椎茸の栽培方法
最終更新日 2003年12月

1.はじめに
   我々の椎茸作りは、雑木林保全の一環として楽しみながら、楽しみのためが目的である。ここが椎茸栽培を業とする栽培農家とは大きく異なっている。
 『楽しみ』の方法にも種々あると思う。その場限りの発想で行い、結果が思わしくなく飽きてしまったらそれまでというやり方もあり、これを否定するつもりはない。一方、出来る限り知識やノウハウを勉強し、失敗に学んで行くやり方である。何年かやれば知恵・経験が積もり、プロに近いレベルの知見にまで到達できるやり方である。
 この説明書は後者を狙ってまとめた。プロと異なり効率、採算を第一にしないで、楽しみ、研究などいわゆる「こだわり」「蘊蓄」などを大切にして行くのである。

 『秋山種菌研究所発行の椎茸栽培法』、『森 喜作著 シイタケのつくり方』等の書物を参考に作成した。
 ただし、栽培場所の自然条件と今年の気象条件は未知数である。私は秋山式栽培法を採用し、栽培地の環境を植生等から判断し栽培管理方法を決めて下さい。
 また、本説明以外にも多くの考え方や栽培方法があると思う。種々の方式、知識を組み合わせて挑戦するのはとても楽しい。良い成果が上がったら我々にも教えて下さい。


2.原木について
(1)原木の種類
   原木の構造を部分的に分けると、樹皮部・木質部(辺材部・心材部)に大別される。樹皮は、厚いものから岩肌(鬼肌)・チリメン肌・サクラ肌に分けられ、同一樹種の場合樹皮の厚いものは乾きにくく、逆に薄いものは乾きやすい性質がある。又、キノコ(子実体)の発生においては、肌の薄いサクラ肌のものよリチリメン肌から岩肌に近いものの方が良質のキノコが出る。
 次に辺材部であるが、椎茸菌糸が原木内に蔓延してキノコを作るための養分となるのが辺材部である。従ってこの辺材部の占める割合が多いもの程良質な原木であると言える。又、心材部は、椎茸菌糸が伸長腐朽しにくい部分であるため養分摂取の有効度からみて少ない方が良いと言える。これらの事をもとに樹種についても考える必要がある。

 最も適する樹種としてはコナラ・ミズナラ・クヌギがあげられ、これに次ぐものとしてシデ類・シイ類・カシ類・クリ・シラカバ等がある。前記以外にもアカマツ・カラマツ等も可能であるが、現段階では十分な成果を期待することは出来ない。

(2)樹種別特徴
 @コナラ
 椎茸栽培に最も多く使われているものである。クヌギと比較すると一般に樹皮は薄く心材も多いが、特に椎茸栽培には適した原木であり、キノコの発生量、質共に良いものが発生する。
Aミズナラ
 コナラに準ずる原木で、コナラより樹皮はやや薄く、材質はやや軟かい(材密度が小さい)特徴があり、椎茸菌糸の伸長は早い。東北地方に多く産する。

Bクヌギ
 コナラに次いで使用されている樹種で、樹皮は別名コルクヌギと称されていることをみてもわかるとおり厚い。本質部は堅い(材密度が大きい)ので菌糸の伸長はコナラに比べ遅れるが、心材部は少なく養分的に富み、発生するきのこは質・量ともに非常にすぐれている。尚、関東以北では比較的栽培がむずかしいが、九州・四国方面では好成績を上げている樹種である。


コナラの材質の状態 

  Cクリ
 辺材部が少ないため榾化は早く発生も早いが、発生量は少なく榾木(ほたぎ)としての寿命も短い。

Dシイ類・シデ類
 心材部がなく発生量も多いが、樹皮が薄く乾燥しやすいので樹令の若いものは避ける。伐採後直射日光に当てず、出来るだけ早く植菌する事が大切である。樹皮が薄いのできのこの質はやや落ちる。

Eカシ類
 材質は極めて堅い原木であるため菌糸の伸長は遅れるが良質のキノコが発生する。樹皮は薄いので乾燥には特に注意を要する。

(3)原木の樹令と太さ
  椎茸は原本の樹令や太さにそれ程関係なく発生するが、一般に適する樹令は次の通りである。
クヌギ             8〜15年生
コナラ・ミズナラ      15〜20年生
カシ類・シイ類・シデ類  20〜30年生
又、太さ別に大径木・中径木・小径本に分けられるが、原木事情を考えると小径木の利用も大いに図りたい。

