嵐の神セトの神殿
たった今生まれたばかりのお前達が暗闇の何を知っている?
日中は太陽ラアが拷問を喜んで
人の肌を焼き、夜には墓のように冷たい生命ある暗闇が、
人間どものひ弱な影よりも実体をもって現れる
エジプトの夜のことを?俺がここにいるのは我が兄にして憎むべき敵、
オシリスが、俺を闇の中に放逐してからだが、
我々はヨーロッパの蛮人どもが腰に毛皮を巻いて
うろついているときに、既に小賢しい羽根を立てたマアトと、
善悪を見分ける術について議論していた。
マアトは俺の考え方に
耳を傾けたが、時には敵は味方よりも役に立つことがあるということを
どうしても認めようとしなかった。
そしてその時から善と悪は神々の定めるところとなった。
オシリスは最初に善を選んだし、俺は次に悪を選んだ。
しかしもちろんそれは遠い昔に死んだ悪であり、善だ。
ホルスはいまおのれの誓った言葉によって苦しみ、
俺を追った年月が暗闇に満ちていたこと、
そしてそれは彼の父が俺に与えた力であることに気づいて
苦しんでいる。
俺を裏切ったネフテュスよ。俺を欺いたイシスよ。
いとおしい俺の敵たちよ。戦くが良い。
神々の中でもっとも強大である俺の望みが歳月と共に変わり、
もはや破滅のみであったとしても
まだ無知で無力なお前たちは俺の役に立ってくれる。
お前たちの友であるはずのマアトが昔そうなるように定めたのだ。
東海岸の神官ヘイーシャ・ラハツィHesha Ruhatzeの教説
オシリスとセトの争いの神話についてはプルタルコスが書いています。
彼は五賢帝時代ローマのギリシア人で、多くの時代を啓蒙することになる伝記
や論説などを扱い、今でも多くの著作が損なわれずに残っています。
彼は神々にギリシアの名前を当ててエジプトの神話を保存しました。
「もっとも己を規定するのに重要な手段は敵の正体を見定め、
憎しみが己に力を吹き込むのを助けること」
では「神代」から数多くいた彼の敵、次いで彼の血族の者たちについて説明しましょう。
そもそも神々とはなにか?
単にカインの血の濃い血族のことでしょうか?それは違います。
吸血鬼の血は恐るべき魔力を秘めていますが、
それだけでは神々に備わる洞察力
と時間と空間を思うが侭に形作る能力は無縁のものになります。
そしてケムの地の魔力はモーゼが「燃える柴」に語りかけられるよりはるか昔の、
アベルがカインに殺される以前から存在していました。
エジプトには神々が人間どもを古くから支配し、セトはその光栄ある一族の
出身でした。リリスの子らやエンノイアの子らが光輝ある文明を軽蔑し、
壊そうと志したとき、セトは戦士たちの長であり、
彼らと正面切って戦い、撃退しました。
アモン・ラアAmon Ra:我らを睨む目
「太陽神」が老耄に陥り、敵意から自らの子供を処刑してから
セトの自らの一族に対する怒りは地界の蛇アポフィス(またはアペプ)への信仰に向かい、
追放に遭って苦難の日々を送るようになってから
セトは自らが「祖父」の凝視に他の血族よりも弱い存在であることを知りました。
炎を好む祖父によって作られた火傷の痛みがセトにまざまざとその「瞬間」と「記憶」
を責め立てる時、セト一族の腕は知らずして武器に伸びるのです。
オシリスOsiris:臆病者の兄、吸血鬼、そして幽鬼、死者たちの王
謎の人物タイフォンTyphonによって、オシリスとその子らが
セトと同じカインの一族となったことを知ったとき
セトは笑いました。彼のもっとも恐れる太陽がもはや
兄の友人ではないことに気づいたからです。
セトはオシリスに裏切りの報いを与え、
むざと両親を殺させた復讐を果たし、彼の血による子孫である
虚弱な血族達はセトの子らの強さに遭って
一たまりもなく一掃されました。
オシリスはその後「霊界」で王となったとも、不義の息子である
アヌビスに助けられていずことも知れない場所に旅立ったとも言われています。
イシスIsis:太陽から秘密を盗んだ魔女
しかしオシリスを殺してもそれで終わりではありませんでした。
血族としての彼の子らが蝿のように追い払われても、
神としての息子がまだ生きていたのです。イシスはかつてラアから神々の秘密を盗み
トートに魔術を学んで「生命の呪文Spell of Life」を編み上げました。
この魔術はミイラMummy、つまり霊魂と肉体を結び付け、記憶
を忘却から守り、セトの支配を妨害する戦士たちを生み出す
術で、セトはホルスを首領とするミイラ達とその後永劫とも言える
時を戦って過ごすことになります。何しろ彼らが何度でも死ねるのに対し、
吸血鬼は一度しか死ねないからです。
有害なるミイラ達Bane Mummiesはいかにセトがこの術を有用なものだと
理解したかを示していますが、残念なことにセトが盗んだ呪文は不完全で、
