ちょっとしたコラム      
               
04.7.24付


バース(阪神)、4割への挑戦

 1985年に打率.350、54本塁打、134打点の見事な成績で三冠王に輝いたランディ・バースは翌86年も変わらぬ打棒を発揮した。すでに前年の大活躍で「神様、仏様、バース様」とまで阪神ファンに崇め奉られていたバースだったが、86年はさらに伝説的な活躍を見せたのである。

 バースが阪神に入団したのは83年。この年はオープン戦で骨折して出遅れたが、シーズンに入ると次第に調子を上げ。最終的には打率.288でリーグ2位タイの35本塁打を記録した。84年は一時帰国で長期欠場したが打率.326、27本塁打をマーク。初めてフルシーズンをこなした85年は前述のように三冠王と最高の1年を送った。そして迎えた4年目のシーズンが開幕した。

<85年までの成績・赤字はリーグ1位>
  試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 四死球 三振 打率(順位)
83 113 371 69 107 15 0 35 227 83 0 44 57 .288(21位)
84 104 356 57 116 16 0 27 213 73 1 47 64 .326(4位)
85 126 497 100 174 21 0 54 357 134 1 70 61 .350(1位)
343 1224 226 397 52 0 116 797 290 2 161 182 .324

 4月4日の大洋との開幕戦では5打数ノーヒットに終るが、5-0はこの年これが最初で最後となる。翌日早速2安打し、6試合目となる10日のヤクルト戦で3安打して打率.304とした。続く12日の巨人戦で4打数1安打に終わり.296と後退するが、3割未満もこの日が最後。17日の大洋戦で3割に復帰すると二度と3割を割る事はなく、その打率は上昇を続けた。5月3日の巨人戦から10日のヤクルト戦まで6試合連続で2安打以上で、打率を.366まで引き上げた。

 その直後の7試合では4試合にノーヒットと調子を崩し、18日には.314までダウン。だが21日のヤクルト戦から7試合連続安打と立ち直り、.336まで戻す。さらに1試合ノーヒットを挟み、31日の大洋戦では4打数4安打の固め打ち。打率は.346に引き上げて開幕以来初めて打率トップに立った。この試合と翌6月1日にかけては日本タイ記録の4打席連続本塁打も記録している。

 さらに6月3日の巨人戦で4打数2安打、翌日も5打数4安打と打ちまくり31日からの4試合では実に16打数12安打の大暴れで打率は.369に跳ね上がった。10日の中日戦で8度目の猛打賞となる3安打して3割7分突破。12日からは連続試合安打で打率はさらに上がり続けた。26日の巨人戦で5打数3安打して3割8分突破、7月1日の大洋戦で4打数3安打して3割9分突破。そして驚くべきことに翌2日には5打数4安打して一気に4割を突破したのである。1試合3安打以上は3試合連続14度を数えていた。

 この間にバースは打率以外の部門で2つの大記録を達成していた。6月18日から日本タイ記録の7試合連続本塁打、そして日本新記録の13試合連続打点をマークしたのである。
 4月3本、5月7本で5月末では10本塁打とスローペースのバースだったが、6月に入ると最初の10日間で5本とペースを上げ、そして18日からの量産に結び付けた。7試合連続が懸かった26日の巨人戦。4打席目までホームランは出なかった。そして5−5の同点で迎えた8回表。江川が渾身の力を込めて投げ込んだ直球をバースは打ち返した。ライトスタンド最上段に弾む決勝22号。72年王貞治(巨人)の記録に14年ぶりに並ぶ一撃だった。

 本塁打と平行して伸びていた打点の連続試合記録は、本塁打が7試合連続でストップした後も続き7月2日の大洋戦で11試合連続打点のセ・リーグ新、日本タイ記録。翌日も2打点であっさりと12試合連続の新記録を達成した。バースは4日の巨人戦で記録を13試合まで伸ばし、これは今でも破られていない。
 結局大暴れの6月は驚異的な月間打率.468をマークして文句なしの月間MVPに輝いている。

