ボランティア募集

 天体観測所は、標高351メートルの山頂にあって、東南に太平洋を見下ろすことができて、爽快な気分を味わうことができる。戦前なら、さしずめ浩然の気(『孟子』「公孫丑上篇」)を養うことができるというところである。

 敷地は3000平方メートルあるが、東北側は国有林の松林に接していて、その面が約100メートルあるから、細長い地形となっている。天体望遠鏡は一段と高くなった眺望のよい所に設置してあり、低くなった所にはログハウスや工作室などのプレハブの建物が並んでいる。これらの建物は、そこから発生する上昇気流によって天体観測の障害とならないように、望遠鏡から見て北西に配置してある。

 天体観測所の敷地は、県立公園の範囲に入っているというので、建設を始めた当初から、大勢の見学者が来ることを前提として工事をして来た。排水は一か所に集中しないようにして、地下浸透方式を採用している。コンクリートも、人工的特徴が目立たないように、できるだけ周囲の景色に調和するように配慮した。1メートルの反射望遠鏡の周囲には、バラを植えた。100本近いバラの大部分は、東京は目黒区の駒場バラ園が提供してくれたものである。その下の部分には、果樹を何種類も植えた。将来、子供たちがグミや柿やリンゴが食べられるのを楽しみに天体観測所へ来ることを期待しているからである。その東側の一帯は、体力の維持をかねて昨年の暮れから開墾をし、ジャーマン・アイリスや芝桜などを植えてある。その東側では、無農薬野菜を栽培中で、小松菜,新菊、生姜、青首大根、こんにゃくなどのほか、ウド、タンポポ、のびるなどの野草も移植してある。ヨモギはきわめて頑丈で、その新芽は天ぷらにすると美味であることがわかった。今年は堆肥作りが間に合わなかったので化学肥料も使ったが、できるだけ早く有機肥料だけで栽培できるようにしたいと考えている。

 バラや果樹を植えるとき、一応は最終的な形を考えて配置したつもりであるが、そこは公園設計の素養のない素人の悲しさで、どう見ても雑然としていて統一がとれていない。草花は、陽当たりがよくて手入れが行き届けば、どんどん増えるから、瞬く間に見事な花壇ができると思う。そこで、どなたか公園設計に興味ある方の助言をいただいて、県立公園の名に相応しい場所にしたいと願っているわけである。

 野草は、天体観測所の周辺にかなりあることがわかっている。野草を天体観測所の敷地内に移植しておいて、いつでも必要なときに摘んで食べられるようにしたいので、カラー写真の野草の本を二冊買い込ん調べてみたが、子供の時に見知っている野草はともかくも、未知の野草は今ひとつ確信が持てないでいる。この方も、専門家の助言を得て、栽培対象を増やしたいと考えている。

 将来は有機野菜を栽培したいので、隣接する市立「青少年の家」の敷地内で刈られた草をもらってきて、堆肥を作っている。先日、堆肥の積み替えをしたら、今年は天候不順で季節を間違えたのか、その中に一〇匹以上のカブト虫の幼虫がいた。ドーナツぐらいもある白くて大きな虫が丸くなっているのは、気味が悪いが、考えてみれば貴重な昆虫である。前から考えていたのであるが、研究対象を天体観測に限定する必要は全くないのであるから、天体観測所付近の昆虫を調査して、標本を作りたい。夏には、たくさんの蝶や蛾を集めることができるし、蟻も何種類もいることがわかった。この方も、専門家に参加していただければ、10人まで宿泊できるログハウスを拠点として、学校教育に役立つことがいろいろできるのではないかと思う。

 以上のような趣旨で、「催し物案内」に草花と野草と昆虫のボランティア募集の広告を出したのであるが、1998年11月現在、参加者はゼロである。


トップへ戻る Return to the top page.

天文随想へ戻る Return to Essays on astronomy.