この文書はTales of the Reaching Moon誌16の記事を、Nick Brooke氏、Greg Stafford氏、及び編集者David Hall氏の許可の元にSol Niger及びZebrafaceの責任で和訳したものです。無責任な行動、転用はくれぐれも控えて下さい。原文はこちら。
http://www.btinternet.com/~Nick_Brooke/carmania/oronin.htm

グローランサの休日Holiday Glorantha

オローニン流域: ニック・ブルック&グレッグ・スタフォード筆

Oronin Valley by Nick Brooke and Greg Stafford


歴史
住民と文化
言語
政府
軍事
宗教
重要な地域
出来事の表
ウェンダリア聖山
神々


オローニン川は西部ペローリアを流れており、「ルナー帝国」の「中部地方」を「西域」から分けている。この広く、曲がりくねった川はオローニン湖から北へ流れ、ポラリストールに合流する。川の流域は緑多く、肥沃で、農耕と文明の生誕地の一つにふさわしいものであり、街や都市が鏤められており、旧時代の諸帝国の廃虚が数多く散在する。オローニン峡谷の平常の気象は、猛暑の夏と凍り付く冬を持ち、極端に走る傾向がある。しかし、「赤の月」の昇天はペローリア中の気候構造を変え、第五ウェイン以来引き続いて執り行われているカリコスカルトの「砕氷者」遠征は「嵐の季」の気象を大幅に改善している:もはや、毎冬の川の凍結はなく、吹雪やハリケーンの到来はまれである。
歴史
オローニン盆地は「時」が始まる以前に開拓され、文明化された。しかし、「大暗黒」によって、国土はひどく痛めつけられた。この地域の救世の英雄達には、飢餓にあえぐ都市群に農耕を教えたバイソス神や、ハーグの黒の都において死せるテュロス神に灯を再び点したデヴェーリアや、ペーランダ帝国の古の勢威を復興したレンダーシュ等が含まれる。彼等の成功は、エンテコス、「美徳の惑星」を励まして「天界」に帰還させ、「時の曙」において世界の蘇生の先触れを勤めさせた。(訳注1)


ペーランダの文化と宗教は「曙」において繁栄し、ダラ・ハッパの嫉視を受けた。この国は「光輝帝国」に抵抗し、ナイサロール支配下の不承不承の属領地だった。「光の帝国」に、それより首尾良く抵抗を見せたスポル人達は、故意に「影」の様式を受け入れていた。こうしたことは最初のうちは、有利かつ自然な出来事であったが、ナイサロールが倒れた時、ペーランダの大部分がスポルの強大化した支配の下に置かれ、彼等の圧政と闇の影多き「帝国」はオローニン渓谷を飲み込んだ。

スポル帝国は遥か「西方」から到来した軍によって滅ぼされた。「先陣」サイランティールと名乗る英雄的な傭兵隊長によってこの軍勢は率いられていた。(訳注2)「青の城」に住む女神によって生み出された彼の息子は「預言者」カルマノスであり、「最初のシャー(大王)」、「湖の子」であり、自分の新しい洞察力を自分の神聖化された軍勢とブリーヌスの人々に教え、彼等を最初の「カルマニア人」とした。この優越した知識によって強化され、カルマニアの軍勢はスポルから生じた「暗黒異端派」の無知を払拭するため出撃し、ペーランダ全土に再び均衡をもたらした。カルマノスは生涯かけて他の民族を聖別し、聖別された民族の子孫も又カルマニア人となった。

この新しい大君主達は、以前の社会秩序を改めた。地方身分階層の上に立ち、高貴な城塞に居住し、自分達の新しい生活習慣を一般民衆から切り離して、情け深い指導で被支配民を監督した。後に、カルマニア軍がペーランダ諸都市の解放を止め、自分達の支配統制を引き締めるようになるに従い、この関係は高慢な隔離策へと堕落した。都市的な生活は衰退し、その一方で農民は農奴に成り、自分の土地に縛り付けられて、最早自由に離れられなくなった。(訳注3)

カルマニア帝国の政権は成り上がりのルナーの民によって転覆される以前、ダラ・ハッパの大部分を支配し、占有するまで広がった。ルナーは帝国をカルマニア首都まで押し戻した。「赤の女神」は旧カルマニアの神々を「光の四本矢の戦い」(カルマニア人にとってこの戦いはシャー・マート、「諸王の死」である。)で倒し、その後謎めいた「青の城」の戦いで集結した「古の神々」に自分の権利が存在する事を証明した。更に彼女は彼女の人間界の領地を受け継ぐ自分の息子、「赤の皇帝」を置いて「中空」まで上昇した。

オローニン流域は二つの敵対する勢力、新生「ルナー帝国」と旧カルマニア残余の境界となった。続く半世紀を通して、ルナーの使い達は、徐々に勇気と裏切り、変節と叛逆、仇討ちと闇討ちで特色付けられる「血王の戦い」として知られる戦役で、最後の王族達とカルマニアの玉座請求者達を除いていった。この過程で、最も強い忠誠心をもつ者を伴い、最古の貴族の血縁で自分達を囲み、又自らを、隔離と、秘密主義と、懐疑の心で守るカルマニアの諸「高家」が形作られた。

最後の「雄牛の大王」達の直系の子孫のウォリオン王子が自殺した事で、双方の側は用心深い休戦へと事態を移行させた。この期間、カルマニアのマグス達は、「ルナーの流儀」を、異端と等しいものとして扱い、ルナーの神殿や宣教師達を、可能な限りどこでも「西域」から除去した。しかしその後勢力の対立は代理者を通じて行われ、大部分は「高家」における転向者と伝統主義者の確執であり、彼ら自身は「西域」に引きこもっていた。最後の大きな対立は、第二ウェイン中期の、バインドル戦争で、その過程で執念深いシャー・ウン族の武装集団がスポルとバインドルの大部分を荒廃させた。

