目次
1 いきさつ
2 改造計画
3 短波受信機、三機種の改造
4 またまた苦笑
1.2 本文の内容への不安
本文の内容範囲から勘案すると、アマチュアの無線機器はこの三十年間に既製品が普及して自作を駆逐してしまい、それに真空管使用の機器は殆ど絶滅してしまったので、記述内容をご理解頂ける方が果たしてどれぐらいおられるのかが心配で不安です。 また少し難解な部分があり、すくなくともラジオ受信機の自作レベルの知識が必要ではないかと感じています。 また時代考証に加えて若干技術的な解説を加えました。
本文の記述には、筆者が資料等を紛失してしまい、十分に調査・実験せずに独断と偏見にて記述した部分が随所にありますが、明らかに誤りの箇所、文献・実験例などのご所見等をメールにてご指摘頂ければ、喜んで改訂・追補したいと考えております。
1.3 本文の対象機器、記述内容
筆者の研究室?には、一旦整備 (1999/09) を経た、下記の短波用通信型受信機が三機も並んでいまして、時々パワーオンして動作確認試験をします。 その度にどれも性能的に中途半端であり、たとえ SWL 用に限定しても不満、さりとて直ちに捨てる気はなく、それなら何とか整備しようか・・・がコトの発端です。 なお下記 (1)、(2) の二台は先輩アマ局長さんから頂戴し、筆者が整備したものであり、(3) は筆者の自作です。
◆(1) GT 管8球電源付き、モノバンド・RF1/IF2 シングルスーパー受信機、
◆(2) GT 管4球、プラグイン式オートダイン (1-V-2) 受信機
→ GT 管8球、モノバンド・RF1/IF2 シングルスーパー受信機に改造済 (2001/03)
◆(3) MT 管8球、4 バンド・RF1/IF2 シングルスーパー受信機
そこで、三台纏めて性能アップのための改造に着手し、段階的に進めてきました。 本文はその経過と詳細を述べたものですが、実質的には、X-tal コンバータの製作 (別項)、Q5'er の製作 (別項)、それに上記 (2) オートダイン受信機→ RF1/IF2 スーパー受信機への大改造に関する記述が中心となってしまいました。
上記 (2) は既に改造済です。 但しシャーシ、真空管穴他部品配置およびバリコン回りを旧機から転用した以外は全くの新造同様であり、内容的には上記三台の受信機の「初期的な整備範囲」をはるかに超えているので、本ページの新設に際して、大改造部分の記述を、元のページ「自作通信型受信機の整備」 から本ページ「自作通信型受信機の整備 (2)」に丸ごと移動しました。
なお用語が長くなりがちなため、記述中では正確に標記すべき「スーパーヘテロダイン方式」に限りフル・スペルとし、修飾語の付く「シングルスーパー」等、または主語を補足する「ヘテロダイン、方式、受信機」等は、前後の関係を勘案して不要と判断される場合には省略することにします。(2001/08)
◆ X-tal コンバータ (略称クリコンまたは XC。 X-tal とは Crystal=水晶発振子の略称です。)
安定な受信が困難な高い周波数帯 (以下、バンド) での受信には、水晶発振器の周波数との差の
低い周波数に変換し、親受信機にて受信、感度低下と安定度不足をカバーします。
別項の X-tal コンバータの製作・運用に詳細を記しました。
◆ Q5'er (キューファィバと読みます。)
内蔵または外付けの、更に低い周波数の IF に落として選択度を稼ぐ、高周波狭帯域フィルタです。
別項の Q5'er の製作・運用に詳細を記しました。
◆ 親受信機関連のインタフェース改造
主に上記の附加装置に関連した三機の改造経過を纏めて本文「3 短波受信機、三機種の改造」
に記しました。
(1) GT-9 球、電源内蔵 モノバンド RF1/IF2 (本機は動態保存して戴け る方に譲渡しました。) |
6MHz〜18MHz 455kHz 狹帯域二段 |
1.5MHz〜4MHz に変更 Q5'er 併用 I/F 整備 S メータ整備 旧規格ビスの ISO 化交換他 |
1.9/3.5MHz 以外は 主に XC の親受信機 Q5'er 併用 |
