2.キリマンジャロの気象
キリマンジャロ登山道の植生・気候としては、大きく5つに分けることができる。
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標高 |
気候 |
年間降水量 |
マラングルート上の位置 |
@低地 |
800-1800m |
サバナ気候 |
500-1800mm |
〜マラングゲート |
A樹林 |
1800-2800m |
熱帯雨林気候 |
2000mm |
マラングゲート〜マンダラハット |
B荒地 |
2800-4000m |
温帯〜亜寒帯気候 |
1000mm |
マンダラハット〜ラストウォーター |
C高地砂漠 |
4000-5000m |
寒帯気候(高山気候) |
250mm |
ラストウォーター〜キボハット |
D頂上 |
5000m以上 |
氷雪気候(高山気候) |
100mm以下 |
キボハット〜頂上 |
(出展 AFRICAN WILDLIFE FOUNDATION)
キボ峰とマウェンジ峰の鞍部サドルには、日射による地面の温度差で起きる谷風の上昇流が収束するため、上昇流が強くなり地形性の降雨が発生しやすいようだ。たとえ日射がなくても、南東貿易風の流入があれば、鞍部に風が収束するため、やはりサドル周辺は天気が崩れやすい。しかし、サドルは4000mを超える高地のため、大気中に含みえる水分量が少なくなるので、強い降雨(降雪)になることはないと思われる。
ちなみに、高地で大気が乾燥しているのは、高度に従って気温が下がるため飽和蒸気圧が低下し水蒸気が凝結して水(雲⇒雨、雪)になるので水蒸気量が少なくなるからである。要するに仮に相対湿度(=蒸気圧/飽和水蒸気圧)が同じでも、低温のため飽和水蒸気圧が低下、すなわち大気中に含みえる水分量が低下するので、水分量(=蒸気圧)が少なくなり、大気は乾燥するのである。
この事実は高山病予防の重要なポイントの一つである『水分補給』につながる。乾燥大気のため、呼気から水分が消失し脱水症状になり、血液の粘度が上昇する結果、酸素の循環が悪くなり高山病が悪化する。意識的に水分を補給して、せっせと排尿するのがよい。排尿回数が減るのは危険信号と思っていい。
キリマンジャロは、南緯3度と赤道に非常に近いのでコリオリの力が弱く、渦の原動力が小さいため、中緯度の温帯地域のように低気圧、高気圧ができず、大気の温度差(=密度差)による高圧部、低圧部ができるのみと考えられる。従って、天気が崩れる要因としては、日射か南東貿易風かであるが、後者の南東貿易風は2006年12月〜2007年1月までの2ヶ月間、850hPa(1500m)の下層風をウォッチした限りはキリマンジャロ周辺ではそれほど顕著ではなく、残るは日射の影響によるものであるが、前述の通り高地では含みえる水分量が減るため、サドルまでで雨となってしまい、それより上での降雨・降雪は稀であると思われる。
気温は、一般的な気温減率-6.5℃/kmにて計算すると、4000mで(下界−26)℃、キリマンジャロ最高点の5895mで(下界−38.3)℃となり、ナイロビ(1600m)で20℃ならば最高点で-7.9℃、ナイロビ15℃なら最高点で-12.9℃となる計算である。ただし、これは地面からの長波放射(全て赤外線)がないとした場合の話で、太陽が昇る前はそうだが太陽が出た後は太陽の短波放射(可視光線+赤外線)により地面が温まるため、温まった地面からの長波放射により、気温はもっと上昇する。いずれにしても、頂上アタック日は真夜中なので、-10℃以下を覚悟して暖かい服装をしていたほうがよさそうである。
3.06年末のキリマンジャロ気象解析
旅行社の情報によると、06年末から07年始にかけて降雪があり、キリマンジャロは冬山のようだったとのことです。特に12/28には吹雪となり、現地ガイドが道を見失うほどで、ギルマンズポイントから先の登頂を断念したほどだったらしい。CNNが提供している天気図によると、06.12.22〜07.01.16の間、タンザニアの南東に位置するマダガスカル島にサイクロン(アジアの台風に相当)が停滞し、周辺地域に悪天をもたらしたようです。詳細は、キリマンジャロ(不)登頂記:kenpuさんの旅行ブログ参照。
当日の高層天気図を解析すると、例年の如く吹く北東の貿易風の他に、西から暖湿気を帯びた風が流入しており、キリマンジャロ付近で収束しているように見える。恐らく、これが極めて珍しい頂上付近での大量の積雪をもたらした原因と思われる。つまり、キリマンジャロ南面に熱帯収束帯の高温高湿の西風が吹き付け、ハドレー循環に伴う北東貿易風との間で収束を起こし活発な対流雲が発生して、近年にない吹雪の悪天となったようである。『横なぐりの吹雪』という証言が、両側からの風を裏付けていると思われる。
なぜこの時期に西風が吹いたのか、はっきりしないが、推定として、@マダガスカル北東のサイクロンが西風を引き込んだ。Aよく見るとアフリカ西海岸にも低気圧性の循環があり、これが西風を送り込んだ、ということが考えられると思う。いずれにしろ、頂上付近が吹雪になるほどの現象は、極めてまれと考えます。
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