これらの戦闘の終結後、ジョールから来た貴族で、ルナーの光を知ったアロニウス・ジャランティールが、ブリーヌスのマギ(マグス僧)達の前で自分の信仰を擁護した。彼の真実が勝利を得て、「赤月の女神」はカルマニアの万神殿に入り、イドヴァヌスの左手に座り、この西の国において「ルナーの道」が新たな信者を獲得した。アロニウス・ジャランティールとその子孫の指導の下に、「西域」の文明生活と諸都市は復興し、改善された。この事業は第三ウェインに非常な成功の元に為されたので、「赤の皇帝」は「西域」の全ての自由な住民に「ルナー帝国」の「市民権を持つ外国人」の地位を与える事で酬いた。

ペント騎馬遊牧民がペローリアに侵入した時(訳注4)、低地都市群が被害を受けた。彼等蛮人達は一世紀近くの間「ルナー帝国」の「中部地方」を荒廃させ、この時期、数千人の避難民が、「中部地方」とペーランダを離れて西方に向かった。ある者は「淡水海」を横断してフロネラにアロリアン植民市を形成し、その他の者はカルマニアの大君主達の支配を受け入れて「西域」に定住し、「中部地方」の文化で、流域の諸都市に国際的な多元性を持ち込んだ。

カルマニア人はルナーの民と並んでシェン・セレリスに率いられる「大軍勢」と戦った。アロニウス・ジャランティールは復活し、遊牧民の手から「西域」を守る為に「真鍮山脈」の城塞から降りて行く突撃軍を導いた。長かった不在の時期が満ち、失踪していた「赤の皇帝」がマグニフィクスの「仮面」で帰還し、第四ウェインの末において、「カイトールの戦い」(訳注5)に加わり、勝利を得た。その後、カルマニアの貴族達は、ペローリア盆地から遊牧民の「群れ」の残党を追い払う事で「皇帝」を助け、彼等が第五ウェインの「ルナー帝国」の都市、文化、市民生活復興に先陣を切った。

アロリアン同盟との貿易は、西の国に富をもたらしたが、アロリアンの民が(「白熊の帝国」の猛攻撃を遁れて)(訳注6)「帝国」に帰還したときは、帰還民は故郷に帰る事が許されず、遥か東方の「赤の平原」に移民するよう送られた。しかし、全てのこの種の交流は、フロネラを悩ます、魔術的危機の期間消え去った。(訳注7)この事は西の国々に入る為の「淡水海」、エーゼル川、「灰色山脈」の横断を不可能にした。

遥か東方で、「赤の平原」に移住したルナーの移民定住が、騎馬遊牧民との新たな絶望的な戦争を誘発した。「西域」の軍隊がペントの戦いに派遣されたが、「恐怖の夜」の全滅に近い戦いで、皆殺しの憂き目に遭った。この遠方における悲劇はカルマニア人の退廃の種子となった。この打撃で、彼等の最も活動的な成員が消え、国境における直接の脅威が無くなり、「西域諸領」の、以前より富を得た貴族は、贅沢へと退行し、人生を軽薄な金儲けと、賭博と、見世物見物に費消した。貴族の内、より伝統的な(それとも余り成功していない)者は「不道徳な金儲け」の必要の増加にいきり立ち、厳格かつ信仰心厚い、軍国的な美徳を備える、「古の流儀」に身を持している。

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訳注
1・モスカルフ星の事。「大暗黒」の時代に、太陽はおろか、星は全く見られなかった。
2・彼の信仰はスポル帝国程では無いにせよ暗黒異端派であり、汎神論者の「神知者」に祖国アケムを追われた。
3・ニック・ブルックによると、「アーカット暗黒異端派」の特色は、知識と「啓発」の独占階級により、国家が運営されるのを理想とするプラトン的寡頭政治体制であり、この意味で「開かれた政治」を理想とする(独裁者「皇帝」を中心とした)ペローリア、ドラストールの「啓発」政治体制やオーランス人の「評議会」体制と異なる。)
4・1375
5・1460
6・スノーダルの敵と関係があるか?ハレックの毛皮の源が彼等の主か?
7・シンディックス封鎖は1500年より。


住民と文化
都市生活者であろうと、峡谷の農民であろうと、高地の地主であろうと、オローニン流域の大部分の原住民は、同種の民族系統に由来している。この人々の世襲支配者は、川の東岸とカイトールにおけるルナー人とダラ・ハッパ人の役人から成る、行政階層を伴うにしても、大部分カルマニア人である。重要性を持つ少数の集団には、山岳部族民や、青い皮膚を持つ川の民や、流浪のハラングヴァット達が含まれる。大きな非人間種族の居住地はカイトールの鉱区におけるドワーフ奴隷民の他には存在していない。

言語
オローニン流域の原住民の言語は、ペーランダ語であり、ペローリア農民語に属する。「ルナー帝国」における公用語の新ペローリア語は、非常に近縁の言語であり、「中部地方」における最も広く知れ渡り、第二言語として用いられる。ダラ・ハッパ語とカルマニア語の双方が、知識階級と貴族階級に好まれる。これら四種の言語の全てが、日常に用いられるよく発達した書き文字を有している。

