新開地の陶原観音(瀬戸市陶原町) ▲瀬戸MENU
舟形の高さ64cm蓮華座を含み86cm 三面八臂 坐像 持物(輪宝・水瓶・独鈷杵・鉞斧・数珠)
【左】昭和の馬頭観音 【右】右の祠の中は?
交通安全祈願
国道363号線,つまり現在の瀬戸街道の「新開地」の交差点北西には信用金庫があります。そこから東へ100m,大きなバイク屋さんと資材置き場の前を通りすぎると,最初の分かれ道の角に馬頭観音が座っていました。「交通安全 陶原観音」の文字を染め抜いた幟(のぼり)が二本翻っています。変わっているのは基壇や花立,水鉢は墓石そのものなこと。馬頭観音像の代わりに棹石を立てたら,まんまお墓です。花立にも「陶原観音」の文字。舟形と蓮華座は別体に造られています。基壇の正面にも「交通安全 陶原観音」と刻まれています。そういえばすぐ脇にも「交通安全 陶原観音」の看板が…。ここまでの「交通安全」へのこだわりは何でしょうか。基壇の側面には「施主 名古屋 丹羽まさ之 昭和三十五年十二月十八日建立」と刻まれていました。想像するに,名古屋在住の丹羽さんがここで交通事故に遭って亡くなられ,身内の方(おそらく配偶者)が建立したと…。昭和三十五年(1960)といえば,戦後の混乱から脱して復興した日本経済が,高度経済成長を迎えようという時期です。馬車に代わって輸送の主力が自動車になっていたことでしょう。馬頭観音への祈りも,馬の健康に代わって交通安全への思いが込められる時代になったのですね。
現代の作品らしく,非常に写実的な造りの石仏です。40年の風雨にさらされただけでは,まだ風化が進んでいないこともあって,持物などの細部までよく分かります。目や眉に彩色された顔立ちは憤怒というより凛々しさを感じさせますが,どことなく劇画調なのも時代の現れでしょうか。
ところで,右側の祠は何でしょうか。こちらのほうも歴史を感じさせますが,しっかりと南京錠がかかっていました。