PFM '75 来日公演ライブ・レポート その4
by 烏天狗さん


PFM 来日公演レポート〜PFM'75 その(4)

 音源を聴きながらということなので何とか書けそうですが、情景については思い違いとか勘違いもあると思いますのであしからず、よろしくお付き合い下さい。あとMCの部分は英語不得意のため信憑性に欠けますのでご勘弁を...


1975年11月29日(土) 中野サンプラザホール 第2部 PFM

しばらく休憩をはさんで、
日本語のMC『皆様お待たせしました。イタリアからのお客様をご紹介致します。拍手で迎えて下さい。PFMです。』この声で第2部が始まります。

拍手と歓声の中メンバーがそれぞれの立ち位置につきます。ステージ向かって左からマウロ・パガーニ、パトリック・ジヴァス、新加入のベルナルド・ランゼッティ、フランコ・ムッシーダ、フラビオ・プレモーリの順、そしてフランツ・ディ・チョッチョは一歩下がったステージ中央後方、一段高くなったドラムセットに陣取りました。音合わせが始まります。

さあ、一曲目は何を演奏するのだろう? 期待が一気に膨らみます。

おお! 聴きなれたギターのカッティング、これは『Celebration』だあ! まさかいきなりこの曲が1曲目かあ。観客も最初からのりのりで手拍子をとり体を揺らします。う〜む、LP『PFM Live,Cook!』だとA面最後なのになあ。しかもこのアルバムを聴くとコンサートラスト曲の様に聴こえてたからこれは意外でした。フランツのドラムもイントロから既に全開です。実にパワフル。新加入のベルナルドもフェンダーのテレキャスターと思われるギターでリズムをとっています。ふ〜んギターも弾けるんだ。意外に小柄な人だ。フランコのギターはギブソンのES335かな? 右端フラビオのキーボードセットも意外にシンプル。オルガン、エレピ、ミニムーグのみ? 

1.Celebration(セレブレイション)
 イントロのムーグの部分は徐々に高音になっていくタイプ。正規盤『Absolutely Live 1971-1978』のdisk3で聴けるタイプで『PFM Live,Cook!』のとはちょっと違います。ボーカル部分はベルナルドがとっています。彼もリズムギターで参加してましたが全体のサウンド が変わる事はありません。(実は彼のギターほとんど聴こえない)曲のスピードも『PFM Live,Cook!』より若干速い感じでした。残念ながら間奏でのミニムーグに『フニクリフニクラ』のメロディはありませんでした。

マウロの英語のMC(たぶんMCはほとんど彼が担当していたと思います。)
『ありがとうJAPAN。』
『どうもありがとう。』
『皆さんご来場どうもありがとう。今日は日本での最後のコンサートです。ですから僕達もここで充分楽しんで演奏したいと思っています。そしてすぐにまたここに戻って来れる事を本当に望んでいます。どうもありがとう!』
会場拍手&大歓声
『先ほどの曲は『幻の映像』から『セレブレイション』でした。さて、これから演奏するのはアルバム『甦る世界(The World Became The World)』から...』
会場拍手&大歓声(会場は『甦る世界(The World Became The World)』を演奏すると勘違い。僕もその1人でした。)
マウロ歓声が静まるのを待って
『原始への回帰(Four Holes in The Ground)という曲です。』
あらためて会場拍手。
 
2.Four Holes In The Ground
 これも『PFM Live,Cook!』よりテンポが速い。速いメロディでのメンバーのユニゾンはやっぱりすごかったです。マウロはバイオリンとフルート、ピッコロを持ち替えて忙しそう。中間部のボーカルはベルナルド。彼はこの曲では最初は舞台袖に引っ込んでいてボーカルの時にタンバリンを持って出てきたと思います。それにしても後半の盛り上げ方は
さすがです。

マウロ
『これから演奏する曲は特別なものです。というのもこの曲でPFMの新メンバーでボーカルのベルナルド・ランゼッティを充分にご紹介できるからです。彼がベルナルド・ランゼッティです。グラッチェ。グラッチェ。』
会場拍手
『彼にとってはこのJAPANツアーはPFMとしての初めての大きなツアーです。...(よく判らん)...これから演奏する曲は新アルバムからです。これはちょうどイタリアでリリースしたばかりで、もうすぐ日本でも発売されます。アルバム名は『チョコレート・キングス』からです。この中から『ペイパー・チャームズ』という曲を演奏します。』