(2-1) GT-4 球プラグイン式 オートダイン (1-V-2) から (2-2) GT-8 球モノバンド RF1/IF2 に改造済 |
自作 2.5MHz〜7.2MHz 455kHz〜自作 二段 SSB用メカ・フィル付き |
機械強度改良 6.3V 管に統一 Q5'er 併用 I/F 整備 (計画中) |
3.5MHz 以外は 主に XC の親受信機 Q5'er 併用 (計画中) |
(3) MT-8 球 4バンド RF1/IF2 | 1.8〜30MHz 4バンド
455kHz 狹帯域二段 |
1.5MHz〜4MHz 撤去 3バンド化 機械強度改良 455 CWF および on/off 回路 IF 三段増幅化 旧規格ビスの ISO 化交換他 |
ゼネラルカバレージ 兼 XC の親受信機 |
3.1.1 受信バンドの変更
着装されていたトリオの SC (6〜18MHz) コイルおよび指定のパディング・キャパシタを、4バンド機からモギとって来たトリオの SE (1.5〜4MHz) コイルおよびスチコンの容量指定 1,200pF パディング・キャパシタに交換して、トラッキング調整して終了です。
3.1.2 使用球の変更
局部発振管の 6SA7/GT(T) (T=三極管接続) を 6SH7GT (T) に変更、正常に動作しました。
RFA 高周波増幅 | 6SK7GT→6SH7GT→6SD7GT |
MIX 周波数混合 | 6SA7/GT→6AC7/GT |
LOC.OSC 局部発振 | 6SA7/GT(三結)→6SH7GT(T)(三結) |
IFA1/IFA2 IF 増幅二段 | 6SK7/GT - 6SK7/GT |
DET/AFA 検波・低周波増幅 | 6SQ7/GT |
BFO ビート発振 | 6C5GT/6J5GT→6SJ7 |
PA 電力増幅 | 6F6GT/6V6GT |
RECT 整流 | 5Y3GT |
● IF 関係
本機に使用していた、National の IFT 2IF-N1 の三個目、検波段用にはナント
Q5'er を意識したのか、ローインピーダンスのリンク・アウト端子が設けてあり、実装ではそこからシールド・ケーブルにてシャーシ裏面に IF-OUT のピンジャック端子が用意され配線されていました。
これを Q5'er に接続すれば IF 出力の準備は終りです。 ところが動作させてみると、Q5'er に入力される信号が非常に弱く、Q5'er の検波出力は 50kHz の IF 一段増幅した後にも係わらず、本体の検波出力よりも弱いとは・・・「一体なにごとですねんね?」と考えこんでしまいました。
以前、25年位前に Q5'er 実験をした際は、同一シャーシ上で 455kHz の IF トランスのハイインピーダンス出力を直接 Q5'er の初段である周波数変換 (コンバータ) のグリッドに入力して、トラブル発生余地がありませんでした。
● IF 出力のインピーダンス〜振幅の課題
思い余って455kHz の IFT を外し、中味を開けて見てビックリ、リンク・コイルはタッタの約 3回巻程度なのです。 455kHz IFT が同調状態にて 50kΩ 程度のインピーダンスを呈するとすれば、ハネカム巻で 300回巻として 1/100 の巻線比で、リンク・コイルのインピーダンス比が 1/10,000 とするとタッタの 5Ω見当です。
これでは Q5'er 側の入力マッチング用ロー・ハイ変換の IFT の一次側とは整合できません。 Tr ラジオ用単同調 455kHz IFT の規格にも、これほど低いものは見当たりませんでした。
さてその対応策ですが、Q5'er 受け側のマッチング・トランスのロー側をほどくか、出し側リンク・コイルを巻きたすか、ですが改造が面倒なので、455kHz のハイインピーダンス出力を三極管カソード・フォロワまたは FET ソース・フォロワにてローインピーダンス化出力するのが、簡単且つ確実です。
