子どものための母乳? 母乳のための子ども?


 変な見出しをつけましたが、子どものために母乳があるのであって、母乳のために子どもがあるなんてわけがありません。 誰もがわかっていることです。
 生後1カ月の赤ちゃんの母親から相談がありました。 彼女は母乳で赤ちゃんを育てています。 出産した病院では、母乳指導の助産婦さんから3時間ごとに授乳するように言われたとのこと。 ところが、赤ちゃんは夜は5時間、6時間とだんだん長く眠るようになってきたというのです。 でも、3時間ごとに飲ませなさいという指導なので、寝ている赤ちゃんを起こして飲ませている(と言っても、赤ちゃんは半ば眠っている状態で飲んでいる)けれど、ちょっとかわいそう、と言うのです。 その一方で、起こして飲ませることをしなければ授乳回数が減ってしまう‥‥と、指導と違う形で授乳するのも不安でできません。

 母乳は赤ちゃんの吸啜刺激によって分泌が促されます。 したがって母乳の分泌をよくするためには赤ちゃんにせっせと飲んでもらうのがよいということになります。 そこで、なんとか母親たちに母乳で子育てをさせてやりたいと思う母乳哺育熱心な助産婦さんの中には、夜中も3時間ごとに飲ませなさいと指導する方がいます。 この母親にアドバイスしてくれたのもそのような熱心な助産婦さんだったようです。

 赤ちゃんは生まれたばかりの頃は、おなかのリズムで生活しており、およそ3時間くらいで空腹を感じて泣いておっぱいを求めますが、地球の生活に親しんで生後1カ月頃になると、だんだん夜と昼のリズム(地球のリズム)ができてきます。 夜は(中には夜と昼がひっくり返る子もいますが)だんだん4時間、5時間と、まとまった時間の眠りをもてるようになってきて、早い子では1カ月も半ば頃になると、夜中に1度も起きなくなる子もいます。

 赤ちゃん本人が眠りたいと言って(?)寝ているのですから、また、本人がおっぱいを要求しないのですから、本人の希望どおりに静かに寝かせておいてやるのが、赤ちゃんにはうれしいはずです。 相談の母親も、そう思ったけれど、指導は「起こしなさい」だというのです。

 この問題を、私たち自身のことに置き換えてみればよくわかります。 例え、大好物のすばらしいごちそうであっても、せっかくいい気持ちで眠っているときに起こされて、「さあ食べろ」と言われたら、どうでしょう。 うれしいわけがありませんね。 赤ちゃんだって、いくら大好きなおっぱいでも、迷惑千万でしょう。
 「なんとか母乳哺育をさせてやろう」と考える熱心な助産婦さんが指導の現場にいらっしゃるのは頼もしいかぎりです。 でも「母乳大事」のあまり、「赤ちゃん」を考えることを忘れてしまうというのでは困ります。



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copyright(c)育児文化研究所 丹羽洋子


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