3.Paper Charms (Including Jam)
 当時日本ではまだ『チョコレート・キングス』は未発表だったので、バリバリの新曲でした。賛美歌風のオルガンにベルナルドのビブラートのかかった熱唱。途中から徐々にフルートやミニ・ムーグ、ベルナルドのタンバリンも入ってからんでいくとても美しいメロディに感動しました。好みのタイプの曲です。2曲目が凄かったのでゆっくりテンポのバラードでお休みと思ったらいきなりミドル部で各リズム楽器やバイオリンが爆発、かなりフレーズが速い。でもかっこいいアンサンブルです。さらに後半でギターのフレーズを合図にJamに突入。ギター主体のJamです。(とは言うもののパターンがかなり決まっているので、ギターをフューチュアしたJam風アンサンブルというのが正しいのかな。後に知りましたがこの部分はスタジオ録音盤には無い部分です。)その後テーマに戻って終了。静と動の対比がすばらしいと思いました。この曲はPFMの持ち味が凝縮されていると思います。

フランツ・デ・チョッチョのMC(ステージ前に出てくる。)
『次の曲はライブアルバムからイタリア語で『Dove...Quando...』です。』

4.keybord Solo 〜Dove...Quando
 これは『クック』に近い演奏でした。プレモリのエレキ・ピアノ・ソロから始まるのは『PFM Live,Cook!』の構成と同じですが、プレモーリのフレーズは即興の様で、『PFM Live,Cook!』とはニュアンスが違います。ドラムのチョッチョが舞台前面に出て表現豊かにしっとりと歌い込みました。彼のボーカルが終わって中間部に入ると拍手が沸きあがります。そして彼はドラムの前まで行き、ステージ向かって前方から曲に合わせてシンバルをたたき始めます。(ちなみに大阪公演ではプレモーリはエレキ・ピアノソロ後の伴奏はオルガンを弾いておりエレピのみの伴奏より重厚なできになっています。)このコンサートでは彼は殆ど前には出てこないしボーカルもこの曲だけなので今年のコンサートとはやはり雰囲気が違いますね。75年はマウロが一番目立っていました。

5.Acustic Guitar Solo 〜Out of The Roundabout (Including Spanish Jam)
 MCは入らずそのままフランコのアコースティックギターソロに入ります。『PFM Live,Cook!』とはフレーズがちょっと違うなあ等と思っていたら途中から同じフレーズになりました。エコーがふんだんにかかっています。途中では情熱溢れるフラメンコスタイルのコードをかき鳴らし、ボルテージが上がったところで再び静かできれいなアルペジオに戻ります。この辺りの構成は『PFM Live,Cook!』同様です。やっぱりPFMの極上の静的メロから情熱溢れる動的部分で盛り上げ、最後は再び静的メロに戻って余韻をあたえるという手法、こんなソロでも活きています。この後は僕の好きな『通りすぎる人々』が始まるぞと思いきやまた新曲の様です。導入部のフランコの哀愁をおびたアルペジオのコードが印象に残ります。この新曲も気に入りました。そしてきれいなメロディと思ったのも束の間、また怒涛のミドル部に突入。ペルナルドも熱唱しています。再度静的な導入部に戻った後、後に『アブソルートリー・ライブ』のDisc3で聴けることになるスパニッシュJamに突入、プレモーリのエレキ・ピアノがかなりフューチャーされています。この辺りは当時は判らなかったけど、チック・コリアに傾倒していたのでしょうか? 2年後のアルバム『Jet Lag』がフュージョンぽいのも既にここで垣間見れるわけですね。ジヴァス・チョッチョ組のリズム陣もすごく良い感じです。Jam後再度テーマに戻って終了します。前に演奏した『Paper Charms』もそうでしたがスタジオ盤と同じ構成で演奏しているものとばかり思っていましたが、よ〜く考えてみるとLPは片面約25分ぐらいですから、彼らのアイデアが全てLPに反映されるには時間が足りません。この曲冒頭のムッシーダのアコースティックソロを除いても13分を超えています。LP用にはシンプルにして時間を調整しているのでしょうね。いくつかのインタビューでも即興について重要視しているととれる発言がありますし、各々並のテクニックではないですから自分達の発表の場としてレコードとステージを変えているのもなるほどうなずけます。しかし、この曲にはほんと圧倒されました。曲が終わったときは『ふ〜』って感じでした。

MC『ありがとう、次の曲はアメリカ/イタリア/ヨーロッパをツアーしている間に..(聞き取れません)...発達(進化)してきました。『Mr. 9 Till 5』です。』恐らくこの曲の後に続く『Alta Loma 5 Till 9』等の部分がコンサートでインプロを繰り返すうちにどんどん変わってきたと言いたかったのだと思います。

