Swingroove Review

June


Benny Green "These Are Soulful Days"

 日本盤先行発売となっていたベニー・グリーンの新作が輸入盤で到着。
 まず業務連絡。これはアメリカ盤では廉価版扱いの様で、国内の主要な輸入盤店では1690円(税抜き)の値札が付けられてます。国内盤は2548円でボーナストラックも何も無く、くだらないライナーなど必要なしなので、欲しい方は輸入盤で買いましょう。
 さて内容ですが、ベニーのピアノに、ラッセル・マローンのギター、クリス・マクブライドのベースというドラム・レスのピアノ・トリオということで、いい言い方をすれば室内楽的な品の良いジャズ、T的に言えば、演奏に抑揚の無い退屈なジャズ、ということになります。名手、クリス・マクブライドをもってしても、ベースだけでスウィングさせるのは大変。ラッセルのギターもウェス直系の端正なもので、サウンドのアクセントの欠片にもなりません。ベニーのピアノもまぁお行儀の良いこと。個人的には、ベニーはジャズ・メッセンジャーズで暴れまくっていた頃が一番好きで、レイ・ブラウン・トリオで去勢され、オスカー・ピーターソンの正式後継者などと言われ出してからはまったく面白く無くなりました。ここでの演奏も、オスカー・ピーターソンばりのもので「あぁ、やっぱり…」のプレイに終始しています。
 ヤ○ザなドスの効いたジャズが好きなTには、このサウンドは品が良すぎるんでしょうか?
 ブルーノートの60周年記念盤らしいんですが、もっと他の祝いかたは無いんでしょうか。ブルーノートの行く末が気がかりです。

★★

Steve Grossman with Michel Petrucciani Quartet

 上のベニー・グリーン盤と打って変わって「ヤ行」なサックス奏者、スティーヴ・グロスマンの待望の新作が到着しました。数年前に今回と同じフランスのドレイフェス・レーベルからリリースしたっきりで、音沙汰が無かったので、もしや又「アル中」再発か?と気を揉んでいましたが、去年から今年にかけてパリで収録された本物の新作がリリースされました。
 70年代初期のマイルス・グループ出身で、エルヴィン・ジョーンズのライヴ盤では、ディヴ・リーヴマンとの2サックスで鬼気迫るブロウを聴かせてくれたグロスマン。70年代半ばのドン・アライアスとジーン・パーラのグループ、ストーンアライアンス以降は、フランスのアウルに1枚残した以外、基本的には、アル中その他でへたっていたようですが、80年代中期から、イタリアのレッドに吹きこみを残すようになりだしてから、コルトレーン・スタイルから、ロリンズ・スタイルにチェンジし、コンスタントに吹きこみを残すようになりました。
 この新作においても80年代以降のグロスマンのスタイルを踏襲したものですが、フレージングの鋭さや力強さは、コルトレーン派でならしていた頃を彷彿とさせてくれます。ミディアム〜バラード中心のアルバム構成ですが、決して退屈しません。
 この作品の大きなポイントは、99年早々に死去したミシェル・ペトルチアーニとの共演でしょう。力強さとリリカルさを合わせもった天才的なピアノはいつもの通りですが、元コルトレーン派のグロスマンとの共演ということで、所々、マッコイ・タイナー調になっているのには、びっくりです。アンディ・マッキーのベースも、ジョー・ファンスワース(エリ・アレとの共演で有名)のドラムも2人の雰囲気を壊さないようなステディーなプレイに終始してます。
 またアルバムラストの「イン・ア・センチメンタル・ムード」は、ミシェルとグロスマンのデュオなんですが、とにかく素晴らしい。お互いにインスパイアしながら盛り上がって行くその演奏を聴くと、この共演が一期一会になってしまったことが残念でなりません。
 久しぶりに骨のある本物のいいジャズを堪能しました。超推薦盤。

★★★★★

Ricky Peterson "Souveuir"

