Swingroove Review

October 2000


Title/Musicians/Revel

 "Never Too Late" Michael O'neill (Merrimack Records)

Who?

 LAのセッション・ギタリスト。ジョージ・ベンソン・バンドのリズム・ギター奏者としても知られる。ヴォーカルも上手い。

With?

 グレッグ・クールキス、ディヴ・ウィザム、トム・ホール、ボビー・ライル、フレディ・ラヴェル(key)キース・ジョーンズ、ジミー・アール、アルフォンソ・ジョンソン、ラリー・キンペル(b)ランド・リチャーズ(ds)ウォルト・ファウラー(tp)ケヴィン・リカード(perc)…

Reflection?

 気持ち良いスムース・ジャズ。バンドのボスのベンソン・タイプのギタリストながら、ベンソン的な「ねっとり感」は無く、もっとドライ、ノーマン・ブラウンみたいな感じか。打ちこみと生楽器を上手くミックスさせて、いい意味でのフュージョン・テイストを出している。ベンソンの影響かヴォーカルも上手い。70年代〜80年代初期のレイド・バックしたLAフュージョンの良さのようなテイストを上手く今にフィードバックした作品。

etc…

 オッサン自身の趣味の悪い肖像画みたいなジャケは最悪だが、LAフュージョン・ファンは買い!の1枚。
10.1 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Cool" George Duke  (Warner Bros.)

Who?

 ブラコン〜フュージョン界の帝王的なキーボード奏者。80年代の「シャイン・オン」のディスコ・ヒットが有名。キャノンボール・アダレイ〜フランク・ザッパ…まで活動範囲は広く、そのセンスの良さはほんと素晴らしい。ルックスはアメリカのつのだ☆ひろ!。

With?

 ポール・ジャクソンJR、トニー・メイデン、レイ・フラー、ジェフ・リー・ジョンソン(g)バイロン・ミラー(b)レオン・ンデゥーグ・チャンクラー(ds)レニー・カストロ(perc)エヴァレット・ハープ(sax)ジェリー・ヘイ(tp)フィリップ・ベイリー、ハワード・ヒュイット、リン・ディヴィス、カール・カーウェル、ジョジー・ジェイムス、フローラ・プリム(vo&back-vo)…

Reflection?

 事前の情報では、インスト作ということだったが、蓋を開けるといつものブラコン作だった。流行りのニューソウル的な暗さを意識したような作品ながら、中途半端感は否めない。「ブラジリアン・ラヴ・アフェアー」の2000年バージョンみたいな雰囲気のフローラ・プリム フィーチャーの4曲目以外は、正直ピンとこない曲ばかり。得意とする、メタリックなブラコン作か、バリバリ・ファンキーなR&Bフュージョンに徹した方が良いみたい。ただサウンド・メイクは、さすがと言う感じですが…

etc…

 今のR&Bファンには意外とウケるかも…。個人的には、1枚全部通しで聴くのは辛かった。車のCDでの夜のドライブには良いかも。
10.1 Update

Points?

★★☆



Title/Musicians/Revel

 "BobBaBaldwin.com" Bob Baldwin (City Sketches)

Who?

 NYをベースにブラコン〜フュージョンにかけて活動するキーボード奏者。アトランティック・ジャズや、シャナキーに3枚ほどリーダー作がある。

With?

 チャック・ロ−ヴ、エリック・エシックス(g)トム・ブラウン(tp)マリオン・メドゥス、ジェラルド・アルブライト(sax)ウィル・ダウニング(vo)…

Reflection?

 コロコロとしたボブのピアノが心地良い「 夜系」スムース・ジャズ。まぁオリジナル曲は同じような雰囲気のものばかりで少々飽き気味ですが、チャック・ローブのメロウなギターをフィーチャーしたジャクソン5の「ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ」と、オリジナルのtp奏者トム・ブラウンとマリオン・メドウゥスとジェラルド・アルブライトというスムース・ジャズ界の人気サックス奏者をフィーチャーした「ファンキン・フォー・ジャマイカ」がカッコイイ。

etc…

 80年代スタイルの典型的なブラコン・フュージョンながら、「少し昔な人間」な私は気に入りました。
10.1 Update

Points?