6.Mr. 9 Till 5
〜Alta Loma 5 Till 9
〜Tokyo Violin Jam
〜Classic Violin Solo
         〜William Tell Overture

 『PFM Live,Cook!』のB面部を再現しています。しかしかなりアップテンポでJamとソロが長かったです。たぶん全部で25分近い演奏のはずです。『Alta Loma 5 Till 9』の出だしのブルースぽいフレーズに入る前にもムッシーダの速弾きソロが入るし、ブルースぽいソロからジョン・マクラフリンを思わせるソロの後もオルガンの音を合図にベースのアップテンポなスパニッシュぽいリズムにのってパガーニの壮絶なヴィオリンJamにつながってきます。その後ヴィオリンソロと続き(このソロもかなり激しい感じ)この辺りも『PFM Live,Cook!』とはかなり違っています。そして最後はお決まりの『William Tell Overture』で幕を閉じます。『幻の映像』のような繊細緻密なアルバムを作ったバンドとは思えないアグレッシブな演奏で会場は完全にノックアウトされてしまいました。

MC『ヴィオリンのマウロ・パガーニです。』(これはフランコの声?)
『どうもありがとう。ありがとう。』(マウロ?)

MC(数人で)『ありがとう、みんな、どうもありがとう!』
フレビオが『チョコレート・キングス』の軽快なイントロを弾き始めます。
『これは特別なナンバーで『チョコレート・キングス』です。』
ベースが入ると会場中手拍子を始めます。
イントロの途中でベルナルドが叫び始めます。なにやらニッポンのBig Fat Mamaとか世界中のBig Fat Mamaとか、チョコレートキングスとか、United Stats of Americaとかいまいちよく判りません。チョコレートキングスの由来を叫んでいるのでしょうか?

7.Chocolate Kings
 新曲で『セレブレーション』を思わせる構成/旋律と感じました。なるほど、この曲のノリを見越してオープニングを『セレブレーション』にしたのだなあ。この曲は軽快なロックだし、客をのせるのに最適。チョッチョのドラムもバシバシ決まっています。新曲なので観客が一緒に歌えないのが難です。結局これが最後の曲となりました。

『ありがとう、バイバイ!』
ああ、ステージを去って行ってしまいました。

 観客は当然総立ちでアンコールの要求。どこからともなく『PFM!PFM!..』の掛け声も上がります。根気よく手拍子。我慢我慢。

(Encore)
1.Harlequin
〜Bass Solo
〜Drum Solo
〜Impressioni Di Settembre
〜Poseidon
 全員がステージに戻ってくるとアンコールはいきなり知らない曲で始まりました。新曲の『ハ−レ・クイーン』。のちの『チョコレート・キングス』に納まった曲の導入部を取っ払って、いきなりアップテンポな部分から開始です。この曲のドラムものっけからもの凄いテンションです。バイオリンもかなりハイテンション。観客も手拍子。確か全員総立ちのままだったかと思います。

 続いて長い長いベースソロ。今でこそフュージョン系ベーシストに凄いフレーズを弾く人がいるが、当時こんなソロは初めて聴きました。ベースソロでちょっとしたスパニッシュぽいフレーズ弾いたり...和音も出してメロディ弾いてたかな。最後はロックンロールぽいソロで観客の手拍子と一体になり、続けてドラムソロに突入。これもすごく長い。たぶん10分は下るまい。ドラムセットに多数のタムがつけてあり、音数も多い。これにも圧倒されました。ほんとにすご〜いソロでしたよ。
 その後『PFM Live,Cook!』のA面ラストと同様に『甦る世界』のエンディング・パートから『アブソルートリー・ライブ』では『ポセイドン』と表記されている短い曲へ...。ああ、やっとこの曲が聴けました。『Celebration』の後に続かなかったからもう演らないのかと思ってました。チョッチョはドラムセットの前(観客席側)に立ってシンバルを叩いています。最後にはジャンプして一段高くなったドラムセット前から飛び降りながらシンバルを叩いてました。この間ずっと観客は全員総立ち状態。歓声や手拍子のタイミングなんかもステージとのコール・レスポンスって感じでとっても好い雰囲気でした。このアンコールきっと30分ぐらいはありました。

MC『ハーイ、ハーイ(奇声)』『バイバイ・チャオ』『みんな、ありがとう』
彼らは去っていきます。ああ、終わってしまったのかあ...