(4)原木の伐採時期
  伐採時期は樹木の休眠期、即ち紅葉の始まる10月末頃から翌春樹木が水あげを開始する前までの間に行なう。伐採した原本は出来るだけ早く玉切り、植菌場所へ運搬し、植菌することが望ましい。
玉切りの長さは 90cm〜100cmを標準とする。

(5)原木の玉切り
  玉切りの長さは 90cm〜100cmを標準とし、出来るだけ同じ長さに切りそろえると後の作業が容易になる。
皮の部分は生物活性が高く菌類の進入を防ぐ力が備わっているが、木口は無防備である。ここから雑菌が進入しやすいので木口を地面に付けない様に注意して玉切る。皮の部分をチェンソーで傷を付けるとここからも雑菌が入りやすくなる。死節、虫食い後、傷、芯の腐れ等も同様であり、これらを避けて玉切りを行う。
皮の部分も玉切り、移動、植菌などの作業時泥が付かないように注意したい。

(6)原木の保管
  植菌は出来るだけ原木が乾かないうちに行なうことが必要である。玉切った原木を、長期(1ケ月以上)保管する際には直射日光、強風による乾燥を防ぐため農業用シートで包み、その上をコモで覆って保管する方法が有効である。植菌は乾燥しやすい小径木・薄肌の原木から植菌することが望ましい。


3.植 菌
  植植菌は良い榾木を作るための第一歩として栽培上、極めて重要な作業である。菌の特性を正しく理解し、的確に行なうことが大切である。

(1)生原木(高含水率)植菌の理由
  その目的は椎茸菌の活着及び初期伸長に必要な水分を確保するためである。コナラ原本の場合は伐採直後の含水率がこの点もっとも優れているのである。
かって形成層にナタ目をつけて原本を枯らし、その後湿度を加えて飛来する胞子を待って椎茸の榾木を作ったが、そのころから椎茸菌は死物寄生菌だから生原木では活着できず死んでしまうと言われてきた。
 しかし、純粋培養した種菌は細胞活動をしていない木質部(辺材部)へ直接植え込んでも、生きている形成層に守られながら初期伸長し、外部からの害菌(雑菌)も侵入出来ないのである。やがて形成層は枯死するがその時はすでに内部より椎茸菌がそこに蔓延してしまうのである。
枝干し、葉干しをしてあった原木を入手した場合は、十分水分を与えて、原木内の含水率を高めてから植菌すれば、活着及び榾化は良好となる。形成層の高含水率原木への植菌が活着のコツである。


原木含水量と菌の伸長
 原木含水率  菌の初期伸長(90日間)
(乾量ベース)
38.2%
(湿量ベース)
27.6% 
1.2o 
42.5 29.8 3.4
45.3 31.2 9.1
47.9 32.4 13.9
51.6 34.0 24.4
53.3 34.8 36.8
60.4 37.7 44.7
61.4 38.0 46.9
65.4 40.0 55.2
70.3 41.3 55.2
(秋山種菌研究室)

オガクズ培養基の含水量と成長


(2)品種の選定
  品種の特性、使用期間等については種菌の生産者の品種特性表を参照して選択する。

秋山種菌研究所の例を紹介する。
 @「中高温性」
  「A−580」、肥大成長温度10〜30度、芽出し温度10〜22度で、春と秋に多く出て、育てやすい種類です。
 A「高中温性」
  「A−567」、肥大成長温度10〜30度、芽出し温度10〜25度で夏に収穫する。
 B「低温性」
  「A−6」、肥大成長温度5〜18度、芽出し温度5〜12度で冬に収穫するものなど多くの品種があります。
 C今回の品種は秋山種菌研究所の『A−580』です。よさぶろうは他の種菌生産者の「中高温性」の品種。
 なお、各品種とも地域や発生条件の違いで使用期間が変わることもあるので、それも考慮したい。

(3)オガ菌と駒菌
  種菌にはオガ菌と駒菌がある。一般に駒菌は植菌作業の簡易な点から林内栽培で多く用いられている。
オガ菌は植菌能率の点で劣ると言われていたが、高能率の植菌器具の開発で駒菌より速く植菌できるようになっている。またオガ菌は榾化が早く、半年で発生収穫できる。

