{・・・ くされペンのはなし ・・・}
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ウィザードリィは、パーソナルコンピューターをみんなが自宅で 使い始めたごく初期の頃にできたRPGの古典作品で、 しかも今遊んでも面白いという、コンピューターRPGの大名作。 「狂気王トレボー」というヘンなオジサンが、いきなり自分ちの地下室 (とゆーかダンジョンなんですが)で冒険者を育成して 「悪の魔法使い、ワードナの野郎にアミュレット盗まれたからとってこい!」 という条件で始まる、地下室オンリーのダンジョン探検記です。 私はNECの98でこれをやったのですが、 今思い出してもスリリングなゲームでした。 なにしろ・・・宝箱を開けるときに罠を調べて解除するんですが、 その罠の名前(英語です!)をキーボードから打ち込むとき、 罠のスペルを1文字でも間違えようもんなら・・・ なんと文字の修正が受け付けてもらえないのであります!(わはははははは) ものすごく強い敵にやっとの事で勝ったと思ったとたんに、 宝箱で何回死んだことでしょう(とほほほ) 私はとびぬけてスペリングの能力値が低いのであります。 (そのわりにスペルキャスターが好きですが・・・まぁそれはともかくとして) で、死体になると、なぜかカント寺院の連中が さっさと死体を回収してしまうので、寺院に行って金を払って 連れ戻してこないといけないんですが、この寺院のお布施の定価っていうのが とんでもなく高い!! いや、私だって、別に宗教法人が、 伊達や人助けでお寺や教会やってんじゃない事くらい承知してますよ。 自分が戦闘に失敗してコケちゃったんだから、タダで何とかしろとか、 そこまではいいませんよ。 必要な代価は払いますよ・・・ でも、たかがレベル5の魔法使いに、その金額はないだろうっっっ?! こっちは金もなければ持ち物もない、かけ出しの冒険者だぞっ!! その、お屋敷建てるような金額はいったいなんなんだよっ!! ・・・いや、失礼しました。 とにかく、このカント寺院のあくどさと気位の高さについては、 抗議したって言うこと聞かないし、灰は灰に、塵は塵にしちゃって LOSTでもされた日には、ウチのキャラクターの ラックが低いとかボーナス点をみんなMPに振り分けちゃったとか そーゆーモンダイじゃなくて・・・ いや、まぁ、カント寺院について苦情をのべ始めると キリがないのでこのへんにしますが・・・ とにかくカント寺院に連れて行かれると とんでもない事(財政的、またはステイタス的に)になるのは 目に見えているので、その当時我々プレイヤーは、 キャラクターが死んじゃった場合には セーブディスクにその結果が書き込まれる前に、 稲妻のようにフロッピーディスクのイジェクトスイッチを押して、 キャラクターを生きたまま救出する・・・ というのが、 日常的な奪還方法になっていました。 (Windowsではそんな乱暴な事はできませんが、 ディスクを抜いて電源切れば全てが丸く収まる・・・という、 当時のMS−DOS機の場合、だいたい全部そういうものだったです。) このスタンダードな形のWIZは、1から5まで出ていて、 しくみはどれもほぼ同じで、凝った謎解きや、語りの格調高い雰囲気、 ストーリー性を可能な限り排除してRPG戦闘とアイテム収集に おもしろさが結集するあたり、素晴らしいできばえなのであります。 その上、なんかミョーなギャグ感覚があり、だいたい、 狂王トレボーの修練場であるお城のダンジョンの中に 「エレベーター」があるんであります。 中世を舞台にした格調高い雰囲気のハードなファンタジーRPGで 「エレベーター」ですよ! 普通ならプレイヤーがキレるところですが、このWIZというゲームの場合、 それが許される、なにかぶっ飛んだギャグ感覚が底に流れているのであります。 