モル日記17

「こら!・・・」

朝から、怒られている。

「どうした?何かやったのか?」

嫁の背中に向かって、尋ねた。

振り向きざまに、

「キミもこっちに来なさい!」

嫁を先頭にして、チビ、兄、おらと続いた。

「これ!何!見てごらん!」

何?と言われても、嫁に分からないものは、おらには分からない。

「あっ、兄ちゃんだ!」

「違わぁ〜い!」

「だって、そうだもん!」

何だ?と覗いてみると、新聞紙が広がっていた。

どうと言うこともない。

散らかしたままだから、怒られたんだ。

「ほら、片付けなっ!」

「俺じゃない!」とチビ

「俺じゃない!」と兄

「どっちでも良いから、早くしないと・ ・ ・」

嫁がにらむ。

「キミ!やりなさい!」

おらに回ってきた。

何だよ、こんな事くらいで、と新聞紙を片付けようとした。

えっ、新聞紙が動かない。

ふっふぅ〜というような笑みを浮かべ、嫁が言った。

「分かった!?」

一番上の新聞紙をめくった。

「ひゃ〜!何だこれ!」

プラモデル用の塗料が、ベッタリ、しかも乾いている。

「床を汚さないように、新聞紙を敷いたのは、大変宜しい。どうすんの?これ!」

廊下兼工作室の掃除をすることになった。

「どっちだ?、これ!」

落ちている部品を拾い上げ、聞いた。

「兄ちゃんの方のだ。」

「そうかなぁ〜?」

と部品を箱にしまう。

「プラカラー、チャンとしまわないと、乾いちゃって使えなくなるぞ!」

「うん!」

「次、作る時大変だからなっ!チャンとしまえよなっ!」

最近のプラカラーは水性だから、乾きは遅い。しかし、浸透性があり、新聞紙ごと張り付いてしまっていた。

膠のようだ。

バケツに水を入れてきて、手ですくうようにし、ピタピタと新聞紙の上から濡らす。

新聞紙は取れたが、乾ききった塗料が残る。これが厄介だ。

以前の油性の塗料は、乾いたら、カチカチになった。

だから、ドライバーのようなもので上から、トントンたたくと、バラバラ取れた。

この水性塗料は、乾いてもそれほどカチカチにならない。ガムの固まったようなやわらかさが残っている。

スキーの滑走面を削る、スクレッパーを持ち出し、床に傷を付けないように、

スクレッパーと床に隙間ができるように塗料の両側に板を置き、削る。

床面に近くなったら、エッジを削るヤスリの両側に紙を巻きつけたもので、そっとこする。

「おぉ〜!やったぁ〜、父ちゃん良いぞ!」

誉められた。

これが、結構良い時間を使う。

「ほれ、かあちゃんに、終わったって言ってこい!」

チビに連れられて、嫁がやって来た。

「まっ、良いでしょう!」

やっと、朝飯だ。

(モル日記18)