King Crimson 3


King Crimson 2000

 2000年に(またまた)復活した新生Crimson.基本的には第3期>’90>の流れをくむmetal Crimson と考えて間違いないと思いますが,この先どうなるのかを含めて検討してみます.
 検討と書いたのは自身まだまだ真価を計りかねている部分があるからです.しかしオリジナル・アルバム,生LIVE(来日公演),ライブ・アルバムという非常にバランスのとれた資料が揃ったので,感想・期待あるいは邪推などしてみたいと思います.
1.「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」

con_ligt.JPG - 2,322Bytes1. PROZAKC BLUES 
2-3. THE CONSTRUKCTION OF LIGHT 
4. INTO THE FLYING PAN 
5. FRAKCTURED 
6. THE WORLD'S MY OYSTER SOUP KITCHEN FLOOR WAX MUSEUM 
7-9. LARKS' TONGUES IN ASPIC PART IV 
10. CODA : I HAVE A DREAM 

PROJEKCT X 
11. HAEVEN AND EARTH 

 歴代の再結成ニュー・アルバムの中では,もっとも違和感なくすんなり聴けたアルバムです.わたしは’70年代のクリムゾンをリアル・タイムで追っかけていたわけではありませんが,オリジナル・アルバムはすべて発表順に聴いた記憶があります.「LIZARD」,「ISLAND」,「LARKS' TONGUES IN ASPIC」,そして極めつけの「DISCIPLINE」.そのどれもが聴いてびっくりという内容でした.まだ「THRAK」は驚きがすくない方でしたが,それでも’80年代のクリムゾンからの”変化”は印象的でした.


 単純に新鮮味がないとか,そんな意味ではありません.一連のProjeKct から一転,Crimson を名乗るだけの完成度は一聴しただけで感じられます.ただ,漠然とした予想・希望・期待の方向でKing Crimson 2000 が表れたことは事実です.
 今回はProjeKct という,いわばmaking VIDEOならぬmaking CDが存在し,予想する材料が豊富だったので当然といえば当然ですが,今までの体験があるので少し拍子抜けでした.
 今までは,自分か新鮮に感じたor違和感を感じた部分を重点的に聴くことで,その時期のCrimson を理解する糸口を見つけることができました.その手がかりを辿って新しいCrimson を好きになっていったのです.ところが,今回はあまりにも自然.自然すぎて突破口が見つかりません.
 加えて,Brufford と決別してまでV−drumに固執した意味がわからず,Fripp 翁のいう「heavy rock」なるkey word も正直ピンときませんでした.ただし,アルバム自体を好きか嫌いかと聞かれれば,間違いなく好きと答えます.一聴して気に入りましたから.
 結局,今ひとつ煮え切らない態度のまま来日公演を迎えることになります.


2.「HEAVEN AND EARTH」 by ProjeKct X

projectx.JPG - 6,552Bytes1. THE BUSINESS OF PLEASURE
2. HAT IN THE MIDDLE  3. SIDE WINDOW 
4. MAXMIZER  5. STRANGE EARS 
6. OVERHEAD FLOOR MATS UNDER TOE 
7. SIX O'CLOCK  8. SUPERBOTTOMFEEDER 
9. ONE E AND  10. TWO AWKWARD MOMENTS 
11. DEMOLITION  12. CONVERSATION PIT 
13. CIN ALAYI  14. HEAVEN AND EARTH 
15. BELEW JAY WAY 


 メンバーはCrimson 2000 と同じ.Fripp によると新生King Crimson と表裏一体をなす存在だとか.つまり”決められた楽曲があり,その上でimprov. を展開していくCrimson と徹底してimprov. 主体のProjeKct X”.
 しかし,わたし自身はこの二つが表裏一体をなすほど等価な存在だとは感じられません.確かにその姿勢に違いはあるものの,それはあくまでも方法論の問題.わたしが一番重要だと考える作品そのものの完成度は,「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」と「HEAVEN AND EARTH」では大きな開きがあります.
 それで考えたのは,やっぱりこれもmaking なんだということ.確かに別なアプローチによるひとつの完成品を提示すれば,Crimson 自身への理解を深める助けにはなるでしょう.しかし,単純に”深い理解=正確な理解”ではないはず.この作品を聴かず,「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」のみを聴いてCrimson 2000の評価を下したからといって,それが即,理解が浅い/足りない/間違っている,とはならないでしょう.完成作として「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」を出している以上それは当然のことですし,とくに「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」にはボーナス曲としてProjeKct X 名義の曲「11. HEAVEN AND EARTH」がわざわざ収録されているのですから.むしろ重要なのはやはり”ライブ”でしょう.