そういう意味で、真面目で道徳的な 「ウルティマ」 シリーズとは なかなか好一対なのですが、とにかくそういうゲームなので コマンドやナレーションの表記もふざけていまして、 宝箱の罠解除に失敗したときの 「Woops!」 も 「おっと・・・!」 とマヌケな感じに訳されていて、 冷や汗かいて罠解除したと思ったとたん 「おっと・・・!」 と書かれた日には、 笑っていいのか泣いていいのか複雑な心境でしたが・・・他にも、 メッセージの終わりに「リターンで抜けます」 とか (メッセージモードの終了に ”抜けます”はねえだろー!) 名ぜりふがいろいろありまして、当時からのWIZフリークの人々は、 今でもこの表現でないと、許さないのであります。 (余談ですが、先年、WIZの1−3の再発売版が出たとき、 喜んで買ってきたら ゲームの黒い紙箱を開けたとたん、箱のフタの折り込み側に、 黒い地に真っ赤な文字で 「おっと・・・!」 と書いてあったので 大笑いしてしまいました。 フリークの人は、もうあれだけで、 死ぬほど嬉しかったと思います) まぁ、どちらかといえば直訳に近い「ヘンな日本語」状態だったWIZのナレーションですが、 ゲーム自体のハードで格調高くてヌケまくった雰囲気とあいまって、 なんともいえず愛されていたようです。 (これも全くの余談ですが、ゲームの訳の中にはひどいものもあって、 1度買った別の本格派RPGは、 ゲームに慣れない会社が権利を持って出したらしく、 訳はどうやらコンピューターのオート翻訳で、 ”てにをは”があちこち間違っているくらいは何とか意味の見当がつくんですが、 戦闘中の表示で 「ジャックは溝に流れて50のダメージ」 ・・・ミゾに流れる・・・??? 冒険者が、オークと戦闘中に・・・??? よくよく考えると、どうも敵に ”エナジードレイン” されたのではないかと・・・ だめだこりゃー・・・ と思ってさすがにプレイを諦めました。 ゲーム自体はわりとまともそうで面白そうだったのでザンネンでした。) 海外ゲームには直訳のヘンさと共に、日本人にはない「ミョーな感覚」があって、 それが海外ゲームの大きな魅力の一つになっています。 RPGは、海外では 「大人がプレイするためのゲーム」 という認識が基本になっていて、この、スタンダードのWIZ1−5も、 基本対象は成人(別に子供がやってもかまわないんですが、 ちょっとネタが難しいし根気もいりますよ・・・みたいな感じ)で、 人を食った雰囲気のダンジョンの中でくつろぎながら(?) テキストタイプ(アクションRPGと違って、反射神経には関係なく、 相手のターンとこちらのターンを順に戦っていく形のもの) の戦闘RPGを楽しむようになっています。 あ、失礼しました。 WIZの4だけは「RPG」ではなく、 異色の 「WIZシミュレーション」 です。 これは、冒険者にやられたワードナ(最後のボスです)が、 手下のモンスターを召還しながら、地下にやってくる冒険者に戦いを挑み、 冒険者にやられて死んだ最下層のダンジョンから上に昇っていく ・・・という、超オタクチックな「リベンジ型」召還戦闘シミュレーションゲームです。 ちょうど「WIZ4」が発売されたとき、ログイン誌から 「WIZ4の イラスト描きませんか? なんならテスト版を送りますよ」 と言われ、 「わーい、WIZが描けるーー!」 と、大喜びで引き受けたんですが・・・ なんと私、シミュレーションゲームがまったく苦手なのであります (ハマったのはシムシティとファーストクイーンと ロード・モナーク(これシミュレーションか???)だけだっ!) もちろんあっという間に死ぬので、 イラストも何も描くどころではありませんでした・・・(しーーん) 「RPG」と「RPG風シミュレーション」 て何が違うの??? とお思いの方がいると思いますが、えー、シミュレーションてのは 自分と敵の「ユニット(部品・・・将棋の駒のようなもの)」が それぞれ戦うものでして、どれがどれより強いとか、どれが弱いとか 固定され、はっきり決まってまして、 強い数字に弱い数字がぶつかると必ず負けます。