お昼寝ぶとんの運搬は親意識を高める?


 「保育園のお昼寝」についてはいろいろと論議がありますが、ここでの話題は、その「保育園のお昼寝」に使用する「ふとん」のこと。
 東京の隣のA県に住む働く母親から「ふとんの運搬が大変」という話を聞きました。 その母親の話では、お昼寝用のふとんはそれぞれ個人持ちだそうで、そのふとんを週末に保育園から持ち帰り、日に干し、週の初めにはまた園に持っていくのだそうです。 「車のある人はいいけれど、自転車の人は大変」「雨の日なんか、おふとんを自転車に乗せて、子どもをおんぶして、傘をさして‥‥」「きょうだいで保育園に行っている人なんか2人分だから‥‥」と彼女は言います。 そして、「東京のようにしてほしい」と行政に訴えたけれど、認められなかったということです。

 「東京のように‥‥」、つまり、東京23区の認可保育園では、お昼寝ぶとんは園に備えられており、ふとん干しなどの維持管理も園が責任をもっています。 東京の働く親たちにとっては、ふとんの運搬など思いもよらない話です。 私物のふとんを使用している無認可保育園の場合でも、東京では、週末にふとんを運搬するという話は聞きません。 ふとんというものは、それを必要とする場所に置くものであって、持ち運びをするようなものではないという認識に基づいて、そうしているのだと思います。

 B県で、保育園の園長さんたちと懇談した時のこと、「A県のお母さんからこんな話を聞いたんですけど‥‥自治体が決断して予算を組めば、解決する問題なのに」と、母親の苦労話を紹介すると、園長さんたちの困惑したような顔、顔、顔。 どうも、まずいことを言ってしまったようです。 しばしの沈黙の後、一人の園長さんが口を開きました。 「あのー、うちの県もふとん干しはお家でやっていただいているんですよ。 でも、これ、お金の問題じゃないんです。 子育てって、すごく手間がかかることなんだということを、親はこういうことをする中で理解していくんです」と、親が親として育っていく上で、布団運びは意義あること、必要なことなのだと解説してくれました。 居並ぶ園長さんたちは、皆、うなずいて、共感を示しています。

 はて、この園長さんの説が正しいとすると、東京の保育園では、不適切なことをおこなっているということになりそうです。 また、この伝でいくと、例えばおむつも紙おむつなど使わず布おむつにし、洗濯機など使わず手洗いにしたほうがよりよい親になれる‥‥などということにもなりそうです。 さあ、東京の保育園の方は、同意できるでしょうか。

 保育園の先生は、皆、子どもへの熱い思いを抱いています。 「子どもによい環境を」「健やかな育ちを」と、日々、精一杯、頑張っています。 そんながんばり意識で「これまでも今も実施していること」を見れば、それは「意義あることでないはずがない」ということになるのかもしれません。 でも、ときどき、「がんばり」をちょっと肩から下ろして見てみると、同じ現実でも、違った面が見えてくるかもしれないのですが。



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