では、お前が愛している男は?」
セリスは、また曖昧に頷く。
「迷っているなら・・・必ずお前が幸せになれる方を選べばいい。」
ケフカはそう言うと目をつぶった。
「セリス、愛していたよ。今も昔もちゃんと・・・。」
「ケフカ・・・。」
セリスの両眼から涙が海のように流れる。
「だから、セリスの幸せを一番に願っている。」
ケフカは、そう言うと再び目を開けた。
「すまない、セリス。ちゃんと愛してやれなくて。狂った私が、最後に出来たことと言えば・・・アレくらいか?」
「アレって何?」
「セリスの・・・防衛本能が働いたら、自動的に張れるシールド。セリスの能力に追加しておいた。なかなか使えただろう?」
ケフカは、苦しいはずなのに、饒舌で、しかも笑ってみせる。
「アレは・・・そういうものだったの?。私・・・無条件で張られるものだと思ってた・・・。」
セリスは呆然として言う。
「まさか。セリスが納得してそうなるなら、私は何も言えない。」
ケフカはそう言うと再び目をつぶる。
「さて・・・時間だ。」
ケフカはそう呟き、目を閉じたままセリスの顔を引き寄せ、セリスの唇に優しくキスをした。
その瞬間、ケフカはチリとなって、永遠に消えた。



「ケフカ・・・。」
セリスは、座ったまま呆然としていた。
「エドガー!!!塔が崩れ落ちる!!」
ロックの声に私はハッとした。
「セリス!!行くぞ!!!」
セリスは、私の声に反応しない。
「みんな、先に行ってくれ!!」
私は皆に向かってそう言った。
ティナは頷くと、皆の先頭に立ちもと来た道を進んだ。
残ったのは、私と・・・それからロックも居た。
私は、セリスに駆け寄る。ロックもそれに続いた。
「セリス!!ほら、立って!!」
私は無理矢理セリスを立ち上がらせる。セリスは人形のように明後日の方向を見ていた。
「危ない!!」
ロックがそう叫んでセリスと私の真上に降ってきた瓦礫を武器ではね飛ばす。
「ロック。」
「悪いな、エドガー。一応レイチェルとセリスを守る約束しちゃったから。」
「いや、有り難う。」
私はそれだけ言った。そんなことに構っている暇はない。
「セリス!!」
私はセリスを揺さぶる。
「セリス!!!」
「ケフカが・・・死んじゃった。」
涙も流せない虚ろな目でセリスはそう呟いた。
「いい加減にしろ!!」
ロックがいきなりセリスの頬を強く叩く。
「ロック??何を・・・。」
ロックは私に構わず続ける。
「お前のケフカは死んだんだ!!そのケフカがお前に幸せになれって言った!!お前は生きなきゃいけないんだ!!帰って、エドガーと結婚するんだよ!!」
「ロック・・・。」
初めてセリスが反応する。
「あ・・・私・・・。帰らなきゃ。」
セリスはそう言うと自分の足で立った。
「ゴメンね、エドガー、ロック。行きましょう。」
セリスは、もと来た道に向かって走った。ロックもそれを追う。
私は二人をしばらく見つめて・・・それから自分も二人を追った。

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