★★★



Title/Musicians/Revel

 "A Love Affair〜The Music Of Ivan Lins" Jason Miles (Telarc)

Who?

 マーカス・ミラーご用達のシンセサイザー・プログラマーとして、デヴィット・サンボーン、ルーサー・ヴァンドロス、マイルス・ディヴィスらのアルバムに参加し、名を上げたキーボード奏者。NYフュージョン路線のリーダー作を2枚発表。先頃、テラークより発売され話題となった、「ウェザー・リポート・トリビュート」のまとめ役としても知られる。

With?

 フィーチャード ヴォーカリスト:
スティング、ヴァネッサ・ウィリアムス、ニューヨーク・ヴォイセス、チャカ・カーン、リサ・フィッシャー&Dトレイン・ウィリアムス、ブレンダ・ラッセル、フレディ・コール、ダイアン・リーヴス、イヴァン・リンス 
 フィーチャード・インストゥルメンツ:
グローヴァー・ワシントンJR(sax)ピーター・ホワイト(g) 
 サポート・ミュージシャン:
ヴィニー・カリウタ(ds)ディーン・ブラウン、チャック・ローヴ(el‐g)ホメロ・ルバムボ(ac‐g)マーカス・ミラー、ウィル・リー、マーク・イーガン(b)マイケル・ブレッカー、ボブ・バーグ、ディヴ・コーズ、ジェイ・ベッケンシュタイン(sax)ジム・ピュー(tb)マーク・クイーノエス、シロ・バプティスタ(perc)

Reflection?

 マイルス・ディヴィスが、他界する直前に、イヴァン・リンスのテープを持ってきて、ジェイソン・マイルスに、「アルバム1枚、こいつの曲でやるつもり」と語ったそう。その直後に、マイルスは鬼籍に入った為、結局は実現しなかったが、その企画をジェイソン・マイルスが、温めて形にしたのが、この作品。まぁこのエピソード自体は、少々眉唾だが…作品自体は超が付くほどの素晴らしさ。ジョージ・ベンソンで有名な「ラヴ・ダンス」やパティ・オースティンの「ジ・アイランド」などで、ブラジルのシンガーソングライター、イヴァン・リンスの曲の素晴らしさは良く知られてる所ですが、その曲の魅力を上手くスムース・ジャズ仕立てにしたような作品です。ロックのスティングから、ジャズのフレディ・コール(もちろん、あのナット・キング・コールの弟 )まで幅広いヴォーカリストが参加してますが、曲の雰囲気は、それほどの幅は無く、同じ感じで統一されてます。またサポート・ミュージシャンの活躍も聴き所で、1曲目でスティングとマイケル・ブレッカー、マーカス・ミラーが共演してたり(まぁオーバーダビングでしょうが…)、5曲目のチャカ フィーチャーの曲での、ファンキーなウィル・リー=ヴィニー・カリウタのリズムなど…、「その筋」のファンにも楽しめる内容です。演奏されてるイヴァンの曲ですが、ヴァネッサをフィーチャーした名曲「ラブ・ダンス」とラストに入ってるイヴァン自身のヴォーカルによる「Somos Todos Iquais Nesta Noite(今宵楽しく)」以外は、新しめの曲が多く、95年の作品「Anjo de Min(私の天使)」から多くセレクトされてます。

etc…

 日頃ブラジル音楽に親しんでなくても、スムース・ジャズやフュージョン、AOR、ブラコンあたりを聴いてる人なら、十分に楽しめる内容です。まぁ逆に言えば、ブラジル音楽ファンから見れば、薄い内容なのかもしれませんが…。この作品が気に入れば、是非イヴァン・リンスのオリジナル作品を聴いて見て下さい。その際は、とりあえず95年の「Anjo de Min(私の天使)」あたりをお薦めします。
10.2 Update

Points?

 ★★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Soul Insider" Bill Evans (Victor)

Who?

 ディヴ・リーヴマンの愛弟子のテナー&ソプラノ奏者。彼の紹介で、81年の「復帰後」のマイルス バンドに参加。(吹き過ぎ?でよくマイルス御大に足を踏まれ注意されてた。)マイルス後は、ジョン・マクラフリンの新生マハビシュヌやマーク・イーガン=ダニー・ゴットリーヴのエレメンツなどにも参加。近年は、ヒップ・ホップにも接近した作品も発表。ディヴ・リーヴマンばりの表現力豊かなソプラノが特に魅力。

With?