(というのが第一の鉄則です) で、各部品の強さがはっきり決まっているので、 手持ちのコマの種類や数をうまく配分して合計の強さを調整しながら、 相手の手を先読みし、陣取りのバランスや戦略を練って、 頭脳的にうまくゲームを進めていきます。 固定の動きをする駒を、頭を使って進めていく、 チェスか将棋みたいな頭脳派タイプの戦略性が「戦闘シミュレーションゲーム」 の基本です。 一方「RPG」でも戦闘をするのですが、 こちらは「ユニット(部品)」を使わずに、 自分達のグループ(共同体)のテクニックや体力で戦うのが主で、 「必ず決まった動きを担当してくれる駒」 を持つ将棋やチェスと違って、 バレーボールや野球やサッカーの、 「選手が個人で、成功/非成功の得意技を繰り出しながらチームプレイする ゲーム」 のほうに似ています。 こちらは「個人の得意技」が決まらなくて「スカ」だったり、 こちらの得意技をヘとも思わない相手だったりする場合、 散々な結果になるちょっとなさけないゲーム(おいおい)です。 ストライクゾーンに投げたつもりがボール球になったり、 凡打のはずが向こうの守備が弱く、こぼしてランニングホームランに なってしまったりと、基本の攻撃や守備にもかなりの幅がありますし、 もちろん強いチームがだんぜん強いのですが、チーム編成によっては、 いきなりエースアタッカーがデッドボール受けてダウンして逆転したり、 全体に疲労してきて攻撃がヘタってしまい、 体力の残っていた相手チームに後半でやられちゃったり、 攻撃力はないんだけど、回避力と変則ワザの地味なテクニックだけで 勝ち抜くチームが出たり、途中で逃げて盗塁するやつがいたりと、 考えつく限りのいろんな手法で戦います。 強くなくてもいいから、勝って進んで「ゴール」さえしちゃえばOK(!) という、ある意味ではスポーツゲーム的な戦法です。 (対してシミュレーションゲームは、テーブルゲーム的要素が楽しめます。) 私は 「弱くてヘンな趣味的編成チームで、相手のウラをかきながら勝ち抜く」 ようなクセがあるので、シミュレーションゲームの 「強い駒vs弱い駒だと、弱い駒の負け」 ときっちり条件が固定されていると、 先に進むのがなかなか難しいのであります。 −−−ともあれ、ここまでがスタンダートのWIZです。 スタンダードももちろん楽しくプレイさせていただいたのですが、 実は、私が熱狂的にハマったのは、 このあとWIZの「ゲームシステム」だけを踏襲し、 中身は完全に別ものとして、ドラマ性のあるRPGを構築してしまった 「ベイン・オブ・ザ・コズミックフォージ」 の方なのであります。 |
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「ベイン・オブ・ザ・コズミックフォージ」は一応「WIZ6」 とナンバリングされていますが、 戦闘ゲームと迷路の探索を楽しむスタンダードWIZとは 完全に違うコンセプトのゲームで、こちらは「物語」そのものの展開を楽しむ ドラマ的RPG です。 どちらかというと、 謎解きを追って進むミステリ小説に近い内容になっています。 重厚で格調高い雰囲気と、とんでもないぶっ飛んだギャグ感覚が 同時に共存しているところは、 いかにもWIZの名前を継いだだけのことはあるのですが、 そこに幾層にも重なったパロディと、濃厚なエロティシズムと、 謎解きを軸にした、筋の通ったしっかりしたドラマ (海外RPGとしては非常に珍しい!!)を、黒魔術趣味やオリエンタル趣味、 伝承説話やフェアリーテイルを各所に織り込みながら展開していくという、 あらゆる意味で完全に大人向け(特に、 ふんだんに出てくるパロディの華やかさ!)に作られたRPGの大作です。 