八久和の夏
− 山形県 八久和川 −
【7月29日】 4日目 起床 4:25
今日はさすがに早く起きた。
というか魚止めへのアタックは最後のチャンス。寝てられません。(^^;
朝飯を食べ終わり準備をして「よっしゃー!」と気合いを入れて6時にテン場を出発した。
一昨日に遡行しているだけあり、遡行は順調である。
大物がいたコマス滝にも目もくれずさっさと巻いていった。
渡渉する場所や巻く場所なんかはちょっと見ただけですぐにイメージできていた。
そして広河原に着き、河原をスタスタ歩いていくと犬の鳴き声が耳に入った。
あっ、犬がいる! なんでだ? あれ野犬か?(^^;
なんだか異常なほどこっちに向かって吠えまくっているではないか。
「石でも投げて追い払うか?」などと考えていると「こらっ!」という人の声がして犬がおとなしくなった。
なんと釣り師がいたのである。この犬はこの釣り師が連れてきていた犬だった。
もう誰も入ってないとばかり思っていたのでこれには驚いた。
話を聞くと茨城の人で昨日入ったそうである。
この人はバカ長を履いて釣りをしていた。
失礼ながら、なんか八久和には似合わない姿だなと思ってしまった。(^^;
この人は数年振りにきてみたが、魚が少なくなっているとがっかりしていた。
でも4人組の人達に聞いた話しだとそんなに魚は減ってないという。
雨が降ったりするとどこからともなくイワナが出てきて本当に入れ食い状態になるとか。(^^;
まぁ、私が入ってからは4日目になるが、晴天続きなのとこう毎日人に会うようじゃさすがの八久和もちょっと疲れたか?
その人は9寸クラスが3尾程入ったビニール袋を持っていた。
やっぱり不満なんだろうなそれだけじゃ。(^^;
それより昨日は呂滝で40cmを越えるヤツを目撃したという。
やっぱりいるのか呂滝よ!(^^;
この人の話しによれば昔の呂滝の釜は今よりもずっと大きかったそうである。
これには、ほんまかいなぁ。(^^; と思ってしまった。
あまり長々と話していても時間がもったいなかったので、タイミングを見て私は単刀直入に切り出した。
「あの...私、今日は魚止めまで行きたいんですが...」
すると「俺はもうそろそろ帰るから行ってこい!」という返事が返ってきた。
この言葉で一安心であったことはいうまでもない。だって最後のチャンスだからね。(^^;
「でも一泊で帰るんですか?それじゃ大変ですね?」と聞くと「昔は日帰りもしたもんだ」と言っていた。
確かに荷物が軽ければ歩くのは楽かもしれないけど...ほんまかいなぁ。(^^;
ちなみにこの人もやはり山越えで入ってくるそうである。
話しを聞く限り私の使った登山道やウシ沢下降の他にもルートがあるみたいだ。
だって犬を連れての川通しは無理だし、それにバカ長も履いているし...
まぁ、どこから入ってきたかまで詳しく聞かなかった。
そして私は適当な所で話しを打ち切り、その人に別れを告げてから再び遡行を開始した。
呂滝はまた気にはなったが、帰りに時間があったら釣ることにしてそのまま通過することにした。
その後も順調に遡行を続け、一昨日ひき返した先に足を踏み入れた。
そこからはイワナの姿を探しながら行ったのだがどうも姿が見当たらない。
最近、人が歩いたような跡はないんだけどなぁ...