 元プリンスのブレーンで、ディヴィット・サンボーン・バンドの番頭さん?でもある、ミネアポリスのキーボード奏者、リッキー・ピーターソンの久々のリーダー作が登場しました。ウィンダム・ヒル・ジャズ移籍第一弾になるそうですが、このウィンダム・ヒル・ジャズの勢いは凄いですね。トム・スコット、スパイロ・ジャイラ、リッピントンズ、マイケル・フランクス、それに夏にはアール・クルーもここから新作リリース予定ということで、一時のGRPを彷彿させる凄さです。
 リッキーの新作ですが、最近のサンボーン・バンドでのプレイでも分かる通り、オルガンがプレイのメインになっています。ブルージーな曲あり、R&Bスタイルのファンキーなサウンドあり、メロウなAORスタイル有りと中々バラエティー豊かなアルバムとなっています。ゲストも、現在のボス、ディヴィット・サンボーン(リッキーとのデュオでバラードです)を筆頭に、ロベン・フォード、ハイラム・ブロック、レイラ・ハサウェイ、ポール・ジャクソンJr.ドン・アライアスなど、豪華です。キーボード・プレイだけでなく、リッキーのもう一つの魅力である甘いAORなヴォーカルも健在で、レイラとのデュエットによるシーナ・イーストンのカヴァー「オール・アイ・アスク・オヴ・ユー」はAOR度満点です。また、トッド・ラングレンのカヴァー「キャン・ウィー・スティル・ビー・フレンド」も中々です。
 ただ、その他のインストナンバーに曲のインパクトが足りないのは少々残念なところです。でも平均点は軽くクリアしているフュージョンの佳作です。
 ちなみにタイトル・ナンバーの「スーベニール」は、元TOTOのベーシスト、ディヴ・ハンゲイトのソロ・アルバムに入っていたナンバーのカヴァーで、ハンゲイト盤ではランディ・グッドラムが歌っていたものです。

★★★

Robben Ford "Su p ern a tu ral" 

 今や、フュージョンのギタリストというよりも、亡きスティーヴィー・レイ・ヴォーンと比較されるほどとなったホワイト・ブルース・ギタリスト、ロベン・フォードの新作です。
 グラミー賞にもノミネートされた彼のグループである、ブルー・ラインの活動は休止しているようで、この新作もロベン・フォード個人の名義になっていますが、サウンド的にはブルーラインとさほど変わりはありません。ただ、ギター、ドラム、ベースのトリオ編成のブルーラインに対して、今回のソロ名義での新作では、オルガンやストリングスセクションを起用したりするなど、サウンドに厚みとバラエティーさをもたらしています。参加ミュージシャンは、イエロージャケッツ時代からの盟友、ラッセル・フェランテ(key)をはじめリッキー・ピーターソン(key)ジミー・アール(b)ヴィニー・カリウタ(ds)それにマイケル・マクドナルド(key,Back‐Vo)などです。
 前作は全編インストとなっていましたが、今作では全編ヴォーカルで、ブルージーなサウンドにロベンのAORチックな甘いヴォーカルが入るブルーライン以降のおなじみのものです。またギターも当然ながら冴えまくっており、エッジの効いた鋭さと絶妙な歌心は今やワン&オンリーなものです。
 都会的なAORテイストなアーバン・ブルース作としてお勧めの1枚です。もし、ロベンのCDを持っていなくって、まずギターを聴きたいという方は、前作「タイガー・ウォーク」からどうぞ。
 86年あたりの時期に、マイルス・ディヴィスのグループに参加していましたが、マイルスが何故、ロベンを?と当時は首をかしげる人も多かった様ですが、マイルスはきっと、ロベンに本物のブルースとマイルスをもインスパイアするインテリジェンスを感じ彼を雇ったに違い有りません。

★★★★

Rodney Jones "The Undiscovere Few"

