Renaissance 1


 「クリムゾンの次に好きなグループは?」と聞かれた時,その最有力候補がルネサンスです.これが「クリムゾン以外で好きなアルバムは?」という質問なら,間違いなくLocanda delle fateの「妖精」がNO.1なんですが,如何せん擬似ライブ盤と最近出た20年ぶりの新作を含めても,わずか3枚しか出していないバンドをTOPにもって来るには抵抗があります.その点,ルネサンスはどの作品でも高い水準のパフォーマンスを聴かせてくれます.今年17年ぶりに出た新作「トスカーナ」でもその魅力は健在です.

 ルネサンスは透明感のある美しいソプラノ・ボイスが魅力の女性ボーカリスト,アニー・ハズラムを中心としたバンドです.わたしにとってのルネサンスの魅力は,(アニー・ハズラムのボーカルはもちろん魅力ですが)クラシックを巧みにとり入れた美しい旋律と緻密に計算された構成を確かな演奏力が支えている点です.それはinstrumentalやアニー以外がvocalの曲にも素晴らしい作品があることからもわかると思います.
 それに音楽性やプログレ度と言った視点とは別に,ゆったりとリラックスして聴きたいが,ありふれた音楽はいやという場合にもルネサンスはもってこい(ヒーリングとか癒し系といった言葉は俗っぽくて嫌い&ちょっと違う気がするんです).わたしの中で最近ルネサンスの対抗馬と言えば,いわゆるプログレ系ではなくフィリッパ・ジョルダーノ,サラ・ブライトマン.クラシックをベースにした旋律,美しいソプラノ・ボイスという点で似ていると思いませんか.
 各アルバムの紹介は,発表順やお勧め度,完成度なんかとはまったく関係なく,わたしの好きな順でreviewして行きます(笑).


1.「A song for all seasons/四季

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1. OPENING OUT  2.THE DAY OF THE DREAMER 
3. CLOSER THAN YESTERDAY 4.KINDNESS (AT THE END)
5. BACK HOME ONCE AGAIN  6. SHE IS LOVE 
7. NORTHERN LIGHTS 
8. A SONG FOR ALL SEASONS



 
 普通ルネサンスの代表作と言えば,「turn of the cards」や「novella」などが選ばれることが多いと思います.しかしわたしの一番のお気に入りはこれ.確かにアルバム全体を構成するスケールといった点では一歩も二歩も譲るでしょう.それに少し軽くなって,深みに欠けるという指摘もあるでしょう.正統的なルネサンスのファンはさぞ憤慨するでしょう.
 が,しかし,その分肩の力が抜け,洒落た佳作が並んでいます.それ以前の作品に比べ小粒ですが,一曲一曲は見事な構成で聴き応え十分かつリラックスして聴けます.

 結局,わたしがルネサンスに求めているものは,プログレ漬けで張詰めた緊張をほぐすような音なんでしょう.ただ妙に肥大した耳が単なるポップスを許せず,クラシックは固すぎ,JAZZは今ひとつ肌に合わず,白羽の矢が当たっているのがルネサンスなんでしょう.そう考えれば,ルネサンスとわたしの中で競合するライバルがフィリッパ・ジョルダーノということが自分自身納得できます.

 お気に入りは1,2,4,7曲目.はっきり言って,このアルバム中の曲はどれも大好きなんですけど,あえて言えばってことでね.1,2,7は美しいシンフォニック・ロックw/天使の歌声(笑)で,ルネサンスの王道という感じです.「4. KINDNESS」はアニーのボーカルじゃありませんが,そんなことは問題じゃない.少し哀愁を帯びた旋律を聴くたびに,頭の中ではあざやかな黄色に色づいた銀杏(なぜだかわかりませんが^^;)の葉が舞い落ちるイメージが浮かんできます.
 また,「7.NOTHERN LIGHTS」は’97にアニー・ハズラム&マイク・ダンフォード名義で出した「SONGS FROM RENAISSANCE DAYS」でセルフカバーしています.

 この頃から再結成は時間の問題と思ってましたが,'00のニューアルバムに続き,ついに'01/03来日公演が決定しました.当然,発売初日にチケット入手.今から楽しみです('00/12末).

