2002ベルギーGP観戦記

2002.9.4,5

2002ベルギーGPを観戦してきました。海外でF1を見るのは1991イタリアGP以来、11年ぶりです。

ヨーロッパなら、モナコ、イタリア、それに英仏独が主流でしょうが、地味なベルギーに、スパあり。ドライバーの腕がものを言うサーキットで見るのが念願でした。

8/29(木)成田→ロンドン(ヒースロー)→ブリュッセル
8/30(金)スパ・フランコルシャンでフリー走行観戦(ブリュッセルからバスで1時間半往復)
8/31(土)スパ・フランコルシャンでフリー走行・予選観戦(ブリュッセルからバスで1時間半往復)
9/1(日)スパ・フランコルシャンで決勝観戦(ブリュッセルからバスで往復、帰りは渋滞で4時間)
9/2(月)ブリュッセル→ロンドン(ヒースロー)→成田(9/3の朝到着)

日通旅行のツアー、328,000円でした。11年前にはロンドンまで14時間かかったのが、今では12時間に縮まりました。747は時速900kmで飛ぶんですね。British Airwaysはエコノミー席にも液晶TVがありました。ロンドン→ブリュッセルは1時間。

 

観戦したのは金・土・日の3日間全部です。指定席がとれたのはオー・ルージュです。遠くに鋭角の1コーナー、ラソースから下ってくるところが見えます。

金曜はこの指定席でずっと見てました。霧でヘリが飛べず、午前のセッションは10時から1時間のところが、11時から30分に短縮されました。

とはいえ、今年のスパは天候に恵まれました。雨はほとんど降りません。スパウェザーが見れないのはスパらしくないと言えますが。

オー・ルージュの底で、マシンは底面の木製スキッドブロックを削っていました。

BARとジョーダンが特にその傾向が激しく、ここで黄色い煙を上げました。おそらく重心がリア寄りなのでしょう。それはホンダエンジンが重く、車の全体バランスに影響しているのではないかと思われます。

前座のポルシェのレースでは、この底のところでブレーキランプが光っていました。F1マシンはタイムアタック時は全開です。



オー・ルージュの坂を駆け上がるジャガー。底から右に曲がります。

このコースは晴れると緑が美しい感じです。



マクラーレンは好調で、ライコネンが金曜午後・土曜午前のトップ、予選では2番手につけました。

エイドリアン・ニューウェイがスパに来ていました。新兵器を確かめにきたのでしょうか。



坂を駆け上がるジョーダン。

オー・ルージュは思ったより観客席とコースが近く、迫力満点でした。

鈴鹿の1・2コーナーよりも断然近い感じです。

オー・ルージュの頂点にさしかかったトヨタ。

頂点では左に曲がります。

タイヤバリアは二重にはりめぐらされていました。

3年前までは大事故が多発しましたが、フリー走行から決勝まで、誰もコースアウトしませんでした。底ではふらつくマシンもありましたが、最近のF1マシンは路面にへばりつく安定性があるようです。

大型スクリーンに映しだされたバリチェロのスピン。

場内放送は「バリケッロ」と言っていました。

バリチェロはこのコースを征服していない感じでした。それがシューマッハとのタイム差に現れていきました。



オー・ルージュ席に登場したミヒャエル人形。

後ろの空席は団体席のようで、日曜に紺色の集団で埋まりました(BMWでしょうか)。

シューマッハの赤一辺倒ではなく、イギリスからのウィリー・マク応援勢もたくさんいました。私の後ろの席はコロンビア人でした。

ベルギーに近いオランダ勢もたくさんいて、今年は走っていない「Jos The Boss」の旗を振り、ウォーキンショウへの恨みか「Fuck Tom」のTシャツを着ていました。


オー・ルージュを駆け上がるところを動画で見てみましょう。琢磨もがんばっていました。

琢磨(オー・ルージュ)(0.60MB)

M・シューマッハ(オー・ルージュ)(0.51MB)

スパ・フランコルシャンは、1924年に出来た伝統のサーキット。当初は1周14kmの長大なコースでしたが、1978年に6.9kmに短縮されました。それでも全戦で最も長いレイアウトになっています。