政府
「第二期」においては、オローニン流域はカルマニア帝国の中心部であった。この地域は、政治的には、ルナーの「分割して、統治せよ」の現実主義的政策に従って、閑却されている。オローニン川は、ルナー中部地方と「西域」の境界として定められている。川の流域は政治権力の中心地から離れた所だ。権力の所在地は、オローニンとドブリアンのスルタン、カルマニア貴族「高家」の間で分割される。

オローニンのスルタンは赤いカランテスの都から,ジェルノティウス山東方のナヴァーリアの地を統べる。それに対してドブリアンのスルタンはドブリアン・シティーを本拠とし、南東アリールの高地を支配する。カルマニア貴族とサトラップ達は、皇帝に任命されてカイトールに執権所を定める「西域」の総督(訳注1)に指導される。実際的には、諸「高家」はほとんど制限されずに自分達の権力を行使できる。

ルナー法は任命された治安判事により適用を監督される。各法廷は対抗し合うものであり、原告と被告はその余裕が有るのであれば、弁護士により代理され得る。大部分の民事訴訟においては、市民の陪審団が、有罪もしくは無罪を決定するため市民の中から選ばれる。ルナー市民は法廷の審判に対して上告する事ができるし、自分の訴訟を帝国におけるより高位の権力にゆだねる事が可能である。第一に、この事に該当する相手は、スルタン達、もしくは「西域」の総督である。

カルマニア法は二つの型に二分される。それぞれ「白の法」、「黒の法」と呼ばれる命令の法と禁止の法である。これらの法律は訓練を積んだ代々の法学者達による、聖典の解釈を基にしている。カルマニアの各法廷は宗教裁判様であり、ヴィジール(訳注2)達は、調査員として働き、「真実」を見定める為に広範囲に及ぶ権力を振るう。「市民権(訳注3)を持つ」外国人達は、審理の結論に対し、上訴する権限を持たない。

国境の管制は、関税を課し、逃走する犯罪者を捕らえ、望ましくない移住希望者を退けるために、双方の境界で行われている。カルマニアの法廷は自分達固有の伝統的な法律を押しつけるので、この事が「西域」をルナーの正義からの逃亡者の目を、魅力ある避難場所として引きつける。その一方で、無慈悲なカルマニアの主人に虐待された農奴は、「中部地方」の相対的な自由に向かい、脱出しようとするかも知れない。逃亡犯の引き渡し手続きは、速やかに為される事も、長期に渡る事も有り得る。一方、訴訟においてどちらの側が裁判権を得るのかの議論は、定まる事無く、時間を切り詰められ、又長引かされる――そして常に、まさしく金銭によって、この事は行われる。

訳注
1・パラムタレスの役職、Governorはジェナーテラ・ブックでは地方長官と訳されている。
2・ペルシア語発音ならワジール、ブリソス流に言えばザブール階級である。
3・ルナー市民権


軍事
「ルナー中部地方軍団」は、諸部隊をかわるがわる循環して各スルタネートを巡回させている。そして常設の連隊から成る守備隊(マラカイト・ファランクス、「孔雀石の方陣」兵団)が、カイトールに配置される。「赤の軍」最精鋭の一部は、ペーランダにおいて兵士を徴募する。「黒の軍」の国境守備軍は、「帝国」所属の陰険な内務保安部隊であり、全ての主立った境界の交差地に配置されている。オローニン川は「青の海軍」に所属し、関税が支払われているか検査し、川賊や密輸を取り締まる為活動している船によって哨戒される。

各「汗王領」自体に属する軍隊には、その地方の民衆の中から編成された、オローニン盆地諸都市の真鍮で豪華に装った重装歩兵と(訳注1)、雄牛の皮を纏う高地の軽装前哨兵、バイソス信徒の双方がいる民兵隊を含んでいる。

カルマニア諸「高家」の全てが真鍮のスケール(鱗)・コートで身を鎧い、ランス(長槍)、剣と弓で武装したカタフラクト重騎兵の小規模な軍勢を抱えている。(訳注2)この軍がスルタネートの民兵隊に見られるのと似た、ペーランダ歩兵と、北方のエリギアから来たシャー・ウン族の軽装の前哨騎兵によって援護される。

訳注
1・ダクスダリウスの信者であろう
2・カタクラフト騎兵は「東方」のササン朝ペルシアや、ビザンツ帝国で主力であった。


宗教
オローニン流域における土着信仰の神話はグレッグ・スタフォードの最近の著作エンテコシアードEntekosiad(リーチングムーンメガコープもしくはWizard's Atticにて入手可能)に描写されている通り、非常に複雑で、高度に発達している。「現代」のこの地域において最も人気のある宗派は、テュロス神及びオリア女神、カーマイン女神、「大いなる神々」、バイソス神並びにエセス女神、そしてペーランダ都市の神々である。これらの神については近日説明される。



オローニン峡谷の統治階級は、それがルナー、カルマニア、ダラ・ハッパの宗教のいずれであっても自分達独自の信仰に従っている。三種の宗派全てが、厳格な指導を通しての明け広げな奨励から、無視もしくは蔑視と多岐にわたる態度を示しながらも、ペーランダの諸カルトを意図的に受け入れ、認めている。

ルナー信徒は、自分達の神政帝国における各種のいかなる国営カルトも、信仰が可能である。しかしこれらのカルトは軍団から慈善団体まで、全てが究極的には「赤月の女神」と彼女の神聖なる息子、「赤の皇帝」に捧げられている。又、大部分のルナー信者は、自分達の故郷の神々をも信仰する。「ルナーの道」は寛容にして、全ての内包を意図し、多様性と、上流階級への移入を奨励する。ナーサ女神及びゲーラ女神の土着のカルトは、「赤の女神」の先触れとして考えられており、この女神達への信仰は僅かなのにも関わらず、その集会及び寺院は、暖かく「帝国」により支援されている。全オローニン流域は、グローラインの範囲内であり、ルナーの魔法の周期は、常に最大の力の状態に留まる。

