ダディとバトル





「ハンカチは持ったのか」
「ハンカチは渡したんだよ、ティッシュを持ってないみたい」
「なあー、どうして入学式に行っちゃいけねーんだよー」
 家の中から聞こえてくる三人のそれぞれな会話に、凛はうんざりする。
 高校の入学式に、親がついてくるなんて、恥ずかしいと思うのだ。それも父親が三人も、なんて。
 それでなくても、この家の事情とやらで、小学校、中学校時代と、好奇の目で見られてきたというのに。
『時枝の家って、どうして父親が三人で、母親がいないんだ?』
 そんな訊かれ方をするのはまだましな方だった。もっと露骨に訊かれたこともある。
『本当の父親はどの人?』
 誰が本当の父親なのか、それは凛自身も知らない。物心ついたときから三人と暮らしていた。母親はいるにはいるが、彼女を母親だと思ったことはない。
 三人の中の一人が本当の血を分けた父親らしいが、彼たちにも誰が、もしくは自分が父親なのかどうかは、知らないのだと言う。
 思春期の最中、問い詰めた時に、『一人だけを選ぶのか』と反対に凄まれ、詮索することは諦めた。
 実際、誰か一人を選んで、『お父さん』と呼び、他の二人を追い出すなどできなかった。
 三人は三人とも、父親としては少し不適格な要素を抱えているが、凛を大切に育ててくれた。母親がいないことの寂しさを感じる暇もないくらいに。
 それはまさに溺愛だった。
 高校の入学式についていくと駄々をこね、ハンカチやティッシュにいたるまで、十五才の男の子に口を出すくらいに。
「凛くーん、どうしても駄目ー?」
 このように甘えた声で訊いてくるのは、年少さんの道継藤吾である。三十二才で、甘いマスクを活かし、俳優をしている。最近渋い味が加わってきて、人気が出てきているらしい。家では、少しオネエが入っていると、他の二人には評判が悪いが。
 三人の中では凛と年が近いこともあり、友達感覚が抜けないこともない。自分のことを藤吾君と呼ばせ、悦に入っている。
「そんなの、黙って行きゃ、誰の親かわかんねーって」
 ぶっきらぼうなものの言い方は、年中さんの元木勲である。三十八才のフリーカメラマンで、粗野な性格のわりに、風景写真を得意としている。夜空を撮らせたら絶品と、評判は高い。ただし、他の二人には、言葉使いが凛に悪影響を及ぼすと、よく注意されているが。
 顔や目つきも鋭く、背も三人の中で一番高い。重い機材を運ぶため、がっしりとした肩は、よく日に焼けている。
 やはりアウトドア派で、凛をあれやこれやのスポーツ、キャンプにと、外に引っ張り出してくれる。
「駄目だよ、凛が嫌がっているんだから」
 穏やかに窘めるのは、年長さんの門倉誠司、四十一才の作詞家である。優しい言葉使いで、しっとりした大人のバラードを書くと人気があるが、他の二人にはただの天然ボケに映るらしい。
 家でもできる仕事のためか、実質的に凛の世話をしてきた人物である。性格面では一番影響を受けているかもしれない。
 背は一番低いが、それでも百七十はある。テレビに出ても遜色をとらない容姿と、紳士的な対応で、最近はブラウン管にも顔を出すようになってきている。
 誠司の言葉を聞き、頷きかけて、凛は急いで首を横に振る。凛の気持ちを一番に汲んでくれると思いきや、気がつけば、誠司のペースに嵌ってしまい、父親たちのいいように意見を変えさせられてきた。
 ……いつも。毎回。必ず。絶対。
「でもね、凛。僕たちがこの日を楽しみにしていたのも、わかってくれるよね」
 ほら来た。誠司の心理作戦が始まった。
「うん。でも、高校は生徒だけって書いてあったよっ! 行ってきまーすっ!」