 リッキー・ピーターソン(key)ディーン・ブラウン、ジョン・スコフィールド(g)ジェームス・ジーナス、ティム・レフェーバ(b)スティーヴ・ジョーダン(ds)ドン・アライアス(perc)ルー・ソロフ(tp)コンラッド・ハーヴィッグ(tb)レス・マッキャン(vo)…

Reflection?

 スティーヴ・ジョーダンのタメの効いたドラムを全編に渡ってフィーチャーしたR&B系の作品。雰囲気的にも、参加メンバー的にも、デビット・サンボーンの「アップ・フロント」あたりを髣髴させるものだが、より60年代あたりのソウル・ジャズに近いグルーヴ感溢れるサウンド。サンボーン・バンドでのパターン化したプレイから開放されたかのような、リッキー・ピーターソンのファンキーなオルガンや、ディーン・ブラウンのツボを突いたギター、上手いアコースティック・ベースの使い方、それに、さりげなく演出されたソプラノ&テナーのユニゾンなど…なかなか聴き所も多い作品です。マッキャンとスコフィールドという2人のゲストですが、マッキャンはヴォーカルのみということで、正直どうでも良い感じ。スコフィールドですが、少々「イナタイ」系のファンキーなリズムでのプレイで、80年代的な勢いはもうありませんが、「ジャム・バンド」の連中たちとやってるみたいなウネウネとキレてゆく、まぁまぁの演奏を2曲で披露。ビルのサックスも、かつての作品では、何かに抑えられてるような閉塞感を感じたが、新作では、突きぬけた印象がある。特にテナーの演奏にネイキッドな迫力が出てきた。マイケル・ブレッカーやボブ・バーグあたりともタイマン張れるような感じ。この迫力と勢いでもう少しジャズっぽい作品をやっても面白いかも…。

etc…

 なつかしの「ジャズ・シティ」レーベルに残した90年代初期のブルーノート東京での2枚のライブ盤以来、久々に楽しめたビルのリーダー作です。リーヴマンの弟子ということで、結構頭で考えるタイプのミュージシャンみたいですが、音楽とくにジャズの良し悪しは、勢いとカッコ良さで決まります。このことがビルにも分かってきたみたい。非スムーズ系のフュージョンものの新譜として、結構お勧めの1枚です。
10.2 Update

Points?

★★★★



Title/Musicians/Revel

 "Music" Wolfgang Haffner (Skip Records)

Who?

 ドイツの人気ドラマー。ミッチェル・フォアマンやチャック・ローブらとフュージョン・ユニット「メトロ」も結成。何枚かリーダー作をドイツでリリース。

With?

 ミッチェル・フォアマン(key)ジェフ・ゴルブ、フィル・アップチャーチ、チャック・ローブ(g)ブランダン・フィールズ、アンディ・スニッツァー、トニー・ラカートス、キム・ウォーターズ、チャーリー・マリアーノ(sax)ウィル・リー(b)ティル・ブレナー(tp)…

Reflection?

 ドイツ国内では、昨年リリースされていた作品。「With」でクレジットした面子とドイツのミュージシャンとの共演作で、かなりポップなフュージョン盤(スムース・ジャズとは言わず、あえてフュージョンと呼びたい。)。作曲やリズムのプログラミングなどハフナー自身が手掛け、ドラマーとしてよりもトータルなミュージシャンとしての実力をアピールしたリーダー作。全曲ポップながら、出来の良いものと陳腐なものとの差が結構激しく、ミッチェル・フォアマンのカッコ良いローズ・ソロをフィーチャーしたメロウ&グルーヴな曲があるかと思えば、昔のメゾフォルテやカシオペアみたいな安っぽいフュージョンもあったりして、アルバム全体としてのイメージはいまいちの感じ。しかし、ウィル・リーや、フィル・アップチャーチ、ブランダン・フィールズ、ミッチェル・フォアマンらの実力派が参加したトラックは、かなりカッコ良い。特にブランダンのリッピントンズ時代を思わせるメロウなブロウは久々に聴いた感じ。

etc…

 楽曲主体のスムース・ジャズでいくのか?演奏主体のフュージョンでいくのか?はっきりさせた方が、作品の輪郭がもっとはっきりしたかも…。打ちこみ主体のこの手のサウンドの中、珍しいセッション形式の作品なので、昔からフュージョンが好きだった人には、それなりに楽しめる作品でしょう。
10.2 Update

Points?

