鹿友会誌(抄) 「第十四冊追悼録」 |
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△大里医学士病症経過概略 医師 柏他愛次郎 明治四十四年十二月廿五日、例の如く診療所に於て診察し居られし処、午後六時頃よ り突然悪寒発熱三十九度五分に至り数回嘔吐せられ、咳嗽頻りに頭痛等ありて終夜睡眠 し給はず、翌二十六日午前六時頃に至り体温三十八度に下降し気分も快くなられ、牛乳 粥及び渉猟の日本酒を取られしが、夕刻より又々発熱あり、左胸部に疼痛を覚え咳嗽頻 、に二十七日午前一時より体温四十度五六分に昇り、頻りに渇を覚えられしが、午前七 時頃に至り三十九度に下降、咳嗽頻に喀痰あり、痰は鉄錆色を帯び、クロープ性肺炎の 症状を呈するに至り、頗る心痛に堪へざるを以て、浦井先生の来診を仰ぎ、夫々手当に 務め、一方浦井先生を煩して喀痰の顕微鏡検査を行ひ、愈々クロープ性肺炎と確診する 事を得たり、 二十七日は食欲不振、渇を訴へられ僅に牛乳、スープ、鶏卵等を取られたるも、大半 は咳嗽刺撃の為め吐出せられ、少量の日本酒・赤酒等を取られたるのみ、二十八日は体 温三十八度に下降せるも、疲労衰弱を増され、午後に至り、之れ迄心臓の動きは善良な りしものが、稍々不良の兆を示せるを以て、再び浦井先生の来診を仰ぎしも、心臓の状 態回復に至らず、咳嗽頻出、呼吸困難、頗る苦悶の状に陥られ、浦井先生初め終夜病床 に侍し、百方手を尽くしつゝも、天命如何ともする事難く、二十九日午前七時三十分遂 に永眠せられたり、発病以来僅に五日、噫 |