 ジミー・マクグリフを始めオルガン奏者のバックなどでよく見かけた中堅ギタリスト、ロドニー・ジョーンズのメジャーデビュー作。オランダのタイムレスやドイツのマイナーミュージックでのリーダー作はフュージョン調の退屈な作品だったが、メジャーのブルーノートからの第一弾は、ラテン風味のアコースティックなジャズ作となりました。
 ロドニーのギターは、T的には、ケニー・バレル+グラント・グリーン÷2といった感じに聞こえました。ケニー・バレルのジャズ・ギター・バンドにも参加していただけに、ジャズギタリストとしての実力は十分です。全体のサウンドは60年代後半のブルーノートを思わせるもので、ホーンセクションを生かしたラテン調のナンバーは中々のものです。
 ゲストも、話題のレジーナ・カーター(violin)をはじめ、グレッグ・オズビー、ジャボン・ジャクソン、ドナルド・ハリソン(sax)ティム・ヘイガンス(tp)、ケニー・ギャレット・グループで売りだし中のシェドリック・ミッチェル(p)、ロニー・プラキシコ(b)など、メジャー・レーベルに相応しい豪華なものです。
 アルバム全体の雰囲気は60年代後半のブルーノートのみたいと書きましたが、もう少しその時代の良い意味での猥雑さや胡散臭さが出ればもっと面白い作品になったのに…と思います。ロドニー・ジョーンスの生真面目さがでてますねぇ。そうそう、あのジョージ・ベンソンもえらく誉めてます。

★★★


これはインナースリーブの写真で、ジャケ写では有りません。

UZEB "Best Of UZEB"

 Tは関西在住のため、輸入CD店でほとんど見ることはなかったのですが、渋谷や六本木の有名輸入盤店では、かなりフィーチャーされていたフランスのフュージョン・グループUZEB。このグループのベスト盤が到着しました。
 一般的には、ソロ・アルバムもリリースしているベーシスト、アラン・キャロンが在籍しているグループとして良く知られているんではないでしょうか?。今まで、このグループの演奏は、キャロンがらみで何曲かは聴いたことはあったのですが、CDをきちんと買ってきくのは初めてでしたが、聴いて見ると…。
 フランスのウェザーリポートなるキャッチ・フレーズが良く使われますが、実際はちょっと硬派なカシオペアと言った感じ。まぁ、1982年から89年までの演奏ということで、古さを感じさせるのは当然としても、曲の展開やシンセの音使いのセンスもいまいち。まぁ、所々、かっこいい所もありますが、アラン・キャロンのジャコばりのフレットレス・ベースや、ファンキーなスラップ以外にはほとんど、耳を奪われませんでした。
 これを見て、アラン・キャロンのベースが聞いてみたくなった人は、このベスト盤よりも、2年前の作品ですが、キャロンのソロ作「プレイ」を聴きましょう。これはかなりかっこいいです。コルトレーンの「インプレッションズ」のファンク・バージョンはかなりキテます。
 ということで、レアもののフュージョン・マニア以外は通過しても問題ないCDです。

★★★

Hank Crawford & Jimmy McGriff "Crunch Time"

 大分前に輸入盤で発売されていたもので、Tも随分前に入手していた作品ですが、日本盤が今月リリースということで、一応ここでもレビューしておきます。
 ハンク・クロフォードのサックスに、マクグリフのオルガン、バーナード・パーディーのタイコ、メルヴィン・スパークス&コーネル・デュプリーのギター、という面子だけ見ても出てくる音が想像出来そうですが、そのとおりの音です?。コテコテです。そんな中で聴き所はやっぱり、マービン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」のカヴァーでしょう。ハンク・クロフォードは今までにいろいろなR&Bのカヴァーをやっており、もはや、彼のアルバムの中でのカヴァーは恒例といった感じですが、今回もええ感じのよたり具合でサックスをブロウさせてます。この「ホワッツ〜」は結構、レイド・バックしたテンポなんですが、伝説のR&Bドラマー、パーディーのドラムスのおかげで、レイジーなダルさは感じません。
 また、オルガンのマクグリフですが、ジミー・スミスやジャック・マクダフあたりと比較すると、ややコテコテ度が低くハイカラなプレーヤーなので、ハンクのサックスを包み込む役割としては適任でしょう。
 アルバム全体は、ミディアムのブルース中心で、やや平板な印象ですが、収録時間は53分。ちっとしたコテコテ世界へのタイム・トリップとしては丁度良い感じでしょう。「好きな人は好き」「嫌いな人は大嫌い」なタイプのジャズでしょうが、Tは大好きです。通天閣の下で聞きたいジャズ。串かつと一緒にど〜ぞ。