カルマニア人達は、複雑な二元論の信仰を有しており、その核心は、「叡智の王」イドヴァヌスと、「悪しき者」ガネサタルスとの間に続く闘争の内に存在する。カルマニア「高家」が、猜疑を秘めつつ、自分達固有の祭神儀式、祖霊カルト、土地固有の精霊、神秘的洞察、魔道の技術と二元論的異端信仰を守っており、数ある伝統の錯綜した混合物に寄与している。カルマニアのヴィジール(訳注1)達は、魔道師であり、教師であり、法律家である。マグス達だけが直接イドヴァヌスに信仰を捧げる事が出来、彼等は「叡智の王」の意思に従って、「西域」の他のカルトを厳しく統制している。(訳注2)

ダラ・ハッパの宗教は「神の世界」の支配者、「太陽神」イェルムを中心に据える。この宗派は中央集権化され、階層的で、男系優位主義であり、外部の者には馬鹿げて見えるほど、純血と家系を重んずる。農奴はイェルムの兄弟、不純にして劣った者と見なされたロウドリルを崇拝している。イェルムの后デンダーラを除いて、大部分の女神は無視され、蔑まれ、恐れられる。(ペーランダにおいては、ダラ・ハッパ人はテュロスをロウドリルと、エンテコスをデンダーラと同視する。)
訳注
1・Vizier、正統マルキオン信仰において、魔道師階級に当たる。
2・彼等の人数は同時に百人に限定されている。


重要な地域
アリール(Arir):オローニン流域の南東にある高地地域、ドブリアン君主(汗王)領の一部。この地は厳しい岩だらけの不毛な国であり、農業には適さない。

バロヴィウス(Balovius):オローニン中流域にある小都市。古代の石の樹から採られた巨大な幹、一本の巨大な柱により、この都市の大評議場は特色付けられる。

青の城(Castle Blue):オローニン湖の霧によって覆い隠された「秘密の城」で、カルマニアのシャア達に王者の力を授けた神聖な祖母、カーマインを含めた魔法的な力を持つ種族の館である。他の「秘密の城」と同じように、大部分の定命の者は、この城に近寄る事が許されない。この城は、完全にこの世に存在しているわけではないのだ。「先陣」サイランティールが「青の城」に入り、二度と戻らなかったと言われる。彼の息子カルマノスがカルマニアの王家を創始する為、「城」から戻ってきた。「第三期」の初め、「青の城」は、「赤の女神」が世界を再形成しようとした時の神秘的争闘の舞台であった。「女神」は「古来の神々」の抵抗を払って、自分が存在する権利を証明したのである。

真鍮山脈(Brass Mountains):無教養で粗野な住民にはタラコーロス(Tarakolos)と呼ばれる。この山の背の高い、黒曜石と花崗岩の峰は、今日の「西域」政治区分の背骨となっている。この地でカルマノスは「真鍮の獅子」を追い詰めて倒した。貴族の狩猟隊が、盛夏に彼のこの業績を見習い、「真鍮の獅子」を捜し求めるが、この獣は今日では数少なく、用心深くなっている。

ブリーヌス(Brinnus)寺院:最初のシャア、カルマノスの首都であり、今日では主としてマギの組織による宗教中心地とされている。彼等のイドヴァヌス「大寺院」は彼等の組織に属さないいかなる者にも門を閉ざしている。この地でハイエロファント(訳注1)は、「叡智の王」について説教し、彼の意志を託宣する。

焼け焦げた城壁(Burntwall)廃虚:この最後の、誇り高き大カルマニア帝国最後の首都は「光の四本矢の戦い」の後、「赤の女神」の手で焼き払われた。その全盛期にはシャアダーシュ(訳注2)と呼ばれたが、ここにあった宮殿は今では廃虚であり、何も支えず宙に伸びている列柱の在る空虚な中庭があり、柱は一面が骨のように白く、もう反対の側は黒く焼け焦げている。焼死した廷臣達や近衛兵達の煤で黒ずんだ痕跡が未だに視認でき、壁の内側で音を立てている。夜、彼等は不浄な物事を、敢えて耳を傾ける僅かな詩人達や、狂人、夢想家達に囁きかけるのだ。

カルマニア(Carmania):「第二期」の文献はオローニン流域の事を「カルマニア」の語と照応させる。この地はカルマニア「古代王国」の中心地である。今日、この言葉は「西域」地方と同じものとして、より一般的には用いられる。



デンデーノ(Dendano):オローニン川がポラリストールに流れ込む所にある一都市で、北岸にバーントウォールの光景を望む。この都市の波止場は最近、「淡水海」の交易が始められると共に、繁栄している。

デザルポーヴォ(Dezarpovo)寺院:「涙の家」と呼ばれるこの寺院は、数世紀の放棄の後、第零ウェインに「赤の女神」によって修復された。そしてこの寺院は「苦痛のカルト」の中心地である。ゲーラ女神の信者は自らを不具にする忌まわしい儀式を行う為に、「降臨のピラミッド」に集まる。

エンシール(Enthyr)廃虚:スポル帝国の以前の首府であり、「第二期」の初めの頃には暗黒の女神オクターキ(Oktaki)が宥めるため祭られていた。その荒廃した霊廟と犠牲を捧げる祭壇は、スポルの黒い時代の、暗い記憶の証として存在している。