そういえば昨日までは水に入ると温いという感じであった。
でも今日は水が冷たい感じである。気温も低い感じがする。
何か関係あるのか?などと考えながら私は遡行を続けて行った。
ひき返した所から二俣まではやはりすぐだった。
写真の左が中俣沢、右が西俣沢である。
時計を確認すると9時ちょうどだった。
完璧だ。こりゃいただきだな!(笑)そう思った。
途中で話し込んでいた時間はあるがそれでもここまで3時間である。
多分、初日の遡行だったらとてもじゃないが、こんなに早くは着けないだろう。
ここに初めて入るのであればやはり中2日は必要なのである。
合流点は淵だがなんだか水が濁っている。
魚の姿も見えないのでここはパスして中俣沢に入ってから竿を出すことにした。
中俣沢に入るといきなり水量ががっくり減る。
なんだこれ?(^^; そんな感じである。
すぐゴルジュになるがピチャピチャと歩いていける。
とりあえず竿を出していくがアタリは無い。
しばらくすると浅い瀬で泳いでいるイワナを見つけた。
おっ、いたいた。(^^)
毎度のように餌を目の前に落としてみたが食いつかない。
おかしいなぁ。何度かやってもダメである。
テン場で釣り師から釣れない時はトンボを使えと言われていたのを思い出す。
赤トンボはまわりに死ぬほど飛んでいる。
早速、すぐに玉網でつかまえて泳いでいたイワナの目の前に落としてみた。
すると驚いた感じでイワナは急いで逃げっていった。
あいつトンボにびびったか? これにはちょっと笑えた。
釣れないまま行くと小滝が出現する。
この下は大きい淵になっていて実にいいポイントだった。
ここでようやく数尾を釣り上げることができた。(^^)
この小滝を越えるとすぐ東俣沢が合流してきていた。
それにしても東俣沢はもう本当の小沢という感じである。
名前からして二俣というイメージもあったのだが...
あまりにも小さいので違うのかと思い、地図で確認したがやはり小沢だった。(^^;
本当に名前が付いているのが不思議なくらいである。
この合流点を覗き込んでみたがそこに魚影は無かった。
東俣沢の出合いで川は右に曲がってる。
ここを曲がると目の前にバーンと魚止め滝が現れた。
「お〜っ、これが中俣沢の魚止めか!」これまた感動の対面である。
でもはっきりいって小さいね。(^^;
高さは5mぐらい。簡単に登って越えられそうだ。
早速、落ち込みに竿を出してみるとすぐにアタリがきて釣れた。(^^)
サイズは尺一寸ぐらいであった。
でも八久和の魚止めでこのサイズ?
それはないんじゃない? これが正直な感想だった。(^^;
その後も続けてやってみるがアタリは出ない。
右奥にも小さいがポイントがあり、ここはアタリが出たがハリ掛かりしなかった。
結局のところここでは1尾だけに終わってしまったのである。(^^;
仕方が無いので東俣沢に入ることにする。
なんだ、もう水が無いじゃん。(^^;
東俣沢はもう今にも水が消えそうな雰囲気だった。
当然ながら魚影も無い。(^^;
チョロチョロの流れを歩いていくと滝が現れる。
「あった、あった。あれが魚止めだな!」
こちらの魚止め滝の方が中俣沢よりちょっと立派だった。
この上、沢はもう突き上げる感じでここで終わりだというのは間違いない。
落ち込みはそんなに大きくはないが、そこそこのポイントになっている。
竿を出さずに観察してみるとイワナが泳いでるのがわかった。
1、2、3...とりあえず4尾までは確認できた。
それじゃ、ということで竿を出してみる。
すぐに食いついてきて掛けたのだが途中でハリが外れてしまった。
そのままイワナは慌てて深みへ逃げ込んだ。
し、しまった。(^^;
でもまだ他のヤツは泳いでいたので安心する。
そして次に掛けたヤツはちゃんと釣り上げることができたのである。
これも中俣沢で釣ったのと同じで尺一寸ぐらいだった。
まだイワナは泳いでいたが同じぐらいの大きさだったので釣らないことにした。
私は岩影に隠れて竿を出していたが、身を乗り出し岩の上に立ちあがった。
しばらく残りのイワナは悠々と泳いていたが、
私に気がつくと順番に足元にある岩下の深みにゆっくりと泳いで消えていった。
「それでいいんだ。釣られるなよ。」心の中でそう言った。
結局、ここでも大きいのは出なかったが、まだ西俣沢が残っている。
途中、中俣沢の魚止め滝まで戻った時に私はちょっと気になった。
「はたして本当にこれが魚止めなのだろうか?」
確認しにいくかどうするか...