会場は帰る人も無くさらにアンコール要求の手拍子/足拍子、歓声はこの日最大。皆興奮して自分の席からステージ前まで突進していきます。(もちろん僕も!)

しばらくして、彼らがステージに戻ってきました!! やったあ!!

『Thank you! Yah! Thank you! You are beautiful! Thank you!
Now! We wanna celebrate! Last sing, Hope for itaria and tokyo! Now! celebrate together! we Ce!-le!-bration! 』
(かなりいいかげんな聞き取りです。文法になっていません。うまく動詞形容詞がつながらない。何て言ってるかよく判らない〜!)

大歓声!ギターのカッティングと同時に会場手拍子開始!『ハイ!ハイ!....』の掛け声(たぶんチョッチョ)が入ると会場も全員同じ掛け声を返します。イントロのドラムとベースも長く盛り上げていまする。全体的にPAの音も大きくなっています。天井のミラーボールも廻っています。

2.Celebration
 二回目のアンコール。この日2回目の『Celebration』です。テンポも速く会場全員で最高にのってました。マウロのピッコロが入るとまた歓声。会場全員でCe!-le!-bration!と大合唱。『ハイ!ハイ!』の掛け声。中間部のミニ・ムーグのフレーズも今回は『フニクリ・フニクラ』が入ってきます。そうするとまた大歓声!会場中大合唱で最後のコーラスパートまできました。ラストはフレビオが名残惜しむようにミニ・ムーグの音を伸ばして終了!

 いやあ、最高のアンコールでした。やっぱり最後はこの曲だよなあ。もう大満足!

『Good By Everybody!!』
『サヨナラ!Nice XXXX in Japan! Thank you!』

 全員舞台全面に出てきます。チョッチョが観客にスティックを投げてプレゼント。ムッシーダもピックを投げています。ジバスはベースを観客に投げ渡した〜〜〜〜!大きな歓声!(てっきりファンへプレゼントとして投げたと思ったんだけど、この件はPFMのホームページ
  http://pfmpfm.it/eng/anni_70/curiosita70.htm#19
に状況が書いてあります。誤って落としたらしいのだけど最終的にはそのベースはプレゼントしたらしいです。2002JAPANツアーのツアーパンフでもジヴァスがそのことを語っていますね。)

前座を含まずにPFMのみで2時間を越えるステージ。曲の数に比して
この時間といったら、Jamやソロの部がどれだけ長かったか判ると思います。これに最も近い音源で現在正規盤で聴けるのは『PFMアブソルートリー・ライブ1971−1978』のDisc2と3です。両方組み合わせた感じというのが最も近いと思います。それにしてもアンコールでのバンドと会場一体感、あの感動は忘れられません。PFMの各メンバー達も日本の思い出が心に深く刻まれているそうなので参加できた自分としてもとても嬉しいです。

コンサート終了後は、体力使い果たしてなんか茫然自失、虚脱状態って感じで帰路につきました。どうやって帰ったのかあまり記憶無いです。

たぶん『幻の映像』を期待してコンサートに行った人も多かったと思いますが、本当に良い意味で裏切られたのではないでしょうか。とにかく自然に血が湧き上がってくるようなそんな感じだったのです。(今年のワールドカップの観戦と同じ感じっていたらいいのかなあ。やっぱりちょっと違うかなあ?)

PFMのアルバムは初期の物もとっても良いですが、このコンサートを
体験してしまった僕にとってはやっぱり『PFM Live,Cook!』と『チョコレート・キングス』『アブソルートリー・ライブ』にはどうしても特別な思い入れがあります。特に『チョコレート・キングス』は、発売されるまで、ライブで演奏したあの曲を早くもう一度聴きたいって気持ちが大きくてすごく期待していましたし、実際聴くとあの時の感動がなんか甦ってくる感じなのですよ。このアルバムはどの曲も静で始まって動に入って静で終わるみたいな感じで、とても緊張感に溢れているし、各メンバーの技量も今まで以上に表現されています。音の厚みは楽器が少ないぶんシンプルなのですが逆に各楽器の音が研ぎ澄まされて聴こえます。特にドラムの音とか凄くありませんか? 各曲での静の部分のメロディも僕好みだし、そんなわけで僕は『チョコレート・キングス』はとても好きなアルバムなんです。

ふ〜!(その4)でやっとコンサートの様子が書き終わりました〜。めでたし、めでたし。ひょっとしたら次回はあとがきがあるかも?

では。

(次回へ続く?)


prev.     next

back (来日特集へ)

top