TOP > スズメバチの営巣場所

スズメバチの営巣場所は種により異なっている.地上の開けた場所(開放空間)に営巣する種,地上または地下の閉ざされた場所(閉鎖空間)に営巣する種,そのどちらにも営巣する種の3つに大別される.

 

●オオスズメバチ

地中や樹洞などの閉鎖空間に営巣する.地中が最も多く,ネズミ穴や樹木が倒れてできた穴などを利用して営巣する.外皮は薄く底が抜けている.営巣空間を拡張するため中から運び出した土の固まりが巣の入口付近に放射状に散乱し,巣の所在を知るのに役立つ.時には家屋の天井裏や床下などにも営巣する.巣盤数は4〜10層,育房数は3,000〜6,000房になる.

 地中の穴に作られた巣(駆除後)

 

 

●キイロスズメバチ

営巣場所は軒下や木の枝などの開放空間や,天井裏,床下,樹洞などの閉鎖空間までさまざまである.開放空間に営巣する場合は,コガタスズメバチよりも高い場所に営巣する傾向が見られる.8月〜9月にかけて,営巣場所が狭くなると引越をする習性があり,軒下などの開放空間に作られた巣は全て引越後の巣である.巣は大きなものでは直径50cmを越え,日本産スズメバチの中では最大である.巣盤数は5〜10層,育房数は5,000〜10,000房位になる.


 車庫の天井に作られた巣

 

 

●コガタスズメバチ

開放的空間に営巣する.名古屋市の例では,約80%が樹木営巣,20%が家屋などに営巣した.営巣した樹木の種類は100種以上と多岐にわたっている.サザンカが最も多く,以下キンモクセイ,ツツジ,ツバキの順である.これらの樹木は樹高が中程度で枝を密に出す常緑の広葉樹である点で共通していて,巣の保持や風雨を避けるのに適している他,外部から巣を隠すのにも都合が良いと思われる.巣は外皮に覆われたボール状をしているが,女王バチが単独で巣作りをしている時期にはトックリを逆さにしたような形をしている.これは本種とツマグロスズメバチのみの特徴で,巣内への外敵の侵入防止のためだと考えられている.

 

家屋では軒下に営巣する事例が大半を占め,その他は,外壁面や開放的な小屋などの天井などである.巣の多くは上部および背面で建物に付着していて,クギや電線などの突起物を利用して作られることが多い.巣盤数は2〜5層,育房数は500〜1,000房位になるが,最盛期には巣の大きさもタテ30cm×ヨコ25cm位になり,育房数も1,000房を超える.


 女王バチによる単独営巣期の巣


 樹枝に作られた営巣活動最盛期の巣

 

 

●モンスズメバチ

天井裏や樹洞,壁間,戸袋,鳥の巣箱などの閉鎖空間に営巣するが,稀に軒下などにも営巣する.天井裏が最も多く,次いで樹洞の順になっている.キイロスズメバチと同じように,営巣場所が狭くなると途中で引っ越しする習性がある.巣は釣り鐘状で底が抜けていて、天井裏に営巣した場合,巣の下に餌の残骸や死骸などを捨てるため,天井にシミができて巣が発見されることがある.巣盤数は4〜12層,育房数は4,000房程度になる.


 天井裏に作られた巣


 サクラの樹洞に作られた巣

 

 

●ヒメスズメバチ

閉鎖空間に営巣する. 床下や戸袋,天井裏などの家屋に営巣することが大半であるが,樹洞や水道メーターの中などにも営巣する.また,庭など屋外に放置された家具の中などにも営巣することがある.巣は釣り鐘状または電灯の傘のような薄い外皮があるのみで,下端は開放していて巣盤が見える.巣盤数は3〜4層,育房数は200〜400房で,スズメバチの中では最も小型の巣を作る.


 小屋の中の天井に作られた巣