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2004年12月 EJインタビュー その2

出典:  Eric Johnson Mailing List dd 03/JAN/2005
copyright: ericjohnson.com, 2004-2005
Interviewed by: Park Street, ej-l/ericjohnson.com
Original text transcribed by: Paula Beard, ericjohnson.com
「日本語文責: 山巻 由美子」


このインタビューは2004年12月4日に収録されました。

PS: Park Street(質問者。EJの親友、本家リストオーナー)
EJ: Eric Johnson(回答者。ご本尊)


=== その1より続く ===

PS:
Carole Kingの"Pearls"では、どの曲に参加してる?
EJ:
"Pearls, songs of Goffin-King"ね。レコード全体だっ たと思うよ。1〜2曲、エレクトリックギターを使わない曲で は、やらなかったかもしれない。
PS:
バックアップアーティストの経験は、どんなものだった? 随分長いことやってないだろ、憶えてるかな? 自由だったかい、 出席さえしていれば規制されない、て具合に。それとも?
EJ:
どのアーティストのことを言ってるかによるけど。僕の 場合は、もっと色々なものをやればよかったと思ってるし、 将来はもっと色々なやりたいと思ってるんだ。
自分がほんとに尊敬してるアーティストのバックアップをするのは、全然 いやじゃないよ。Caroleと一緒にやるのはとても楽しかった し。どこかに所属している場合、自分のやりたい事がそこで 出せるような部分を見つける必要があるね。
別に、舞台中央 でやれるとか、スターとして扱ってもらうとか、そういうこ とじゃなくて。そういうのは、別にどうでもいいんだ。要は 音楽的、芸術的に、自分の才能やアイデアをうまく使うよう に要求されるかどうか。
だから、Caroleとやる時は、10分の ソロをやらせてもらうつもりはないけど、僕の持っているも のを有効に使ってもらえたら、すてきだろうと思うんだ。
PS:
じゃあ、有効利用されるのであれば、道具になることは 別にかまわない訳かい?
EJ:
当然! バックアップする相手とのコンビネーションが 良ければ、自分の才能を有効に使う場があるってことだよ。
Caroleとやってた時は、僕をそういう意味でもっと使って もらえればよかったと思うし、そろそろ他のことを始める べき時だった.....最高の形で彼女の役に立つことは出来な いなと思ってたから。音楽的に提供出来るものを提供してな かったんだ。
Cat Stevensの時もまさに同じ。この二人との 仕事には、楽しい思い出が一杯あるけど、一般的なバックを やるんじゃなく、もっと貢献出来ればよかったと思ってる。 ステージの後ろの方で一番目立たないパートをやっていよう とね。
どんなパートをやるかじゃない、重要なのは、その音 楽に自分の要素を入れることが許されているかどうかなんだ。 やめた時は、多分、続ければそれなりに楽しいけど、自分が そういう風に使ってもらえそうだと思わなかったから、やめ ようと決めたんだろうな。
PS:
他にやりたいことがあったし。
EJ:
そう、それに他の人から、いい歌手と知り合って、歌 以外のところ全部任せてもらえば、みたいなこと言われたり もしたし。
PS:
Marianiのギグで、楽しかったのは?
EJ:
