Let’s 浴場パラダイス
| そうして中から出てきたのは「コンドーム」。確かに男の必需品と言われれば納得出来るものであるが、自分たちに必要なものであるかどうかには頭を捻ってしまう。 「で、あんたはそれをどうしたいんだ?」 困ったように天夜が手にしているコンドームを一つ取ると、口に咥えてピッと袋を開いた。 「俺様につけて欲しいのか?」 口を開けたそれを天夜に渡すと、開いている方の手を取って、自分の股間に導いた。 「ここに付けて欲しいんだろ?そんなに、中に出されるのが嫌だったんなら、一言言ってくれれば良かったんだ。ちゃんと、気を付けたんだぜ。それとも、女相手に浮気しろって事なのか?」 怒っているような、それでいて悲しそうな雨紋の声に、弾かれたように天夜が顔を上げた。 「ちがっ!違う違う違う!俺、本当に中身がなにか知らなかったんだよ!なのに…なんだよ、浮気って!そりゃ、俺みたいな男相手にするより、女の方がずっと良いのかもしれないけど、俺を選んだのは雨紋だろ!なんでそんなこと言うんだよ!」 無理矢理握らされたコンドームを床に叩き付けると、ふざけるなと雨紋の胸板をポカポカと殴り付ける。 ダダッ子のように喚く天夜の目には涙が浮かんでいて、雨紋は自分が言いすぎたことに気付いた。 「なんだよ…、俺に飽きたのか?これって、別れる為の旅行だったのか?」 元々一人で話を完結してしまう癖のある天夜は、自虐するように言った雨紋の言葉からドンドン自分を追い詰める方向へと話を進めてしまう。 恋愛をしたのはこれが始めてで、男同士という世間への負い目が、天夜の中から自信を失わせてしまっている。 幸せが、幸せだと思っていたものが、足元から崩れていくようだ。 「バカなこというなっ!そりゃ、俺様が悪かったよ。ちょっとカッときちまって…。でも、俺様はなにがあったってあんたと別れるつもりなんか、これっぽっちもないからな」 叩きつける拳ごと天夜の体を抱き締め、暴走する天夜の想像に待ったをかける。 「じゃあ、なんで怒ったんだよ…?」 泣きそうなのを堪えているのか、くぐもった声で天夜が問い詰めるように雨紋を見上げてきた。 「なんでって…。なんとなくショックだったんだよ。あんなもん渡されて、必需品とか言われたらさ。それに、直に俺様の入れられるの嫌なのかと思っちまってさ」 「じ…直に…い…い…入れるって…」 直接的すぎる雨紋の言葉に、真っ赤に頬を染めた天夜は、うろたえたように視線を上げたり下げたりしている。 「あんたにとっちゃ、中に出されるのって、後始末とか大変だし、場合によっちゃあ大変なことになるし、それにいつも恥ずかしがって後始末あんまりやらしてくんねーから、イヤなんだろーなーって、ぼんやりとは思ってたんだけどさ、やっぱこう現物を出されるとショックでさ」 どう言えば上手く伝わるんだ。と呟きながら雨紋が一生懸命誤解を解こうとしてくれる。その姿があんまりにも可愛くて天夜の怒りはどこかえ消えてしまった。 「…上手く言えないんだけど。イヤ…じゃないよ?お腹痛くなるし、後始末されるのもすごく恥ずかしいけど、でも…雨紋のだもん……イヤ…じゃない…よ?」 ぷしゅーっと頭から湯気が出そうな程頬を赤くした天夜は、見つめられるのはこれ以上耐えられないと、雨紋の胸に抱き付いて顔を隠してしまった。 「あんた、可愛すぎ…」 感極まった雨紋はポツリと呟くと、力いっぱい天夜の体を抱き締めた。 それこそ、ぎゅううっ、と音がしそうなくらいに。 