 いつのまにか『来てもいい』と言わされる前に、凛は家を飛び出した。閑静な住宅街に建つ、白亜の豪邸。表札は『時枝』
「コラ! リン! 逃げやがったな」
「あー! 定期は持ったのー?」
「まあいいじゃないか。あとでこっそり迎えに行けば」
 冗談じゃない。だから式の時間を一時間遅く言ってあるんだよー。見に来た頃には、とっくに終わっちゃってるもんねー。
 こっそり舌を出し、凛はバス停に向かって走り出した。ゆっくりしてはいられない。早めに出るふりをしたが、そういう事情で、実はギリギリなのだ。
 高校生となったこの日から、絶対過保護から抜け出してみせる。そう心に決めていたのだ。
 真新しい制服は凛にぴったりで、まだ大きくなると言うのに、父親たちは「みっともないことはさせたくない。小さくなれば喜んで買ってあげる」と、誂えてしまった。
 そういうところも、少し世間の親たちと違う気がする。
 柔らかい髪が、凛が走るのにしたがって、サラサラと風に靡く。
 入学式に出席するといえば、中学生の? と訊かれるような、まだまだ幼い顔つきをしている。
 だが、はっとするほど色が白く、その中で茶色味の強い大きな瞳が印象的で、細く腰のない髪が光を弾いて瞳と同じ色に染まるように輝くと、少女めいて見える。
 可愛いとか、綺麗とかいうのではなく、人目を惹くのだ。母親から引き継いだ天性のものかもしれない。
 自分の顔が誰に似ているかで、父親を見極めようかと思ったこともあるが、凛は見事に母親にそっくりで、まったくわからなかった。
 今、国際的に羽ばたきつつある、女優のRIYOKO。ハリウッドに居を移し、その名を徐々に広げつつある。
 そのRIYOKOが凛の母親の時枝理代子で、年は二十七と公表しているが、本当は三十二才である。
 凛という子供がいることを、理代子は秘密にしている。
 そのRIYOKOに、凛はうりふたつなのだ。一体、父親の遺伝子はどこに隠れているのだろうと思うほどに。
 バス停に着いて時計を確かめる。
「僕だって、一人で何でもできるんだから」
 凛が呟いたのと同時に、バスがやってきた。


 不安と期待を胸に、凛は高嶺高校の正門に立った。墨文字の麗々しい入学式の看板を通り過ぎるが、新入生らしい人は、周囲に見当たらない。
「どうしよう……」
 途端に不安な気持ちに駆られ、時計を見る。ギリギリ間に合ったはずだ。そう思って、青くなる。
 竜頭があがって、時間はバスの発車時刻のまま止まっている。乗車の時に袖をドアに引っかけたと思ったが、その時にあがってしまったらしい。
 駅前で無事に下りたのはいいが、反対方向の電車に乗ってしまった。すぐに気がついて折り返したが、何しろギリギリに家を出たのである。間に合わなかったのだろう。
 三人の顔が浮かぶ。そして、もう帰ろうかと思う。
 入学式に出なくても、あの三人なら、きっと何とかしてくれる。明日から通うのに、何の心配もないように。
 今朝の決意はどこ吹く風で、凛は校門で回れ右をした。
「体育館はこっちだよ」
 とぼとぼと帰ろうとした凛の背中に、少し低めのよく通った声が聞こえた。
「大丈夫。まだ始まっていないよ」
 振り向いた先には、凛と同じ制服を着た人が立っていた。てっきり教師に声をかけられたと思っていた凛は、驚いたまま、ぼんやりと相手の顔を見つめた。
「なんなら、一緒に行こうか?」
 とても大きな人が、おいでおいでと手招きしている。多分、もともと目が細いのだろう、ニッコリ優しく微笑むその顔では、目が線のように見える。
 それがなぜか凛を安心させた。この人、悪い人じゃないと、そう思えて。
 赤ちゃんの頃から、凛は様々な人に声をかけられてきた。赤ちゃんモデルをしないかと、家に来るテレビ局の面々に言われたこともある。
