人体に有害な科学物質


 建築材料には、居住環境に影響を与えるものがあります。居住空間に汚染物質があると、 人の呼吸器系、免疫系、血液・循環器系などに重大な影響を与えます。
 居住空間の汚染物質は次の表のように分類されます。

ガス状物質CO、CO2、ホルムアルデヒド、有機化合物(含農薬)、窒素、硫黄酸化物、オゾン、ラドン
無機粒子、繊維状物質ガラス繊維、アスベスト、重金属
有機粒子物質花粉、かび、粉塵
微生物、細菌類バクテリア、細菌、ウイルス、ダニ

 建材に含まれる化学物質でもっとも人体に影響の大きい有害物質は、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、 農薬を主体とした防腐、防虫剤の3種類です。



ホルムアルデヒド(Formaidehyde,CH2O)

 建材に使用される有害物質の1つがホルムアルデヒドです。主に合成樹脂や接着剤に含まれています。 そのため、接着剤を多量に用いる合板には多く含まれ、壁紙やカーペットを張るための接着剤にも含まれているものがあります。
 ホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体です。水によく溶け、37%のホルムアルデヒドとメタノール9~13% の水溶液がホルマリンで、防菌・防虫剤として広く用いられています。
 ホルムアルデヒドが含まれる接着剤にはユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系とあり、 後のものほど含有量が多くなります。

 ホルムアルデヒド吸引時の身体的症状は、人によってかなり差がありますが、次表のとうり。

ホルムアルデヒド吸引時の身体的症状
吸引量 [ppm]症状
0.5 明らかに臭気を感じる。
1~2目や鼻への刺激が起きる。
5~10強う刺激を感じる。
10~20涙、せきが出て深呼吸ができなくなる。
50~100深部気道障害や炎症を招き、死亡することがある。

 我が国では、労働衛生上の許容基準が0.5ppmとなっています。 欧米の室内環境基準は0.1~0.2ppmを採用しているところが多い。



ホルムアルデヒドの室内基準(1986年)[PPM]
  アメリカ     0.2~0.5  
  デンマーク    0.12
  オランダ     0.1
  スウェーデン   0.1
  ドイツ      0.1

 室内空気に触れる合板には、なるべく低ホルムアルデヒド合板(F1タイプ)を使用することが望ましい。 特に物入れや押入れ、食器棚ではノンホルム合板か代替材、たとえば天然の国産ムク材や、 低ホルムアルデヒド含有パーティクルボードやMDF(中質繊維板)などを使用します。



揮発性有機化合物VOC(Volataile Organic Compound)


 建材の主な有害有機化合物は次のようなものがあります。


建材に含まれる主な有害有機化合物
材料有害有機化合物
ペンキの溶剤トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ノナン、デカン
水性ニスの溶剤アセトン、ISOプロピルアルコール、nブタノール
ラッカーの溶剤トルエン、キシレン、酢酸ブチル、nブタノール
ビニルクロスの可塑剤フタル酸エステル系(DBP、DOP)、リン酸トレクレシル(TOP)
壁紙類の難燃加工材リン酸トリエステル系(TBP、TCEP)
壁紙類の接着剤溶剤酢酸ブチル、nブタノール、トルエン、キシレン
木工用接着剤溶剤酢酸メチル、酢酸ビニル、酢酸エチル
床ワックストリメチルベンゼン、ブチルベンゼン、デカン、エチルトルエン。キシレン
畳の防虫加工剤ナフタリン、フェニチオン、フェニトロチオン(スミチオン)、ダイアジノン
木材、土壌の防蟻剤クロルピリホス、S421、ホキシム、ぞの他



農薬を主体とした防腐、防虫剤


 建築材料などで防腐、防虫剤が使用されているのは、畳や土台などの木材の防腐、 防虫剤や床下の土壌処理用の防蟻剤です。