ハーグ(Hagu)秘密の廃虚:この荒涼とし、見捨てられた死者の都は亡霊であり、「時」と「空間」の内に喪われている。この都市の住人は「ナーサの井戸」に生け贄として捧げられ、神の恵みを受けて生き残った者や、「老いさらばえし軍勢」の焼け焦げた「灰男」達、など、これよりも更に奇妙な者達の、「地界」の影である。この都市の空は真っ暗で死んでいる。水は塵の如く、枯れ果てている。ハーグは「希望」以前の場所であり、従ってこの絶望に抵抗する事が出来る者の「希望」の源である。ハーグを訪れる機会があった旅人の大部分は戻って来ない。(訳注3)

ハリージュ(Hariij):オローニン下流の都市。ハリージュの「飢えし者」達は「灰色の時代」にレンダーシュによって解放された。この出来事を祝う大衆の祝宴は、毎年の夏至に行われる。そして人気のある観光客の見世物になっている。

ハーヴィソス(Hurvisos):オローニン湖南西にある小都市。この市の貴族は雄牛神バイソスの血を引いている。

ジェルナーフ丘陵(Jernalf Hills):オローニン流域東方の木の生えた高地。この地帯中央部に、ジェルノティウス山が頭を出している。

ジェルノティウス山(Mount Jernotius):この「神聖な山」の七つの峰は「七柱の高き神々」の顔を教えているとされ、そうであるとこの山の信者は主張する。山の斜面には山の賢人達、禁欲的なジェルノティウス崇拝者の居住地が存在する。ジェルノティウスは「神代」にこの地で「啓発」を教えたラーショランの化身である。ある選ばれた一団は放浪を行う修道士となり、神秘的平和と完成の体現者となる。彼等は「高き神々」に専任された司祭であり、ペーランダ一帯で崇められている。

ジョール(Jhor):このオローニン流域西方の、荒々しい高地は「第二期」初頭のカルマニア人の解放者達に感謝するペーランダの諸都市から、カルマニア人に与えられた土地である。ジョールに在る数ある城塞は、森やごつごつした岩場の中に隠れており、カルマニア貴族階級の最古の本拠地である。そして古きカルマニアの、厳粛な伝統の価値体系は、この厳しい土地によって形作られたのである。この地域は四つの「西域封公領」(訳注4)の一つの中枢であり、「禿頭の」ハラザルアに統治されている。(訳注5)

カレーシュ(Kareesh)寺院:ダールセン高地のこの地域は、ウェンダリアの時代以来の聖なる庭である。そして今日、カルマニアの宗教詩において、「カレーシュの極楽」と言う言葉で、喧伝される。

ケンデソス(Kendesos):オローニン上流のこの都市は、かつて「青の王」(訳注6)によって治められていた「苦痛の都」であり、彼は非人間的な冷酷さで有名であった。彼の操る魔道は、彼に抵抗する人々を助けようとする「高き神々」を阻み、それはジェルノティウス、ダクスダリウス、バイソスによって「青の王」が殺され、彼に仕える「青の民」が「淡水海」の水の底に沈められるまで続いた。この都市はカルマニア最大の国立学院の本部であり、この都市でヴィジアー達は「古代王国」の「黒の法」と「白の法」の解釈を学ぶ。

ケセリア(Keselia):オローニン湖からオローニン川が流れ出す場所にある小都市。

カイトール(Kitor):この伝説的な「真鍮の都」は、ジャラルド山の崖状に見える斜面の上に載っている。「第二期」ペローリア最強の軍事力によって建てられた、都のそびえ立つ光塔(訳注7)や真鍮の天蓋は、花崗岩、大理石、黒曜石の防壁の頭上に伸びて輝いている。都市外縁部の過度に装飾的な(訳注8)建築物の間に、「第四ウェイン」における歴史のクライマックスを彩る決戦の、グロテスクな遺物(訳注9)が散見される。その時、「赤の皇帝」はシェン・セレリスを誘き寄せて、カルマニアの助けを受けて彼を打ち負かしたのだ。カイトールは「西域」、ルナー政府の中心地である。パラムタレス長官(訳注10)はここに法廷を構えており、又この都市にある「昇月の寺院」は、カルマニア全土に伸びるグローラインを保っている。カイトールの地底では、鉱山坑道の迷宮が存在し、この坑道は、「三つ目の」ピク(訳注11)と呼ばれる一柱の神のドワーフ奴隷達によって掘られた物である。古の約定に縛られて、ドワーフ奴隷達の不断の労苦は、光り輝く真鍮の武具と鎧を、数世代の戦士達の身に飾らせていた。

メグラルディンス(Megiardinth):オローニン湖畔にある都市。(訳注12)

ミンティヌス(Mintinus):オローニン湖の岸にある小さな都市。「悦楽の神」ベントゥスに捧げられた最大の寺院を見る事が出来る。その祝祭は騒々しいほど人気がある。

ナーサの井戸(Natha's Well):巨大なクレーターがハーグとゲーラのピラミッド(訳注13)の間に存在する。クレーターの中心には煙を吐き出す沼地がある。恐怖の時代、「ナーサの井戸」は、その霊を宥める為、人身供犠がされるまで、疫病と死をはびこらせた。

オローニン湖(Lake Oronin):カルデラ湖で、「火炎山」の破壊された噴火口の残骸にある。オローニン王はテュロスの本拠地で彼を攻撃し、蒸気による雲が晴れた時、「火炎山」はもはやなく、その代わり、オローニン湖がその地に深く水を湛えていた。湖は霧を流しつつ、蒸気を吐き出す流れと共に絶え間無く渦巻いている。「力の神」テュロスに以前属していた、住居の内側に存在する、地下の炎によって湖の流れが煮え立っているのだ。サイランティールの時代、この湖は、魔力を持った五色の魚の棲み家であったが、「青の城の戦い」以来、湖でこの魚が取れたためしはない。(訳注14)