 公園で遊んでいても、知らない人に声をかけられることが多かった。凛もあまり人見知りするタイプではなかったので、何度か連れ去られそうになったこともあった。誘拐目的ではなく、連れ歩きたかっただけらしいが。
 だから三人の父親は、凛がいつか本当に誘拐されるのではないかと、一人で外に出すことさえしないようになっていた。
 家にも仕事関係の人を入れないようにした。
「知らない人に、絶対ついて行っちゃ駄目だよ」
「頭から食われちまうぞ」
「まあまあ、凛はそんなこと、知っているよね。お利口だから」
 父親たちは口を酸っぱくして、何度も凛に繰り返した。なのに、凛はその手に釣られるように、フラフラと歩き始める。
 父親たちから離れるための、本当の一歩なのだとは気づかずに……。

 体育館には男女が交互になって、整然と並んでいた。多分クラス別に並んでいるのだろう。
「ほら、間に合ったよ」
 そう言うなり、凛をここまで連れてきてくれた上級生は、立ち去ろうとする。その上着の端をしっかりと握りしめて、凛は精一杯の目で見上げる。
 小さな凛では、顎をしっかり上げなければ、相手の胸と話をしなければならなかった。
「どうしたの?」
「どこに並べばいいんでしょう」
 上級生が潜めた声を出すので、凛も自然と囁くような言い方になってしまう。
 少し見開いた目は、それでもやはり細く、まっすぐに凛を見つめてくる。澄んだ綺麗な瞳だなと、凛も必死で見上げる。
 ふっと笑って、上級生はどこでもいいんだよと言う。
「でも……」
「君は遅れてきたから、クラス分けの紙を見ていないんだろう?」
 その指摘に、凛はこくこくと頷く。
「だから、とりあえず、どこかに並んでおいて、退場してから、クラス分けの紙を見に行くといい」
 凛は返事できずに困ってしまう。いつも困った時は、すべて誰かが何とかしてくれた。凛は『さあ大丈夫だよ』と言ってもらってから、その上を歩いていればよかった。
 確かに、今日からは一人で何でもするんだと思っていたが、いきなりアクシデントに出くわすとは思ってもみなかったのだ。
 順調に学校まで辿りつき、誰かがしていることの真似をして、入学式を終わらせ、意気揚々と家に帰りつく。
 そして宣言するのだ。
「僕は一人でなんでもできるんだから、もううるさくかまわないで」と。
 その目論みが、学校に着く前から外れ、更に学校でも大きく外れていく。
 このままでは、自分のクラスもわからないまま、教室に辿りつけないかもしれない。そんな不安にかられ、帰りたくなってくる。
「じゃあ、クラス分けはあとから一緒に行ってあげるよ。だから、どこか、そうだな、あそこに並んでいるといいよ」
 上級生が指差した先は、一番端の列で、その横には老若男女合わせて、色々な教師達が、新入生の方に向かって座っていた。
 今すぐクラス分けを見に行って、凛をそのクラスの列まで連れて行ってはくれないのかと、凛はちょっぴり不満に思う。
 そしてすぐ、そう思ったことを恥じた。そんなことを期待するなら、最初から父親たちと来ればよかったのだ。
「ダメ、ダメ」
「あそこが嫌なら……」
 凛の言葉が聞こえてしまったのか、上級生はきょろきょろと辺りを見回す。
「いいんです。僕、あそこに並びます」
 そう言って凛は、パタパタと小走りで、一番端の列の最後尾に並んだ。
 上級生はそれを見届けて、体育館の端を通って、壇上に上がっていった。
 なぜ彼が壇上に上がっていったのか、すぐにわかった。彼は綱木智晴と自己紹介をした。今現在の生徒会長らしい。
 入学式の開会を宣言し、ずっと目を線にして微笑み、進行役を勤めている。
 凛は式の間中、綱木の姿を追っていた。