ただし、戦闘システムなどはWIZそのままなので、 WIZをプレイしなれている人は多少勘が効くと思います。 (まず相手を眠らせて敵の総攻撃数を減らし、 順次つぶしていく方法などは、WIZの戦闘テクニックがそのまま使えます) 「完成されたWIZのルールシステムでプレイできる、全然別のRPG」 という表現が、一番正しいかもしれません。 さてそんな「コズミックフォージ」ですが、最大の特徴は、さっきも言った、 海外RPGとしては極端に珍しいと思われる物語性重視の骨格と、 その物語にゴシック装飾のように絡まっている古典や小説のパロディ、 多重的にイメージの重なった数々の趣味的な雰囲気です。 WIZはテキスト式RPGで(テキスト式というのはグラフィックなどの ビジュアル表示ではなく、小説のように 文章 で 状況を説明する形式のゲームを言います。) 城の中にいる時の背景なども、あっさりした石組みの壁が表示されるだけですが、 部屋の扉を開けて中にはいると、例えばこういう文章が表示されたりします。 ”歳月による崩壊がどれほど進んでいようと この部屋の豪華さは失われていなかった。 ここはおそらく城の中で 最大の寝室であろう。 城主はこの部屋を自分の 私室として用いていたに違いない。 壁は壮大な手書きの壁画で 飾られており、部屋の隅々まで 職人の丁寧な手仕事で仕上げられている。 かつてこの部屋を彩った美しき輝きは この暗い廃墟の中にもかすかに 残っていた。 向こう側の壁際には、支柱のついた ベッドの残骸が崩れ落ちていた。 そして、崩壊した家具は 部屋中に散らばっていた。” このゲームが持つゴシック的な雰囲気が 多少分かっていただけるかと思いますが、 WIZはもともとこういう雰囲気のあるナレーションが得意で、 スタンダードWIZもかなり濃厚にこの趣味が発揮されているのですが、 BCFは物語要素が濃くなったせいか、一層拍車がかかっている感じです。 「コズミックフォージ」はこの見捨てられ、崩壊した城の中から始まって、 そこに住み着いた奇妙な盗賊達に逢ったり、 黄泉の河のサイレン達に翻弄されたりしながら、 大バカヤローな魔法使いの弟子にクラクラしつつ、 この城の城主の謎を解いていく事になるのですが、 「夜中に自分の部屋で一人でプレイしてたら、ゾクっとして首筋が冷たくなった」 と友人に言わしめた ”首を切られた幽霊の場” や、 不覚にもホロリとさせられてしまった ”ビアンカのモノローグの場” など、ドラマ的にも優れた場面が多くて、 「ドラクエが日本でやってしまった事と、どっちがスゴイんだろうか・・・」 などと考えてしまうこともあるのですが、ともかく、 こういうまったく趣味的なシナリオを、 ちゃんとゲームとして発売してしまうあたり、 アメリカという国のゲームの土壌は、 ちょっとすごいなと思ったりしています。 私は1つのゲームをプレイする期間が非常に長いので、 (ドラクエで3ヶ月くらい、海外のこういう大作だと、 エンディングまで半年以上かかっている事が多いです) あまり同じゲームを何度もプレイしない(できない)のですが、 このBCFだけは雰囲気が好きで3度くらいプレイしています。 最近、Windows上で動く形で再発売されたので、 また少しプレイしたら、マップを覚えていたので自分でも驚いてしまいました。 今見ると驚くほど荒いドットのキャラクターグラフィックも、 「やっぱりキレイだな」 と思うのであります。 よくよくこのゲームに惚れ込んでいるようです。 なお、この物語に出てくる「ペン」は、作中人物に 「くそったれのくされペン」と呼ばれております。 ・・・気持ちはわからないでもありません・・・ 古いソフトの操作法そのままの再発売ですが、興味のある方はプレイしてみて下さい。 |
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