青柳隆志述(2002・12・5) |
「日本朗詠史 研究篇」笠間書院
平成10年度日本学術振興会科学研究費研究成果公開促進費補助金給付
B5判上製 布クロース装 箱入 608ページ
平成11年2月25日刊行 定価13,500円+税
「朗詠 全十五曲」CD付きセット 定価18,700円+税
日本歌謡学会より、平成12年5月27日、第17回志田延義賞が授与されました。
ご好評のお蔭様をもちまして、初版を完売し、平成13年にははやくも第2刷を出させていただくことができました。また、姉妹篇『日本朗詠史 年表篇』も刊行することができました。今後とも何分宜しくお願い申し上げます。 青柳隆志拝
青柳隆志著『日本朗詠史 研究篇』は、日本における漢詩の「朗詠」および和歌の「披講」について時代別に検証した、日本ではじめての総合的研究書である。宮内庁で朗詠を含む「雅楽」および披講の形式で行われる「歌会始の儀」を担当してきた者として、このような本格的、体系的な研究書が出版されたことは誠に喜ばしいことである。
本書においては、「朗詠」という語の確立が、『和漢朗詠集』の成立に起因することや、「朗詠」が「心喪」という特殊な状況の下で宮廷行事に取り入れられたことが明らかにされている。その他、各種行事の実際において朗詠の曲がほぼ五曲に限定されていたことなど、青柳氏によって初めて明らかにされたことも多い。
また、「朗詠」の詞章や朗詠者、そして朗詠の場や態様などについても極めて具体的な検討がなされており、とりわけ朗詠の歌詞をあつめた『朗詠譜本』に関する詳細な考察は、「朗詠」の実態を知る上で貴重な情報を提供するものである。
さらに、「朗詠」の実演に関しては、史上初の試みとして宮内庁式部職楽部の楽師を主要な会員とする「十二音会」が演奏する、朗詠全十五曲をCD二枚組にして付録としている。これにより、現在、宮内庁が伝えている朗詠のすべてを何時でも聞くことができるようになったわけである。
青柳は、「朗詠」や「披講」など、詩歌を「歌う」ということに関して研究する日本では数少ない研究者の一人である。少壮ながら新進気鋭、その詳細な研究により着実な成果を挙げておられることに心から敬意を表する者である。
私は、近年における短歌の衰退を憂い、短歌の再生を願う歌詠みの一人として、短歌は万葉このかた日本人がそうしてきたように、「歌う」ものとして読まれ、歌われるべきであると考えているが、こうした考えの理論的、学問的な支柱として青柳氏の研究は誠に有難く、心強いものである。
昨年は、宮中の歌会始の儀に出役している「披講会」の会員により、国立劇場で初めて「和歌の披講」の公演が行われたが、青柳氏はその際にも構成、演出の面で非常な活躍をされた。単に学問の世界に留まることなく、実践の場にも身を置き、研究の視野を広げてゆかれる姿勢は、誠に頼もしく、大いに期待しているところである。
本書に続いて「年表篇」の準備も整っていると聞く。あわせてご参照になることをお勧めする。平成11年1月
目次(サンプル論文もご覧下さい) 第一章 序 説
第一節 本研究の目的
第二節 研究の史的展開
第三節 日本における朗詠の歴史ー概観・朗詠者・詞章ー第二章 朗詠の濫觴ー九〜十世紀における朗詠ー
第一節 『菅家文草』における詩文吟誦
第二節 披講と朗詠第三章 朗詠の成立と定着ー十一世紀初頭の朗詠ー
第一節 「朗詠」という語について
第二節 「心喪」と朗詠(サンプル論文)
第三節 『白氏文集』と朗詠
第四節 『源氏物語』における朗詠
第五節 古歌が口ずさまれる場合ー和歌口吟法試論ー第四章 歌謡としての朗詠ー十一〜十二世紀の朗詠ー
第一節 朗詠常用曲の成立
第二節 宴遊と朗詠
第三節 藤原宗忠と朗詠
第四節 天皇家と朗詠
第五節 朗詠定数曲の成立ー「根本朗詠七首」「朗詠九十首」「朗詠二百十首」ー
第六節 朗詠曲「嘉辰令月」の唱法
第七節 朗詠曲の詩句改変について
第八節 朗詠の歌われる場ー「禁忌」をめぐってー
第九節 女流朗詠考第五章 朗詠譜の成立ー十三〜十四世紀の朗詠ー
第一節 『朗詠要抄 因空本』考
第二節 『朗詠要集』考
第三節 『陽明文庫朗詠譜』考
第四節 『朗詠集』に見えない朗詠曲について
第五節 朗詠譜本逸書考
第六節 七月七日の朗詠
第七節 御製朗詠考付録
所収論文初出一覧
あとがき
人名・書名・事項索引
朗詠曲目索引
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