<鬼>





「鬼」は日本の中で、やけに「親しまれている」化け物です。
幽霊系のように「祟る」とか「障る」というような超常現象タイプではなく、 ”でかくて強くて乱暴で鉄棒ぶん回して人を食っちゃう”・・・という、 腕力一本やりの豪快さがウケているんではないかと思います。

と言ってもかなり恐ろしいもののようで、 「赤鬼」とか「青鬼」の他に「黒鬼」なんかもいるらしく、 何かで聞いた解説では、これらの色は人間の死体が変色していく課程を 意味しているようで、要するに「鬼」の正体というのは、 人間から冥界へ行った者が動いている・・・ もしかしたらゾンビとかリビングデッドとかそういうのかもしれませんが、 幽霊や骸骨のような 「人間が死んでから転化したもの」 じゃなく、  「死体が、霊界の負のパワーを帯びてしまったもの」 みたいな感じで、 そりゃ、生身の人間がタチウチできないほど強いだろうと思います。

現代で一般的にイメージされる「鬼」の姿は、 皮膚の色は赤とか青とかで、体がプロレスラーかもっとすごい体格で巨大、 トゲトゲのついた鉄棒(ゲームをやった事のある人は”クラブ”とか ”メイス”という棒状武器の名前を知っていると思いますが、 この鉄棒なんかがそれ系です。  ゲームでは 「刃がついていない」 という理由で僧侶の持ち物ですが、 ぶん殴り系なので相手の状況は刃物より悲惨かも・・・  ちなみに日本の僧兵の方は刃がついていてもよくて、 長刀なんか持って歩いてます。 日本の僧兵はかなり強い兵士で、 寺の勢力の強いときには乱暴を働いても無敵状態なので、 市民に恐れられていたようです。 閑話休題・・・) その”鉄棒”を持っていて、なぜか「トラの皮のぱんつ・・・いやふんどし」 をしています。
なぜ虎の皮なのか、ちょっと由来がわからないのですが、 河童の皿と違ってこのぱんつをとられると神通力がなくなる・・・とか そういう事は別にないみたいです。(まぁちょっとみっともないかもしれませんが・・・)


で、この「鬼」ですが、かなり種類があって、地獄で血の池や針の山に 人間(亡者)を追い立てる仕事をしている閻魔様の家来・・・というか、 地獄の実際の勤務担当はこの人達だと思うんですけど、 そういう、まじめに職務を担当して働いている「実務派」の「マジメな鬼」と、 山にいたり鬼ヶ島に棲んで、 乱暴したり人を食ったりして暴れ回る、被害甚大の「悪い鬼」がいて、 これはどちらも 「虎の皮ふんどしタイプ」
節分に豆をまかれて家から追い出されるのも、後者のタイプのようです。
なぜか「カミナリ様」が、ほぼこれと同じスタイルで描かれるのが ちょっと不思議ではあるのですが、やはり超人的なパワーを持っていて、 落雷などで一撃必殺の被害が出る「力」の象徴なのでしょう。
こちらは雲に乗っていたり、背中にタイコを持っているので 単なる「鬼」とは容易に区別できます。

あと、羅生門の上に居座ってたり、大江山で宴会やってたりする酒呑童子などの、 かなりパワーの強い「魔物」の要素の強い「鬼」がいて、 酒呑童子なんかは山のように手下を率いた「ボス」なので、 「鬼」も団体というか、社会生活をしているらしい事がわかります。
渡辺綱に片手を切り落とされて、その腕は 「鉄のようだった」  そうなので、そんなものを切り落とす渡辺綱という人の腕前は、 やはりものすごかったようです。



さて、ここまでの鬼はほとんど男性(多分)なのですが、 他に「山姥」というジャンルがあって、山の奥深くにいて人を食うという コワイ化け物のおばぁさんですが、これが「鬼」の女性版という感じ。
旅人が一夜の宿を乞うと、「はいよ」と言って泊めてくれるのですが、 夜中に殺されて、料理して食べられてしまいます。  夜道を逃げようとすると、魔物のスピードで追いかけてきます。  「ヘンゼルとグレーテル」に出てくる森の魔女がこんな感じです。  「安達ヶ原の鬼婆」というのもあって、こちらはどちらかというと「夜叉」 的なイメージ、元は人間じゃないかなという雰囲気です。
金太郎を育てている「足柄山の山姥」は、 「山姥」といっても人を食ったりする悪魔系ではなく、 どちらかというと山の精霊で、 「超人について育ててくれるニンフ」みたいな感じ。  舞台などで見ると「若くて落ち着いたおかぁさん」 みたいな描写になっています。

コワイ鬼系の家系には、なぜか美人の娘がいるようで、 鬼と碁を打つ長谷雄卿がもらった「鬼の娘」は、ものすごい美女でした。
鬼ヶ島に行った牛若丸の物語では、やはり、美しくてはかなげな鬼の娘が 出てきます。 この娘は、牛若丸に恋をしてそっと逃がしたために、 後で鬼のお父さんに引き裂かれて殺されてしまいます。 ちょっと可哀想です。



さて、「珍見異聞(2)」では 「桶」 という鬼の子供の出てくる話が入っています。
よほど風呂が気に入ったようです。  鬼の家に風呂はなさそうな気がするんですがどうでしょうか・・・


2001.5.6.


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