3.来日公演:2000年10月10日 大阪

 このライブを聴いてCrimson 2000 への評価がかなり変化しました.詳しいライブ・レポートは拙稿を参照していただきたいのですが,一番大きな変化はV−drumの必要性がある程度納得いったことでしょう.もちろんライブを生で体験し,それまで懐疑的だったFripp 翁の「heavy rock」という新生Crimson 評に賛同できた点も大きいのですが, やはりBill Brufford の不参加が残念だったわたしにはV−drumの魅力が垣間見ることができたのが一番の収穫でした.

 残響音を切り捨てあるいは完全に電子的制御を行い,アコースティックな楽器のみに許された豊かな音の響と決別した音はとても新鮮でした.ジャズからロックへと変化していく過程で,生楽器から電気仕掛けの楽器へと移行・(ある面)進化していく中,最後まで音楽のもつ原始的な(本能的な)部分を支え続けてきたドラムという聖域に手をつけたわけです.わたしはアコースティック楽器の中でも生ドラムのもつ音は特別のものだと思っていたので(今でもその思いはあります),打ち込みによるサンプリングは論外/問題外としても,V−drumの導入さえ好きにはなれませんでした.
 しかし,今回のライブを聴いて,V−drumが生ドラムとは違った性格の音をもち,別の可能性をもっているということに気づいたような気がします.生ドラムのもつ響は,音が空気の震度であるという事実を理屈抜きで体感させてくれます.そして肉体がその響に反応するに連れ,次第に精神の高揚をもたらしてくれる,そんな感覚をもっています.一方,V−drumはそんなprimitiveな感覚に欠けると考えていたのです.が,実際体感したV−drumは生ドラムのもつ響・残響を否定するかの如く,恐ろしくtight & heavy.そして肉体が先に反応を始める生ドラムと違って,まず精神の昂揚が感じられ,ついでその音圧を体感,最後には精神と肉体の両面で興奮/昂揚を感じることができました.その瞬間,「heavy rock」の片鱗を垣間見た気がします.


4.「HEAVY CONSTRUKCTION」

hvyconst.JPG - 9,919Bytes
DISC 1
1. INTO THE FLYING PAN 
2. THE CONSTRUKCTION OF LIGHT
3. PROZAKC BLUES  4. IMPROV: MUNCHEN  
5. ONE TIME  6. DINOSAUR 
7. VROOOM  8. FRAKCTURED 
9. THE WORLD'S MY OYSTER SOUP KITCHEN FLOOR WAX MUSEUM
10. IMPROV: BONN

DISC 2
1. SEX, SLEEP, EAT, DRINK, DREAM  2. IMPROV: OFFENBACH
3. CAGE  4. LARKS' TONGUES IN ASPIC PART IV / CODA : I HAVE A DREAM 
5. THREE OF A PERFECT PAIR  6. THE DECEPTION OF THE THRUSH  7. HEROES 
ENHANCED CD  CONTAINS LIVE CONCERT VIDEO
DISC 3
THE DECEPRTION OF THE THRUSH etc.....

 DISC1-2 の内容自体は来日公演の印象とそう変わるものではありません.Crimson 2000 の曲に関してはデキはなかなか良いのですが,’90 Crimson の曲に関してはやはりこなれていない印象は否めません.ただ,それを差し引いても高水準(演奏,音質両面で)なライブ盤であることに変わりはないでしょう.

 しかし,最大の問題点はDISC 3です. 正直このCDを収録した意図がわかりません.内容はインプロ曲の切り貼りです.曲名は無意味だと思うのであえて記載はしていません."切り貼り”担当はPat Mastelotto & Bill Munyon.個人的には全然楽しめません.

 ProjeKct X がmaking であると書いたように,このDISC 3 もmaking の一種でしょう.ただ,無理を承知で例えるならば,「HEAVEN AND EARTH」がオープン戦(実戦形式の練習試合)で,DISC 3 はスポーツ・ニュースのキャンプ中継(真剣勝負どころか試合以前)みたいなものでしょう.完成品/完成型としてではなく,見方を変えてみるとCrimson 2000 に対する理解を深める材料になるでしょう.ただし,ProjeKct X の項でも書いたように,これを聴かなければCrimson 2000 が理解できないとか,誤った評価をするといった類のものでもないでしょう.

以下は余談.
 CDにもCrimson にも非はないのですが,残念なのはやはり自宅のオーディオ装置では100%その真価を発揮できていないと感じること.自宅での音楽鑑賞はコンサートの疑似体験ではない,あるいは異なる魅力をもったものだ,とは理解しているつもりですが,オーディオ好きとしては凹みますね.


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