★★★



Title/Musicians/Revel

 "Metrocafe" Metro (Hip Bop UK)

Who?

 チャック・ローブ(g)ミッチェル・フォアマン(key)ウルフガング・ハフナー(ds)アンソニー・ジャクソン(b)というメンバーで94年に結成され、Lipstickよりファースト作を発表。セカンド作からは、ベースをビクター・ベイリーにチェンジ。今作で通算3枚の作品をリリース。

With?

 ミッチェル・フォアマン(key)チャック・ローブ(g)ビクター・ベイリー(b)ウルフガング・ハフナー(ds) カーメン・クエスタ(vo)デヴィット・チャールス、マニュンゴ・ジャクソン(perc)

Reflection?

 通算3枚目となるフュージョン・ユニット「メトロ」の新作。プロデュースは、ミッチェル・フォアマン&チャック・ローブということで、出てくる音もだいたい想像できそうな感じ。当初、このメトロというユニットは、コンテンポラリー・ジャズ・ユニットという感じで、ややハードめなフュージョンを指向してたが、作を追うごとにスムース・ジャズ色が強くなっている印象がある。今作も1曲目から、クラブ系っぽいリズムのループが登場するなど、スムース・ジャズのマーケットを狙ったサウンド。とは言いつつ、基本は、ベイリー=ハフナーのソリッドなリズム・セクションなので、そんなに軟弱なサウンドといった感じではないですが、初期の頃のスリリングな要素はほとんど感じされません。 ローブやフォアマンのソロ・パートは、確かにカッコ良いのですが、特別に印象的な曲やカヴァー曲が少ないので、作品全体としては、やや退屈な感じです。

etc…

 上のハフナー盤同様、スムース・ジャズなのか?ジャズ・フュージョンなのかはっきりさせて欲しい感じです。今作では、特に、メトロとしてのユニット感が気薄で、チャック・ローヴとミッチェル・フォアマンのソロ作みたいです。彼ら2人のファンは買いでしょうが、せっかくユニットなんだから、ビクター・ベイリーやウルフガング・ハフナーにも、もっと暴れて欲しい(地味に凄い所は随所にあるんだけど)。フォープレイになりたいのかなぁ…。
10.2 Update

Points?

★★★



Title/Musicians/Revel

 "Wiggy" Jerry Bergonzi (Double-Time Jazz)

Who?

 ボストン出身で、コルトレーン派のテナー奏者。意外ながら、メジャーになるきっかけは、ディヴ・ブルーベック(p)のグループへの参加。スタイル的には、コルトレーンというよりも、ジョー・ヘンダーソンに近いかも。イタリアのREDやアメリカのダブルタイムなどに多くの優れた作品を残している。

With?

 ダン・ウォール(organ) アダム・ナスバーム(ds)

Reflection?

 バーガンジのレギュラーユニットのひとつとも言える、ダン・ウォール=アダム・ナスバームを率いたトリオによる作品の3作目にあたる新作。バーガンジのウネウネとよじれたテナーのサウンドを、ダン・ウォールのダークでアブストラクトなオルガンが包み込んだようなジャズ。テナーとオルガンということで、ややモワッ〜とした重いサウンドになりがちな所を、ナスバームのドラムがピリッと引き締めてます。テナー=オルガン=ドラムというシンプルな編成とは思えない広がりというか奥行きを感じさせます。テナーとオルガンといえば、マイケル・ブレッカーの新譜も、同じフォーマット(ギター入り)ですが、マイケルがリズムにこだわったのに対し、バーガンジは、リズムよりもオルガンとのハーモニーみたいなものに集中した感じ。収録曲は、バーガンジのオリジナル中心ですが、1曲目のスタンダードナンバー「ジャスト・イン・タイム」の原曲のほのぼのとしたイメージを覆す独創的な解釈による演奏は、聴きモノです。

etc…

 あくまでもボストンにこだわるテナー奏者として10年ほど前からカルト的な人気を呼んでいたバーガンジですが、その座をジョージ・ガーゾーンに譲り、マイケル・ブレッカー、スティーヴ・グロスマン、ディヴ・リーヴマンと並ぶ白人コルトレーン派テナーのスタイリストとしての地位を確立させた印象です。特に、この新作では、シンプルな編成故に、バーガンジのテナーの凄さと素晴らしさをよりダイレクトに実感できるはずです。
10.2 Update

Points?