1960年のベルギーGPでは、ブリストウとステーシーという二人のイギリス人ドライバーがレース中に事故死。その前の予選ではモスが両足骨折の重傷。テイラーも肋骨・鎖骨を折る重傷を負っています。この年のスパは暗黒の週末と呼ばれました。

1985年にスパで行われたスポーツカーレース。オー・ルージュでベロフがイクスとからんでクラッシュ、事故死。

モンツァにしろ、ニュルブルクリングにしろ、古いサーキットは死亡事故と切り離せません。


土曜はマウンテン区間に行ってみました。

17戦中もっとも長く、しかもアップダウンの激しいコース。登山並みになると覚悟して行きました。

しかし、思ったより歩きやすく、すぐに観戦ポイントにたどりつけました。鈴鹿はポイントからポイントへの移動について良くないと思いました。

こちらではトイレが有料。0.5ユーロ(50セント)≒60円くらいします。中はきれいなんですが、金払うのに抵抗感を感じました。ブリュッセルの街中でこんなことはありません。こんなとき、男なら、木陰で「立ちション」でしょうか。

ハンバーガーやフランクフルトは5ユーロ(600円)とボッてます。ソーセージはうまいんですけどね。ビールはそれより安く3ユーロ(360円)ですが、いずれにせよサーキット内は高いです。


マウンテン区間、リバージュからプーオンにかけて。ここは自由席です。崖っぷちの斜面に椅子を置いて観戦する人が多かったです。

スパはドイツ国境に近いので、シューマッハとフェラーリのファンで赤一色かと予想していたのですが、思ったほどでもありません。

ドイツ人は体格がデカく、身長2mで肩幅の広い大男ばかりといった感じです。こいつらとはケンカできません。

画像を見てもらえばわかるのですが、観客の平均年齢は高いです。おじいちゃんもいるし、パパが息子とともに観戦というのも多かったです。女性は少なかったですね。

ヨーロッパの本場のグランプリの違いを感じました。


琢磨は金曜午前に7番手だったが、金曜午後15番手、土曜午前16番手、予選16番手と冴えません。

決勝前のパレードで、私の隣にいた人が振る日の丸に気づいて手を振ってくれました。でも心なしか元気ありませんでした。

向こうの雑誌には、来季ジョーダンの第三ドライバーと予想されてしまいました。アーバインが古巣に戻るからとか。

なかなかピントの合った写真がとれなかったけど、このクルサードは比較的まともに撮れた方。

プーオンは複合コーナー。2つ目を全開で駆け抜けるのがポイント。脱出速度を高くしてストレートの最高速を稼ぐ。

琢磨のプーオンでのライン取りの他との違いを動画で比べてみてください。琢磨が縁石を目一杯使ってないことがわかります。

琢磨(プーオン)(0.58MB)

トゥルーリ、ハイドフェルド(プーオン)(1.37MB)


ここはS字のファーニュを抜けてスタブローへ向かう低速コーナー。自由席でもかなり間近に見ることができます。ここら辺の区間はどれもバリバリ言ってて、TCS効きまくりです。


日曜朝のウォームアップではケメルストレートの自由席で見ました。

本当はストレートエンドのレコムで見たかったのですが、見れるところは埋まってしまっていました。みんな朝早くから来てるんですね。

だけど、バリチェロに歓声を上げて、シューマッハをやりすごすなど、区別がついていないみたいでした。

午後はオー・ルージュへ戻りました。オー・ルージュという名は、下を流れる小川から来てるそうです。

ついに出走しなかったアロウズでしたが、ブースだけはあり、3人乗りマシンも展示してありました。これで銭を稼ごうとてか?

レース結果はご承知の通り、M・シューマッハの独走優勝でした。

オープニングラップ(オー・ルージュ)(1.37MB)

レース自体はかなり単調でした。追い抜きはビルヌーブがマクニッシュを抜いたくらいでしょうか。モントーヤはライコネンのミスに乗じた感がありました。

決勝のウィリアムズBMWは、オー・ルージュを上るとき、バリバリ言ってました。アクセルを戻してTCSが効いたようです。オー・ルージュでバリバリ言ってるのはウィリだけでした。向こうの雑誌によると、FW24シャシーは失敗作で、ジョーダンにも劣るそうです。ザウバーを真似たフロントと、フェラーリを真似たリアはミスマッチだったとか。終盤戦は期待できないかも。モントーヤは6PPを獲りながら未勝利に終わるか?