(4)種菌の入手方法
  農協、種屋さんで取り扱っているのでここで購入するのが最も手軽である。250個、500個、1,000個単位で売っていることが多い。種菌は生き物であり、生産状の品質管理、更に流通段階での保管状態で鮮度が落ちる危険がある。また、品種名や性質が不明なこともある。資料、パンフレットを入手して確認したい。
種菌の生産者に直接注文する方法が安心でき、コマ打ちの日を指定すると前日に到着するようにも送ってくれる。
参考までに『秋山種菌研究所』を紹介する。
住所 山梨県甲府市高畑 1−5−13 TEL 0552-26-2331

(5)種菌の取扱い
  種菌が到着したら箱のふたを開けて、同封の説明書をよく読んだ上で冷暗所に正しく保管する。

(6)植菌時期
  秋山式では椎茸菌の完全活着をはかるために、高含水率の原木を使用することを原則としている。したがって原木入荷後ただちに植菌できるので、原木伐採の始まる紅葉時期から春先までの長期にわたって植菌が可能である。
 椎茸栽培の成功は早期植菌、活着、完熟榾木作りにある。椎茸菌が活動しにくい冬期間でも秋山種菌研究所の特許である、榾寄せ管理で温度と湿度保持をすることにより菌の活着伸長が計れるので、早期植菌が可能である。

(7)植菌作業
  一般に椎茸菌は繊維方向(タテ方向)への伸長に対して接線方向(年輪方向)への伸長が遅いので、列間をせばめて植菌し椎茸菌を原木内に早く蔓延させ、雑菌の侵入する余地を残さないことが大切である。
木口からの雑菌の進入を防ぐため、木口の近くには密度を高く植える。径の大きい原木には木口にも打つ、死節、虫食い後、傷の部分、玉切りの時落としたた枝の木口にも同様な手当をする。
 また、小径木や、薄肌原本は水分の減少が早いので、最初に植菌する。なお過乾ぎみの原木でも、含水率を高める操作を行えば問題ない。
@ 穴あけ
・電気ドリルに専用キリを取付けて深さ20mmを基準に行なう。
専用キリの直径は8.5o、9.5o等、種菌生産者により異なるので確認する。販売もしているので種菌と同時に注文するのが確実である。


原木の穴の開け方

A 種菌のつめ方
・オガ菌は移植器を用いて、しっかり正確に植菌する。
・駒菌は樹皮面と平になるよう、確実に打込む。

(留意点)
作業中、種菌が直接手に触れないよう工夫し、容器・器具類は使用前に熱湯等で、消毒する。

B 封ローぬり
 移植した種菌が乾燥するのを防ぐと共に、雨水や害菌の侵入から守る事が目的である。


4.林内栽培
(1)温度・湿度・含水率と菌糸の成長
 @原木の含水量と菌糸の成長  植菌の項で説明済み。

A温度と菌糸の成長
 品種によって多少の違いはあるが、シイタケの菌糸は3、4度から33、4度の範囲で生長する。どれも25度の時がもっとも良く伸びるが、品種によって生長最適温度が25度以下のもの、また25度以上の物があることが分かる。ところが実際栽培では、冬には温度が0度以下になるかと思えば、夏には35度以上になることもある。このように温度が菌糸の生長温度の範囲を越えた場合はどうなるだろうか。
 一般に菌糸は低温に対する抵抗力は強く、氷点下20度にホダ木をおいても中の菌糸は死ななかったという報告がある。実際北海道や高冷な山地でも栽培が行なわれていることからも、菌糸の低温に対する抵抗力が強いことが分かる。
 反対に高温に対してはどうだろうか。ホダ木を高温にさらした時、ホダ木内の菌糸が何日間ぐらい生存しているかを調べた。菌糸は高温では短時間で死んでしまう。40度50度という高温は実際には起こらないと思ってはいけない。夏の直射日光にホダ木をさらして、樹皮部の温度変化をしらべたが、わずか数分で50度ぐらいになる。したがって栽培にあたっては、ホダ木は直射日光が当たらないように管理しなければならない。

菌糸生長と温度の関係

(2)榾場の選定
  活着後、菌を伸長、蔓延させ、発生できる榾木をつくる場所が榾場であるが、人工榾場と違い気象条件・樹種・地形等により左右されやすい短所をもつ反面、自然のよい条件は人工榾場以上の長所をもっている場合もある。しかし、榾場環境によっては成績の面で大きな差が生じてくるので、林内栽培において榾場の選定は重要な問題である。
基本的な条件として以下のものがあげられる。
● 直射日光が当らない場所
● 冷えすぎず、温まる場所(冬期の対策・・・・冬期や早春には木漏れ日が当たる)
● 水はけがよい場所
● 通風のよい場所