本機の時代考証上では、この機能は GT 管で実現したい所ですが設置スペースがありません。 そうなるとシャーシ内に収めれば MT 管でも FET でもカンニングです。 どうせカンニングならば手間の掛からない FET 2SK30A-Y、ドレーン電圧は出力管のカソード電圧から貰い、ゲートを IFT に C/R を介して接続・・・そうしないと検波電圧の直流成分が掛かる・・・ソースには1kΩ負荷で接地、そのソース側から 0.005μFのCをシールド・ケーブルの芯線に接続、これで一件落着です。
● AF 関係〜トラブル修復も含めて
周到なことに本機には、予めピンジャックによる AF 出力端子および AF 入力端子が装備されてあり、ショートワイヤにて出力→入力が固定的に接続してありました。 この部分が実は問題でした。 検波・低周波増幅管の 6SQ7GT の三極管部のカソード挿入抵抗による自己バイアスを省略して、グリッド・リークに 5MΩを使う初速度電流によるバイアスでは、グリッドまわりのインピーダンスが高いのでシールド・ケーブルをシャーシ背面から引いて、シャーシ前面の AF ヴォリュームを経てグリッドに到る間にて、微小の結合によりヴォリュームを絞り切っても、上ずった・・・ハイが強調された・・・迷容量結合臭い、受信信号がわずかに聞えるトラブルが以前からありました。
部品点数が少なくてすむ初速度電流によるバイアス方式は、シールド・ケーブルを引き回す入力切り替え方式には適さないようです。 そこで標準的なカソード抵抗およびバイパス・キャパシタによる自己バイアス回路に換え、グリッドにはヴォリュームの抵抗値以上のインピーダンスを入れないようにしたら殆ど絞り切れるようになりました。 それでも残る微弱な信号は、本機の製作者によるシールド・ケーブルのアース点不適当が原因のようですが、ケーブルの引き直しが面倒なので諦めました。
3.1.4 その他の整備
● S メータの整備
本機の製作者による初期の回路では、100μAのメータにて検波電流を直接流して読んでいるもので、極めて強い信号以外は全く振れてくれません。 そこで検波出力の DC 出力を利用した AVC (AGC) を併用し、 IF 増幅管のグリッドにこの DC 出力を印加すれば、信号入感時にはバイアスが深くなり、プレート電流が減ってカソード挿入抵抗に現われる自己バイアス電圧が減るので、スクリーン・グリッドに供給するブリーダ回路のグランドに近い側に可変抵抗を入れ、自己バイアスとの間にメータを挿入し、その差をメータが示すことにしました。
結構敏感な S メータになり、並列の可変抵抗にて感度設定したり、ブリーダ回路の接地に入れたポテンショでゼロ点調整しました。 しかし、困ったことに RF/IF ゲイン調整のポテンショを動かしたり、BFO を動作させるとゼロ点がズレるので、ゲイン max、BFO off 位置にてゼロ点調整し、S を読むことにしました。 (次の改造機会にはプロダクト検波に変更して BFO 動作時の問題は解決しましょう。)
● ビスの更新
本機に使用している 3mm のビスが ISO 以前のマイナス頭でピッチの粗いものであり、メンテナンス上の不都合が多いので、バリコンに立ててあるタップおよび IFT の取り付けネジ、バーニア・ダイアルの裏ビス等を除き、全て IS0 3mm の青いユニクロ・ビスに交換しました。 ついでにバーニア・ダイアル〜バリコン間のフレキシ・カップラも全て最近の IS0 3mm ビスの物に更新しました。
3.1.5 クリコンおよび Q5'er を併用して
本機を親受信機として 4MHz を受信すると、メイン・バリコンが抜けた状態であり、スプレッドの範囲が広く 3.5MHz 直接受信または 7MHz のクリコン併用では、 ホンの端にスプレッドし広すぎです。 14/21MHz では SSB 局が出てくる周波数まで伸びるので適してします。 Q5'er の併用では、連動上の問題を解決し性能通りの動作が実現しました。
3.1.6 お嫁入り