迷ったが時間がもったいなかったので西俣沢へ向かうことにした。
実はちゃんと確認しなかったことを今でもちょっと後悔しているのであった。(^^;
西俣沢は出合いからすぐの所に大きな淵があった。
ここは見てすぐ魚影が多いのがわかった。
とりあえず2尾までは順調に掛けたが、
その後はまだ魚影があるのだがなかなか食いつかない。
しばらく粘ったがだめだったのであきらめることにした。
トンボを使ってみるべきだったか?(笑)
というか本当にトンボで釣れるのかなぁ。(^^;
ちなみにここは狭間で通らずになっている。
滝になっているわけじゃないのでまだ絶対に先にもいるはずだ。
ここは気合いで突破した。(笑)
この先にも大きい淵があり尺2寸にちっと足りないぐらいのが出る。
ここからイワナの出が急に良くなった。
ポイントポイントで同じようなサイズが確実に出てくる。
「これが八久和だぁ〜っ!(笑)」と私は実にいい気分で釣っていった。
少し行くと滝が現れる。
テン場では釣り師からどれも最初の滝が魚止めだと聞いていた。
「うっ、もしかしてこれが魚止めか?」
これが最後かと思ったら気が引き締まって慎重になる。
とりあえず手前の浅場でやはり尺2寸ぐらいのをかける。
次に右手の岩壁の方から9寸ぐらいのが出た。
しかし、そこでアタリが出なくなった。
それならばということで左側から回り込んで落ち込み下をやることにした。
本当にこれが最後の最後だな...
落ち込みに投餌するとすぐにアタリがあった。
しばらく合わせずに送って様子を見る。
軽くきいてみるとイワナは餌をくわえてのんびり泳いでいるのがわかる。
どうしようもう合わせるか?
そう思ってまた軽くきいてみるとちょっと強かったのか、
イワナはビックリした感じで落ち込みに走り出した。
糸がキュイーンと鳴り、そして糸にテンションがかかる。
とにかくイワナはあっちに行ったりこっちに行ったりと忙しい。
本当にえらく暴れていたので「こりゃでかいか?」と最初は思ったが、
少しやりとりしてみたら40cmを越えるようなサイズではないことは
釣り上げる前にわかってしまった。ちょっと残念であった。(^^;
しばらくして観念したか、さすがにそのイワナもおとなしくなり私の手に収まった。
その後も続けて竿を出してみるが、さすがにもうアタリは出なかった。
う〜ん、それならば!
ということでこの滝を越えてみた。
この先にも水量が豊富で実にいい流れが続いていた。
釣っていくがもう魚影もアタリも無い。
その先にもまた小滝があったがその下でもやはり出ない。
何かあきらめきれない私は「とりあえずもうひとつ先の滝までやってみるか?」
そう思ってふと時計を見るともう15時近くなっていた。
「あっ、やばい! もう帰らないと!!」
すっかり夢中になっていたので全く気が付かなかった。(^^;
私はすぐに竿をしまって足早に渓を下った。
時間が無くて呂滝はまたしても竿を出さずに通過することになった。
結局、呂滝で竿を出すことなく終わってしまったのである。
これも今でもちょっと後悔しているかもしれない。(^^;
そしてテン場に着いたのはまたしても日没近しという時間帯だった。
その日の夜は以外と涼しく湿度が低いのがわかった。
本当に昨日までと違ってカラっとしていた。
でもこの日は薮蚊が大量に発生した。
どのくらいいたかというと「うぅ...気持ち悪い」と思ってしまうぐらい。(^^;
酒は3泊分しか持ってきてなかったのでもう無かった。
イワナも帰りに呂滝かコマス滝で調達しようと思っていたので、結局、キープしていなかった。
最後の夜だし、せめて焚き火だけでも盛大にやるか!!
ヘッドライトを点けて河原をさまよいヘトヘトになりながら私は薪を集めた。
そして星空に向かって盛大な炎が燃え上がった。
八久和の魚止めとそこのイワナ達を見てきた達成感で本当に胸がいっぱいだった。
酒もイワナも無かったけれど、なんだかとても気分が良かった。
そして焚き火はいつまでも燃え続けた。
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