DESIRE 12



「私、やっぱりティナは必要だと思う。」
セリスは、強くそう言った。
「今まで、ずっと一緒に戦ってきた仲間じゃない。ティナが居ないと、意味がない。それに・・・、ティナにとっても大切な戦いよ。
ケフカを倒せば、この世界の魔導はきっと全て消えてしまう・・・。そしたら、ティナは・・・。」
セリスは、顔を歪める。
「まだ、ティナの存在が消えると決まったわけじゃない。半分は人間なんだから。」
私は、そう言った。
「よし、すぐにティナを迎えに行くか。」
セッツァーはそう言うと、モブリスの村に進行方向を向けた。
「ティナと合流したら・・・とうとうがれきの塔に行くのね。」
セリスが、震える声で言った。
私は、何も言えなかった。
きっと、セリスは己の手でケフカの命を絶つつもりだろう。
誰にも手を出させずに。
それを見届けてやらなければならないかと思うと、心苦しい。
「エドガー、ティナと合流できたら、おじいちゃんのお墓に行きたいんだけど、いいかしら?」
不意に、セリスに問われる。
「あ・・・ああ、そうだな。」
「ほら、これのことも報告したいしね。」
セリスが、私が渡した指輪を向ける。
私は曖昧に頷いておいた。
「どうしたの?」
「いや、少し・・・考え事をね。」
私が答えると、セリスは「そう。」と言ったきり、何も言わなかった。
「エドガー、ちょっといいか?」
かなり離れたところから、ロックに呼びかけられる。
「ああ、何か用か?」
あれ以来、ロックと話すのは初めてだ。いや、ロックを視界に入れるのも初めてだな。
「二人で話したい。ちょっと来てくれ。」
ロックはそう言って手招きする。
私は黙って、ロックについていった。
「エドガー・・・。」
後ろから、セリスの心配そうな声が聞こえた。
「大丈夫だよ。」
私はそれだけ言った。


「話って何だ?」
「・・・わかってると思うけど・・・セリスのことだよ。」
ロックは、そう言って苦笑した。
「ゴメンな、エドガー。オレ、ガキだからさ。つい頭に血が上っちゃって。お前のこと・・・殴ったりして。セリスがオレから離れれるのも無理ないよな。」
予想外のロックの言葉に、私は言葉を失ってしまう。
「オレさ、レイチェルとの約束守りたい。けど、セリスがお前を選ぶならさ、せめて、セリスが幸せになるように祈ってやる。それで・・・レイチェルとの約束果たしたことになるかな?」
ロックが、久しぶりに晴れ晴れとした笑顔を見せる。
私は少し心が痛んだ。
「ロックは、本当にレイチェルを愛していたんだな。」
知らず、そんな言葉が口から漏れる。
「愛なんて言葉使うなよ。照れるだろ?」
ロックはそう言うと私の背中を叩く。
「でも、そうだろう?」
ロックは、少し黙ったが、やがて頷いた。
「だからさ、エドガーにセリスを幸せにしてやって欲しいんだ。エドガーなら、オレなんかよりもセリスを大切にしてくれるだろうし。
あ、もちろんセリスが何か嫌な思いして、泣くようなことがあったら、エドガーからセリスを奪っちゃうからな。」
ロックは、そう言うと照れ笑いした。
「じゃ、約束だからな!!」
そう言うと、ロックは私に背を向けた。
「有り難う、ロック。」
私の言葉が聞こえたのか、ロックの背中が照れているように見えた。