★★★★



Title/Musicians/Revel

 "Live At The Regattabar" Grand Slam (Telarc)

Who?

 ジム・ホール(g)とジョー・ロヴァーノ(sax)が中心となって結成されたスーパーユニット。結成当時には、ベースにロン・カーターが参加したが、現在は、ジョージ・ムラーツが参加。

With?

 ジム・ホール(g)ジョー・ロヴァーノ(sax)ジョージ・ムラーツ(b)ルイス・ナッシュ(ds)

Reflection?

 スーパーユニット「グランド・スラム」初のアルバム。マサチューセッツ州ケンブリッジのライブハウス「レガッタ・バー」でのライブ録音。プロデュースは、ジョン・スナイダー(CTIやアトランティック・ジャズなんかで活躍)。メンバー全員の名前が併記されるユニットながら、中心は、ホールとロヴァーノ、もっと言えば、ジム・ホール主宰のプロジェクトという色合いの濃いサウンド。ジム・ホールのギター創りだす耽美的というか浮遊した音空間に、ロヴァーノのサックスが、ゆらぎながら漂うそのサウンドは、派手さはないものの、聴くものの感性を徐々にゆっくりと惹き込んでゆくかのよう…。ムラーツ=ナッシュのややコンサバな雰囲気のリズムは、アブストラクトなフロント・ラインを上手に「ジャズ」の領域の外へ行かないようにガイドしているかのようです。ホールのリーダー作のタイトルにもなった6曲目の「オール・アクロス・ザ・シティ」というスロウナンバーが、特に素晴らしい。微妙で繊細な濃淡で描かれたモノトーンの水墨画を見ているような感覚にさせられます。

etc…

 パットとのデュオ作やグレッグ・オズビーの新作なんかでも感じたのですが、ジム・ホールのギターは、年を追うごとに凄くなってる感じです。パットを初め、ジョン・スコやマイク・スターン、ビル・フリゼール…らコンテンポラリーな人気ジャズ系ギタリストのルーツが、ジム・ホールにあるということが、逆説的に理解できるはずです。
10.2 Update

Points?

★★★★



Title/Musicians/Revel

 "The Classic Trio volume U" David Hazeltine (Sharp Nine)

Who?

 ミルウォーキー出身の中堅ジャズ・ピアニスト。スライド・ハンプトン(tb)やマリーナ・ショウ(vo)ルイス・ヘイズ(ds)などのサイドを経て、ソロ・アーティストへ。近年は、エリック・アレキサンダー(ts)らとユニット「ワン・フォー・オール」も結成。ジョージー・フェイムなんかのサポートもしている。シャープ・ナインをはじめ、クリス・クロス、日本のヴィーナスなどのレーベルに、精力的な吹きこみ活動を行ってる、「今が買い!」なピアニスト。

With?

 ピーター・ワシントン(b) ルイス・ヘイズ(ds)

Reflection?

