高星山から平石山の周氷河地形
 今から170万年前より新しい時代を第四紀という。第四紀は、地球上に氷期が繰り返し訪れた時代であった。県内でも、氷期には気温が7〜8℃低下したと考えられている。岩石中に入った水は、凍結し膨張することによって、岩石を破砕させた。これを、凍結・破砕作用という。この作用によって、兵庫県でもそのような寒冷気候を反映した地形が形成された。このような地形は、氷河の周辺に見られることから周氷河地形と呼ばれている。朝来市と神河町の境界に広がる、高星山から平石山で周氷河地形が見られた。

化石周氷河斜面
凍結・破砕は、低地より温度の低い高所で激しく起こった。山頂部や突出部の岩石は破砕によって崩落し、山上の凹部は崩落した岩石で埋まった。その結果、起伏のきわめて少ないゆるやかな高原状の地形が形成された。高星山から平石山にかけての標高1000m前後の山頂部がこれにあたる。また、ここから見える峰山高原、砥峰高原、フトウガ峰から段ヶ峰の山頂部も、ゆるやかな高原状であり、この化石周氷河斜面にあたる。
峰山高原・砥峰高原の景観
トア(岩塔)
高星山の稜線には、天狗岩などいくつかの岩塔がそびえ立っている。これは、凍結・破砕によって周囲の岩石が崩落し、その崩落から岩塔として残ったものである。これを、トア(岩塔)という。
天狗岩を裏から見る
ロックフォール
トアの下には崩落した岩塊が積み重なっている。これを、ロックフォールという。
天狗岩の下のロックフォール
岩塊流
崩落した岩塊が、高原状の凹部にひも状に連なったもの。峰山高原では、2〜5mの岩塊が厚さ5〜6m、幅20〜30m、長さ数100mに達するとされている。今回、高星山から平石山にかけての稜線上からは、いくつかの凹部で、大きな岩塊を見いだすことができた。
 また、ヒシロガ峰(1042m)から降りた平石山の西斜面では、1m程度の岩塊が幅100m以上にわたって積み重なっていた。山頂部から崩落した岩が、斜面に累積したものである。
平石山西斜面の岩塊流
麓屑面
凍結破砕によって崩落した岩石が山麓に堆積しできた緩斜面。生野学園のある天狗岩東方の斜面がこの麓屑面にあたる。地形図を見ると、この麓屑面の様子が明白に分かる。
生野学園の上の麓屑面

※ 県内の周氷河地形は、田中眞吾氏によって詳しく調べられています。今回は、氏の著書「播磨の地理 自然編」「ひょうごの地形・地質・自然景観」を参考にしました。(参考文献については「山の本棚」を参考にして下さい。)

登山記録「天狗岩・高星山からアセビの稜線を平石山・ヒシロガ峰へ」

■岩石地質■ 周氷河地形(白亜紀 生野層群) 
■ 場 所 ■ 神河町・朝来市 25000図=「生野」・「長谷」・「神子畑」
■ 交 通 ■ 朝来市生野学園より
■探訪日時■ 2001年4月22日

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