Swingroove Review

October 2000



Title/Musicians/Revel

 "Hunters and Gathers" Jukkis Uotila" (Double-Time)

Who?

 フィンランド人ドラマー。80年代には、NYでマイク・スターンやボブ・バーグ、ランディ・ブレッカーなどを起用したコンテンポラリー作もリリースしていた。

With?

 Dave Liebman(ss,ts) Jarmo Savolainen(p) Anders Jormin(b)

Reflection?

 彼のコンテンポラリーものの作品は、確か2枚ほど(1枚はライヴ盤で、マイク・スターン、ボブ・バーグが参加したかなりカッコ良い作品。)持っているが、アコースティックなジャズ作は、これが初めて。しかも参加ミュージシャンも、リーヴマン以外は、名前からして北欧系の知らない人ばかり。またリーヴマン参加が決め手で、購入したものの、リーヴマンの芸風のひとつである前衛的なジャズだったら…と期待半分・不安半分で聴いてみましたが…。これが結構良かったです。曲は、全曲リーヴマンを含む、メンバーのオリジナルですが思ったほど難解な感じではありません。アメリカのジャズには無い「チリチリ」とした空気というか緊張感を感じさせる演奏は熱いのですが、その中で一筋のクールさを感じさせるものです。サウンドのイメージでいうと、リーヴマン=リッチー・バイラークのユニット「クエスト」との類似性を感じました。特に、ピアノのジャーモ・サヴォライネンの演奏が素晴らしくジャズらしい力強さとリリシズムが同居した感じ、繊細かつ大胆、これは良いピアニストです。またリーヴマンもソプラノ中心で、いつもながら、手を抜くことを知らない熱くアグレッシヴなもの。そうそう、主人公のジュキスのタイコですが、凝った感じのリズムの曲をそつなくこなし、特に、リーヴマンを上手くインスパイアするようにあおりながらのプレイはカッコ良いですが、個性は?と言われると、そんなに…という感じです。アップテンポの曲では、パワフルでカッコ良いのですが、リーヴマンが好きそうなややアブストラクトなスロウ・ナンバーでの繊細さを要求される部分での、表現力にはやや難ありの印象も…。全体的には、結構カッコ良いアコースティック・ジャズに仕上がってると思います。特にリーヴマンは吹きまくりの印象ですので、ファンは必聴の1枚でしょう。ただ録音はやや古く、97年5月。録音は、フィンランド・ヘルシンキとなっています。

etc…

 サックスのリーヴマンですが、この人は、自分のリーダー作よりも、他人のリーダー作に客演 した時の方が良いパフォーマンスというか、分かりやすい演奏をしてくれるみたいです。彼のサックスは好きだけど、彼のコンセプチュアルな音はちょっと…という人にもお勧めできる作品だと思います。
10.10 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Possibilities" Jon Gordon (Double-Time)

Who?

 若手白人アルト奏者。ダブル・タイムやクリス・クロスなどにもリーダー作を残している。

With?

 ジョン・スコフィールド(g)ケヴィン・ヘイズ(p)ピーター・ワシントン(b)ビル・スチュワート(ds)

Reflection?

 10年ほど前に、ジャズ・シーンに登場した頃の演奏は、まぁ普通のアルト吹きという感じでしたが、久々に、この作品でジョン・ゴードンという人のアルトを聴いてビックリ!。こんなにアグレッシヴだったかな?という感じです。ビル・スチュワートとジョン・スコにあおられてブロウするジョン・ゴードンのアルトは、「明るいグレッグ・オズビー」(よう分からん表現か?!)。1曲目のジョン・スコ・オリジナルのオーネットみたいなハーモニーを持ったアップテンポの曲から爆発してます。2曲目のスタンダード・バラッド「アイ・シュッド・ケア」での表現力もなかなか。7曲目には、コルトレーンの「モーメンツ・ノーティス」も登場。ビル・スチュワートのプッシュに応えるかのようにハードなブロウを聴かせてくれます。8曲目には、モンクの「ミステリオーソ」も。なかなか聴き応えのあるアコースティック・コンテンポラリー・ジャズです。アコースティック・ジャズになると、急に往年のキレを取り戻すジョン・スコのギターや、ジャズの伝統を未来に昇華させたような独創的なスチュワートのドラムが聴き所です。全曲参加してませんが、モンクの曲などでのケヴィン・ヘイズのピアノもなかなかです。

