21d 万葉歌、萌芽期から終焉までの秀歌百五十選
3102 たらちねの母が呼ぶ名を申さめど 道行き人ビトを誰と知りてか
昔娘子ヲトメあり。字アザナを桜児サクラコといふ。ここに二人の壮士ヲトコあり、共にこ
の娘を誂トブラひて、生イノチを損スてて云々
3786 春さらばかざしにせむと我アが思ひし 桜の花は散り行けるかも
(巻十六・有由縁歌)
3806 事しあらば小泊瀬ヲハツセ山の石城イハキにも 隠コモらば共にな思ひ我が背
(巻十六・有由縁歌)
3807 安積アサカ山影さへ見ゆる山の井の 浅き心を我が思はなくに
新羅シラキに遣ツカはさるる使人等シジンラ、別れを悲しびて贈答し、また海道ウミツヂ
に情を慟イタましめて思ひを陳ノべ、云々
3580 君が行く海辺の宿に霧立たば 我が立ち嘆く息と知りませ
(巻十五・遣新羅ケンシラキ使=贈)
3581 秋さらば相見むものをなにしかも 霧に立つべく嘆きしまさむ(同・答)
中臣朝臣宅守ヤカモリ、蔵部クラベの女嬬ニョジュ狭野弟上娘子サノノオトガミヲトメを娶メトりし
時に、勅して流罪ルザイに断じ越前国コシノミチノクニに配ナガす。云々
3724 君が行く道の長手ナガテを繰り畳タタね 焼き滅ぼさむ天の火もがも(巻十五・娘子)
3730 恐カシコみと告ノらずありしをみ越路の 手向タムケに立ちて妹が名告りつ(同・宅守)
3750 天地アメツチの底ひの裏に我アがごとく 君に恋ふらむ人はさねあらじ(同・娘子)
3758 さすだけの大宮人は今もかも 人なぶりのみ好みたるらむ(同・宅守)
3772 帰り来ケる人来キタれりと言ひしかば ほとほと死にき君かと思ひて(同・娘子)
3733 我妹子ワギモコが形見の衣なかりせば 何物もてか命継がまし(同・宅守)
3778 白たへの我アが衣手を取り持ちて 斎イハへ我が背子 直タダに逢ふまでに(同・娘子)
平群氏ヘグリウヂノ女郎、越中守コシノミチノナカノカミ大伴宿禰家持に贈る歌
3940 万代ヨロヅヨに心は解けて我が背子が 捻ツみし手見つつ忍びかねつも(巻十七)
3942 松の花花数にしも我が背子が 思へらなくにもとな咲きつつ
3944 をみなへし咲きたる野辺を行き巡り 君を思ひ出たもとほり来キぬ
(同・掾ジョウ大伴宿禰池主)
姑ヲバ大伴氏坂上郎女、越中守大伴宿禰家持に来贈オコする歌
4081 片思カタオモひを馬荷両馬フツマに負ほせ持て 越辺に遣ヤらば人かたはむかも(巻十八)
4083 常の恋いまだ止まぬに都より 馬に恋来コば荷なひ堪アへむかも(同・大伴家持)
天平勝宝二年三月一日の暮ユフヘに,春苑シュンエンの桃李トウリの花を眺矚テウショクして
作る二首
4139 春の園紅にほふ桃の花 下シタ照る道に出で立つ娘子(巻十九・大伴家持)
4263 櫛も見じ屋内ヤヌチも掃かじ草枕 旅行く君を斎イハふと思モひて
(同・伝誦するは大伴村上)
4291 我がやどのいささ群竹ムラタケ吹く風の 音のかそけきこの夕ユフヘかも(同・大伴家持)
4292 うらうらに照れる春日にひばり上がり 心悲ココロガナしもひとりし思へば
東歌アヅマウタ
3384 葛飾カヅシカの真間の手児奈テゴナをまことかも 我に寄すとふ真間の手児奈を
(巻十四・下総国シモツフサノクニの相往歌)
3386 にほ鳥の葛飾早稲ワセをにへすとも そのかなしきを下トに立てめやも
3400 信濃なる千曲チグマの川の小石サザレシも 君し踏みてば玉と拾はむ
(同・信濃国の相聞往来歌)
3427 筑紫なるにほふ児コ故に陸奥ミチノクの 香取カトリ娘子の結びし紐解く(同・陸奥国/同)
3459 稲搗ツけばかかる我アが手を今夜コヨヒもか 殿の若子ワクゴが取りて嘆かむ
(同・未勘国/同)
3465 高麗錦コマニシキ紐解き放サけて寝ヌるが上ヘに あどせろとかもあやにかなしき
3472 人妻とあぜかそを言はむ然らばか 隣の衣キヌを借りて着なはも
3494 子持山コモチヤマ若かへるてのもみつまで 寝ネもと我ワは思モふ汝ナはあどか思モふ
3555 麻久良我マクラガの許我コガの渡りのから梶カヂの 音高オトダカしもな寝なへ児故に
3577 かなし妹をいづち行かめと山菅ヤマスゲの そがひに寝しく今し悔しも(同・挽歌)
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