『電子内容証明郵便』スタートのお粗末

 去る2001年2月1日(木)にスタートした『電子内容証明郵便』サービス。各誌でも既に報道されていますが、今回の実逓便では、郵政事業庁はとんでもない間違いをしてくれました。

 このサービスは内容証明郵便物を、インターネット経由で新東京郵便局に置かれたサーバに送信し、証明を行い発送するもの。手続き上は1999年から行われている「ハイブリットメールサービス」の特殊扱いのような位置付けになっていますが、実はユーザ登録は別々に行う必要があります(事前に言っておいてくれればいいのに・・・・当日の10時のサービス開始に合わせて更新されたホームページで初めて判明しました)。

 手順としては、以下の仕組みになります。
(1)ユーザが内容文書を作成
(2)専用ソフト「e内容証明ソフト」をダウンロード(住所データありとなしがありますが、ありは分量がものすごく大きいので、郵便番号簿で郵便番号を調べれば、「住所データなし」でも全然問題ありません)
(3)(2)のソフトを使ってアップロード(宛名ファイルをcsvファイルで作っておいても可)
(4)SSLを使って送信
(5)新東京郵便局のサーバで受信後、受付処理を行い、以下の作業を実施
 a.内容証明郵便物を差し立て。封筒に書留引受番号(番号1)を付番。
 b.差出人宛て、謄本の入った郵便物を差し立て。封筒に書留引受番号(番号2)を付番。
 c.受信データは5年間保管
 d.料金データをクレジットカード会社へ請求、クレジットカード会社は利用者から収納し、料金後納扱いで納付(利用者から「代理収納」扱い)

 謄本の郵送料が差出人負担となるため、郵便局の窓口へ出向く手間がなくなるメリットはあっても、コストは余分にかかります。これが需要拡大には大きなブレーキと思えるのは私だけではないでしょう。

 ともあれ、今回のミスは、(5)−bの、差出人への謄本同封郵便物について起こりました。本来であれば、「(番号1)の郵便物を引き受けました」という証明を、(5)−bの謄本に対しても行い、(当然郵便局控えにも同様の証明をしますが、この電子内容証明郵便物の場合は電子データでの保管となります)その郵便物を(番号2)によって書留郵便物で差し立てることになります。

 ところが、今回の証明は「(番号2)の郵便物を引き受けました」という証明を、(5)−bの謄本に対してしてしまったのです。つまり、(5)−bの郵便物には本来あるべき2つの番号はなく、(番号2)だけが存在したことになります。

▲上半分は謄本の宛名文書。「52281701603」の番号がある。(上でいう(番号2))
△下半分は謄本の本文。「52281701603」をシステムで埋め込んだ(番号2)。本来は(番号1)が正しいので、手書きで修正し、新東京局の和文印が押印されている。



 つまるところ、「証明にならない証明郵便物」を作ってしまったわけで、システム構築上、「所期の効果を達成できない」致命的なエラーと言えます。

 なお、このシステムの構築予算は4億円と言われ、三菱電機が受託。三菱電機は「当社のミスではなく、提示仕様が誤っていた」という回答をしているとのことですが、SI(システムインテグレータ)としてその態度はないと思います。

 一般的にシステム構築ではバグは付き物と言われます(なお、この件では三菱電機は「バグではない。仕様が元々間違っていた」とコメントしているようです)。しかし、今回のケースのように、「本質がまったく把握されていないことによるミス」はシステム構築上最悪のパターンで、単に数字を埋め込み間違っただけで済まされません。システムの目的である「郵便物を証明する」業務フローをきちんと捉えていなかったからこそ、結果的にまったく行う意味のないシステムを作ってしまうことになったわけです。ベンダーサイドの仕様・プロジェクト管理が厳しく問われてしかるべきでしょう。

 確かに、郵政事業庁は旧郵政省時代、2000年対応の漏れがあった富士通・沖電気に対して、異例とも言える賠償請求を行っています。ベンダーとしては過ちを認めようものなら、同様の轍を踏まないとは言い切れません。
 反面、郵政事業庁にも、実験を通して今回の仕様ミスを見つけられなかったことで、消極的ではあれ「共同責任」と捉えている節があります。

 郵政事業庁も、2000年対応に続くシステム面のトラブルの起こし方は、管理能力の欠如を疑われても仕方ないのではと思います。ベンダーに丸投げするからこそ、ベンダーを管理する能力、目標達成への発注主としての責任を、問い直すべきでしょう。

 ちなみにこの電子内容証明サービス、企業ユーザや個人ユーザでも主力になりつつあるIE5.0ではエラーが出て、ログインできません(だから書いとけっての!!!!・・・今は指摘があったせいかトップページにその記述があります)。ユーザアンフレンドリーなシステムといい、何から何まで将来を暗示しているかのようでした。

(私の場合、当日夜にNetscapeが入った雑誌を買いに走り、インストール後、Netscapeからページにログインして事なきを得ましたが。)

 なお、初日利用者は26人ということで、私を含め、私の周囲にもかなりの人が出していることから考えると、ほとんど郵趣家が「本番開始モニター」としての露払い役を務めたのでは・・・(笑)。


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