San Antonioで2回ばかり、ギグやったんだ。当時Jam Factoryって名前だったとこで。そこでDeep Purpleの前座 やったんだよね。Chris Geppert (Christopher Cross)に 会ったの、その時なんだ。彼、Ritchie Blackmoreの代役に 出てたんだよ、Ritchieがその晩具合悪くなって病院に入っ ちゃったもんだから。Chrisは主催者のJoe Millerと知り合 いだったし、Deep Purpleの曲なら細大もらさず知ってたか らさ。 (((((笑))))) で、Chrisは出演した訳、こーんな でっかいアタマして(訳注: 髪型のこと)、ぼーぼーとひげ はやして、フライングV持って! 後年の彼とは大違い。当時 はほんとにハードロッカーで、僕のMarshallでプレイしたい ってよく言ってたよ。ある時さ、僕が「チャンネル2を使わ ないとダメだよ、チャンネル1は壊れてっから」って言った ら、まるで僕が彼のことをコケにすること言ったみたいに 僕をみてさ。壊れてたのはほんとだったんだけど。楽しい 思い出だよ、ギグも素晴らしかったしね。Deep Purpleの 前座を務めた時は、Ritchieが具合悪かったせいでスタート が遅れることになったんで、僕らはその分、予定より長く やるはめになったんだけど、お客さんが僕らを気に入って くれてさ! すごく楽しかった。ほんとに魔法の晩だったよ。 それで、Jam Factory再出演のオファーももらったし。 Marianiには将来性があった。10回くらいしかギグはやら なかったけど、あんな、お客さんの反応のいい、魔法の晩 があったんだよ。
PS:
ちょっと興味あるんだが、Magnetsのギグではどれが 楽しかった?
EJ:
Magnetsの方は一杯あるけど、(ノースカロライナ州 Raleighの)タウンホールでのギグが一番ブッ飛んでて、 楽しかったと思うな。あのあたりでは僕らひたすらガン ガンやってて、楽しかった思い出があるもん。
PS:
Magnetsの盗み録りテープの中でも、多分そのあたり のやつが一番交換されてると思うな。インターネットで いつも出てるもんな。誰も彼もRaleighのテープをさ。 さて、次の質問。
君はしばらく、ミキシングとプロデュースを自分の身近で やっていたけれど、いまや自分の音楽に以前とは違う感触 を持たせてもいいと思うようになっているよね。君自身は 聴衆に、前とは違う奥行きを提示する可能性が出てきたの を、いいことだと思うかい?
EJ:
レコード制作の関係者に、以前とは違う人たちを使っ てるってことを言ってるの?
PS:
これはリストからの質問だから、僕は何もわからない な。多分、君が雑誌の記事なんかで、以前とは違う感触や ノリが得られて来てるって発言したところから出てる質問 なんじゃないか?
EJ:
全く、違うスタイルの音楽を違う方法でやってるね。 いつもの3つ揃い以上のものを持ってた方が、断然うまく やれるんだと思うよ。
PS:
よーし、それじゃ、「Val(本家メンバーの一人)の 質問」コーナーに入るとしよう。まず、「アブナい聴衆 の前でプレイしたことはあるか。あれば、どうやって切 り抜けたか?」
EJ:
アブナいって、暴力的ってこと? うん、あるよ、 2回くらいね。
PS:
Altamontかい?(((((笑)))))
EJ:
San Franciscoでショウやった時だな。Extremeと、 僕らと、ZZ TopとSteve Millerが一緒だったと思う。 San Franciscoの大規模な野外コンサートで、3万人の 聴衆がいて。