私は、モブリスの村には降りなかった。
ティナのことは皆に任せ、セリスと一緒にシドの墓に参りに行った。
セリスは、買ってきた花を墓に供える。
「おじいちゃん、見て。」
セリスはそう言って指輪を墓に向ける。
「何かわかるでしょ?婚約指輪だって。エドガーに貰ったの。私、エドガーと結婚するのよ。おじいちゃんが・・・生きてたらもっと嬉しかったのにね。」
セリスは、そう言うと目をつぶった。
「大丈夫。おじいちゃん笑ってくれてる。」
独り言のようにセリスは呟いた。
私は、そんなセリスを少し離れて見ていた。
セリスは、本当にそれで納得しているのだろうか?
納得していないのなら”おじいちゃん”に報告しに来ないか・・・。
私の目に映るセリスは、どう見ても嫌がっているようには見えないし。
「エドガー、空見て。飛空挺が来たわ。行きましょう。」
セリスは、私の手を引くと、あらかじめ決めておいた、飛空挺着陸地点に向かった。
飛空挺が着陸すると、中からティナが出てきた。
「ティナ!!」
セリスは駆け寄る。同時にティナもセリスに駆け寄った。
「セリス、それからエドガー、私もケフカを倒しに行く!子供達を守るために行くの。もう一度帰るって約束したから。連れていってくれるでしょ?」
「当たり前じゃない。」
セリスが言った。ティナは嬉しそうに笑う。
「ティナ、変わったな。」
私は、心底そう思った。
「うん。」
ティナは、頷いた。
「さぁ、行きましょう。ケフカの所に・・・。」
ティナが飛空挺に向かうと、セリスが急に青ざめた顔をしてティナを引き留めた。
「何?セリス。」
「ティナ・・・、貴女・・・ケフカを倒すってコトが、どういうことかわかってる?」
セリスは、深刻な表情で言った。
「何?急に。」
「貴女が、やけに嬉しそうだから、不安なの。」
「セリス・・・。」
ティナは、にっこり笑った。
「わかってるよ。でも、怖くないの。私、絶対帰ってくるから。」
ティナはそう言うと、今度こそ飛空挺内に入っていった。
「エドガー・・・。」
セリスが眉をひそめて私を見る。
「ティナは・・・強くなったな。」
私にはそれしか言えなかった。



私達は、それから少しの間装備を整えに行ったりして、
ケフカの待つがれきの塔へは行かなかった。
怖いわけではなく、身も心も万全にしておきたかった。
「やけに念入りね。みんな。」
ずっと私の横にいたセリスが言った。
「最後だからな。」
セリスは頷く。
「エドガー・・・。」
セリスは、私の背中に抱きつく。
「どうしたの?セリス。」
「帰って、来れるかな?」
セリスが、いつになく弱気なことを言った。
「帰って来れるよ。還って来るんだ。」
「うん。」
セリスは、弱々しく頷く。
「でも・・・もし、私が還って来れなくても・・・貴方とみんなはちゃんと帰してあげるから。」
「変なこと言うね。」
私は苦笑した。
「そうね。」
セリスの声は沈んでいる。
「間違っても・・・ケフカと心中なんて考えはやめてくれよ。」
私は、セリスの手を取るとそう言った。
「エドガー。」
「君のウェディングドレス、見たいから。」
私は、満面の笑みをセリスに見せた。
「・・・そうね。」
セリスは、そう言うと私から離れた。
「私、エドガーのために還ってくる。」
「ああ、みんなそろって帰ってこれることを願っているよ。」
私がそう言うと、セリスは優しく笑んだ。



皆、言葉を知らないかのように何も言わずに、がれきの塔を眺める。
誰一人として、動こうとしない。
やがて、耐えかねたようにマッシュが声を上げる。
「あああああ!!!もう!!こんなとこで立ち止まってたって仕方ないだろ?ケフカはこの中で待ってる。早く行こう!!」
セッツァーがにっと笑う。
「マッシュの言うとおりだな。みんな、準備は出来てるだろう?行くぜ!!」
そう言うと、セッツァーとマッシュはほとんど同時にがれきの塔に飛び降りた。
ティナ、ロック、ガウ、カイエン、シャドウ、リルム、ストラゴスと、後に続く。
最後に私とセリスだけが残った。
「エドガー・・・。」
セリスが不安そうな目をしている。
「セリス・・・。帰ってきたら、君に言わなきゃいけないことがある。だから、帰ってこよう。」
私はそう言うとセリスと一緒に飛び降りた。
色々な想いを胸に秘めて・・・・。

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