モル日記5

 

「兄ちゃん!あっ!出て来た!」

「黙れ!逃げちゃうだろ!」

「ほれ!逃げちゃったぁ〜!お前のせいだ!あっち行け!」

また、やっている。良いなぁ〜!

ちび(弟)が泣いて入って来た。

「兄ちゃんが、あっち行けと言って、たたいた。何もしないのに、たたいた」

という事を泣きながら言っている。何を言っているのか、良く聞き取れない。しかし、そんな所だろう。

「もう、見なくて良いのか!?」

涙を拭きながら、横に首を振った。

やれやれ、しょうがないな!

と言う振りをして立ち上がる。

玄関に置いてあった、丸いすを片手に「モル小屋」の前に、兄弟の真ん中に陣取った。

「とうちゃん、ずるいぞ!」

「そばにおいて置くと喧嘩するから、仲良く出来るようにこうしているんだ。ずるくない!」

仕方なしに、納得!

(特等席をつかんだ!この手は良い手だ!)

庭に出た時は、日向ぼっこと言う感じで気持ちが良かった。しかし、暫くしたら、暑い。

「おい!暑くないか?」

「あちぃ〜!そうだ!」

兄が駆け出した。弟が続いた。

「これ!」

ビーチパラソルだ!

そいつは、真ん中に穴があいているテーブルに立てて使う奴だ。

「それだけじゃ、立たないぞ!」

テーブルは重い。

「出してやれば!」

神の声がした。

「えぇ〜!出すの?!」

と言っている間に立ち上がっていた。

特製見物席が完成した。

しかし、問題がある。テーブルはまるい。

どこに座るかで見えなくなる。

陣取りが始まった。

「喧嘩するなら、片付けるよ!」

ジュースを運んできた神が言う。

ピッタと席が決まる。

(おおぉ〜!絶大なる、かみさん!)

俺の席からじゃ、見えない、一番離れた席になっている。

「おかわり!」

「おれも!」

「取りに来なさい!」

ジャンケンで、取りに行く者を決めた。

俺に決まった。

村の写真館) モル日記6