実は、本機を動態保存して戴けそうな方を探していたところ、幸いアマチュア無線の経験のある方が現われました。 本機の周波数カバーレージは日本短波放送(NSB)が受信できるようにトリオ SB コイルおよび指定のパッディングCを変更し 3.5MHz〜10MHz に変更しました。 また再度のトラッキング調整に備えて、昔懐かしい富士製作所(スター)の UZ6C6 を使用した 100kHz〜30MHz カバレージのテストオッシレータ TO-1 を本機にお供させました。 第三の嫁ぎ先に目出度くお嫁入りして、動作確認して戴きました。(2003/01)
● 改造の経緯、使用目的と使用方法
大改造計画では高い IF のシングルスーパーを目論んでいたのですが、実装環境を考慮して計画は一旦後退することにしました。 なぜならば、実際に自作によって実現できる安定度を考慮すると、例えば 14MHz 以上の高い受信周波数の場合に、高い安定度の局部発振周波数を得る事、そのために必要な機械的、電気的安定性を確保するのは相当に困難な事です。 以前の実験結果でも、むしろシッカリした低い Frcv の親受信機に クリコンを組み合わせる方が遥かに実用的であったことを踏まえて、間違いなく実装でき実用に耐える、IF 周波数を 455kHz とした数 MHz 帯の単一バンド受信機としました。(2001/03)
● 改造後の構成と配置
◆ 回路構成
受信機全体の構成は通常必要とする感度と選択度等を勘案して RF1/IF2、すなわち高周波増幅一段、IF 増幅二段としました。 検波回路は、従来型の二極管検波に BFO 出力を結合するものですが、SSB の復調を円滑に行えるように BFO 回路には信号強度に影響されない ECO を採用しました。 低周波関係は極めて標準的なものです。
◆ Frcv の決定、周波数構成
オートダインの段階にて整備した三連によるメイン・バリコンとスプレッド・バリコンへの改造は、当然スーパーヘテロダイン化への伏線ではあった訳ですが、結果的にはオートダインでの運用のついでにシャーシ・ケースを変形させたりして、その機械的強度も見極め、数 MHz 帯までが限界かなと判定した訳です。 たとえ同調回路の配線を太く固くしても、バリコンの取り付けをガッチリとしても、シャーシの一端を持ち上げた場合に全体がネジレて変形するようでは受信周波数の浮動は不可避的ですね。
この点から、安定に受信できる周波数の上限が自ずと決まります。 本機の Frcv 範囲は、本機を「裸」で使用して 3.5/7MHz のアマチュア・バンドを安定に受信できることを目標に 2.5MHz〜7.2MHz に設定しました。 3.5〜10.5MHz に設定すると、低端 3.5MHz の感度がかなり低くキビシクなります。
1-V-2 構成なら十分広かった本機のシャーシ・サイズも GT 管にて高周波増幅付きのスーパーヘテロダインを構成するとマルチ・バンドの収容はとても無理で、必然的にモノバンドとなります。
◆ 配置 (下記写真を御覧下さい)
◆ 高周波増幅〜周波数変換/混合まわり
ANT/RF/OSC 各コイルは自作しました。 ハイインピーダンス結合型にすると発振対策としてシッカリしたシールドが必要となり、本機のようにギッチリ詰めた配置では大変なので、動作確実なローインピーダンス結合型としました。 各々のコイルはネジにて挿入位置〜インダクタンスが調整可能なフェライト・コアー入りのスチロール12mm
ボビンに0.3mm アミラン線を約 20T 巻きました。
430pF のバリコンで上記周波数をトラッキングするために、 局部発振回路には 1500pF+390pF のスチロール・キャパシタをバディング・キャパシタとして挿入しました。 これらのコイルはすべてシャーシ内に収め、しかも相互に結合しないようにバリコンを中に入れて10cm 以上離して配置しました。
高周波増幅には12SG7 (=12BA6 相当) を起用しました。 最初の構成では、周波数変換を 6SA7GT (=6BE6 相当) 一本で済ませたのですが、とにかく変換ノイズが大きく、ついに 6SA7GT は三極管接続にして、 局部発振専用とし、別途に 6SH7GT (=6AU6 相当) による混合段を独立し改善しました。
◆IF増幅〜検波まわり