紙ジャケ・リマスター盤のレビューはこちら.('01/05)


2.「PROLOGUE」

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1. PROLOGUE
2. KIEV 
3. SOUNDS OF THE SEA 
4. SPARE SOME LOVE 
5. BOUND FOR INFINITY 
6. RAJAH KAHN



 2番目がこれかよ,って声も聞こえてきそうですが,NO.2はこのアルバムなんです.
 新生ルネサンスのデビュー・アルバムでもあります(ヤードバーズから派生したルネサンスというグループの解散直前に,後にグループの中心となるマイク・ダンフォードがちょこっと参加していたため名前だけ引き継いだ.実質的にはほとんど関係がないので,人によってはここで紹介しているルネサンスを「アニー’S ルネサンス」と言うことも.また,ダンフォードはグループ結成の働きかけだけしておいて,この時点では正式に加入していない.このへんがどーもよくわからない...).

 お気に入りは1,2,3曲目.この3曲にわたしが,ルネサンスを好きな要素のすべてが凝縮されています.この部分だけならこのCDが間違いなくNO.1.しかし,わたしは「6. RAJAH KAHN」が好きじゃない.10分近いインスト・ナンバー.中近東風のアレンジ.ある意味もっともプログレッシブ・ロックの名にふさわしい曲なんですが,お気に入りじゃないことは事実.したがって,NO.2に甘んじる結果となりました.

 「1. PROLOGUE 」は美しい旋律に澄みきったスキャットが絡んで文句なしです.この曲はコンサートでは常にOPENINGとして演奏されたようです.ルネサンスのもつクラシックをベースとした構成力,演奏力の確かさを代表する曲です.また,2曲目は哀愁に満ちたメロディーが印象的な小品,この曲がたぶんに旧ルネサンスの色を残していると思われます.「3. SOUNDS OF THE SEA 」はアニーの美声を存分に堪能できるまさにルネサンスの華の部分です.このCDもコンセプト・アルバムとしてみるとやや散漫でまとまりに欠ける印象もあり,また,けっして色褪せているわけではないですが,やや時代を感じさせる部分もあります.が,聴いて損なし!


3.
「LIVE AT CARNEGIE HALL」
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DISC 1 
1. PROLOGUE  2. OCEAN GYPSY 
3. CAN YOU UNDERSTAND 
4. CARPET OF THE SUN 
5. RUNNING HARD  6. MOTHER RUSSIA
DISC 2 
1. SCHEHERAZADE  2. ASHES ARE BURNING




「LIVE AT ROYAL ALBERT HALL」

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DISC 1 
1. PROLOGUE  2. CARPET OF THE SUN  
3. CAN YOU HEAR ME  4. SONG OF SCHEHERAZADE
DISC2  
1. RUNNING HARD  2. MIDAS MAN 
3. MOTHER RUSSIA  4. TOUCHING ONCE
5. ASHES ARE BURNING  6. PROLOGUE 
7. YOU, PARTS 1 AND 2


 NO.3はライブ盤を選んでみました.その楽曲にクラシックを採り入れるだけでなく,実際にオーケストラと競演したライブはルネサンスの到達したひとつの頂点だと思うからです.ところで,ふたつのライブ盤のうちどちらが(演奏,音質等)上かと聞かれれば...やはり「ROYAL ALBERT HALL」.だが,なんせこのアルバムrunning timeが長い!「CARNEGIE HALL」も100分超ぐらいだが,「ALBERT HALL」は140分ぐらいある.これじゃあ愛聴盤として繰り返しきけません(T T).そういう訳でこの勝負引き分けで,NO.3は2枚同着ということにします.でも,これから購入する人には「ROYAL ALBERT HALL」がお奨めかな.どちらもその時期のベスト盤的選曲になっていて,どう転んでも損はないと思いますが.

 

当時プログレではクラシックの導入というのはありふれた手法で,明確な 目的意識なく形だけをとり入れては陳腐なものになり勝ちでした.しかしルネサンスは見事に自分達のものにしています.また,ELPが「展覧会の絵」で示したように,クラシックと正面からぶつかって新しいものを探るようなスタンスでもなく,ごく自然に寄り添っているように思います.だからこそオーケストラの競演がコケ脅しでなく,素晴らしい効果を発揮したのではないでしょうか.

 反対に先ほど例に出したELPも,のちにフル・オーケストラを帯同して「展覧会の絵」を演奏していますが,3人だけの演奏を超えるパフォーマンスは感じられませんでした.まあ,その頃にはバンドのもつエナジー自体がだいぶ低下していたせいもあるんでしょうが.(蛇足だけど,リマスターCDとごく最近('00/12)DVDになった「展覧会の絵」を見・聴きました.いろいろ陰口たたかれるELPだけど,やっぱり只者じゃなかった)

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