試合レポート

 
2002年5月2日 日本代表対ホンジュラス代表 神戸ウィングスタジアム

  ベンチに座る川口能活を見に、神戸まで出かけた。もちろんチケットを取った時点ではゴールマウスの前に立つ彼を見るつもりだったが、怪我ではいたしかたない。この時期に無理をしては取り返しのつかないことになる。それでなくてもここ何試合かで、森岡の不在がどれだけ大きな痛手かを思い知っているところだ。

 高校まで関西に住んでいたとはいえ、今の神戸は私にとってほとんど見知らぬ街。まずスタジアムまでの地下鉄乗り場がわからない。適当に見当をつけて歩いた地下道に、ちゃんと『キリン杯』を謳った方向表示の看板があった。降車駅からは一本道、途中には仮設グッズ売場もあり盛り上がりを見せている。席種別のゲートは誘導もスムースで、4時に到着し4時半には着席していた。私が座ったのはスタジアムの名前にもなっている“ウィング”部分のゴール裏。仮設スタンドのような階段状の金属の上に座席が設置してある。席が広くカップホルダーのある横浜国際に慣れている私にとってはちょっと窮屈だ。開始までの長い時間は仕事をしながら過ごしたが、ハーフコートで行われていた少年の試合にさすがサッカー好き、ちょっとしたプレイにもゴール裏から歓声がわく。

 さて、日本代表の試合である。川口選手の次にマリノスを応援している私としては、やはり中村俊輔が気になる。開始早々に鈴木へのパス、ヘディングは枠からはずれるが最初のチャンスを演出。が、そのすぐ後、相手にセンタリングをあげられ日本ゴール前で波戸がなんとかクリア。今思えばこの2つのプレイがこの日の試合を象徴していた。破られたDFラインとFWの不発。しかし先制点を奪われたときは「よし、これで面白くなる」と思ったものだ。このところ日本代表はずっと先制していて、先行されたときのシュミレーションが出来ていないのが心配だった。だから良い機会だと。

 期待通り、前半のそう遅くない時間に日本は追いつく。相手GKがお粗末とはいえ、俊輔のFKがほぼ直接決ったのだ。だがその喜びもほんの一瞬。あっという間にまたゴールを奪われてしまう。現場では何が起こったかわからなかったほど。選手達の抗議も何の意味だか。後にビデオで福西へのファウルを主張していたと知るが、あの判定が正しくても誤っていても試合において審判は絶対。セルフジャッジして足を止める方が悪い。それでも、自分の得点を意味のない物にされてたまるかとばかりに、俊輔が再び同点弾を決める。CKからのボールは夢のような軌跡を描いて、ゴールマウスの中へ。確かに入っているはずなのに一瞬日本代表の選手達でさえぽかんとしてしまうような。

 しかし、2度あることは3度ある。一番やられてはいけない時間帯、ロスタイムに3点目。ハーフタイム、どうしてこうスカスカとボールを通されるのかと考えて、思い当たるのは戸田の不在くらいだった。マリノス・代表と試合に出続ける松田の疲労も気になるが、他にも同じ立場の選手は居るのだから言い訳にはなるまい。2−3のまま前半は終了した。

 後半は三都主が入って俊輔はトップ下へ。絶妙のパスを出すが、FWが決めてくれない。私の座席のまわりから「FW替えろ」のヤジが飛ぶ。20分過ぎ、その望み通り鈴木に替えて久保。先日のスロバキア戦でも登場すると大きな声援。彼の場合ジャンプするだけでも会場がどよめく。岡野が走っただけで歓声がおこったように。それだけ期待が大きい証拠だ。私はゆっくり走る彼を見ていると、獲物に飛びかかる前にのそりと動き出す猫科の猛獣を連想する。だがこの日も久保は不発だった。

 結局PKで何とか追いついて、試合終了。後半は無失点ということになる。そういえばアウェイ側に座っていた私の目の前に、あまりボールは来なかった。DFが修正されたのかどうかは判断が付かない。相手も疲れてきていただろうし。答えが出るのは次の試合以降だ。取りあえず歯ごたえのある相手と試合できたことは良かったが、弱点をさらしてしまった事も事実。得点や失点の後、チームを落ち着かせるリーダーの不在も。いまさら技術的な向上は望めまい。この先は仏人監督が頻繁に口にする“人間性”、つまりコミュニケーション能力とさまざまなプレッシャーにうち勝つ精神力の問題になるのかも知れない。

 それにしてもテレビ中継の、何とうるさいことか。しゃべり声がとぎれたら放送事故扱いにでもなるのだろうか?現地で見てきたのだし音を消してしまえばそれでいいと言われそうだが、さして大きくないテレビ画面では選手の見分けもつきにくいし、カードの理由などもわからない。ベンチの様子や選手の情報も知りたい。かくして音を調節するためリモコンを握りしめながら、テレビを見ることになる。本番を放送でしか見ることが出来ないであろう私にとって、中継の質は気になるところだ。

 で、最後に私の目的の川口選手はといえば、戸田選手と並んでスウェットのままベンチの中。練習にさえ出てこなかった。報道されているコメントによるとこの日の試合も出ようと思えば出られたということなので、 レアル戦は大丈夫だろうと信じたい。 “サポーター”にどうなじられようと、私は川口能活個人のファン。彼の居ないW杯など、意味は無いのだから。
清水スパーサッカー コンフェデレーション杯 01年JOMO杯 JOMO杯公開練習
 
 

ホーム