etc…

 いや〜ジョン・ゴードンってこんなにカッコ良いアルト吹きだったのでしょうか。結構見直してしまいました。この素晴らしいブロウの裏には、イマジネイティヴなリズムを提供したビル・スチュワートの力に負う所が多いと見ました。ジョン・ゴードンというアルト奏者の名前は、絶対に覚えておいたほうがいいでしょう。
 10.10 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Weather Report〜Jaco Pastorius Paris Live 1980 Vol.1" (Gemini Musikproduktions)

Who?

 エレクトリック・ベースの可能性を無限大に広げた天才ミュージシャン。1851年産まれ。1987年9月21日没。

With?

 ジョー・ザヴィヌル(key) ウェイン・ショーター(sax) ジャコ・パストリアス(b) ピーター・アースキン(ds) ボビー・トーマス(perc)

Reflection?

特別にジャケットをアップしました!。(CDナンバー GMCD-20001)

 半月ほど前、ワルツ堂EST店のM氏から「出るらしい…」という情報を聞いて以来、楽しみにしていたジャコ〜ウェザーの1980年の未発表ライブが、リリースされました。ちなみに価格は 、大阪梅田のワルツ堂EST店で税抜き1870円、10月11日現在まだ在庫はありました。レーベルは、ドイツの「ジェミニ・ミュージック・プロダクツ」。レーベルやチープなジャケットからは、どう見てもブート・レグそのものなんですが、ブートを扱わない方針のタワーレコードでも扱っていることから、ブートでは無いようなのですが、権利関係は、「グレーゾーン」だとにらみました。多分、権利関係の厳しいアメリカでは、発売不可能でしょう。収録は、1980年春パリとだけ記されてます。収録曲は、78年の「Mrゴーン」と80年の「ナイト・パッセージ」からが中心。1曲目「リバー ピープル」(Mrゴーン)2曲目「ファスト・シティ」(ナイト・パッセージ) 3曲目「スリー・ヴューズ・オヴ・ア・シークレット」(ナイト・パッセージ)4曲目「ポート・オブ・エントリー」(ナイト・パッセージ)5曲目「ブラック・マーケット」(ブラック・マーケット)という全5曲収録。音質ですが、劣悪ではないにせよ、決して良くはありません。コモリ気味で、音に広がりがなく、モノラルっぽい感じ。ジャコのベースは確かに、良く聞こえますが、ドラムの音がかなりオフり気味な印象。演奏ですが、名盤「8:30」あたりや、ブートでよく出まわってる75年〜76年頃と較べると、かなりまとまりを感じさせるというか、大人しい感じがします。「8:30」あたりまでは、ジャコがグループ全体のサウンドをある程度無視して、無理やり前に出てきていた印象でしたが、この作品の頃には、きちんとジョー・ザヴィヌルのサウンドの中に、パーツとしてきちっとはまっている感じです。私生活では、すでにかなりドラッグで荒始めていた頃なんですが。まぁそのあたりが、ジャコにとってストレスとなり、1981年の「ウェザー・リポート81'」を最後にグループを離れていくのでしょう。ジャコの派手なソロや破天荒な演奏を期待すると、少しがっかり…かもしれません。ジャコのというよりも、ウェザー・リポートの最も成熟した時期のライヴという側面から聴いたほうが、よりこの作品を楽しめると思います。

etc…

 音質、内容、パッケージ、どれをとってもブートの域を出るものではありません。完璧なコレクターズ・アイテムです。ジャコやウェザーのオリジナル・アルバムを全部聴いてない人が手を出す代物ではないです。ディープなファンが、貴重な記録のひとつとして、こっそりとコレクションする類のCDです。しかし、この作品「〜Vol.1」ということは、その続編もあるんでしょうか?。
 10.11 update

Points?

