「明日はもう起きれん」
いつになく弱気なやいさん。それもそのはず、朝5時に起きて出発しようってのに時計は2時になろうとしている。午前の。しかもここはスナックで、いいかげん酔っぱらってしまっている。そしてぼくも。
少々ふらつきながら布団に入ったのはたぶん2時を回っていただろう。
翌朝目が覚めると、やいさんはまだ寝ていた。時計を見ると5時半。少ししてH氏が部屋に来た。
「あらっ?行かんの?」
いつもは一番に準備をしているやいさんがふせっているのを見て、H氏は思わず声を掛けたが、これが引き金になったか、
「いくぞっ」
と、ガバッと飛び起き準備を始めた。
「オレちょっと準備して行くから先に行っとって。」 と、ぼく。
徳島の仕事がこの土曜日で終わったぼくは、魚釣りの後そのまま次の勤務地広島に行こうと荷造りを始めた。といって、そんなに荷物もないけど。
結局1時間遅れくらいで後を追った。
「やってるやってる」
これは雰囲気的には釣れそうなかんじだ。磯だし。甘い?
「ど〜よ?釣果は?」
「おう、来たか。まだ釣れてねえ。これからよ。」
「そっか。」
早速釣り場所を探し、竿を伸ばした。
今日は風はそんなにないが、波がある。移動時に足が波で洗われたりしたけど、長靴を履いてきたから大丈夫。といって油断は禁物。磯では海苔とか海草、藻が岩についてるトコがあって、その上を歩くと滑りやすい。スパイク靴なら平気なんだろうけどね。
釣り人が集合している場所があった。島のような感じだが、浅瀬を渡っていけば行くことができる。
と、F産業のKさんの竿が大きく曲がった。 最初地球を釣ったのかと思ったが、少しずつモノが上がって来ているようだ。
「釣れてんのか?」
少しずつ上がって来るといえば、昔、木更津のあたりで釣りをしたときに「トタン」を釣ったことがある。トタン屋根のトタンだ。あれもじわじわ上がってきたっけな。ふとそんな思い出をかみしめていたら、モノが上がった。
タコだった。