モル日記4

 

「腹減ったぁ〜!のど渇いたぁ〜!」

散歩?から帰って、第一声!

「もぅ〜、あんたたちは・・・」

そんなやり取りを聞きながら「ちび」の水を代えていた。

「とうちゃん!」

「うぅ〜!」

「水やらなくて良いんかぁ〜?」

「おっ、そうだな」

(ただぶら下げられていただけだが、一応散歩の後だ)

「何でやろうか?良い、入れ物無いかぁ〜!」

バケツじゃ、でかすぎる、キャップじゃ、小さい。

「ちび」の水入れは、電氣釜の内釜だ。

「これ!」

息子が「灰皿」を持ってきた。

「おおぉ〜!良いねぇ〜!」

水を入れて、やろうとした。

「だめ!」

「それは、御客さん用でしょ!

こっちにして!全く、なんでも、かんでも使っちゃうんだから、もぅ〜!」

と吼えた。

(灰皿に来客用が有ったなんて、全く知らなかった!)

「あっ、これ、生徒さんにもらった奴じゃないか!」

(ちょっと淵が低く、中に何とかラビットの絵が書いてある)

「使ってないでしょ!」

(はい!確かに使いにくい、でも・・・)

「あれぇ〜!飲まないよ!」

もう、すでに水入れになっていた。

「そっとしておかないと、だめじゃないか?

後で見よう」

と引き上げた。

中で「おやつ」を食べていたが、気になる。

皆、気になる様で、庭の隅にある「モル小屋」を見ながら食べていた。

結局、このときから通称「モル小屋」が誕生した。

今までは、「小屋」といえば「チビの小屋」をさしていたが、ふたつ有る「小屋」を区別するには「モル小屋」と言う言い方が便利だ。

「小屋」と言うけれども「段ボール箱」をひっくり返しただけのものだ。

「そんなに慌てて食べないの!こぼれるでしょ!ほら!」

もう、気になってしょうがない、早く見に行きたいようで、慌てて、競争して食べている。

負けじと食べた。

(いちばぁ〜ん、と言って飛び出したいが、ジッと我慢!親を装う、辛い!)

「終わりぃ〜!」

「おれもぅ〜!」

まだ早い、素知らぬ顔をして様子を伺う。

新聞なんか見ちゃおうかな!

「あれ!まだ居たんだ?」

「あぁ〜!」

(おい!呼んでくれよ!)

テーブルを拭きながら嫁が言う。

「おおぉ〜!飲んでる」

「兄ちゃん!見えない、どいて!」

「お前が遅いからだ!邪魔だ!」

おっ!始まったな!

「どいてよ!見えないよ!」

「うるさい!お前こそどけ!」

(おい、神の声はまだか!敵も素知らぬ顔をして居る)

「こら、喧嘩するなよ!」と腰を上げた。

(負けました、あんたは強い!)

「どれ、どれ」

見えない訳だ、ふたりして顔を近づけすぎるから。

「ちょっと離れた方が、良く見えるから、こっちへきな!」

兄が離れた、弟が、待ってたほい!と

くっつく。

「お前!ずるいぞ!」

「ほら!離れて!」

これだけ大騒ぎしているんだから既に「モルモット」はいない。

「お前が騒ぐから、逃げたじゃないか!」

「違わぁ〜!俺のせいじゃない!」

「お前だ!」

「兄ちゃんだ!」

(あぁ〜!見たかったのに!)

「もう少し、そっとして置こう」

と離れた。

家の中に入ったが、子供達が入ってこない。

何か騒いでいる。

「何やってんだ?」

小さい、折りたたみの「ディレクターティアー」を運んでいた。

それを、「モル小屋」の前におき、ふたりして座った。

(あっ!良いなぁ〜!)

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