2004年12月 EJインタビュー その1
出典: Eric Johnson Mailing List dd 03/JAN/2005
copyright: ericjohnson.com, 2004-2005
Interviewed by: Park Street, ej-l/ericjohnson.com
Original text transcribed by: Paula Beard, ericjohnson.com
「日本語文責: 山巻 由美子」
このインタビューは2004年12月4日に収録されました。
PS: Park Street(質問者。EJの親友、本家リストオーナー)
EJ: Eric Johnson(回答者。ご本尊)
- PS:
- まずは全般的な質問から行こう。みんな「あれはどうなってるんだ
ろう」と思ってるからね。"Bloom"のリリースはどんな具合かな?
- EJ:
- アルバム自体は大分前に終わってて、今はレコード契約の最終的な
詰めに入っているところなんだけど、その会社はリリースを、こっちの
希望より相当遅くしたいと考えてるんだ。
- PS:
- 夏にしたいと?
- EJ:
- そう。
- PS:
- アコースティックのレコードの方はどうなってる?
- EJ:
- 始めたばっかりなんだ。ともかく一旦全部テープに入れちゃおうと
思って。そうすればじっくり聴けるから、どの曲が使えてどれがダメか
を見極めたり、この曲には誰を使いたいかとかアタリをつけたり出来る
でしょ。ゲストを招いて一緒にやったりしたいから、全部ソロでという
ことにはならないヨ。せっせとやったから、もう3/4は録音出来たんだ。
それが最初の枠組みになる訳。後は家に持ち帰って、しばらくの間じっ
くり聴いて吟味してみるつもりだよ。
- PS:
- 次のツアーの時期と場所は?
- EJ:
- 1月に1〜2週間、国内の南部/南西部をツアーする。それから、
NAMMショウに行って、その地区周辺で2〜3回ギグをするんだ。
- PS:
- どのあたりまで行くんだい?
- EJ:
- 主にカリフォルニアとアリゾナ。ユタでもコンサートをしたいと
思ってるんだ、ちょうどサンダンス映画祭(*)があるから。Salt Lake
CityだかPark Cityだか....
(*訳注: 毎年1月にユタ州Park Cityで開催される インディーズ映
画の世界最大の映画祭。もとは1978年に始まった『ユタ・フィルム
フェスティバル』だったが1984年に経済難等の理由から映画祭の継
続が困難となり、1981年に俳優ロバート・レッド フォードが設立
したSundance Instituteが支援を始めた)
- PS:
- NAMMでは例のシグネチャーストラトが御目見得かい?
- EJ:
- Fenderは、僕が実際にNAMMに登場するまで、シグネチャーストラ
トのことは秘密にしておきたいと言ってるんだ。なんでなのか今でも
わからないけど。
- PS:
- (本家)リストとしては、今更口止めされてももう遅い、って感じ
だね。ま、秘密が漏れることだってあるさ! (((((笑)))))
さてそのシグネチャーストラトなんだけど、木材、ネック、ラッカー
にナットのサイズ、ピックアップ等等の質問が寄せられてるよ。
- EJ:
- 殆ど全部答えられるヨ。ネックはメイプルで、四つ挽き(*)の木
材を使ってるんだ。昔は、木目が今よりボディにもっと入るような
方法で挽かれていたんだけど、これだとそういう昔のものに、より
近い感じになるんだ。
(*訳注: 縦に4つに挽かれた、四つ割りにされた木材。この方法だ
と柾目の板が取れる)
ボディはアルダー材になる。Fenderではアッシュ材が一般的だけど、
アルダー材の方が、もっとこう、優しくて暖かい、響きのいい木材
だから。古いストラトはアルダー材で出来てたんだよ。ネックの形
状は、基本的には僕の'57年製ストラトをもとに作ってる。僕あの
ストラト大好きなんだ。コンポーネントの多くは、'50年代タイプ
のヴィンテージもののノウハウでやる。トーンコントロールは、
他のはミドルピックアップについてるけど、これはブリッジピック
アップにつなげるんだ。トレモロブロックは、もっと'50〜'60年代
のモデルっぽくする。現行ものより穴が小さくなってるんだ。その
方が、弦が深く入り込まないから、収まりがよくて、トレモロブロ
ックを通した変換が、よりいい感じになるんだ。
Fenderは'70年代
初め以来そうやらなくなったんだけど、ヴィンテージのトレモロブ
ロックはそういう風になってたんだよ。キーはヴィンテージのキー
っぽくなると思う。キーはずらされていて、6弦のところでは高く
ポストされ、1弦ではポストはとても低くなる。そうすると、弦を
下に抑えるストリングガイドが必要なくなるんだ。音の調子が良く
なるよ。
指板のラジアスは、FenderよりはGibsonのラジアスに近くなる。
今現在のところは、まだピックアップの調整中なんだ。出来る限り
いいものにしようと思って。
- PS:
- ナットの幅サイズは?
- EJ:
- '50年代モデル調。
- PS:
- 今のところ、4色の予定だっけ?
- EJ:
- サンバースト、キャンディアップル・レッド、黒、シースルー
ブロンドの4色ね。
- PS:
- サンバーストは2トーン?
- EJ:
- そう。
- PS:
- さてここからは、(本家)リストからの質問だ。まずは、シグネ
チャー335なんて考えたことは?
