スパの魅力
5年前にスパ-フランコルシャンへ行った(2002ベルギーGP観戦記)ときに感じたことが3つある。1つ目はコースと観客席の距離が近いこと。オールージュの席は間近で迫力があった。一方、鈴鹿はコースと席が離れすぎている。2つ目は、全戦で最長コースながら、各観戦ポイント間の移動はとてもスムーズで長さを感じさせなかったことだった。それに比べたら鈴鹿は無駄に歩く部分が多く、観戦者を考慮していないと思う。3つ目はスパではレース後にコースにお入りくださいとゲートが開くこと。ところが鈴鹿はコース乱入を阻止する学生バイトが雇われてるほどだ。果たして富士はどうか。
オールージュが分かれ目
ラップタイムはフェラーリが圧倒した。特にセクター1で顕著だった。セクター2はマクラーレンも互角だった。セクター1とはオールージュである。下りから上りにガンっと変わりながら、右・左と曲がりながら全開で300km/h超で通過していく。こんなコーナーは世界のどこにもない。ここでの通過速度が次のケメルストレートに影響する。フェラーリはモンツァで敗れたが、ここでは高速コーナリングの限界性能を生かして勝った。
マクラーレンはセクター1をあきらめ、セクター2で勝負した。150km/h前後の中低速コーナーが連続する部分だ。だが燃料を積んだ状態ではセクター1の差を詰めることは出来なかった。セクター3はあまり各車に差が出る要素はなかった。
今シーズンはサーキットの特徴にはまった所が勝つ傾向が強い。オールージュは特異なコーナーだった。ほかとは違う。富士はセクター3がマクラーレンの得意そうなテクニカル区間である。全体を通してもフェラーリの旋回性能を生かすところが少なそうだ。
リーダー・アロンソ
アロンソとハミルトンの戦いは、フリー走行2以降はアロンソが常にハミルトンを上回っていた。レースでは44周のうち、34周はアロンソのタイムが上だった。ハミルトンはドライバーズサーキットであるスパの攻略に苦しんだ。スタート時の攻防や2ストップ目の判断もあったが、もしハミルトンが先行したとしても、アロンソの攻めに耐えられたかどうか。
スパイ事件ではアロンソのeメールの証拠が大きな役割を果たした。これはアロンソがMP4-22の開発にかなり関わったことを意味する。そして、これからの3戦においても、MP4-22の性能を限界まで生かせるかどうかはアロンソにかかっている。
富士はアロンソとハミルトンともに初めてのサーキットであり、アロンソの過去の経験を生かすことはできない。だがそれよりも、フリー走行からマシンを煮詰めていく作業そのものにおいて、マクラーレンはアロンソの力に依存する影響度の方が大きいだろう。
スパイ事件でアロンソはマクラーレンを裏切ったのか。いや、何が正しく、何が間違っているかをチームのメンバー全員に示したと言えなくないか。マクラーレンのチーム内が今どうなっているかわからない。マクラーレンの精神的支柱はおたおたしているロン・デニスでなく、アロンソを中心としたチームになっていく可能性だってなくはない。
それでもアロンソは移籍するのか。FIAのモズレー会長はドライバーズポイント剥奪や2008年の出場停止もありえたと語った。だが同時に、アロンソの勇気ある提出行為をたたえた。これによりアロンソが残留する可能性は残された。アロンソはドライバー全体の中心的存在になりつつある。本人がどう判断するだろうか。
今回、ホンダは低迷し、アグリの方がレースペースは良かった。ケンサワブログによると、ホンダとアグリは親分子分の関係で厳しいもののようだ。アグリのパーツはホンダが提供しているが、不振のホンダはアグリに負けるのが嫌だった。アグリはテストでスパにフィットしたリアウィングをみつけた。ところがホンダはこのパーツのアグリへの提供を止めた。日曜のスパのレースで佐藤はバトンの後ろを走っている時にオフレコの言葉を連発していた。そして佐藤はリミッターが効いて追い抜くのが困難な状況ながら、意地でバトンをオーバーテイクしたのだった。
ライコネン4勝目、フェラーリ1-2返し
アロンソはハミルトン抑え3位、2点差
レースは結果的に予選どおりになった。ここではフェラーリに空力的な優位性があった。ライコネンはスパ3連勝を達成。スパの連勝記録は1962-65のクラークと1988-91のセナによる4連勝。
レースの焦点はチャンピオンを争うハミルトンとアロンソの戦いだった。スタートで3番手アロンソはハミルトンに幅寄せする。鋭角1コーナーを回ったところでアロンソは再び寄せてハミルトンをコース外に押し出す。だがハミルトンは構わず加速して両者並ぶ。次のオールージュは右・左と曲がるS字コーナーだから最初の右でインにつけた方が勝ち。つけなかったハミルトンはアクセルを緩めざるを得なくなかった。これでアロンソが3位を守った。もしかしたらアロンソはスタート前からこれをイメージしていたのかもしれない。
アロンソはもうひとつの秘策も出した。第2スティントの終盤にアロンソは燃料を余しながら最後のピットへ向かう。使いづらいと言われたソフトタイヤに早めに交換する。ハミルトンは通常通り4周後にピットに入ったから、逆転される恐れもあった。だがソフトタイヤはうまく機能し、アロンソは速いペースを保ちハミルトンに抜かれなかった。ハミルトンは速いソフトタイヤで差を詰めるが時すでに遅し。ハミルトンはレース全体的にブレーキングでの白煙やコースオフが多く、安定していたアロンソに見劣りした。
2年ぶりのスパはオーバーテイクが随所に見られた。クビサはコバライネンを最終シケイン前で抜く。佐藤はバトンをレコムで抜く。
ライコネンPP
フェラーリ1列目、マクラーレン2列目
エンジン交換:クビサ、フィジケラ
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