TOPメニュー名古屋のスズメバチ図鑑 > チャイロスズメバチ

チャイロスズメバチ Vespa dybowskii Andre 1884


体長は女王バチ30mm,働きバチ17〜24mm,オスバチ20mm〜27mmで,本州に生息するスズメバチ属6種のなかではやや小型の部類です.頭胸部が赤褐色の他は,体全体が黒褐色をしており,他の5種との識別は容易です.

2000年以降分布は拡大傾向にあり,西日本各地で営巣や成虫が確認されています.本州の山口県および四国,九州では記録がなく.広島県と島根県を結ぶ線が分布の最西端になります.しかしながら,発見例は少なく現在でも極めて稀な種であるといえます.

愛知県では,2105年に2ヶ所で営巣が確認されたほか,2108年にも営巣が確認されています.名古屋市では1992年,2100年,2101年,2102年,2105年,2106年,2107年および2010年に営巣が確認されています.

本種はキイロスズメバチやモンスズメバチの巣に女王が単独で入り込み,相手の女王バチを殺して巣を乗っ取ることで知られています.最初は,乗っ取った巣の働きバチが子育てをしますが,チャイロスズメバチ自身も働き蜂を生むため,しだいにチャイロスズメバチと入れ替わっていきます.このような性質を持ったスズメバチを”社会寄生性のスズメバチ”と呼んでいます.

最盛期には巣盤数4〜6層,育房数は600〜3,500房位になります.本種の働きバチの羽化は7月以降で,それまでは寄主の働きバチに養育されます.活動が最も活発となる9月〜10月には100〜300頭になります.オスバチと新女王バチは9月〜10月に羽化します.

幼虫の餌としてバッタ類や各種の昆虫,クモなどを狩ります.攻撃性,威嚇性ともに強く,巣に近づくと,地上付近を群をなして飛び回る独特の威嚇行動をとります.

名古屋市に生息するスズメバチの中では最も数が少なく,今までに6件の駆除記録と2件の営巣確認の他,成虫の捕獲記録が多数あります.2010年に見つかった巣からは,モンスズメバチ働きバチが見つかっており,営巣事例8例中の7例は,いずれもモンスズメバチに寄生したものと考えられます.


名古屋市における
最大巣の記録
巣盤数 8層 1992年9月9日(千種区)
育房数 2440房
成虫数 329頭

壁間に作られた巣(駆除後) 壁の隙間には目張り作られている 軒下に作られた巣 軒下に作られた巣
合掌造りの軒下に作られた巣 サクラの樹洞に作られた巣 樹液を舐める働きバチ