「泣いたら飲ませましょう」が引き起こす心配


 生後1カ月頃の電話育児相談では、「母乳不足ではないか」と心配する母親からの相談が多いものです。 体重を聞いてみると、たいてい充分すぎるほどに増えています。 将来角界入りが望めそうな見事な体重の子もいます。

 では、なぜ母乳不足と母親が考えたかというと、飲んで1時間たつかたたないかのうちに赤ちゃんが泣く。 さっきのが飲み足りなかったのかと飲ませると飲む。 ああ、おなかがすいていたんだと思いつつ飲ませていると、まどろみだす。 ベッドにそうっとおろしてホッとしたのもつかの間、またまた小1時間ほどで赤ちゃんが泣く。 そこでまた飲ませる。と、1日中その繰り返しで、授乳間隔は3時間どころか2時間もあかない。 したがって、母乳が足りないに違いないという訴えとなるのです。

 出産した病院で「泣くのがおっぱいのサインですよ。 泣いたら飲ませてあげましょうね」と教わったと言います。 このような指導をする病院は多いでしょう。 指導の助産婦さんは、哺乳の間隔は赤ちゃん自身が決めるもの、つまり自律授乳という考え方を述べたもので、赤ちゃんが空腹を訴えるそのサインは「泣くことですよ」と教えてくれたのです。

 確かに空腹の時、赤ちゃんは泣きます。 しかし、空腹以外にも不快を感じるさまざまな理由で赤ちゃんは泣きます。 出産直後はおっぱいの時くらいしか泣くことがなかった子も、生後1カ月頃になると空腹以外の理由で泣くことも多くなって、よく泣きます。 そこで、「泣いたらおっぱい」がしっかり頭にインプットされた母親は、「それ、おっぱい」「また、おっぱい」と1日中おっぱいに明け暮れ、すっかり疲労こんぱいの人となってしまいます。

 「抱っこして歩いている間は泣かないんでしょう。 歩いてもおなかいっぱいにはならないわよね。 じゃあ、もっと抱っこで歩いてよって言ってるんじゃないのかしら」と言っても、教わった「泣いたらおっぱい」が頭から離れません。 こんな母親達に触れると、新米のお母さん達はほんとにまじめだなあとつくづく思います。



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