- EJ:
- そりゃもう、喜んで! Gibsonは335をそんなにたくさん作って
ないように思うんだ。僕のお気に入りの335は、'60年代の初期から
中期にかけてのやつだよ。'64年か'65年あたりの、ブロックインレ
イで、ストップテイルピースのやつ。断然そのタイプが好きだな。
現在のGibsonはああいうの全然作ってないんだ。
- PS:
- ふむ、まあその内例外も作るかも知れないよ。君がやるとか?
- EJ:
- 多分それはないね。
- PS:
- アルバムの曲の中で、家で録音したものはあるかい? 断片で
も曲でも。あるとしたら、家でやる方が快適かな? 製作過程をか
なり書き込んでからスタジオ入りするのか、それとも単にギターと
アイデアをスタジオに持って行って、そこで始めるのかい?
ここで読者のために確認しておくけど、君は自分のスタジオを所有
しているから、君が「家でやる」というのは、一般人が家である程
度やってからスタジオに持って行く、というのとはちょっと違う。
君の場合は当然スタジオでやることが多いよね。
- EJ:
- うん。大抵はほんとにいいアイデアを持ってスタジオ入りする
けど、そううまくはいかないことももちろんあるんだ。だからとも
かくオープンにかまえて、変更したり色々融通がきくようにしてお
かないとね。うまくいくアイデアが一番重要なんだから。最初の着
想がうまくいかないこともあれば、うまくいくこともあるし。例え
ば"Souvenir"はワーキングテープやデモが主で、多くはつつまし
い機材を使って家で録音したものだったけど、"Bloom"は、普通に
スタジオで録音したよ。
- PS:
- 以前も訊いたけど、答が変わるだろうから今回も訊くよ。今
聴いてる音楽は?
- EJ:
- Nat King Cole、Stevie Wonder、Charlie Haden、Pat
Metheny.....
- PS:
- ペダルでは何が好き? 一番使うのは? ファズフェイスかな?
- EJ:
- 多分ファズフェイスが一番だと思うけど、なにしろ気難しくっ
てさ。愛憎半ばすってとこ。まあ一風変わったやつではあるんだけ
ど、魔法の力もたっぷり持ってるんだ。気まぐれだけど、特別な力
もあるから。僕はそこに神秘を感じていてね。
- PS:
- でも君は確か、ちょっといかれてるのがいいんだと言ってた
よな?
- EJ:
- なんか、中のトランジスタの相性がよくないとか、どこかうま
いこと作動してないとか、そういう時に、すごくいい感じするんだ。
で、きちんとうまくいくように検証してびしっとやると、今度は、
それほどよくないんだよね。
- PS:
- IbanezのTS808チューブスクリーマーを使った事はあるかい?
- EJ:
- うん、あるよ。それが乗ってるペダルボードも持ってる。
小さいアンプとかジャム用に使う装備があるんだけど、チューブ
スクリーマーもそこに入れてるんだ。今でもリードトーンに使う
ことあるよ、気に入っててさ。"Tones"では全部のリードに使っ
たけど、"Musicom"の頃には、チューブドライヴァーに替えてた
な。
- PS:
- 大抵の人は、あるアイデアから曲を書く訳だよね。新曲のア
イデアの中で、話のネタになりそうなものがあったら教えてくれ
るかい?
- EJ:
- 新譜には、"Columbia"という曲があるんだけど、これはス
ペースシャトル「コロンビア」に捧げた曲なんだ。これも割と
パッと出来た曲のひとつだな。
- PS:
- "When the Sun Meets the Sky"はどうだった?
- EJ:
- うん、それもアイデアはかなりパッと出た。アイデアは、
素早く出てくるんだ.....
- PS:
- で、形にするのに永遠に時間がかかると.....
(((((笑)))))
- EJ:
- 僕が、永遠に時間を「かけちゃって」るんだよ。
- PS:
- 君のアコースティックギターのピックアップについての質問
だ。ピエゾの変換器のメーカーは? それと、サウンドホールの
方のミニマイクは、Fishman Pocket Blender SystemのCrown
GLM 200?
- EJ:
- そう。
- PS:
- そのFishman Pocket Blenderでは、どんなエフェクトを
使っているか? テーブルの上にオレンジ色のストンプボックス
があったけど。
- EJ:
- あれはAphexのコンプレッサー。ピエゾピックアップはLB6、
つまりLloyd Baggs 6ね。
- PS:
- エフェクトループは何を使った?
- EJ:
- 何も使ってないよ。ただギター弾いて、直接コンプレッサー
に入れて、アンプとPAに出るようにしてただけ。マイクはコンプ
レッサー通してないし。
- PS:
- 今度は演奏に関する質問だ。君の、左手のコードフォーム
について.....「アコースティックギターのコードフォームは、
あなたの演奏でユニークな点のひとつだと思います。コード弾
きでは開放弦を効果的に使っていて、その時の人差し指の柔軟
性には驚きました。時には第二関節から逆方向に90度曲がって
いたり。で、質問ですが、あれはトレーニング次第で誰でも出
来るようになるものでしょうか?」
- EJ:
- と思うよ。間違いなく。ギターのポジショニングを念頭に
おいておくことだね。座っていようと立っていようと、自分の
体に対して、ギターを充分な高さ、手が必要な場所にさっと届
いて、指が指板に対して垂直になるような位置におく必要があ
るんだ。そうすれば、手のポジショニングも正しく出来るから。
あんまり横向きにしちゃうと、手の伸びを充分に活用出来なく
なるからね。アコースティックギターだと、右ひざじゃなく左
ひざに乗せた方がうまくやれる場合もあるし、僕は足台も好ん
で使ってるよ。そうすると、ギターをいい位置に持ってこれて、
変わったコードもうまくやれるから。