モル日記15

 

「カイン〜!」

なにぃ〜!

外に出た。

「良いの!」

嫁が玄関で言った。

「何でぇ〜!」

「良いじゃない!」

良くない!良い訳がない!

こっちに来なさいと、引き込まれた。

「別に名前なんてなんだって一緒でしょ!

好きに呼べばいいんだから!妥協!」

「チビ〜!」

両方で顔を向けたが、

来たのは「チビ」だった。

「持って来い!」ボールを指し言った。

「本当に、お前は良い奴だ」

何度か遊んでいると

「俺、散歩に行く」と

容器を下げて出て行った。

まっ、何でも良いか!

「気を付けてなぁ〜!」

返事がなかった。

名前を付けたって、

奴等に分かる訳が無い。

「向こうで、ゲームやってる!」

道路の方が騒がしくなっている。

「お前!ずるいぞ!」

「ずるかないやぁ〜!」

ありゃ!道路の真ん中で喧嘩かよ!

「おい!何やってんだ!」

「此奴、俺のディック持ってる!」

帰ってきた兄が言う。

「違わぁ〜い!」

「何言ってんだ!俺んだろ!」

「中に入れ!」

「お前達、

自分のがどっちか分かんないんか?」

「これ、俺んだ!」

「違う、だって首ん所が白い!」

「バカ!良く見ろ!」

「バカじゃない!」

「背中に茶色が有る!」

「違う!」

「俺にも分かるように言えよな!」

「だから!・・・」

「いい加減にしなさい!」

嫁が、玄関で言った。

「そぅ〜れ,怒られた!」

「君も!三人で何やってんの!

入んなさい!」

「あぁ〜?!何で!俺もか?!」

チビが足元にいた。

「お前は、良いから向こう!」

「早く!」

最後に入った。

「それ、置いてきな!」

容器を持ったままだった。

「なんで、分からないものを自分のだとか、

名前を付けるだとか・・・・」

「君も、いい加減なんだから!・・・」

「ちゃんと決めてから、良い!・・・」

「決まらなかったら、決めようか!?・・・」

「しるしがどうの、言ったって・・・」

「分かった!?」

何言われたのか分かんない。

でも、怒られてるんだと思った。

首輪を付ける事にした。

開放され、外に出た。

玄関先に腰掛けて、タバコを出した。

チビがよって来て見ている。

「あぁ〜!怒られたよ!」

頭をなぜながら言った。

「とうちゃん!」

兄が後ろから言った。

振り向いたら、二人いた。

「なんだ、釈放されたか?」

「うん!」と言うようにうなづいた。

「お前達、

どっちがどっちか区別できないのか?」

「できる!」

「お前は黙れ!うるさい!」

モルモットは伸び縮みが烈しい。

まるくなっているときは、どっちも黒が多い

伸びた時に、チョッと色の違いが分かる。

だから、それで区別する。

首の所が白いのが2号

背中に茶色が出るのが1号

と言う事らしい。

ただし、言い方は違うが!

「まっ、かぁ〜ちゃんが

首輪を作ってくれるんだろ?

良いじゃ〜ないか!」

「もう、間違わないんだろ」

「うん!」元気に、ちびが言う。

「散歩に行って来い!」

「とうちゃんも行くか?」

「そうだな、行くか」

「あと!」

右の腿をたたきながらチビを呼ぶ。

体を一周するように回りながら

横に付いた。

本当は、

左に付けるように訓練するようだが、

子供達が散歩に連れ出した時の事を

考えて、あえて反対に付くように訓練した。

子供は、学校で「右を歩きなさい」と

訓練される。

右側を歩いていて左に付けると

犬が車道側を歩くようになる。

何かのはづみで引っ張られると危険だ。

まだ、右の方が余裕が有る。

と考えた。

「カインは?」

「今日は、置いてこ!」

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