「うっ…うも…………くるしっ…苦っ……息……でき…な…い…」 体が折れてしまいそうなくらいの強い抱擁を、口では苦しいと言いながら、心の中は逆に嬉しさでいっぱいだった。ただ、置かれた状況への羞恥が素直にさせてくれない。なにせ、今の二人は素っ裸なのだから。 隙間も無いくらいに抱き合った体の間では、熱くなったペニスが自己を主張している。 「悪い、天夜サン。もうちょっとだけこのままで…いてくれ。今手ェ離したら、あんたのことめちゃめちゃに抱いちまいそうだ」 自分の中に渦巻く欲望を、なんとか沈めようと抱き締める腕に力を込めるのに、熱は引くどころか一層の熱を呼び覚ます。 堪えるような雨紋の声に、彼が今どれだけの苦痛を強いられているのかが分かる。下腹部を打つ雨紋のペニスは、天夜の腹を焼きそうなくらい熱かった。そして、同じように天夜のペニスも熱くなっていた。 「天夜サン!あんたっ、な…うあっ!いっ…」 突然雨紋の口から悲鳴が迸った。 「俺も、同じ…なんだぜ?」 ペニスを襲った突然の痛みになにが起きているのか分からない雨紋の耳に、ちょっと困ったような天夜の声が響いた。 背を抱いていたはずの天夜の手は、互いの体の間で熱くなっている雨紋のペニスに絡んでいた。ぎゅっと、竿を握り締めるようにして。 「ね。なんで誘ってくれた訳?夕日を見る為だけ?」 「タチ…悪いぜ…。そんな大事なもん握られてちゃ、言い訳もできやしねぇ。…分かったよ。言うよ。確かに俺様は下心有りであんたを誘ったよ。夕日見て、綺麗な宿で、何時もと違うシチュエーションで、ムードが盛り上がりゃ、何時もは嫌がることもさしてくれるかもって思ったんだよ」 握りつぶされるギリギリのラインの痛みを堪えながら、雨紋は不貞腐れたように言った。それでも、雨紋の手は天夜を抱き締めたまま、離そうとしない。 プイとそっぽを向いた雨紋の口唇が「一緒に出掛けたかったのは、ホントなんだぜ」と呟いたのを、天夜は見逃さなかった。 「俺に、ナニしたかったの?」 茎を掴んでいない手が、さわりと叢のしたの袋を撫で擦って答えを促す。 「…風呂の中でエッチしたり、あんたの体洗ってやったり、後始末してやったり…とか。口で、してもらったり…とか」 腹を括ったように妄想の全てを吐露した雨紋を見上げた天夜の顔は、少し悲しげでなにかを考えているようにも見えた。 「…バカ…」 聞えないように小さく呟いた天夜の手は、なにを思ったのか、手にしていた雨紋のペニスをグイと下を向かせると、そのまま太腿の間に挟んでしまった。 「いってーっ!痛いって…天夜さっ…んっ?んんんッ…」 きゅっと逃げられないように足に力を入れてペニスを締め上げると、痛みに顰める雨紋の顔をそっと両手で包みこんだ。痛いと喚く口唇が、しっとりと柔らかいモノで塞がれる。 大胆な行動を取りながら、その実天夜の心臓は張り裂けんばかりに脈打っていた。 足の間の雨紋のペニスが、天夜の体を持ち上げそうなくらいに張り詰める。 「俺と、そう言うことがしたい為だけで、2週間も旧校舎潜って、こんな高い旅館用意したのか?」 目の前で動く赤く濡れた口唇が酷く艶かしくて、問い詰めるような天夜の言葉も聞こえないくらい、雨紋を高ぶらせてしまう。 木目のこまやかな腿の感触に、腰がウズウズと疼いて仕方ない。 「悪かった。怒ったんなら謝る。ごめん。幾らでも謝るから、機嫌直してくれよ?俺様にできることならなんでもするから、な?あんたに嫌われたら、俺様生きる希望を失っちまう」 つづく |