「沙耶の唄」登場人物紹介
「沙耶の唄」は、シナリオのシンプルさの割に、けっこう登場人物はそろっています。
狂気の世界に侵され、闇に沈んでゆく哀しい登場人物達の紹介、どうぞ。
<匂坂 郁紀(さきさか ふみのり)>
本編の主人公である医大生。
壮絶な交通事故で家族を失い、自らも瀕死の重傷を負ってしまいます。
奇跡的に回復したものの、それ以来、彼は「世界が狂って視える」という謎の知覚障害に侵されてしまい、
孤独のうちに苦悩の日々を送っています。
そんな中、唯一以前のように正常に知覚することができる少女、沙耶との出会いをきっかけに、
彼はより深い狂気の世界に堕ちていきます。
…とは言うものの、彼にとって、それはまだしも幸福なことだったのでしょう。
たとえ沙耶と出会わなかったとしても、彼の行く先には、
狂気に侵される以外の道はなかったでしょうから。
この作品には、ハッピーエンドなどと呼べるものはひとつも存在しませんが、
郁紀が精神病院送りになるエンディングの、沙耶との別れのシーンはかなり泣けました。
郁紀に決して姿を見せないまま、病室の扉をやさしく叩いて去っていく沙耶には…もう…。
納得できない方には絶対納得できないでしょうが、
私はこの作品、やっぱり純愛モノだったと思います。
どうしようもない狂気に侵されてはいますが…。
<沙耶(さや)>
本編のヒロインで、唯一郁紀が「正常」に知覚できる人物。
失踪した父親の医大教授、奥涯雅彦を捜しているとのことですが…。
郁紀の孤独を理解し、郁紀に献身的に尽くす、郁紀にとって唯一の心の支えとも言える存在ですが、
それは郁紀を破滅の道へといざなうことに。
なぜ彼女だけ「正常」に郁紀に知覚できるのか?
彼女はいったい何者なのか?
それらがすべて明らかになる時…プレイヤーは知るでしょう。
「それはね、郁紀がひとりぼっちだったから」
「それは、沙耶もひとりぼっちだったから」
という言葉の意味を。
彼女の正体があんなんだったと知ってもなお感情移入できるかどうか…
それが、この作品を楽しめるかどうかの境界でしょうね。
<戸尾 耕司(とのお こうじ)>
郁紀の親友で、同じ大学のサークルメイト。
事故後の郁紀の豹変に不安を抱きつつも、彼女の青海やサークルメイトの瑤と共に、
郁紀を支えてゆこうと日々奮闘している、漢気のある心優しい男です。
しかし、それゆえに郁紀の狂気と沙耶の秘密に深く関わることになり、結果、親友であったはずの郁紀と…。
普通のゲームであれば主人公となっていたであろう、勇気と友情にあふれる好青年なのですが、
郁紀のことを思えば思うほど、人間が入ってはならない領域に足を踏み入れることになり、
親友を救うため、あまりにも残酷な行為に手を染めねばならなくなります。
エンディングのひとつで、すべてを失い、もはやゆるやかに狂気に身をゆだねるしかなくなった彼の姿は、
あまりにも哀しかったです。
もっとも、やはりと言うかなんと言うか、ニトロプラス作品らしく、
クライマックスではバリバリのバトルシーンを見せつけてくれましたけどね。
<津久葉 瑤(つくば よう)>
郁紀の通う大学のサークルメイト。
郁紀に想いを寄せており、現在の郁紀のあまりの変わりように心を痛めています。
しかし、彼女がどれほど心を痛めようと、どんな行動をとろうとも、
沙耶以外の世界は狂気と嫌悪の対象でしかない今の郁紀には、彼女の想いはついに届かず…
最悪の結末を迎えることになります。
マニュアルにあるように、つい他人に依存しがちで、場の雰囲気に流されてしまうような感じの女性で、
郁紀に対する想いも、どうも耕司や青海にけしかけられるうちにその気になってしまったような印象があるため、
個人的にあまり好感が持てないキャラなのですが、
にしてもあそこまで恐ろしい目に遭うこともないでしょう。
この作品がホラーでなければ…と思わずにはいられません。いとあはれ。
<高畠 青海(たかはた おうみ)>
耕司の彼女で、瑤の親友。
事故後の郁紀の豹変に悩む瑤を心配しており、瑤に対してあまりに冷酷な今の郁紀の態度に我慢できず、
郁紀の自宅に押しかけてしまい、その結果、狂気の世界の犠牲者第一号となってしまいます。
正直言って犠牲者その1で済んでしまうほど早々に舞台からいなくなるため、
かなりかわいそうなメインキャストです。
…いや、「かわいそう」なんて一言で済ませられるような悲惨さじゃないですね。
耐性のない方には当分お肉が食べられなくなるような状態にされてしまうわけですし…
ホント、プレイする人を選ぶ内容です…この作品は。
<丹保 涼子(たんぼ りょうこ)>
郁紀の主治医。
回復後の定期健診における、郁紀の非協力的な態度と何かを隠しているような様子に不審を抱いています。
奥涯教授の失踪事件についても何か知っているようですし、過去、異形にまつわる体験をしたこともあるようです。
後半になると常のクールな女医スタイルも吹っ飛ぶアグレッシブな姿を見せてくれるあたり、
さすがニトロプラス。
それにしても、患者に対してミニスカで足組んだ姿勢で応対するのは
あまりにアレだと思いますが。
たぶん開発者の方々もわかってやってるとは思いますが、こういうストーリーで無理にお色気を演出する必要は
ないと思うのですが…やっぱこのあたりが18禁の背負った宿命なんでしょうかね。