元は忠実だった彼の七人のしもべは、制御できない不安定な存在になってしまいました。
それでも、セトは忠実でない者もそれなりに役立つことを良く知っています。
地方カルトHedge Magicianの一団にしか過ぎないイシス教団が今でも
「呪文」を保有しているかどうか怪しいものですが、
セトは今でもこの呪文を欲しがっています。
アヌビスAnubis:オシリスとネフテュスの不義の息子。幽鬼(レイス)たちの番人
セトの不在の間に生まれたオシリスの子供。セトはこの不義の所産
を「霊界」に送り込んでやりましたが、アヌビスは「霊界」
でホルスの民がさまよっている間彼らを保護する番人の役目を果たすように
なったようです。彼の役目については「死者の書」
に書かれています。「狼憑き」の一氏族である
「静かに歩く者たちSilent Striders」は幽鬼という存在が変化妖怪
の存在と矛盾しているにもかかわらず、
彼を始祖の一人として崇めているそうです。
ホルスHorus:永遠の宿敵。ミイラたちの片目の首領
かつてセトに片目を抉り取られた男です。
彼はもちろん「昇華」のことについて知っていますが、
嵐の王を滅ぼすために何度も霊界から戻ってくるようです。
その行為が今では悪しきものに成り果ててしまっているというのに。
(もはや「川が南より北に流れ、二つの国がファラオの二重の王冠
によって統治される」時代はとうに過ぎてしまいました。)
彼はセトにエジプトを追い出された後
いつしかスイスはジュネーヴに住居を構えるようになりました。
そして懲りずに我々の破滅を企んでいます。
トートThoth:最強の魔術師
最も謎めいた危険な神、西欧ではヘルメス・トリスメギストス
と呼ばれています。彼の遺したエメラルド・タブレット
には宇宙の秘密が記されていると考えられており、
全ての現象を操る魔術師たちの垂涎の的となってきました。
ヘルメス教団Order of Hermesは彼の後継者であると
いわれていますが、
定かではありません。彼らはトラディションに属しており、
必ずしもセトのしもべと敵対しているわけではありません。
(トレメール族は彼らの支族らしいですが「血族」の呪いで
トートの魔術を捨てたようです。)
エジプトの「神秘文字」は古代から長年の間
セトとオシリスの一族の者だけの
秘密でしたが、彼らが秘密を暴露してしまったようです。
モロッコのクフル・アム=ヘイルQufur Am-Heru血族について語る
アンテデルヴィアン達とその僕:贋の神々
追放されたセトが出会った彼らは
第二の都市で神々の振りをしていたのですが、
もちろん彼らは神ではなく、強力な血を持った不死の者に過ぎませんでした。
それでもセトは彼らの一人に美徳を認め、彼女の血を分けてもらいました。
しかし彼らを妬む他の「洪水前の存在」に率いられた叛逆者達によって
セトの「親」が殺された後、
ラアに次いで復讐をセトに促す敵が現れたのです。
ラヴノス族、サイレントストライダー(沈黙のうちに歩む者)達
エンノイアとリリスの一族、狼憑きWerewolfは、
常にアペプ、太陽の地獄の敵を彼らの宗教上の邪神と同視して
血族を敵視してきました。しかし彼らの中でも
特にセトの一族のみを標的にして我々を倒すためには
他の「蛇の民」と手を組むことも辞さない者達がいます。
北アフリカにいた「静かに歩く者達」は昔から
オシリスの一族の同盟者でした。
また彼らにラヴノス族が密かに援助を与えていたようですが
「最近の出来事」で事態は大きく変わったようです。
「第一の都市」エノクと「第二の都市」
セトは「第二の都」のカインの子によって闇の力と血を与えられたようです。
また、第一の都市がメソポタミアのいずこかにあり、洪水によって滅ぼされたとされている
のと同じように、この都市はエジプトの辺境地帯のいずこかにあったと言われています。
しかし遺跡の場所はごく少数の者以外には依然として知られていません。
恐るべき秘密が眠っているといわれています。
ローマ帝国とヨーロッパ
最悪の敵ヴェントルーの一族が我々のグールの一人であった
クレオパトラ七世のはりめぐらした罠をことごとく破り、
アグリッパがアクティウムでエジプトのヨーロッパに対する従属を決めて以来、ヴェントルー
は常に血族の最悪の敵でした。我々はそれ以来常にローマの皇帝たちを
堕落に導き、彼らの権威を砂糖で溺れさせようと試みてきました。セトによる
速やかな打撃が加えられる前に。
カマリリャとサバト、光の蛇の一党
カマリリャはヴェントルー族に導かれた蜂の巣のような「血族」
の共同体です。彼らは知らないうちに「贋の神々」のしもべになっています。
彼らの敵であるはずのサバトは、我々の「アンテディルヴィアン」も敵視しているので
注意が必要です。
