教わっていないことは知らないもの


 子どもの沐浴についての話を母親達に取材していたときのこと。
 誰がどのようにして入れているのかを聞くと、生後4カ月の赤ちゃんを新米の父親と母親は毎日入浴させていました。 大人と同じ浴槽で入れていると言うのですが、聞いていると、どうも話が変です。 「大人が入るためにお湯を抜いて入れ替えるのが大変だ」と言います。

 この夫婦は、大人の浴槽にお湯を張り、ベビーバスで赤ちゃんを沐浴させるのと同じ方法で入れていたのでした。 お湯の中に入れたまま石鹸をつけ石鹸を落とすのですから、大人が入るためにはお湯をまた替えなければならないのです。 「あのー、いつ頃までこういうふうに入れるんでしょうか。 このごろ蹴る力も強くなって落としそうで大変なんです」と、母親から質問があった。 確かに、大きな浴槽に外から手を伸ばして入れていたのでは大変でしょう。

 母親学級や両親学級の沐浴指導では、ベビーバスでの沐浴法は教えてくれますが、「1カ月くらいになったら大人の浴槽に入れていいですよ」とだけで、「大人の浴槽には抱っこして一緒に入りなさい」とは教えてくれません。 育児書や育児雑誌の記述も同様です。 銭湯にでも行った経験があれば別ですが、この夫婦は赤ちゃんの入浴場面など見たことがないのです。 大まじめに学んだとおりのことを忠実に実践した結果がこれです。 大人の浴槽での入浴法を説明すると、「なんか変だなぁとは思ってたんですけどね」と、母親は自分の勘違いにさかんに照れていました。

 こんな勘違いはめったにないとはいえ、少子化が進む今日、育児指導をする人は「教わっていないことは知らないもの」ということを、心に留めておくことが必要でしょう。



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copyright(c)育児文化研究所 丹羽洋子


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