僕らはExtremeの後、ZZやSteve Miller の前に出たんだ。暑い日で、聴衆はステージ近くまで ぎゅうぎゅうになってた。聴衆の間では、険悪なことが 起こり始めてたんだ。確かHigh Landronsやってる途中 だったと思う、なんか険悪になる一方でさ。まあこれも、 音楽の力の一端だとは思うけど、すごくヤバい感じにな って来たんで、今にも暴力沙汰が起こりそうな感じだと わかったから、曲を短く切り上げて、すぐにForty Mile Townに入ったんだ。
そしたら、驚きだよ! ほんとに面白 い観察だった。なにしろ、ステージから出されたものが、 人の海全体の空気をガラリと変えたんだ。際どい状況に 置かれた時は、こういう、一種の特効薬を試してみると いいんだね。必ずしもForty Mile Townが効くぞって訳 じゃなくて、空気を和らげてバランスを回復させるよう なものならなんでもいいんだけど。ほんとに効いたんだ よ! 状況が変わって、みんなが落ち着いたのがわかった もん。
もっとアブナいところでも、これは使えるカモ..... まあいつも成功するってことはないだろうけど.....でも 「もしうまくいけば」を試してみない法はないよ。そう いう選択肢はあるんだから。
PS:
次は、「客がステージに上がってきて、参加しよう としたことはあるか?」
EJ:
参加しようとしたことはないけど、ステージに上が って来たことはあるよ。殺到して来たというか。
PS:
実際にステージに上ってギグに参加しようとするギタ リストは、あまりいないと思うね。 (((((笑))))) さて、 次の質問も、同じような感じだ。「客として聴衆の中にい る時に、舞台に上がって一緒にやろうと誘われたことはあ るか?」
EJ:
Chet Atkinsの時がそうかな。彼は聴衆の中に僕がい るかわからなかったんだけど、一緒にやらないかと言った そうなんだ。
僕が会場に着く前のことで、僕は遅れて着い て、そんなことがあったなんて知らなかったから、その時 は機会を逃しちゃったけど。
PS:
Valから、今度はビジネス関連の質問だ。レコードレ ーベルを選ぶ時は、どのようにしているのか。目安にする のは、印税の分け前か、アーティスト負担金か、マーケテ ィングか、レーベルが提示する広告予算か、レーベルの評 判か、配給能力か、それともこれら全部の混合か?」
EJ:
全部の混合だね。まず、僕のやってる事が価値あるも のだと思ってくれる人、情熱を持ってくれる人が必要なん だ。必ずしも相手の好みに合わなくてもいいけど、これは イケるというひらめきを与える必要がある。
さっと計算し て「よろしい、ウチでリリースしましょう」と行く訳には いかないよ。そんな風じゃ、モチベーションを得られない からね。ほんとに気に入ってくれる人が少なくともひとり は必要なんだ。他のことは、その後の話。
PS:
Ah Via Musicomの時がそうだったね。
EJ:
そう! 肝心なとこは.....これはほんとに真実で、ギタ リストに限らず、ミュージシャンはぜひ聞いとくべきだと 思うけど、「誰かゴールまで僕を連れて行ってくれるだろう か」とか「バッターボックスまで僕のバットを持って来て、 ボール打つのを手助けしてくれるだろうか」なんて気をもみ ながら外側から見てたってダメだってこと。
傍観してても何 も起こらない、自分で起こさなきゃ。誰かがプレゼントを投 げてよこすなんてことはありえないと思わなくちゃ。何をや るにしても、自分の実力と不屈の精神しか頼るものはないん だよ。それが大前提。世の中そういう風になってるんだ。
頑 張ってれば、その内「一緒にやりたい、協力したい」って人 たちが出てくるし、そうやってる内に、気がついたらその人 たちが、「これを出せてうれしいよ」なんて言いながら背中 叩いてくれてたりする。それが世の中の動きというものだよ。 それに従うのも逆らうのも自由だけど、逆らうとしたら、大 海の真ん中に漕ぎ出て、波に悲鳴上げるようなもんさ。それ でいいことある?

