高 星 山    (1016m)      生野町・大河内町     25000図=「生野」・「長谷」・「神子畑」

天狗岩
天狗岩・高星山からアセビの稜線を平石山・ヒシロガ峰へ

 昨夜の雨で、新緑はいっそう鮮やかになった。そして今日は、空気の澄みきった麗しい晴天。私にとっては、初めてのオフ会。数日前から、遠足前の小学生のような気持ちでこの日を待っていた。
 向かうのは、栃原高原の高星山。この山の稜線には、麓からもよく目立つ「天狗岩」がそびえている。麓の長谷で育った私は、小さい頃からこの岩をよく見ていた。小学生の頃、同級生の何人かが天狗岩に行って来たという話を聞いたこともあった。

 島田さんの案内で出発。しばらく沢に沿った林道を歩き、尾根に取りつく。1つ目の岩塔を越え、2つ目の岩塔の上に立ち、いよいよ3つ目の岩塔「天狗岩」へ。巨大な岩塔であるが、広いクラックやテラスが多く草木も根を張っているところが多い。島田さんの「ほぼ直登します。」「帽子、飛びますよ。」「ここが、今日一番のデインジャラス・ゾーンです。」「三点支持で!」の声を追いかけて、登っていった。
 高度感あふれる天狗岩の上。下を見下ろすと、スギ・ヒノキの濃緑の中に自然林の若草色が広がっている。すぐ横には、竜の頭の姿をした大岩が突き出している。市川の向こうには、かつて何度となくこの岩を見上げていた長谷駅が見える。
その頃、この岩に立ちたいなどと考えたことがあっただろうか……。

高星山山頂
 白い花を群とつけたアセビの大きな木の下に、高星山の三角点は立っていた。その木の下に、一人二人と辿り着く。その向こうには、澄んだ青い空とその下に広がる峰山高原から砥峰高原。思えば、アセビの花の咲く頃に高星山へと誘われてここまで来たのであった。
 
高星山から平石山、ヒシロガ峰へと稜線を歩く。咲き誇るアセビの林の中を、コナラ・クリ・クヌギのふかふかの落ち葉を踏んで歩いていった。シダはまだ冬枯れ、ササの葉は見事に鹿に食われている。一面褐色の世界の中に、緑はアセビの葉だけ、白はアセビの花だけ……。時々、黒土が顔を出しているところがある。小さなスミレの花がそんなところに咲いていた。ヒシロガ峰(1042m)山頂の手前が、最後の登り。木の幹の間に青い空が見えてくる。ヒシロガ峰から、みんなで周囲の山々を見渡す。「こんな世界が日本にあったのかという風景」と島田さん。今日、何度こうやって周囲の山々を眺めたことか。

 氷河期、気温は今より7〜8℃低かったという。岩石の割れ目に入った水は凍結し、岩石を破砕させた。そのような凍結・破砕作用は山頂部や突出部で激しく起こり、その結果凹凸がなくなった。そのような地形を化石周氷河斜面という。今日歩いた高星山〜平石山〜ヒシロガ峰の高原状のなだらかな地形はこの化石周氷河斜面である。天狗岩をはじめ、越えてきた岩塔は凍結・破砕による崩落から残ったトア(岩塔)。ヒシロガ峰から下った斜面に広がっていた岩塊は、崩落した岩が凹地に流れた岩塊流。化石周氷河斜面もトアも岩塊流も、氷河が発達した地域の周辺で見られるため、周氷河地形と呼ばれている。今から数万年もの昔の氷期に起こった水と氷の働きが、今日の山の仲間との出会いに素晴らしい舞台を提供してくれた。

 周氷河地形については、「高星山から平石山の周氷河地形」を参考にして下さい。

山行日:2001年4月22日



山 歩 き の 記 録
生野学園〜天狗岩(標高約850m)〜923mピーク〜高星山山頂(1016.4m)〜1067mピーク〜1051mピーク〜平石山山頂(1061.2m)〜川上越(960m+コル)〜1040mピーク〜ヒシロガ峰(1042mピーク)〜1000m+ピーク〜ナメラ谷川〜川上
群咲くアセビの花
段ヶ峰を望む
 9時30分、生野学園に9名が集合。「えらいことになってしまいまして……」という島田さんを先頭に、林道を歩き始める。沢沿の林道は途中で崩れているので、その沢を北へ渡り、下から見えていた1つ目の岩塔をめざして登っていく。植林地の中の杣道は、消えかかっている。ちょっとしたやぶこぎもしながら、岩塔の下に出た。1つ目の岩塔は、見せてもらった高度計で725m。2つ目の岩塔は765m。そして、目の前に天狗岩がそびえ立つ。しだいに迫力を増す岩塔に、心踊らせて登っていった。天狗岩の上はまさに絶景。生まれ育った長谷の村が眼下に見える。
 天狗岩を越え、923mピークの手前の、落ち葉で埋まった小さな広場で食事。923mピークから、高星山をめざす。尾根はだんだん広くなっていく。大きなアセビの木の下に、高星山の三角点は立っていた。
 高星山からは、町界尾根を北へ歩く。尾根は広く緩やかに起伏している。道はない。アセビやコナラ・クリ・クヌギ・アカマツの疎林の中をふかふかの落ち葉を踏んで歩いていった。1067mピークは今日の行程の最高所。アセビの林はまだまだ続いている。平石山の三角点は、山頂をやや離れた所に立っていた。山頂あたりは、落ち葉の原がゆるく広がっている。「ボールとグローブをもってくればよかった。」と誰か。
 平石山から、スギ・ヒノキの林と雑木林の境界になっている町界尾根をさらに北へ歩き、ヒシロガ峰(1042m)に着く。
 ヒシロガ峰からは、南南西に伸びる尾根を降りる。スギの植林地で、ここにも道はない。やや登り返した1000m+の高まりからは、斜面を東に降りていく。きれいな水の流れている小いさな沢に出た。この沢に沿って斜面を降りていくと、あたり一帯がガレ石に広くおおわれている。石の大きさは1m程度で、平たい石が多い。この平たい石が、平石山の名の由来だという。やがて、右からの沢と合流し、そのうち沢の横に道が表れ、川上集落の奥の車のデポ地に辿り着いた。
   ■山頂の岩石  白亜紀 生野層群最上部累層 流紋岩質溶結凝灰岩

 高星山から平石山にかけての山稜付近には、生野層群最上部累層が分布している。ただし、土と落ち葉におおわれていて露頭はほとんどない。しかし、平石山山頂を北西にわずかに下った地点に小規模な露頭があった。アメ色透明の石英の結晶片を多く含む、流紋岩質溶結凝灰岩である。結晶片としては石英の他に、長石と少量の黒雲母を含んでいる。基質の部分は、褐色〜灰色で硬く緻密である。溶結構造は、肉眼で見る限りでは鮮明でない。
 

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