一方、M・シューマッハは、大差がついたレース後半、オー・ルージュでアクセルを緩めながら走ったのがわかりました。ホンダやルノーなどたくさんのエンジンが壊れた中、セーブしたのでしょう。

チェッカーとともに金網の穴をくぐり、コースに乱入しました。表彰台でシューマッハを間近で見ることができました。その時、シューマッハがものすごく嬉しそうな顔をしているのを見て、ちょっと感動しました。シューマッハはここで勝ちたかったんだな、と思いました。前戦は譲ったが、このドライバーズ・サーキットで腕の違いを見せつけたかったのでしょう。

ドイツ国歌(表彰台)(1.37MB)

表彰式は大勢のファンの中にいて、ちょっと恐かったです。TVカメラがファンを映していたので、そこに映ろうと必死に手を上げましたが(^o^);


シューマッハは記者会見の後、再び観客の前に出てきて歓声に応え、両手で投げキッスを送りました。

このシーンはTVでも映ってなかったでしょう。観戦した人もあまり知らないんじゃないかな。

スターティンググリッド、ポールポジションの位置です。穴ぽこがあります。これがフライングを感知するセンサーでしょうか。

レース後のパルクフェルメ(車両一時保管所)でF2002を見つけました。

ジョーダンのピット前で見知らぬヨーロッパ人に写真を撮ってもらいました。

(実は、カメラ持って逃げられるんじゃないかとヒヤヒヤしてました)

アロウズのピットは一応用意されてはいました。

鋭角の1コーナー、ラ・ソース。

再び、オー・ルージュ。坂の下から見上げるところ。

オー・ルージュの坂の上から見下ろしたところ。

底にあるスキッドブロックが削れたところ。

おまけ
タバコを吸うヨーロッパの若い女性。

私もタバコを吸うのですが、禁煙が徹底しているヨーロッパでは難儀しました。成田からブリュッセルに着いて15時間ぶりに一服したら、高校生で初めて吸った時のように頭がクラクラしました。

向こうではやってたのか、あちこちでやってた賭けごと。3つの小箱に1つだけ球を入れてかきまぜ、どの箱に球が入っているかを当てさせるもの。40ユーロ(5,000円)を賭けてはずれる人もいたりしました。

これをサーキットの狭い通路でやられるから、人の渋滞になってました。

夕食はブリュッセルの街頭にあるレストラン。道にテーブルを出してあり、外で食べます。

クラリネットやアコーディオンの演奏をする人が来たりして、ヨーロッパ的な雰囲気をかもしだします。

この季節の旬はムール貝。鍋にスープとともにたくさん入ってます。これは17ユーロ(2,000円)と高いです。

ピザやパスタは10ユーロ以下でおいしいのが食べられます。

レストランは夜遅くまでやってますが、買い物の店は早く閉まってしまいます。ベルギーはGODIVAのチョコレートが名物ですが、日本にも店が出てるからそんなに有り難味はないかも。

空港の書店で買った新聞・雑誌・ペーパーバック。

新聞はイタリアの有名な「ガゼッタ・デロ・スポルト」

雑誌はフォーミュラ1マガジンの英語版とドイツ語版。

ペーパーバックはエンツォ・フェラーリの本、シド・ワトキンス博士の本、メカニックの本など。

空港の小さな書店でこれだけ買えるんだから、ロンドンのモータースポーツ専門店はさぞすごいんだろうなぁ。

次はイギリスGPにしようっと。

ヨーロッパは30度になっても湿度が低いからすごしやすいです。ホテルの部屋にエアコンがありませんでした。成田に帰ってきたとき、そのむし暑さに、アジアの亜熱帯の国に帰ってきたんだなぁと思いました。

9.5追加
これがブリュッセルにある本家「小便小僧」です。毎日服が着せ替えられてます。

小便少女というのもあるとか?

ヨーロッパっぽい風景。F1→ヨーロッパ→歴史と伝統です。

ルノーやメルセデスは100年近い前から自動車レースをやってます。モータースポーツが文化になってるのに日本はかなわない感じです。

F1のあり方について考える時、ヨーロッパのレースを見ることをお勧めします。最新マシンのテクニカルな面だけにとらわれず、背景を理解したいと思ってます。