 家に三人ものダンディが揃っていれば、多少の容貌では、かっこいいとは思えなくなっている凛にとって、綱木はやはり、ハンサムとは言いがたかった。
 背は高いが、笑うと目がなくなり、人込みに紛れてしまえば、見分けがつかないようなタイプだ。
 だが、凛は自然と目を惹きつけられた。
 綱木のどの部分に対して、そんなに惹きつけられるのか、それは凛にもわからなかった。
 ずっと見ていると、綱木は決してテキパキとものをこなすタイプでもないらしい。だが、そのことがかえって、式を和やかに進めている気がした。
 途中、一度だけ目が合った。すると綱木は、目がなくなるくらい笑ってくれた。凛は嬉しくなって、胸の前で小さく手を振った。
 式は滞りなく終了し、新入生達は、これから自分たちの教室に移動することになった。
 列が崩れ、周りを生徒たちに囲まれて、凛はきょろきょろするが、綱木がどこにいるのか、皆目わからなくなってしまった。
 どうしようかと思いながら、列の流れにのまれるように、出口に向かう。
 その腕を不意に掴まれた。
「よかった。見つかって」
 綱木が少し強引に凛の腕を引っ張り、人の流れの中から救い出してくれる。
「こっちだよ」
 そして出口となっていたのとは別の扉から凛を連れだし、校庭への歩道となっているところへ凛を連れて行ってくれた。そこに、長々と白い紙が張り出されている。
「僕は十組から探すから、君は一組から探すといいよ。あっ、名前、なんていうの?」
「時枝凛です。時間の時に、木の枝、凛々しいのりん。時枝凛です」
「時枝凛君、いい名前だね」
 ニッコリ笑うともう、綱木はクラス分けの紙を見ていた。凛も慌てて自分の名前を探した。
 なかなか見つからない名前に焦ってしまう。早く教室に行かなければ、ホームルームが始まってしまう。
「あっ、あった」
 指差してそう言ったとき、声が重なった。
 一年五組。時枝凛。ほとんど同時に見つけた名前。
「入学おめでとう。先輩として歓迎します、一年五組、時枝凛君。担任の安田基梓先生は、優しくて面倒見のいい先生だよ」
 手を差し出され、握手をする。その手は大きく、とても暖かかった。


 凛が鼻歌まじりに帰宅すると、三人はリビングに無言で座り込んでいた。
「ただいまー」
 楽しい声にも、三人は返事をしない。
 室内は煙草の煙がもうもうとして、白くけぶっているほどだ。
 よほど機嫌が悪い時の状態である事を、凛は今までの経験で知っている。
 今朝の自分の仕打ちを思えば、ある程度予想できたことではあるけれど、入学式の出来事に心を奪われ、すっかり家の状態を失念していた。
 家を出た時は、三人がいなくて寂しかったよ、という顔をして帰るつもりだったのだ。そうすれば、三人の機嫌もすぐに治ったはずだ。
 だが、嬉しさのあまり、鼻歌まで歌っていた。今の今まで、この曇った世界を見るまで、父親たちのことを忘れていた。
 この嵐はなかなか去ってくれないかもしれない。凛は首を竦めて、嵐が過ぎ去るのを待つ覚悟を決めた。
 だが……。
「おかえり」
 藤吾の声は、多少落ちこんでいるものの、凛を責めているふうではなかった。
「大丈夫だったか」
 勲でさえ、気落ちしているものの、怒っている感じはしない。
「担任の先生はどんな人?」
 誠司は凛に微笑んでさえいる。
 …………おかしい。
 そうは思ったものの、そんなことを言って、せっかく静まっている嵐は呼び戻したくない。
「大丈夫だったよ。担任の先生は、面白そうな人。寒いギャグを飛ばしてた。あはは……」
 笑おうとして、頬が引きつる。三人も乾いた笑顔を凛に向ける。
「じゃあ、今夜は予定通り、お祝いに外に食事に行こうか」