オローニン川(Oronin River):「神代」の初めの頃、「青の民」がウェンダリアに侵攻した。「北方」より流れ出して「火炎山」を襲ったのだ。彼等の侵入の道が、今日のオローニン川であり、この川が「ルナー帝国」と「西域」の境界を定めている。この幅が広く、緩慢に流れ、曲がりくねった川は南方の「オローニン湖」から発し、北方のポラリストールとの合流地に向かう。「オローニン流域」は今日では幸福で繁栄した「ルナー帝国」の領土で、旅人や、巡礼や、富豪、引退した者に人気のある目的地である。この川の岸辺は白い柱のある別荘(訳注15)や古代の神殿寺院や、絵の様に趣のある廃虚によって飾られている。

オステンス(Osthens):オローニン湖北方の小都市。「揺るがす者」テュロスによって開かれた裂け目で有名である。この裂け目からテュロスは巡礼の者に語りかけ、彼の司祭達が、神託の解釈を行う。

ペーランダ(Pelanda):野蛮な「アンダムの暴徒」が、南からウェンダリアを襲撃した時、彼等はペルダーの偉大な将軍、ダクスダリウスによって打ち負かされた。彼は「重装歩兵」(訳注16)戦術を編み出し、都市国家群から構成される帝国を建設した。この事が、「オローニン流域」が今日の名称であるペーランダの名前を冠した時であった。ペーランダ帝国文化は、伝説的なガーセミウス賢人王の元で栄えたが、「大暗黒」の間に堕落し、遂に、「曙」によってのみ、偉大な英雄レンダーシュの手で復興が成った。(訳注17)

ペルダー(Peldre):ジェルノティウス山の麓付近に在る小さな都市。この都市はこの地の生まれである将軍ダクスダリウスの鎧兜を保管している事で著名である。彼は「神代」のペーランダ帝国を建て、今日では「重装歩兵の神」である。

ペテラ(Petela):オローニン下流域小都市。

ラフェリオス(Rafelios):ジョールの小さな都市。本物の「秩序の王笏」が管理された故地であり、この宝はテュロスより授けられた。

スポル(Spol):この「オローニン流域」北西に位置するカルマニア・サトラップ領は、タローンド女伯爵(訳注18)ヨラネラに治められている。

タウェーノス(Tawenos):オローニン湖南東の小さな都市。古代、バイソスとエセス、「雄牛神」と「雌牛女神」の信仰勢力圏の中心地である。この神々は、飢餓状態の諸都市や絶望した生存者達で占められた、抑圧された国に、肉と穀物と麦酒を齎した。彼等は今でもウォリオン伯領と、他の地域に住む高台の地主達、兵士達、貴族達に崇められている。

ウラワー(Ulawar):オローニン川中流域の、「愛」の女神ユーレーリアを祭る世界最古の寺院を誇る小都市。この都市はルナー貴族階級に人気のある避暑地である。ここにある「矛盾の館」を訪れる事に抵抗する意志力のある者は余りいない。この場所で彼等が手にする事の出来るワインの芳香は詩でのみ表現し得る香りであり、料理を食べる事は身体を夢見心地にする働きがある。男でもなく女でもない者と性交渉を持つ事が可能であり、異界から来た生物とエジェムを踊る事も出来るのである。(エジェムはダンスの一種で、精神が溶け出す様で、聴覚の宴会でもある。エジェムを最後まで行う事で起こる事は、表現し難いが非常に楽しく、長く心に残る出来事である。)(訳注19)

ウーセネオス(Utheneos):「オローニン流域」支流の小都市。ウラワーとの歴史的紐帯が存在する。この都市の若年市民は美しさと、情熱的な恋愛沙汰で有名である。年長市民は将棋の問題に掛かり切りになっている。

ヴァルケンス(Valkenth):アリール高地の小さな都市。ドブリアンから「西域」に伸びる交易路の中継地である。

ウェンダリア(Wendaria):ペローリア西部地方の古代名。後に「オローニン流域」と化した区域を含む。ウェンダリア人は「火炎山」に住んでいるテュロス神を崇拝している。他の四つの「聖山」はこの国の境界を定めている。

諸西域領(West Reaches):グローラインに入る最西端の地域。しかし「中部地方」には属さない。

ウォリオン(Worion):オローニン流域南西のカルマニア・サトラップ領。「怒れる者」モララタップに統治されている。ウォリオンの高地地域はバイソスとエセス信者、雄牛の民の本拠地である。