@樹種別環境
● 広葉樹林
 通風、温度面からみても、榾場としては適しているが、落葉の際は直射日光が当るため、2〜3割の針葉樹との混合林が望ましい。又、春先葉が出揃うまでは笠木、ヨシズ、シェード等を使用する。
●  杉林
 この樹種は土壌水分の多い山麓の山沿いに多く、椎茸栽培には中齢林で枝打ち、下草刈りをしたうえで使用したい。高齢林は低温・多湿になりやすいため、沢筋の使用を避け、榾木の伏せ込み法、方位等で工夫したい。
●  松 林
 やや乾燥地に成育する樹種であり、椎茸栽培には適しているが、高齢林となると直射日光を受けやすい面がある。降水量の多い地方、又は温度の不足する地域では最適。
●  ヒノキ林
 この樹種は杉に比べて土壊水分がやや少ない場所に多いので、方位、樹齢等で伏せ込み方法を対応させれば適地として使える。
●  竹 林
 純然たる竹林は直射日光が入りやすいので注意する。
※いずれの場所でも直射日光の当るところは、笠木、ヨシズ、シェード等を使用する。

A方位別環境
 平地林はあまり問題視されないが、傾斜のある林内の場合は方位により榾化が左右される。適している方位としては東から西にかけての南面の方位であるが、中でも最も適しているのが南東向で、これらは日照時間も長く、通風がよい点として挙げられる。
逆に、不適な方位としては、西から東にかけての北面の方位であり、ここは日照時間が短く、通風が悪いうえに過湿になりやすいのが理由に挙げられる。こうした場所をやむを得ず使用しなければならない時は、樹種・伏せ込み方法の工夫が必要である。
しかし、地域・気象条件・樹層により必ずしもこの限りではない。

(3)榾寄せ(仮伏せ)
 @ 目 的
 林内栽培では、展開後は自然条件に任せ切りのことが多いため、初期の完全活着が欠かせない必要条件となる。そこで、展開までは以下の方法を用い100%活着を図る。

A 方 法
●  立て積み
 山林内の立木を杭代わりに利用してもよい。晩秋から冬植菌、又は菌の伸長に必要な温度と湿度が不足する場合はこの方法が望ましい。
●  地伏せ
 榾木を林内に1〜2段に低く積み、乾きすぎを防ぎながら活着を促す。
●  マキ積
 榾木を5〜6段に積み、笠木や本の葉を上部に載せて乾燥を防ぎながら活着を促す。
●  野伏せ
 原木を伐採した山にそのまま低いマキ積み、又は、ヨロイ伏せ、鳥居伏せにし、笠木を厚く載せ活着を促す。主に温暖、多湿地に向く。

B 展 開
展開時期は人工栽培と同様に、桜の花が散り始める頃を目安に行う。

C 留意点
 春遅くまで、仮伏せの内部を高温多湿のまま放置し、雑菌を繁殖させないように心掛ける。落葉樹林を利用する場合で葉が生い繁げる頃までの間は笠木、シェード等を利用し、日除けをする。
降水量が少なかったり榾場が乾くようであれば展開をおくらせる。その際、ビニールを使った仮伏せをしている場合は適期にビニールの除去が必要である。

(4)展開・本伏せ
 @目 的
 第1回の発生までの間、自然の恵みを利用し、椎茸菌を榾木内に蔓延させる。ここでの榾木づくりが成果に大きく左右する。

A方 法
● マキ積・井桁積
 主に平地林に向く方法、高さは膝よりも低くし、乾燥地の場合は笠木を利用し過乾を防ぐ。人工榾場同様土から離した管理ができるので土壌菌から榾本を守ることができ、榾付率を高められる。又、単位面積当りの収容本数も多く、天地返しも容易であり管理が行き届くのが利点である。
● ヨロイ伏せ
 最も多く用いられている方法で傾斜地に向く、地表からの高さは乾燥地では低く、多湿地では高くする。又、萌芽するようであればその本を枕にする。特に広葉樹林、松林に向く。
● 鳥居伏せ
 通風が悪く多湿地ではこの方法が用いられる。主に、温暖多湿地帯のスギ林、ヒノキ林又は、北向きの広葉樹林に向く。
● 百足伏せ
 大径木で、湿度が高く、急傾斜の伏せ込み場に向く。多湿地のスギ林、ヒノキ林、又は北向きの広葉樹林に向き、主に乾椎茸の産地で用いられている。