 コレクターズ・アイテムにつき評価不能



Title/Musicians/Revel

 "New Smiles and Traveled Miles" Kei Akagi (Groove Note)

Who?

 仙台出身のピアニスト。アイアートやスタンリー・タレンタイン、アル・ディ・メオラらとの共演を経て、89年日本人初のマイルス・ディヴィスのグループにレギュラー参加。約2年間も、マイルスとともに音楽活動を行う。現在演奏活動の傍ら、カリフォルニアのUCアーヴァイン校で、音楽教授としても活動。日本のMOOやアメリカのオーディオ・クエストなどに3枚のリーダー作を発表。

With?

 Joe LaBarbera(ds) Darek Oleszkiewicz(b)

Reflection?

 マイルスグループや、日本のMOOレーベルでのデビュー盤などで、彼のピアノは聴いていたものの、ちゃんと聴きこんだのは、実は、この作品が初めてでした。結論から先に言えば、ほんとうに素晴らしいピアニストです。この作品は、マイルスの曲と彼が好んで演奏した曲、それにマイルスにインスパイアされてコンポーズした赤城のオリジナルで構成されています。古くは、1947年の「マイルストーンズ」1955年の「マイルストーンズ」…「ステラ・バイ・スターライト」「アイ・ソート・アバウト・ユー」から60年代の「ソーサラー」「プティ・マシーンズ」、それに赤城自身もマイルスグループで演奏していた最晩年の「ミスター・パストリアス」まで。曲目を見るだけでも、興味が沸いてきませんか?。それらと、赤城のオリジナルを、基本はトリオで、一部ソロで聴かせてくれます。マイルスの曲やスタンダードなどは、もう超有名曲ばかりで、どんな曲解釈をしようとも、「あ〜誰々みたいや〜」となってしまいがちですが、赤城のバージョンは、想像力溢れる個性的で新鮮なものです。変にデフォルメしただけのユニークさではなく、曲全体の構成をすべていったん、自分の中に飲みこんだ上で、再び赤城の頭の中で、新しい曲としてリメイクして演奏しているような印象です。こうコメントすると、頭でっかちの堅苦しいピアニスト?と思われるかもしれませんが、そんなピアニストなら2年間も、あのマイルスが彼を雇い続ける訳がありません。ジャズの持つ力強さやブルースみたいなものは、きちんと持ち合せています。私は、マイルスが、赤城の演奏の中に、ビル・エヴァンスを見たのではないかと想像します。日本人の持ってる「リリシズム」や「耽美的」「女性的」みたいな軟弱なイメージのビル・エヴァンスではなく、ちょうどマイルスのバンドに参加した50年代後半の、知的でアグレッシヴなジャズを創造していた頃のビル・エヴァンスの姿を。また最晩年のエヴァンス・トリオのドラマーだった、ジョー・ラバーベラも赤城のコンセプトを理解した素晴らしいリズムを聴かせてくれています。録音は98年2月。LAのオーシャンウェイ・スタジオです。

etc…

 アルバムラストに収録されている「ミスター・パストリアス」。ピアノ・ソロで慈しむように弾く赤城の姿に、マイルスへの感謝や思いなどが集約されているようにも感じました。日本人は、ケイ赤城のような素晴らしいジャズ・ピアニストが、我が国にもいることをもっと誇りに思う必要があるでしょう。マイルスのファン、そしてすべてのジャズ・ファンに聴いていただきたいジャズ・ピアノの名盤です。
10.12 Update

Points?

★★★★★



Title/Musicians/Revel

 "Rocket Science" Tribal Tech (ESC Record)

Who?

 チック・コリア・エレクトリック・バンドのファースト作に参加して脚光を浴びたギタリスト。エレクトリック・バンドは、直に脱退し、ジョー・ザヴィヌルのザヴィヌル・シンジケートに参加。その後、ベーシスト、ゲイリー・ウィリスとユニット「トライヴァル・テック」を結成し、このバンドをベースに活躍。

With?