Ah Via Musicomでは、ドアをこじ開けるのも電話でつかまえ るのも大変だった。レコード会社の態度は相変わらずの典型 だったし。でもそこに、Jeffery Shaneが現れたんだ。
彼は 僕のレコードを聴いて、それが何故か彼のツボにはまったら しいんだ。心に響いたんだね。
それである日、僕がリマスタ リングしてるところにやって来て、「いいかい、誰がなんと 言おうと、このレコードは素晴らしい。絶対に成功させてみ せる!」って言うんだ。何がほしいか決めて、結晶化させ、 具体化させ、自分の目の前に据えて、実現のための障害物を どうやって取り除くか吟味する。何をするにしても、達成す るにはそれが一番の方法だよ。
「そうねえ.....やりたいこ とはやりたいけど、あんな障害やこんな障害があるし」なん て言ってるより、とにかくやってみること。
Jefferyは、レ コードが心に響いたと判断して、もう成功させると決めてい て、障害物除去に動き始めてた。ラジオやなんかに執拗にコ ンタクトして、それで状況が回り始めたんだ。知的計算の領 域じゃなく、情熱の領域から来たひとりの男のおかげでね。 そうしたら、レーベルの態度も変わったよ。

PS:
今まで関係していたレコード会社たちは、Cliffs of Dover的なインスト曲なんかを、ずっと要求してたんじゃな いか? Cliffs of Doverバージョン2をやったら? いいじゃ ないか! レゲエビート版登場! (((((笑)))))
EJ:
あれ以来もうずっとヴォーカル曲を主にやってて、イン スト系からは遠ざかってる感じだね。そうい人たちは、僕の インストギター曲を聞きたいんだろうと思う。それもいいと 思うんだ、楽しんでもらえるし、音楽に花を添えるものでは あるから。でも、僕はここ何年も、単にギターをたくさん弾 く以上のことに取り組んでるんだ。
例えば、仮に、Barbra Streisandがサックスソロをやることに決めて10年頑張った 結果、素晴らしい演奏をするようになったとするじゃない。 なのにみんな「うん、素晴らしいね、でもそろそろ自分の 本領でやったら?」て言う訳。
そう言いたくなるのもよくわ かるけど、今僕が取り組む必要があるのは、再配置なんだ。 Bloomでやったみたいにね。自分ではとても満足してるけど、 ファンの中には「ギターはどこ行っちゃったんだ?」ってい う人も多いだろうと思うよ。僕からすればギターもふんだん に入ってるんだけど、それは細かい部分での話で、High LandronsやCliffsみたいにギターが駆け巡るようなもんじ ゃないからね。多分、もうちょっと入れるべきだっていう のも一理あるかも知れない。ギターも僕の持ち味のひとつ なんだもんね。
PS:
ファンてのは大抵、自分がほしいものをほしがるだけ なんだよ。
EJ:
両刃の剣だね。手持ちのものに磨きをかけるのがいい 場合も、他の要素で冒険して行くことで良くなる場合もある し、微妙なバランスなんだよ。本領からあんまり遠くに行き 過ぎても.....
PS:
.....コアなファンはひいちゃうし.....
EJ:
うん、コアなファンを失いかねないよね。冒険してる 部分は、本領ほどに強力じゃないから。だから微妙なバラ ンスな訳で、それだからレコード会社は口をすっぱくして 同じことを繰り返し言う訳。Cliffs 2をもしやるとしたら .....わかんないけど.....僕の音楽の中でのギターに関し て言えば、自分の持ってる要素や、やる気を起こさせる部 分に以前よりもっと寄り添ってやると思うし、単なるヴォ ーカルポップの曲をやるんじゃないけど、さっき言ったよ うに、Cliffs 2だというんなら、ラジオがかけてくれるよ うな形でこさえないとね。
前回とは時代も違うし、ラジオ も今じゃ当時とは全然変わってるし。ラジオのリスナーた ちにギターを聴かせようと思ったら、彼らが「おっ」と思 って振り向くようなものを出さないと。僕の当時のやつは それだけの異彩を放っていた訳だから、今度新しいレシピ でもう一度それが出来るかどうかは僕次第ってこと。
単に 同じものの繰り返しだったら、「ああこれはもう聞いた」 って言われちゃうよ。歌詞がない訳だから、それを補うだ けの何か新しい仕掛け、人の注意をひける仕掛けがいつも 必要なんだ。一番いい仕掛けは、新しいサウンドだね。 Miles Davisがそうだった。Louis ArmstrongやJimi Hendrixもね。
彼らのは有機的で価値ある仕掛けなんだけ ど、それでも他の仕掛けの99%は、リスナーの注目をひく ものとしては、ブッ飛んだ衣装だの特定の角度からの写真 だのを採用してたよね。「他とは違います」てのをアピー ルして、新鮮さを強調して、曲を聞かせるようにするため に、方法は無数にある訳だよ。でも、ほんとに心に響くも のが、耳に新鮮に響くんだ。これは無理な注文だよね。

最近、自分に何が出来るか考えてるんだ。どうすればギタ ーを新しく、新鮮に聞かせることが出来るのか。まあそう 成功という訳でないにしても、ギターを新鮮に、聴いて面 白いものにどうやって出来るか。同じアンプで同じトーン を使って、ものすごく純化するまでずっと精製していくっ てことは出来るだろうけど、さてそれじゃ、他に何か方法 があるか? これは、僕がトライすべきいい課題だと思う。

PS:
レコード会社たちがCliffs of Doverを求めてる時、 求めているのはほんとはCliffsじゃない訳だよな、はっき り言うと。もっと儲かるものってことだね。
EJ:
そういうこと。
PS:
以前はみんな自分のレコード会社を持っていたもの だった、つまり個々人がレコード会社をやってたような もんだ。それが今じゃレコード会社は巨大複合企業にな ってしまったから、もー大変なんだろう。
EJ:
うん。
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-------その3に続く--------