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訳注
1・百人いるマギの最高位。「教主」とでも訳すか?今のハイエロファントは、ブロスタンジャン・アークムーアである。
2・外国人にはドールベリーDolebury、「悲嘆の墓」
3・巫女デヴェーリアDeveriaは「灰色の時代」(「大暗黒」と「曙」の中間)に、この都市で儀式を行い、テュロスを蘇生させたと冒頭の歴史に書いてある。
4・サトラップ領をこのように訳した。新ペローリア語では、(ペント語から採った)スルタンの事を(カルマニア語で言う)サトラップと呼ぶ事があるが、「中部地方」では、「西域」の四分領主は「伯爵」と呼んで格下げを図る。彼等をサトラップと呼ぶのは「西域」の住人と摩擦を起こしたくない代官だけだろう。
5・彼はアロニウスの子孫である。
6・おそらく、ヤー=ガンYarGan
7・ミナレット
8・バロックの
9・ルナー魔術で石化した遊牧民戦士
10・総督?
11・Three Eyed Piku。壊れたドワーフ。「青い額目」カルト(ニーダン山脈に迫害されている鍛冶師の秘教カルト。フロネラに本拠あり)の頭
12・この都で「青の城の戦い」が始まった。
13・Dezarpovo
14・Tales#13の記述に、ヤー=ガンがオローニン王を殺してからの「暗黒」の神代においても、魚が採れなかったと記録にある。
15・ラテン語のヴィラ
16・ホプライト、古代ギリシア「民主的」都市国家が誇った軍装と構成である。この事で、ペーランダと「太陽絶対崇拝」ダラ・ハッパの関係を考察してみるのも面白い。
17・「小暗黒」で繁栄した国家はヴィングコットの王国や南方のアートマル帝国、そしてこのペーランダ帝国であり、彼等はいずれも太陽の失墜と嵐の時代の到来を歓迎した。
18・「鉤爪の」?サトラップ夫人?Nick氏によると、中国清朝の女性のように長く爪を伸ばしているらしい。
19・ダラ・ハッパ人やルナーはこの事でカルマニア文化を批判し、又政治的利用もしているのだろう。


オローニン流域

この地域における出来事の表
各都市で一週を経る毎に、決定する事。グローランサ:ジェナーテラ大陸セットのジェナーテラブックに記述されたカルマニア(流域西岸)とペローリア(東岸)の出来事表を併用してもよい。

よくある出来事
・ 「中部地方」からの裕福な旅行者が訪問し、観光を行い、地方の祭事を楽しんでいる。
・ 敬虔な巡礼が、都市を通過して、付近の社か聖地を訪れる途中。
・ 司祭達が古風な趣のある儀式を行う。観衆が集まり、祭儀は宴会とお祭り騒ぎで終わる。

滅多にない出来事
・ 一人の宗教指導者がこの地域を通過し、弟子志望者や古めかしい装束の論評家に囲まれている。
・ 小船に乗った避難者が、国境警備隊の激しい捜索の元に、裁きを逃れてオローニン川を渡る。
・ 無法者達が近隣を襲撃する。巡回兵が配備され、都市民はよそ者に対して疑い深くなる。
・ 地域統治者が自分達の歳入を増すために、新しい通行料、関税、租税等を導入する。

非常に稀な出来事
・ 「青の城」がオローニン湖の霧間に僅か姿を見せる。湖沿岸の諸都市は、祈祷と生け贄を捧げる事になる。
・ 本格的なダート戦争が暗殺と襲撃も込みで、二つのカルマニア「高家」の間で勃発する。
・ 向こう見ずな旅行者の一団が、バーントウォール、ハーグ、若しくはこれらと類似の地点を訪問中、姿を消す。
・ 「西域総督」がカイトールで裁判を行う。カルマニア貴族は、これに参加するためカイトールへの旅に出なければならない。

冬の出来事(闇の季と嵐の季のみ使用)
・滅多にない出来事−深い降雪が地域全体を襲う。旅を行うのは困難、もしくは不可能。
・ 滅多にない出来事−一体の「氷の魔」が、付近の丘陵地帯を徘徊する。地方民が「魔」を退治する遠征を行うため、集まりを持つ。
・ 非常に稀な出来事−オローニン川が凍結して、氷が歩いて横断するのに充分なくらいになる。辺境地の行政府は、開拓を行うのを中止する

ウェンダリアの聖なる山々
上古のウェンダリアは五つの聖山によって境界が形作られていた.ジャラルドが北岳、カーガランが東岳、ゲスティヌスが南岳、ドブールが西岳であり、「火炎山」がこれら山岳の属する国の中央に位置していた。五岳の全てが火山帯の内で一際秀でて高く、よってテュロスを祭っていた。

ジャラルド山Mt. Jalardo:「真鍮山脈」で最大の山が、その険しい断崖の影にカイトールの都を潜めている。

カーガラン山Mt.Kagaran:今ではジェルノティウス山と呼ばれている。ジェルナーフ丘陵帯の中に在ってその峰にはペーランダの「七大神」の玉座が存在する。

ゲスティヌス山Mt. Gestinus:ヨルプ山脈の最北の峰は、最早この火山帯において最大の山ではない。「神代」の競争で、 その兄弟達によって追い抜かされてしまった。

ドブール山Mt. Dobur:この目を引くが比較的小さな、泡のようなドーム状の岩は、ウォリオン丘陵に在るアジャーク市の付近に存在する。

「火炎山Mt.Fire」:「神代」初頭、一つの巨大な火山がウェンダリアの中央に聳えており、「聖なる五岳」の内で群を抜いて、盛んであった。この山岳が「力の神」、テュロスの家であり、オローニン王と「青の民」の襲撃まで立っていた。霧が晴れた後、最早「火炎山」は無く、その代わりに水深きオローニン湖がその場所に出来ていた。

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オローニン流域の一般的な神々
テュロスTurosとオリアOria:この二柱の人気のある神性は、ペーランダの神々の中で最も偉大である。そしてオローニン流域の大部分の農夫、一般民、職人によって、一緒に信仰されている。

テュロスはペーランダの「大神」であり、多くの姿と性格をとって顕れる。そして円柱、王笏、槍、松明と関連付けられる。テュロスは「力の神」であり、彼が山を興し、谷を刻み、最初の寺院を作り上げた。彼は地界でデンドロームス(訳注1)を倒して、オリアと他の「生命」の女神達を解放した。オリアが彼の后だが、テュロスは他の多くより子供達を儲けている。