 スコット・ヘンダーソン(g) ゲイリー・ウィリス(b) スコット・キンゼイ(key) カーク・コヴィントン(ds)

Reflection?

 国内盤先行発売だったトライヴァル・テックの新譜ですが、輸入盤が入荷したということで、ゲットし聴いてみました。(国内盤には、ボーナス・トラックもなく、輸入盤が発売された後は、先行リリースの意味もないので、価格の安い輸入盤を買いましょう。ワルツ堂EST店では、1480円!!でした。)さて内容ですが、スムース・ジャズの流行など、どこ吹く風?みたいな感じで、トライヴァル・テックお得意のウネウネ、ギャンギャン、ゴリゴリ…なコンテンポラリー・インストゥルメンタルが展開されてます。ギターをフロントに持ってきて、エスニックな要素を少し減らした、ザヴィヌル・シンジケートのサウンドという感じでしょうか。シンセの音色が、ザヴィヌルっぽいので、そんな印象をより強くしています。スコ・ヘンも、ザヴィヌルのバンドに参加経験もあり、音楽創りにおいてかなりインスパイアされていると思います。今作の特徴としては、キーボード/シンセのスコット・キンゼイが、様々な音のキーボードやサウンド・エフェクトで、もともとはかなりストイックなサウンドに遊びの要素を加えています。またベースのウィリスの音にも、今回は、きつめのエフェクトがかけられている感じ。そんな所からか、サウンド全体に、スペーシーというかサイバーな匂いも感じられます。個人的には、そのあたりが消化不良の印象もあり、相変わらずソリッドにキレまくるスコ・ヘンのギターが浮いてしまってる印象です。サウンド全体は、相変わらずカッコ良いので、そんな小細工は必要ないと思います。

etc…

 スコット・ヘンダーソンのギターは、ほんといつ聴いても「変態」です。ジョン・スコやマイク・スターンなど…おっちゃんになるにつれて、普通になっていく中、相変わらずここまでキレているのは、立派。私生活も結構キレててやんちゃみたいですが…。ともかく、保守化したシーンの中、希少価値の高まってる「変態系?フュージョン・バンド」としていつまでもがんばって欲しいものです。私は応援します!。
 10.13 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Peace Of Mind" Espirito (Instinct Records)

Who?

 シャカタクのリーダー/ピアニスト、ビル・シャープとギタリスト、フレデリック・カールソンとのユニット。

With?

 アンディ・パスコム(b) スネイク・ディヴィス(sax) リンダ・テイラー(vo)

Reflection?

 「エスピリトゥ」という名前だけでは、通過してしまいそうでしたが、ユニットの方割れが、シャカタクのビル・シャープとくれば、やはりチェックしない訳にはいきません。なんだかんだいっても、「ナイト・バーズ」に熱狂した世代なもんで…。内容ですが、ビル・シャープとフレデリック・カールソンのユニットとは言え、聴いた感じ、かなりギター中心にフィーチャーされているようで、シャープのファンには少々がったり…でした。カールソンのギターも、スムース系に良くありがちな感じで、あっピーター・ホワイトみたい!、あっノーマン・ブラウンみたい!と突っ込みたくなります。曲ですが、こちらも全曲、シャープとカールソンのオリジナルで、ミディアムテンポ中心のメロウ&スムースなものながら、どっかで聴いたような…という印象。コーラスの入りの曲は、シャカタクの近作みたいな感じもしました。7曲目に入ってる唯一のビル・シャープのアコースティック・ピアノをフィーチャーしたミディアム・アップで「クリスタル」(苦笑…)なシャカタクっぽいナンバーに懐かしさを感じてしまいました。

etc…

 もっとビル・シャープのピアノが聴きたかったです。BGM的なスムース・ジャズが好きな人にはお勧めできますが、「B級フュージョン」の域を脱するものではありません。この手のサウンドはもう…かもしれません。
 10.13 Update

Points?

★★☆



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