<バースの7試合連続本塁打、13試合連続打点>
  カード 成績 打点 本塁打     カード 成績 打点 本塁打
6/18 ヤクルト 4打数1安打 1打点 16号   6/27 ヤクルト 3打数1安打 1打点  
6/19 ヤクルト 5打数3安打 2打点 17号   6/28 ヤクルト 5打数3安打 3打点 23号
6/20 中日 4打数2安打 2打点 18号   7/1 大洋 4打数3安打 1打点 24号
6/21 中日 3打数1安打 1打点 19号   7/2 大洋 5打数4安打 1打点  
6/22 中日 3打数1安打 3打点 20号   7/3 大洋 4打数2安打 2打点  
6/24 巨人 5打数2安打 3打点 21号   7/4 巨人 3打数2安打 1打点 25号
6/26 巨人 5打数3安打 2打点 22号   7/5 巨人 3打数1安打    

 7月2日の大洋戦で5打数4安打して3試合連続14度目の猛打賞。この時点でバースの打率は.402となった。7月8日には.407まで打率を上げたバースは13日の中日戦まで4割台をキープ。これは出場69試合目で開幕以来の4割台保持記録としては歴代4位となった。
 7月17日の中日戦で4打数ノーヒットに終わり、16日ぶりに4割台を割って.399となった。この試合から打撃に変調をきたしたバースはオールスターを挟み29日の巨人戦まで5試合連続ノーヒット。打率は.376まで下がった。しかし30日の巨人戦で2安打するとたちまち復調。この試合から11試合連続ヒット、うち8試合に2安打して8月12日時点では.399と限りなく4割に近付いた。

 だが翌13日から2試合連続ノーヒット。16日には.387まで後退した。その後一進一退を繰り返し、残り10試合となった9月26日終了時点で418打数165安打の打率.395となっていた。残り10試合、1試合4打数で計40打数とすれば18安打で打率.3995、切り上げでギリギリ4割に手が届く。40打数18安打は打率にして.450が必要だ。ヤクルト戦2試合で3安打、広島戦3試合で3安打。ヒット2本は出ても3本目が出ない。打率は現状維持で試合数のみ減っていった。

 続く巨人戦4打数1安打、そして大洋戦の4打数ノーヒットで4割は絶望的になった。それでも日本最高打率更新と言う目標は残った。10月9日の広島戦で2安打した事により、残り2試合で7打数ノーヒットでも新記録となる事が確定した。翌日の広島戦ではノーヒットに終ったが、14日の最終戦では2安打して有終の美を飾った。最終打率は.389で、クロマティ(巨人)は実に.363をマークしながら2位に泣いた。

  カード 成績 打率     カード 成績 打率
9/27 ヤクルト 3打数1安打 .394   10/4 巨人 4打数1安打 .393
9/28 ヤクルト 5打数2安打 .394   10/7 大洋 4打数0安打 .389
9/30 広島 3打数1安打 .394   10/9 広島 4打数2安打 .390
10/1 広島 1打数0安打 .393   10/10 広島 3打数0安打 .388
10/2 広島 4打数2安打 .394   10/14 大洋 4打数2安打 .389

 最終的には日本球界初の4割打者は夢に終った。しかし1970年張本勲(東映)の.383を破る堂々のシーズン最高打率記録であった。この記録にイチロー(オリックス)が挑み、94年に.385、00年には.387とあと一歩まで迫ったが破る事は出来なかった。張本の記録は19年ぶりの、そしてバースの記録は16年ぶりの日本記録更新だった。それから18年目にあたる今シーズン、周期的にはそろそろ新記録が出てもいい頃なのだが・・・。

<月別成績>
  打数 安打 打率 通算打率
4月 62 20 .323  
5月 94 34 .362 .346
6月 79 37 .468 .387
7月 58 20 .345 .379
8月 78 34 .436 .391
9月 58 24 .414 .394
10月 24 7 .292 .389
453 176   .389

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