 ピーター・ワシントン=ルイス・ヘイズを率いての「クラシック・トリオ」によるセカンド作。録音は今年の1月。少し前に発売されたクリス・クロス盤は、エリ・アレ入りのカルテットで、トリオ作といえば、ヴィーナス盤のホレス・シルヴァー集が最新ということで、企画モノではない普通のトリオ作は、久し振りです。選曲も、バカラック・ナンバー「ホワッツ・ザ・ワールド・ニーズ・ナウ」やスタンダード「酒と薔薇の日々」「魅惑されて」「プレリュード・トゥ・ア・キス」「「ホワット・ア・ディフェレンス・ア・ディ・メイクス」などと、オリジナルを合わせた9曲。ピアノ・トリオの作品としては、このスタンダードとオリジナルの割合は一番聴きやすいパターンでしょう。元々骨っぽいバピッシュな演奏が魅力のヘイゼルタインですが、最近少しその芸風が変化しつつあるようです。1曲目のアップテンポなナンバーでは、ハード・バピッシュにとばしてゆく演奏なのですが、スロウなスタンダード系のナンバーでは、ややモーダルで凝った解釈による演奏にも挑戦している感じ。2曲目のバカラック・ナンバー「ホワッツ・ザ〜」では、曲名を言われなければ、なんの曲か分からないくらいのモーダルな解釈です。そんな少し新しい部分はありますが、全体的には、50年代〜60年代初期のゴリゴリとしたジャズの美味しさを感じさせる、今では少数派になりつつあるスタイルのピアノ・トリオなので、最近のキースやブラッド・メルドーみたいな神経質系なピアノが苦手な私には、ぴったりのピアノ・トリオです。ワシントン=ヘイズのジャズの伝統の重みを感じさせる正統派リズム・セクションも素晴らしいです。

etc…

 正統派ハード・バップ・ピアノ・トリオとして、これからも、レギュラー活動を継続して欲しいです。ブラッド・メルドーの新作を聴いた後、これを聴くとモヤ〜っとした気持ちがクリアになりました。ジャズ・ピアノはこうでなくっちゃ!!。
10.3 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Love Life" Warren Hill (Narada Jazz)

Who?

 LAのスムース系白人サックス奏者。ノーバスより90年代初頭デビュー。その後、ノーバス、ディスカヴァリーなどにリーダー作を残す。ルックスも良く、ヴォーカルも上手で、スムース・ジャズ・シーンでは、かなりの人気者。

With?

 ティム・ピアース、ランディ・ジャコブ、ラリー・カールトン(g)ヴェイル・ジョンソン(b)マイケル・ガーソン(key)クリス・ボッティ(tp)エリック・マリエンサル(sax)ルイス・コンテ(perc)カート・ビスキェーラ(ds)…

Reflection?

 スムース・ジャズの王道をゆくサウンドながら、やや白っぽいというかAOR寄りのサウンドといった印象。サンタナみたいなラテン・ロック調な3曲目や、かつて自身のアルバムで、アスワドをフィーチャーしたヴォーカル・ナンバーを、自身のヴォーカルを入れてリテイクしたミディアム・テンポのメロウなAORナンバーの3曲目、ラリー・カールトンの歌うようなメロディアスなギターをフィーチャーした、ライオネル・リッチー(コモドアーズだったっけ?)のバラード「イージー」のカヴァー、ヒルが敬愛するグローヴァー・ワシントンJRに捧げた、グローヴァーのあたり曲「ミスター・マジック」のラップ入りのヒップなカヴァー…あたりが聴き所か。後半は、バラード中心。ヒルのサックスは、いわゆる「サンボーン・チルドレン」なものだが、それはそれとして楽曲の表現力やパワーは、なかなかのもの。ブラコン系スムース・ジャズの連中よりは、骨のあるタイプなので、個人的には、BGM以上の聴き応えを感じました。

etc…

 ライオネル・リッチーのバラード「イージー」でのヒルのサックスをまず聴いてみて下さい。軟弱なスムース系サックスというイメージを払拭するようなソウルフルな演奏で、同じくフィーチャーされてるカールトンのギターに負けてません。クールに流すプレーヤーが多い中、こんな熱さを感じさせる人は意外に少ないと思います。
10.3 Update 

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "The Fringe In New York" George Garzone (NYC)

Who?

 ボストンのコルトレーン派テナー&ソプラノ奏者。確かバークリーでも教えていたような記憶が…。マイク・マイニエリのレーベルNYCからアルバムを発表するまでは、カルト的な存在だったが、その後は、「ポスト・ジェリー・バーガンジ」的存在として人気が高まりつつある。94年頃、ボストンのミュージシャンで結成されたビッグ・バンドにゲスト・ソリストとして参加したライブを京都で見た記憶があるが、その時は、ディヴ・リーヴマンみたいな、フリーキーでアグレッシヴな演奏だった。

With?

 ジョン・ロックウッド(b)ボブ・グーロッティ(ds) マイク・マイニエリ(vib)

Reflection?