★★★


銀紙チックな光沢仕様の為、スキャンが上手く出来ませんでした。すみません。

Smappies U

 また出ました。NYのトップ・ミュージシャンによるスマップのカヴァー集、というよりも、スマップ・バージョンのオリジナル・オケを使ったオールスター・フュージョン・セッションの方が、この作品の性格を良く表わしているのではないでしょうか。
 前作Tから、正直にいえば、色眼鏡でみているんですが、何故か車のCDでよく聴くCDになっていることも事実なんです。ここでブレッカーにソロをとらせて、リズムはガッド、いやこれはオマーか?、ベースはう〜ん、ウィル・リーかな?なんていう、素人のフュージョン・マニアが考えるようなことを、現実にやってしまった所は、やっぱり、凄いです。妙なひねりが無いのも好感が持てます。70年代後半から80年代初期にかけて、多くのフュージョンの名盤を制作したキング・レコードのレーベル、エレクトリック・バードの作品を彷彿とさせます。多分、エレクトリック・バードが、制作活動を続けていればこんな作品をつくったことでしょう。久々に、クレジットを見ながら、にやにやしつつ高品質なフュージョンを堪能させてもらいました。
 今回も選曲が、アルバム収録曲中心で、シングル・ヒット曲が無いので、実際スマップをほとんど意識させることはありません。聴き所は多く、書ききれませんが、ウィル・リー=オマー・ハキムのリズムが超かっこいいのは当然ですが、「素顔のままで」を彷彿とさせるようなフィル・ウッズのスウィートなソロや、トニーニョ・オルタの参加したラストのボサ・フュージョン・ナンバーなどなど、収録されてるそれぞれの曲には、必ずいくつかの聴き所があるはずですよ。
 硬派なファンは、スマップというだけで通過したくなる気持ちは分かりますが、フュージョン・ファンは通過すると後で後悔するでしょう。とりあえず買ってCDジャケットを変えて、スマッピーズに代えて「NYオールスターズ」とか書いて聴くといいかもしれませんよ。とにかくフュージョン・ファンは今作もやっぱり必聴です。

★★★★

村田陽一 "Hook Up"

 SJ誌あたりで、人気投票やれば、ここ20年くらいずっと、トロンボーンは、日本人では、谷啓!か向井滋春あたりしか名前が出てきませんが、最近ソリッド・ブラスで人気急上昇のボントロ奏者、村田陽一の初のソロ作が到着しました。
 ソリッド・ブラスでは2枚のアルバムをリリースしていますが、ソロとしては初めての作品でかなり力のこもったアルバムに仕上がっています。ソリッド・ブラスでは、基本的にはリズムが無しなので、逆に、このソロ作では、かなり、リズムにこだわった感じがします。NY、アトランタ、LA(というかサンフランシスコ)という3ヶ所で収録されており、NYでは、リッキー・ピーターソンやプージー・ベル、アンソニー・ジャクソン、それに御大サンボーンなどが、LAでは、ロッコ・プレスティア、ディヴィッド・ガリバルディ、チェスター・トンプソンというタワー・オブ・パワー全盛期のリズム隊がリユニオン!、またアトランタではJB’sボントロ奏者のフレッド・ウェーズリーが仕切り、リズムにウィル・リー参加、とまぁ、上のスマッピーズに勝るとも劣らない凄いメンバーがサポートしています。
 とにかく「グルーヴ」の嵐。それぞれのご当地リズムセクションの効果が100%発揮されています。アレンジャーとしても大活躍中の村田らしく、自分のトロンボーンを無理やり全面に押し出すことはせず、ボブ・ミンツァーやサンボーン、フレッド・ウィーズリー、グレッグ・アダムスなどのホーン奏者を 上手く活かし、そのアレンジの中で、自分のソロが活きるようにサウンド・メイクされています。そのアレンジもまたすべては「グルーヴ」の為なんです。
 まぁ、今のサンボーン・バンドがベースのリズムや、全盛期のTOPのリズムなどをバックに、プレイ出来れば、そりゃ誰でも楽しいでしょうね。その楽しさが聴く者にも120%伝わる好盤です。とにかくかっこいいですよ!。お勧め盤。
 ディヴィッド・サンボーンのビデオ「ザ・スーパーセッション」のテーマが超かっこいい!。

★★★★

黄色のCDがBest Buy!です。

は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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