印所街道 (瀬戸市東印所町) ▲瀬戸MENU
舟形高66cm 三面八臂 坐像 持物(宝珠・鉞斧・水瓶・宝剣・未開蓮華・独鈷杵)
舟形高25cm 三面八臂 坐像 持物(輪宝・宝剣)
【左】道標仏の馬頭観音 【中】小柄な馬頭観音 【右】立派なお堂の全景 .印所街道に沿って
瀬戸川に沿った町並みと信州飯田街道(中馬街道)を結んだ近道が「印所街道」(いんぞかいどう)です。深川神社のすぐ東を通って,水路に沿って北北東に進む道です。瀬戸川から約1kmほどゆるい坂を登って行くと,右側に立派な祠,というよりお堂が見えてきます。脇に「交通安全 馬頭観世音奉賛会」と書いた大きな看板があるので,見落とすことはありません。「馬頭観世音」と書かれた木の札も立っています。中を覗くと大小2つの馬頭観音がありました。大きな道標仏
大きい方の馬頭観音の光背には,像の右側に「西なごや」左側に「東志なの」と刻まれています。古い道標は「右○○ 左○○」と書かれている例が多いですから,「西・東」の表記は珍しいですね。しかし,どこに置かれていたものなのでしょう。右が西,左が東というのは,北から南に向かって見た場合です。印所街道を一番南の瀬戸川まで下れば,現在は右=西へ進んで国道155号&県道61号で名古屋へ,左=東へ進めば国道248号線で品野へ行けます。そうした道が出来てから造られた道標なのでしょうか。それともここより北の方に,定光寺や水野から来て信州飯田街道(中馬街道)にぶつかる道があったのでしょうか。成立年代とともに,興味が尽きません。この像は丸顔で目などの造作は線彫りであり,優しげな印象です。脇の6本の腕すべてが持物を手にしているのも珍しいですね。現在,その持物と下半身は水色に彩色されています。
この地域最小か?
もう一方の馬頭観音は舟形高わずか25cm。瀬戸・尾張旭・長久手の馬頭観音の中では最小です。小さいだけあって,蓮華座などの台座も無いシンプルさですが,ぎゅっと凝縮したような不思議な存在感があります。しもぶくれの顔立ちは小ささとあいまって,いたずらっ子が膨れっ面をしているような可愛らしさが感じられます。持物は2つしか分かりませんでした。摩滅してしまった可能性もありそうです。交通安全の守護者
祠の中には馬頭観音が祭られた由来が木の板に書かれて掲げられていました。要約すると次のようです。
明治の中ごろより陶土の採掘が盛んになり,この街道の往来が盛んになって事故も度々起こった。ある日陶土を積んだ馬車馬が何に驚いたのか,馬車夫の手綱を振りきって瀬戸川のほうへ暴走した。瀬戸川の土手にあった二つの石に車輪が挟まって止まったのだが,その石の一つが土に埋もれた馬頭観音だった。
往来の盛んなこの道で暴走したのに,この日の限って事故にならなかったのは観音様のおかげだということで,像を洗い清めて街道の一角に祭った。その後は事故も無いので,多くの信仰を集めた。馬車を止めてしまったというのですから,大きい方の馬頭観音の話でしょうか。だとすると印所街道が瀬戸川にぶつかる所に道標として置かれていたという考えが成り立ちますね。