 NYCレーベルでのガーゾーンのリーダー作は、今までは、彼のアーティストとしての幅を考えると、やや保守的な側面が多くでていた感じだが、この新作で、ようやく、「本性」を現したようです。彼が古くから、レギュラー活動をしていたというサックス・トリオの「The Fringe」にマイク・マイニエリを加えたカルテットで、後期コルトレーンに正面から挑戦したようなアグレッシヴなジャズを聴かせてくれてます。コルトレーンのみならず、サックスを多重録音し、ヴィヴラフォンとハーモニーを創り出し、そこにフリーキーなサックス・ソロが被さるようなオーネット・コールマンみたいな曲があったりと、内容的には、結構ハードなので、今までのNYC盤で、「なかなか渋いサックスやね…」みたいに聴いていたガーゾーンのリスナーには、正直キツいサウンドです。がしかし、これがジョージ・ガーゾーンというミュージシャンの本当の姿だと思います。かなりフリーキーなサウンドの中、とにかく感じるのが、テナー、アルト、ソプラノというサックスを100%鳴らしきってることです。ここまでストイックなまでにサックスの鳴りにこだわる人は少ないと思います。アルバム・ラストに入ってるコルトレーンの名曲「セントラル・パーク・ウェスト」での、ソプラノによる慈しむような演奏は、感動的です。

etc…

 前々作の、ジョー・ロヴァーノとのサックス・バトル作で、ガーゾーンの凄さを実感した人も多いはずです。少しハードな作品ですが、ガーゾーンが久々に自分のジャズに真摯に取り組んだ作品として、彼のサックスに興味を持ったなら、ちょっと我慢してでもこれを聴いてみて下さい。とにかく凄いサックス奏者なんですから…。
10.3 Update 

Points?

★★★★



Title/Musicians/Revel

 "Another Door Opens" Jeff Kashiwa (Native Language Music)

Who?

 ブランダン・フィールズの後任として、人気フュージョン・バンド「リッピントンズ」のサックス奏者をつとめた日系人のサックス奏者。現在はグループを卒業しフリーランサーとして活躍。

With?

 ジェフ・ローバー、ラッセル・フェランテ、ディヴ・コーチャンスキー(key)アラン・ハインズ、マーク・アントワーヌ(g)ブライアン・ブロンバーグ(piccoro-b) メルヴィン・ディヴィス(b)リッキー・ローソン、ウィル・ケネディ、ディヴ・フーパー(ds)スティーヴ・リード(perc)…

Reflection?

 ソロ作品としては、3作目となるジェフ・カシワの新作。基本的には、スムース・ジャズの王道をゆくスムース&メロウな作品ながら、いつになくリラックスした感覚に溢れている感じ。プロデュースは、ジェフ・ローバー、ブライアン・ブロンバーグ、ディヴ・コーチャンスキー(リッピントンズ時代の同僚)とジェフ自身が担当。ジェフや参加メンバーの持ちこんだ楽曲が、「どっかで聴いたことあるな…」と思わせるものの、ツボをついた良い曲が多く、アレンジも気をてらうことの無いシンプルなもので好感が持てる仕上がり。しゃくりあげるように歌いこむスタイルのジェフのサックスも、良いアレンジと楽曲を活かすナチュラル&スムースなもの。この種のサウンドは、「夜向き」のものが多いが、この作品は、朝〜昼間にもぴったりな爽やかなサウンドが魅力。LAフュージョン・ファン必聴の作品。サイドメンも、派手なロング・ソロは無いものの、主人公を盛りたてるいいパフォーマンスを随所で披露。ブライアン・ブロムバーグのギターみたいなピッコロ・ベースが気持ち良い。

etc…

 実力やキャリアでは、現在のスムース・ジャズ・サックスのトップをゆくボニー・ジェイムスに勝るとも劣らないと思います。今回もマイナーからの発売ですが、後は、この実力を業界に上手く売り込むプロモーション次第か。作品の10曲目に入ってるややエキゾチックな雰囲気の曲の中で、フルートを尺八のように聴かせている姿に、日系人としての誇りにようなものを感じました。
 10.6 Update

Points?

★★★★



は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

Next

Home