行ってしまうのか
過ぎて行ってしまうのか
クルマに乗って行ってしまうのか
走り去っていく
ここで歩いていた、おまえが
ドンドンとドンドンと
走り去っていく
見たいといっていた海へ
いつか話していた夜空の花火を見に
俺には本当にあるのかもわからないところへ
そして語り始めているんだろうか
生きてるのが嫌だという話を
ピアスのようなリストカットの痕を見せているんだろうか
話を聞いてくれる若いうちに
老いて嫌でも死ぬ前に
そこで立ち止まっていたおまえは
クルマに乗り込んでいってしまった
おまえは俺が今、歩いているところがわかるかい?
もしかするとおまえは
通ったことさえ知らないかもしれないね
俺は今、おまえが忘れてしまうほど昔に
走り去ってしまった道を歩いているんだよ
そんな覚えていても仕方のない場所で
歩いては立ち止まったりしてるんだ
でも、俺はクルマに乗ることが出来ないから
歩くことでしか
前に進めないから
足の裏が痛くて子供のように泣いてしまいたくても
また固い石の上に足をおろすんだよ
だって、そうするしかないじゃないか
おまえはもう海を見たんだろうな
おまえはもう夜空に輝く花火を見たんだろうな
俺はね、俺はまだここにいるんだよ
おまえがいなくなってしまった道を
おまえが走り去った道を
おまえが気づくことのなかった道を
倒れ込みたいと思いながらも
消えっちまいたいと思いながらも、歩いているんだ
俺だっていつか海までいけるって
俺だっていつか花火の灯りに
照らされる夜がきっと来るって
どこかで信じているからなんだ