 誠司の提案に、二人は異議を唱えず、凛は二階の自分の部屋へと、階段を上がって行った。階段を昇る足音が聞こえなくなり、凛の部屋のドアが閉まるのを待ちかねて、勲が誠司に凄んだ。
「どうして怒らなかったんだよ」
「そうだよ。誠司さんが怒ってくれなくちゃ、僕たちも怒れないじゃない」
 藤吾も恨めしげな目を向ける。
「だったら自分たちで怒ればいいだろう? 別に僕でなくても、凛は君たちの言うことも聞くよ?」
 誠司は溜め息をつく。煙が揺れて、三人は同時に咳き込んだ。
「けどなー、誠司だって、内心は怒ってるんだろうが」
「怒るというより、今は寂しいかな」
「何が? 何が寂しいの?」
 藤吾の無邪気な問いが、誠司は恨めしい。ここまで気がつかなければ、幸せだったかもしれない。
 だからわざわざ教えてやることにした。
「凛はもう、父親の必要な年ではなくなってきているんだよ。今日が、その一日目だということ」
「えー?」
 情けなさそうな藤吾の顔と声に、溜飲を下げる。凛の微妙な変化を知ることのできる自分が、こんな時ばかりは嫌になる。
 三人は高校へ行ったのだ。既に入学式の終わった、高嶺高校へ。
 そして凛にだまされたことを知る。
 怒り狂う勲を宥め、泣き出しそうな藤吾を引き摺り、誠司は帰ってきた。
 内心、自分も怒りに燃えながら。けれど、凛が半泣きで戻ってくると予想していた。その時には、いつものように優しく諭すつもりだった。
 その予想が覆され、一番動揺しているのは誠司だった。怒るより、これから起こるであろう、凛の巣立ちという喪失感に、怯えていた。

 怒られずに済んだという、意外な顛末に、実は凛が一番驚いていた。何か企んでいるのだろうか。そんなことまで思ってしまう。
 普段、凛の前では煙草を吸わない三人が、室内が曇るほど吸うと、いつもは大地が揺れるほど雷が落ちるはずである。
 普段は凛をでろでろに甘やかしている三人が、泣いて謝っても許してくれないのである。
 それがお咎め無し。
 かえって空恐ろしい気がする。それでも、実際怒られなかったことの方が、凛の気持ちを軽くした。
 新しい制服を脱ぎ、お気に入りの外出着に着替える。衿幅の広めの真っ白いシャツに、ブルー地に同系色のチェックのパンツは、シンプルながら、凛の愛らしい容姿によく映える。
 着替えながら凛は、優しい笑顔を思い出し、クスクス笑う。
「笑いすぎて、目が線になっちゃったのかなー」
 本人が聞いたら怒りそうな失礼なことを思いながら、凛はまた鼻歌を歌い出す。
「また会えるといいなー」
 同じ学校に通うのだから、いつかは会うだろうと思い、その時にもまた目を細くして笑ってくれるだろうかと思うと、自然に笑い声が漏れる。

 凛の部屋から盛れ聞こえる楽しそうな鼻歌に、三人は溜め息を深くする。
「凛はもう、僕たちを必要じゃないの?」
 そういう藤吾のほうが半泣きである。
「うるせー、まだ声変わりもしてない、赤ん坊じゃねーか」
 やけくそで勲が新しい一本に火を点ける。
「無茶苦茶寂しいよー」
 勲の言う言葉も聞かず、既に藤吾は花嫁の父の心境であるらしい。
「大丈夫だよ! 考えてもみろよ、まだ十五だぜ? まだまだおこちゃまだよ」
 勲が積もった灰皿の縁で煙草を揉み消す。
「美味しいもんをたらふく食わせようぜ。そしたらいつものリンだぜ」
 勲が勢いよく立ち上がった時、リビングのドアが勢いよく開いた。
「僕ねー、ハンバーガー食べたーいっ」
 リクエストのあまりなお子様内容に、勲は勝ち誇ったように二人を見た。



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