オリアは「大いなる母」である。彼女の幅のある流れのような曲線はあらゆる形の栄養を内包しており、その為に彼女は雌牛、雌豚、雌羊の女神として適切な形で祭られる。オリアの信仰は「古き大地」の忘れられた諸力に対する古代の儀式を含んでいる。彼女は多くの夫と息子を持ち、大抵は彼等と結び付けられて信仰され、「ルナー帝国」において最も広範に祭られる神々の一柱として、その寺院は「中部地方」と、更に遠方まで存在している。

カーマインCharmain:「青の城」から到来した謎めいた女神。カルマニア人にとって、カーマインは「預言者の母」であり、「統治権の精霊」である。彼女は「先陣」サイランティールのアケムの軍勢に「カルマニア人」としての自覚を与え、サイランティールとの息子、カルマノスが、ペーランダ全土に与えられた秩序であったのだ。
オローニン湖の周囲の諸都市は「解放者達」の霊感としてカーマインを信じている。この英雄の一団は、初代のカルマニアシャア大王と、「現代」におけるアロニウス・ジャランティールと「赤の皇帝」を含めている。
オローニン流域の川の民は、カーマインを彼女の持つ水の支配力から信仰し、速やかな旅路と、好ましい流れと、豊かな魚を求めて祈りを捧げる。(訳注2)

「高き神々」
これらの七柱の神々はジェルノティウス山周辺で共に祭られるが、独立したこれら神々のカルトと寺院も、大部分のペーランダ都市で見出される。「預言者」イドモンは「高き神々」の信仰儀式を教えたが、それらの内幾柱かは、「神代」に殺害されるか、消え失せた。レンダーシュは「曙」で世界が生まれ変わった時に、これらの神々の儀式を再び制定した。

「高き神々」:名を挙げれば、「解放者」ジェルノティウス、「美徳の女神」デンダーラ(訳注3)、「秩序の神」イドヴァヌス(訳注4)、「愛の女神」ユーレーリア、「喜悦の神」ベントゥス、「成功の女神」オリア、「力の神」テュロスである。(訳注5)

ジェルノティウスJernotiusは「偉大な教師」であり、「変転の神」ラーショランの転生である。(訳注6)男神であり、女神でもあり、ジェルノティウスは頻繁に性別を変えていた。他のどの神もこのような事は出来なかった。
しかしジェルノティア(ジェルノティウス女性語形)は、単に自分の持っているのに使う事の無い多くの奇妙な力の一つとして、大して重要な物だと考えなかった。ジェルノティウスは自我の抑制、厳格である事と、贖罪の苦行を自分の信者となった山の賢人達に教えた。

「高き神々」は古代ペーランダのパンテオン万神殿を構成していた。上古の時代には、ジェルノティウスの智慧は遠方まで、広く深く伝播していた。他の神々はジェルノティウス山の元の彼の足元に座る為にやって来て、学んだものだった。彼等は「ジェルノティウスの輪」を創り、これらの神々が裏切られ、殺害されるまでは、古代ペーランダは「輪」により守られたのである。「輪」の全てのメンバーがそれぞれ個別に他の場所で信仰されているけれども、今日では全「神殿」が祭られるのは、ジェルノティウス山周辺の原住民によるものに限られている。

「戦争の神」ダクスダリウスと「均衡と天罰の女神」ナーサは「神代」の期間に強いてこの「輪」に加入し、この二神の信者には今でも「高き神々」の一員と見なされているが、レンダーシュがイドモンの上古の儀式を(訳注7)復興させた時、この「輪」の万神殿における座から滑り落ちた。

バイソスBisosとエセスEses:「雄牛の父」と「雌牛の母」の信者は主に農民だが、多くの貴族、兵士や地主もこの「聖夫婦」を信仰している。これらの者は祖先を彼等まで辿る事が出来、武器を保有し、自分自身の運勢を定める権限を主張する。バイソスは「暗黒」の後期に現れて、地上における「創造主」を助ける頭の一柱、「イドヴァヌスの右腕」とカルマニア人に見なされている。バイソスは多くのカルマニア人「貴族家系」の祖であり、「シャア大王の守護者」である。そして古からの忠実な奉仕を通して、彼は「赤の皇帝」に仕え続けているのだ。又、バイソスは人間と神々の間で伝令の使者を勤める犠牲用の雄牛、調停者でもある。(訳注8)

都市の神々:ケト=テュロスとケト=エナーリ(訳注9)はペーランダ都市の神々であり、カルマニアの時代以来の社が、諸都市に設置されている。彼等は市壁と市門を守り、共同体の秩序を整える為、民事行政官によって礼拝が為される。(訳注10)
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訳注
1・ダラ・ハッパで言う「怪物の男」
2・彼女はドラゴンパス年代記King of SartarではヴァイランVayranという名前で呼ばれている
3・ここより東方になると彼女の名前はエンテコスに変わる。彼女の惑星は南方蛮族にとってのモスカルフである。
4・太陽神だがイェルムに比べて遥かに抽象的である。カルマノスは彼を至高神まで祭り上げた。
5・バイソスとエセスは南方の蛮族の牛神である。
6・グローランサの「啓発の神」は、ペローリアのラーショラン、クラロレラのメトゥサイラ、ドラストールのナイサロール等が他に挙げられる。
7・「灰色」と「曙」の時代に
8・更に南方では彼等がオーランス/ウロックス、アーナールダ/アイリーサと同視される。牛はそもそも嵐の獣と考えられており、獅子を光の獣として捉えると、オーランスとイェルムの対立がここにも現れる。
9・Enariはペーランダ語で母親を意味する
10・カルマニアの神性の名前は、「指の女神達」やYarGanのように、ブランクを開けずに大文字を連ねる形を取る。よって、=記号で繋げ、ヤー=ガンのように表記する事にした。

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