井桁積み              ヨロイ伏せ 

鳥居伏せ              百足伏せ 

● 留意点
 マキ積、井桁積の台本は枯れ枝・古榾・広葉樹を使わず、ブロックもしくは針葉樹を使用したい。

(5)管理
  林内での管理は椎茸菌の生活しやすい環境づくりがポイントである。

@直射目光・過乾防止
 直射日光、風通しのよすぎる場所は笠木を載せるか、伏せ込み方法を工夫することにより対策をする。

A過湿防止
 枝打ち、下草刈り、間伐をし、通風をよくし、害菌の発生を防ぐと同時に枝葉が多すぎると榾化の為の積算温度が不足するので椎茸菌の適温を取りやすくする必要がある。又、伏せこみの角度を工夫したり、水はけの悪いところでは排水溝をもうける。

B 給 水
 林内での給水は困難な面が多いが、異常気象に対応できるように可能な限り散水施設の設置が望ましい。

C天地返し
 榾化を均一にする為、月に一度の天地返しをするのが望ましい。


5.害虫の防除
(1)生シイタケの害虫
  トビ虫の仲間、キノコバエの幼虫等の被害が多い。トビ虫は、ヒダの間にもぐり胞子を食害する。
防除方法は、発生合の通風をはかり、湿度を少くする。薬剤を散布する。シイタケを発生させていない時に地面に殺虫剤を散布する。又、発生源となる茸の取り残しを無くし、茸を榾場内へ捨てない事が肝心である。

(2)乾シイタケの害虫
  最も被害のあるものは、俗にシイタケガと呼ばれているガの仲間である。これ以外に甲虫類の何種類かが害をする。防除方法は容器を密閉し、低温乾燥下で保存する事が最良である。

(3)榾木の害虫
  材を食害するもので、カミキリ虫の幼虫の害が最も激しく、又食害する種類も多い。普通にみられるものは、ミドリカミキリ、ハラアカコブカミキリ、ナガゴマフカミキリ等がある。
キクイ虫も材に小孔を空けるが、被害は大きくなぐ、食性の上から2年榾には侵入しない。 シイタケオオヒロズコガの幼虫も、材(特に種菌附近)に侵入する。
 防除方法としては、榾寄せを完全に行い、針葉樹を多くかけ、広葉樹の誘因効果をやわらげる。被害の激しい地域では、成虫の産卵期にマキ積の上にネットをかけ産卵を防ぐ。 シイタケヒロズコガの場合は、取り残したシイタケが半乾燥したものにつき、その後材に入るので、完全にシイタケを採取する様にする。

(4)ナメクジの防除
  ナメクジは多湿環境を好むため通風をはかり湿度を下げる事が最良である。多量に発生した場合は、市販の駆除剤を使用するか、榾場に硫酸アンモニウム(肥料の硫安)を散布すると効果がある。


6.雑 菌の防除
(1)傘の裏にヒダのあるもの
  ● スエヒロタケ
 直径1〜2cmの小さなきのこで、扇を広げたような形をしている。表面は、白色又は灰白色でやわらかい毛がある。茸の発生が早く繁殖力は強いが、樹皮より内部の木部を腐朽させる力は弱いので、被害は比較的少ない。過乾や日当りの強い場所もしくは直射日光を受けた榾木に発生しやすい。
● カイガラタケ
 大きさは2〜8cm、半円形又は扇形、色は灰色か灰褐色でビロード状の細かい毛が生え、硬いキノコである。やや高温多湿な環境に発生し、腐朽力は強い。
● ワサビタケ
 直径1〜2cmの精円型、色は淡黄褐色で茸のまわりに不規則な亀裂がある。やや日当りの多い榾木の木口や樹皮の傷面に出やすいが、繁殖力はあまり強くないので被害は少ない。
● ヌルデタケ
 直径1〜5oの小型なキノコ。表面は灰色がかかった褐色。乾燥気味の榾木に発生し、樹皮一面に出るが材部にはあまり深く入らず被害は少ない。

