天狗岩
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天狗岩・高星山からアセビの稜線を平石山・ヒシロガ峰へ
昨夜の雨で、新緑はいっそう鮮やかになった。そして今日は、空気の澄みきった麗しい晴天。私にとっては、初めてのオフ会。数日前から、遠足前の小学生のような気持ちでこの日を待っていた。
向かうのは、栃原高原の高星山。この山の稜線には、麓からもよく目立つ「天狗岩」がそびえている。麓の長谷で育った私は、小さい頃からこの岩をよく見ていた。小学生の頃、同級生の何人かが天狗岩に行って来たという話を聞いたこともあった。
島田さんの案内で出発。しばらく沢に沿った林道を歩き、尾根に取りつく。1つ目の岩塔を越え、2つ目の岩塔の上に立ち、いよいよ3つ目の岩塔「天狗岩」へ。巨大な岩塔であるが、広いクラックやテラスが多く草木も根を張っているところが多い。島田さんの「ほぼ直登します。」「帽子、飛びますよ。」「ここが、今日一番のデインジャラス・ゾーンです。」「三点支持で!」の声を追いかけて、登っていった。
高度感あふれる天狗岩の上。下を見下ろすと、スギ・ヒノキの濃緑の中に自然林の若草色が広がっている。すぐ横には、竜の頭の姿をした大岩が突き出している。市川の向こうには、かつて何度となくこの岩を見上げていた長谷駅が見える。その頃、この岩に立ちたいなどと考えたことがあっただろうか……。
高星山山頂
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白い花を群とつけたアセビの大きな木の下に、高星山の三角点は立っていた。その木の下に、一人二人と辿り着く。その向こうには、澄んだ青い空とその下に広がる峰山高原から砥峰高原。思えば、アセビの花の咲く頃に高星山へと誘われてここまで来たのであった。
高星山から平石山、ヒシロガ峰へと稜線を歩く。咲き誇るアセビの林の中を、コナラ・クリ・クヌギのふかふかの落ち葉を踏んで歩いていった。シダはまだ冬枯れ、ササの葉は見事に鹿に食われている。一面褐色の世界の中に、緑はアセビの葉だけ、白はアセビの花だけ……。時々、黒土が顔を出しているところがある。小さなスミレの花がそんなところに咲いていた。ヒシロガ峰(1042m)山頂の手前が、最後の登り。木の幹の間に青い空が見えてくる。ヒシロガ峰から、みんなで周囲の山々を見渡す。「こんな世界が日本にあったのかという風景」と島田さん。今日、何度こうやって周囲の山々を眺めたことか。
氷河期、気温は今より7〜8℃低かったという。岩石の割れ目に入った水は凍結し、岩石を破砕させた。そのような凍結・破砕作用は山頂部や突出部で激しく起こり、その結果凹凸がなくなった。そのような地形を化石周氷河斜面という。今日歩いた高星山〜平石山〜ヒシロガ峰の高原状のなだらかな地形はこの化石周氷河斜面である。天狗岩をはじめ、越えてきた岩塔は凍結・破砕による崩落から残ったトア(岩塔)。ヒシロガ峰から下った斜面に広がっていた岩塊は、崩落した岩が凹地に流れた岩塊流。化石周氷河斜面もトアも岩塊流も、氷河が発達した地域の周辺で見られるため、周氷河地形と呼ばれている。今から数万年もの昔の氷期に起こった水と氷の働きが、今日の山の仲間との出会いに素晴らしい舞台を提供してくれた。
周氷河地形については、「高星山から平石山の周氷河地形」を参考にして下さい。
山行日:2001年4月22日 |