機械的強度の限界は、スーパーヘテロダイン受信機の中間周波通過帯域幅をも制限するものです。 すなわち狹帯域フィルタを塔載しても、ヘナヘナなシャーシ・ケースの受信機では匡体の端を持ち上げると受信信号が帯域から外れてどこかに行ってしまって使い物になりません。 そこで本機では国際電気の CW (電信) 用メカニカル・フィルタ (メカフィル) MF-455-03AZ (大略 500Hz-3db, 4kHz-60db) の塔載は断念し、SSB 用にも少し広いけれど東光ラジオ・コイルのメカフィル MFH-41T (大略 2kHz-3db, 10kHz-40db) を載せて我慢することにしました。
IFT ( IFトランス) は、 周波数混合段〜第一 IF 増幅段の間は MFH-41T と付帯のマッチング・コイル (何れも 10mm 角で極めて小型でシールド付き) で済みますが、6SK7(GT) による第一 IF 増幅段と 12SK7(GT)/12SG7 による第二 IF 増幅段の間、および第二 IF 増幅段と 6SQ7(GT) による検波段の間には、別項「並四、高一、スーパーの再現」の ST 管四球スーパーの部分に記述した、鼓型フェライト・コアの1mH インダクタと推定120pF のポリバリコン型トリマー・キャパシタによるシールドを被せない代用 IFT を利用しました。
選択性は殆どメカフィルによって決まるので、以下の IFT はゲインを確保し、発振しない程度の負荷インピーダンスを確保すれば事が足りるので、第一と第二の間は簡単な単同調として C/R 結合にしました。 これらの IFT はすべてシャーシ内に収め、比較的距離が取れないまま各段の間に配置しましたが、相互に結合しないように一応はコイルの向きを約 90度ひねりました。 実際には漏れ磁束の少ない鼓型コアのお陰で、第一〜第二間および第二〜検波間ともに裸のままの IFT でも結合による不安定や発振は起こしませんでした。
● 使用球
初期の各段使用球は手持ちの 6V/12V 管の混成としました。(2001/03) 一時電力増幅を三極管の1626 に変更しました。
12.6V 管は低価格で好都合ですが、先行きの入手困難を考慮し 6.3V 管に統一しました。(2001/08)
RFA 高周波増幅 | 12SG7→6SD7GT, 6SG7, 6SK7/GT の何れか |
MIX 周波数混合 | 6SH7GT→6AC7/GT |
LOC.OSC 局部発振 | 6SA7(GT)(三結)→6SH7GT(三結) |
IFA1/IFA2 IF 増幅二段 | 6SK7(GT) - 12SK7(GT), 12SG7→6SK7/GTx 2 |
DET/AFA 検波/低周波増幅 | 6SQ7/GT |
BFO ビート発振 (ECO) | 6SJ7 |
PA 電力増幅 | 6F6GT, 6V6GT→12A6→6AG7/GT |
3.2.2 その後の改造
● 機械的強度の強化
既にシャーシの底面両脇と後面の折曲げ部分には、1.5mm 厚のアルミ板を数ヵ所でビス止めして、シャーシ全体の捻り強度をあげたのです。 しかし1.5mm 厚の前面パネルの強度が足りず、これが機械的安定度= 受信周波数安定度の不足の原因となっているので、より厚いものへの交換を考えましたが、パネルだけを換えてもシャーシ部分が貧弱なので、全取り替えしかない・・・これには1mm 厚スティール製シャーシなら完全に近いですが、特注で高価であり、重量はともかく、全面的分解〜組み直しが必要になります。
次善の策としては、初期から前面パネルの内側に取り付けられた1mm 厚のアングル材の効果が判っていたので
2mm 厚の15x15mm の「コ」の字型アルミサッシのCチャネルに交換しました。 これはかなりの効果があり、メカニカル・フィルタの帯域位ならば、シャーシの一端を持ち上げても受信中の信号が全く帯域から外れることは無くなりました。 ボンネット・ケースに収容してしまえば、温度変化および電圧変動が問題にできる程度まで改善されそうです。
● Q5'er 併用のインタフェース装備
計画中です。(2001/08)
3.2.3 クリコンを併用して