(2)傘の裏面にアナがあるもの
 ● ダイダイタケ
 傘の形は半円形で重なりあって生え、表面は黄色みがかかった褐色でビロードのように密生し、裏面は澄黄色で小さい孔がある。やや湿気の多いところを好み、榾木の上に接した面によく出る。
● ヒイロタケ
 形は半円形で、傘全体があざやかな緋色をしている。スエヒロタケと同様に、直射日光を受けた榾木によく生育する。
● カワラタケ
 径1〜5cmの半円形、色は灰色又は赤褐色のものもある。革質のキノコで、榾木表面に重なり合うように発生し、表面にビロード状の短毛を密生している。やや高温、過湿な環境に発生する。
● アナタケ
 榾木表面に張りついた状態でカサをつくらず表面に小さな孔が多数ある。初め白色でふるくなると汚れた淡黄色となる。通気の悪い高温、多湿の環境下において2年榾木以降のものに繁殖する。完熟榾木も侵害し、腐朽力も大きいので被害は大である。

(3)コブ状および突起状となるもの
 ● クロコブダケ
 初期の菌糸の時代は、木口にうぐいす色のカビとしてあらわれ、キノコになると黒色で硬い半球形となる。湿気の多い所で繁殖旺盛で乾燥にもよく耐える。繁殖力は強いが、腐朽力はあまり強くない。
● 胴枯菌
 過乾燥、特に初期に樹皮を高温乾燥させたクヌギ、コナラ、クリの原木に多く、ニキビ状に発生する。
胴枯菌の出たあとトリコデルマの2次感染をおこしやすい。
● ゼラチノスポリウム
 過乾燥のクヌギ原木に多く発生する。発生は、梅雨期に至って粘質の澄紅色の胞子角を生ずる。これが寄生すると樹皮部が浮き上がり、樹皮が剥がれやすく、その下には椎茸菌は回らない。

(4)その他
 ● ゴムタケ
円錐を逆さにした形で、ゴムのように弾力がある。初年度の榾木に、梅雨期から夏にかけて発生する。材の腐朽力は弱く直接被害は少ないが、ゴムタケがとけるとその上にトリコデルマ菌が着生しやすい。給水管理の目安とする。
● キウロコタケ
1番玉の原木に多く、傘の表面に毛があり、色は灰黄色、裏面は黄褐色である。湿気が多く、光線不足の環境に多く発生し接触感染する。低温、多湿の年にも多い。

(5)雑菌の防除法
  菌拮抗菌群(ヒポクレア及びトリコデルマ)カビの時代をトリコデルマと言い、生長してキノコの時代になるとヒポクレア、日本名ではボタンタケと言われる。本来トリコデルマは土壊菌であり、朽菌ではないが、シイタケ菌に寄生するためシイタケ菌のまわった榾木にも被害を及ぼす。
又、種類が多いため発生環境も異なり、梅雨期などの高温多湿環境で発生する湿性トリコデルマや、直射日光が当たった部分や乾燥下で発生する乾性トリコデルマがある。

 湿性トリコデルマの代表的なものは、緑色のトリコデルマビリーデと白色のヒポクレアパキバシオイデスで、特にパキバシオイデスは、菌糸発育適温が他のトリコデルマと比べて低いので、日本海側の豪雪地帯などで春先の雪どけの時に榾木がたっぷり水分を吸い、過湿状態になると暑い時期でなくても被害を受けやすい。

 また、トリコデルマと椎茸菌糸の措抗現象を調べてみると、25℃においたものは椎茸菌糸はある程度トリコデルマに侵されずに勢力を保っているが、30℃以上の所へおかれたものはどの品種においてもトリコデルマに侵害されやすいので、トリコデルマの第1の防除方法は榾木を30℃以上の所へ長時間おかず、なるべく涼しい所で管理し椎茸菌を弱めさせないようにすることが大切だと思われる。

● 榾木内にシイタケ菌糸を健全に生育させ、雑菌に対する抵抗力をつけさせる。
● 榾木の管理にあたっては、シェードなどの日よけを完全に施して日光の直射を防ぎ、榾木が高温にならないようにする。又、過湿な環境を避けて通風の良い環境を作る。
● 接触感染をするアナタケなどがついた榾木は別のところに隔離し、早急に処分する。
● 種駒などの場合は、駒の表面が直接外気に触れないように封ローを塗ると良い。
● 常に椎茸菌に適する環境に心掛ける。
※雑菌、害菌、害虫等の参考書(販売用)が秋山種菌研究所に用意されている。

7.椎茸の発生
  このページは大きくなりすぎたので別のページに記述します


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