セトの民の中には古くはインドに渡り、後には「新大陸」に渡ってエジプトの伝統的な
力を捨て、蛇の新たな真実を見出したと主張する者たちがいました。
その中にいた連中の残党、「ケツアルコアトルの信者」がサバトに加わって
笑止にも我々に聖戦を挑んできています。
アンコニュ、アサマイト、黒手団
ゴルコンダを追及すると称する者達。東方の謎めいた秘密教団、霊界の新たなる脅威。
彼らは我々と同じく自らをマスカレードよりさらに暗いヴェールで覆って
活動を続けており、セトの教団は彼らに過去幾度も
損害をこうむったことを認めねばなりません。
しかし常に我々を利するものは敵から来たものです。
まもなくセトが現れてなにも知らずに内輪もめを続ける
連中を襲うことになるでしょうから。
(近年の「真の」ブルーハー族との同盟について危惧する声
はかなりありますが、彼らの不死への執着の弱さ、トロイエの子孫(「贋の」ブルーハー族)
に対する憎悪、数の少なさなどは個々人の強力さと年齢という利点をほとんど
相殺してしまっています)
ウガンダの大神官、カルトの教義について語る
嵐の道Path of Typhon:
破壊と腐敗、誘惑の毒
人間どもは、己に必要なものと己の欲望の違いを
見分けることができない。死と破滅、堕落は彼ら自身が
常に心の奥で望んでいることだ。
彼らが光に向かって伸びているように見えるときでさえ
彼らの根はその分だけ暗闇の方に伸びていく。
もちろん彼らの欲望は下に向かっているのであり、上ではない。
このことを忘れなければ
我々はたとえ狂える神を相手にしようと恐れることはない。
我々は敵に望むものを与えるよう力を尽くしている。
「恍惚の道」や「戦士の道」の異端者ですら、ケミンティーリのような
神に唾を吐きかけた叛逆者ですら、彼らは知らずに嵐の王の御心に応じて活動している。
現代の電話回線の地下水路で溝鼠のような生活をしているもの、人の夢を食らい、
麻薬を売って宗教と称する詐欺師どもでさえ
セトの手にかかれば敵に対する有用な武器になる。
嵐の王は常に策略に富んだ狩猟者であった。
不死の者の死闘:
ホルスの民(シェムス・ヘール族のミイラ)とセトの民(砂蛇のヴァンパイア)
まず両方の勢力に一長一短があることに注目するべきだ。
両者とも異なる意味で不死の存在であり、
我々は互いに人間どもの間に勢力を築き上げる時間を有している。
まずミイラは血族と異なり、彼らの肉体は弱く、
ヘカウの術も応用力がないので比較的簡単に「殺す」ことができる。
しかし彼らは我々と違って死んでしまって、肉体をどんなに破壊されても
また時間はかかっても「霊界」から蘇ることが可能であり、
また彼らは太陽の目に睨まれても平気なのだ。
それに対して我々は昼間は無力に近く、
また一度滅ぼされれば例外を除いて二度と蘇らない。
しかし我々は簡単に血を用いてグールやしもべの血族を従えることができ、
それに対してミイラを創造する「生命の呪文」は簡単に行える作業ではない。
両方の陣営がお互いの弱点と長所を知り、
この数千年もの間戦ってきたわけだ。
しかし見よ、敵は時と共に弱まり、セトは逆にますます強くなっている。
嵐の神の復活
ああ、神が戻られるときお望みのものを捧げられるよう我らは魂を尽くしている。
最初に我々の元には暗闇だけがあった。
しかし今の我々の元には全てがある。
ゲヘナが来たりしとき、ついにホルスはアペプに呑まれ
太陽は落ち、我々は勝利の美酒を味わうことになるのだ。
出展:World of Darkness 2nd Edition, Mummy 2nd Edition,
Clanbook Setite
Revised Edition Clanbook Setite
現在のセト教団の力を知りたい者、入信を望む者は
こちらに進め。畏怖すべき地下神殿が貴方をお迎えする。
関連リンク
Temple of Set World Wide Website http://www.xeper.org/pub/tos/index.html
World of Darkness: Suti Amenti http://www.iit.edu/~petemar1/wod/suti.html
Ancient Sites, Egyptian http://www.kheper.auz.com/topics/Egypt/index.html
Site of Mant's Lair (PDF plentiful volume file about Setite)
http://www.mants-lair.org.uk/indexmain.htm
オリエントの神秘主義Oriental Mysticism
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