本機を親受信機として 4MHz を受信する際は、メイン・バリコンが入った状態ながら、スプレッド・バリコンの容量が大きく、3.5MHz 直接受信または 7MHz のクリコン併用では広すぎです。 しかも 21MHz では CW 局が出てくる上限の 21,150kHz までは伸びずメイン・バリコンはセットし直しですが、概ね合格です。
3.3.1 構成概要
前記の一台目の「短波モノバンド・RF1/IF2 シングルスーパー受信機」の改造に際して自作 4バンドスーパー受信機から、トリオの SE(1.5-4.0MHz) コイルが「召し上げ」られて 3.5-7.5MHz/ 7-15MHz/ 14-30MHz の 3バンドに変わりました。 その他では CW フィルタの追加と併せて、挿入損失を補うため IF 増幅を三段に変更した他は、以前と全く変わりません。
3.3.2 今回の改造
● 補強工事
前記二台目の「1-V-2 から RF1/IF2 へ改造」スーパーヘテロダイン化にて同時に行った、シャーシ底面の両脇および後面縁部分の固定板による締結と、前面パネル内側からのCチャネル・アルミサッシによる補強が相当に効果があったので、早速本機にも適用しました。 しかし、まだシャーシを叩くと配線が振動してビート音が「ビョコン」となります。 メーカー製のトランシーバを見習って、次の改造では単一バンドとし、シャーシ〜パネルの補強材を追加し、
局部発振部分はバリコンのお尻にコイルと FET をラグ板にのせて一体化し、シャーシから機械的に分離するか・・・と考えています。
● CW フィルタ (CWF) の組み込み
補強工事を施したので、国際電気の CW (電信) 用メカニカル・フィルタ (メカフィル) MF-455-03AZ を装備しました。
CWF の on/off 切り替えは小型リレー(オムロン MZ-12、12VDC) にてリレー電源による遠隔制御方式にしました。 リレー電源は 6.3V ヒーターを半波整流し 9V 程度、動作には支障ありませんでした。 但しリレー動作を確実にするため、両波整流またはブリッジ整流にしたいところです。
(1) CWF on :CWF からの出力インピーダンス整合用のマッチング・トランスのホット側から
IF 増幅第一段のグリッドに直接接続するよう、リレー接点は normaly open (リレー on 時接触) とし、
(2) CWF off:CWF ヘの入力インピーダンス整合用のマッチング・トランスのホット側から
C=47pF, R=330kΩ にて IF 増幅第一段のグリッドに接続するよう C/R 結合し、
リレー接点は normaly close (リレー off 時接触) としました。
なお、前記の「3 X-tal コンバータの概要と運用・製作」に述べたのと同様、習慣的に都度接点が磨かれるロータリースイッチを使用していた信号経路の切り替えにリレーを使用したのは初体験であり随時フォローする予定です。
● IF 増幅段の一段追加
実は、以前から本機の IF 増幅の一段目の場所に空きが設けられていたのですが、CWF を挿入した場合に起きるゲイン低下をカバーするため用意したものでした。 追加した中間周増幅管は他の増幅段と同じ 6BA6 です。 ラインナップは下記のようになりました。
RFA 高周波増幅 | 6BA6/6BZ6 |
MIX 周波数混合 | 6AH6/6CB6 |
LOC.OSC 局部発振 | 6AU6(ECO) |
IFA1/IFA2/IFA3 IF 増幅二段→三段 | (6BA6 + 6BA6) + 6BA6 |
DET 検波 | 6AL5 |
BFO ビート発振 | 12AU7/12AT7 |
AFA/PA 低周波増幅/電力増幅 | 6BM8 |
3.3.3 クリコンを併用して
本機を親受信機として 4MHz を受信すると、メイン・バリコンが入った状態であり、スプレッドの範囲が 75kHz 程度と狭いけど CW 中心の 3.5MHz 直接受信または 7MHz のクリコン併用ではワッチが楽なので問題ありません。 14/21MHz では CW 受信対象でも狭すぎ、とりあえずは対象外ですが要再検討です。