「好ましい行動」と「好ましくない行動」を教える方法
(1).社会的に好ましくない行動とは?
社会的に好ましくない行動のパターンを分類すると、
- 多動やパニックといった、行動自体が異常なもの。
- 他人に「心」があることを理解していないために、とってしまう行動。
- 他人の「心」を正しく把握できないために、とってしまう行動。
- 自分が、他人の「心」を正しく把握できていないと認識しているがために、とる行動。
1は、加齢とともに落ち着いていくので、「好ましくない行動」をやめさせる方法で対処します。
4は、いわゆる「問題行動」で、二次的な障害や他の病気とも関係していくものです。といっても、必ずしも、「ひきこもり」等のマイナス方向に向かうとは限りません。普通なら自然にできて当然の「社会的に好ましい行動」や「他人への気遣い」を、大変なエネルギーを費やして、努力して獲得しなければならないのです。その精神的苦痛や、「〜すべき」といったルールに固執して周りとの摩擦を生じてしまうことにも、配慮する必要があります。
2と3については、絵を使う方法が効果的です。
(2).「好ましい行動」と「好ましくない行動」を教える方法
@.「相手の心」に気づかせる
「人の嫌がることをしない」といっても、相手にも「心」があると解らなければ、自分のとった行動が好ましいものかどうか学習することができなくて当然です。
「心」という抽象的な概念を教える為には、絵を利用します。その絵に表わされる象徴的な意味を学習し、行動に結び付けます。
まんまるハート:自分が好ましい行動をした時の相手の心
ギザギザハート:自分が好ましくない行動をした時の相手の心
ハートがいっぱい:とっても好ましい行動をした時のみんなの心
第一段階 ひとつひとつの行動について、どのハートになるか、評価する。 第二段階 一日の行動を振り返り、自分で考え、評価させる。 第三段階 まんまるハートが増えていく喜びを実感させる。
A.他人の行動や表情の理解
子供に、社会的にふさわしい行動をさせようとして叱っても、学習効果が上がらないのは、何故でしょうか? それは、教える内容が難しすぎるからです。大抵の場合、大人は大事なプロセスをぬかします。まず、子供と同じレベルに立つという。
- 子供が、人のとった行動や表情をどのように解釈して、どう評価しているか知る。
- 今現在、どのような点に興味を持ち、どのようなところが間違っているか知る。
- 問題点を見つけて、何を教え、指導すれば良いか把握する。
上の1と2、つまり、「子供から教わる」前に、「子供に教えようとしてしまう」から、子供の方はわけが分からないままなのです。
次の絵を見て下さい。
- まずは、「何をしているところか」「どういう気持ちでいるのか」聞きます。
- そして、素直な印象を言ってもらいます。とんでもないところに関心を持ったり、暗黙のうちに了解しているような表記上の決まりが解っていなかったりします。
- すべてに正解があるわけではありません。どうとでも解釈できる絵を選べば、何をどうとらえているか知る手がかりになります。この人は誰だろうか、怒っているのか・笑っているのか、何を見ているのか・何かを待っているのか。といったことは、子供のモノの見方・感じ方を反映します。
- 子供の意見を聞いて、「なんだ、そんなことが解らないのか!」などと思わないで下さい。ここは、まず、子供から世界観を教わるところです。
- その中で、「明らかに間違っていること」と「社会的に好ましくないこと」については、「してはいけない」と教えます。それをすると「本当は悪い子ではないのに、悪い子にされてしまう」と。そして、それを見ているのは辛いことだと、真剣に伝えます。
挿し絵でも、写真でも、ちょっとした物語でも、使えるものは何でも利用します。ただし、話しは短めに、絵や写真は、一枚一枚別々に見せた方が効果的です。
表情については、同じ顔をするように言ってみて下さい。表現できる表情や感情の少なさに驚かれるかもしれません。でも、そういう子供なのですから、無理強いしないように注意します。
参照:使える画像集